アメリカ、アフガニスタンへの別補給路を模索中
ジェームズ・コーガン
2008年12月24日
10,000人以上のパキスタン人が、先週水曜日、北西部の都市ペシャワルで、パキスタンを、アフガニスタン占領に対する武装抵抗を弾圧しているアメリカとNATO軍のための補給路として使用することを非難して、デモをした。
デモは、パキスタンの、合法的な主要イスラム教政党、ジャマート・エ-イスラミ(JI)が呼びかけたものだ。これは、カラチ港から、カイバル峠を経て、アフガニスタンへと輸送するトラック運送の通過駅として使用されている地元の供給拠点の車両や装備に対して、過激派がペシャワル地域で遂行した一連の攻撃に対する、暗黙の支持の表明だった。
12月7日と8日に、過激派が、別個の施設三カ所を攻撃した結果、200輌ものトラックや、その荷物であったハンビーや他の軍用品を破壊した。その結果、カイバル峠は、12月15日まで閉鎖された。
現在、80パーセントのアメリカ軍の補給は、カラチ-カイバルの経路経由で運ばれている。あるJI幹部は、デモ隊に言った。「もう我々は、武器や弾薬が、わが国を経由してアフガニスタンに駐在するアメリカやNATO軍の手に渡ることは許さない。連中は、それを我々の兄弟、姉妹、子供たちに向けても使うからだ。」
峠は今は再開してはいるものの、パキスタン人運転者は、危ない経路を運転するのをいやがっている。カイバル運輸組合に所属する3,500人のトラック運転手は、あらゆる軍事貨物のボイコットを宣言した。
ボイコットのおかげで、峠を経由してゆくトラックの台数は、アフガニスタン国境までの護衛を行うべく、約1,500人のパキスタン兵士を派兵したにもかかわらず一日400台から、わずか100台にまで急落した。実際ペシャワルの外に出た車両集団の一つは、先週水曜日、ロケット推進擲弾で攻撃された。
運転手に金を握らせて、危ない橋を渡らせるため、運輸会社は、8日間のカラチ・カーブル往復に、15,000ルピー、約190ドル相当を支払っている。ある運転者は、ニューズ・インターナションナルにこう語った。「パキスタンで、運転手が8日間で15,000ルピー稼げる仕事は他にない。」更に危険なタリン・コウト行きの道路でのわずか一往復で、運転手は35,000ルピー支払われる。国民の大半が得る平均月収の二倍だ。運送会社も、車両集団を守る警備員として働く覚悟がある連中には、パキスタンの標準からすれば、ふんだんに給料をはずんでいる。
近年のアフガニスタン反政府武装勢力の拡張と、それに関係した、パキスタン国内においてイスラム教徒の活動が伸長するのにともない、補給路は危機にひんしている。反植民地感情や、民族的なパシュトゥーン族の忠誠心が、宗教的熱情と結びつき、両国でタリバンへの大衆の支持を生み出している。若者たちは、醜悪なまでの社会的不平等、支配層エリートの腐敗や、地域でのアメリカや他の外国軍隊の駐留などが原因で、イスラム教徒の戦闘性に惹きつけられている。
数百万人のパキスタン国民が、アメリカが主導するアフガニスタン占領に対する戦いは、彼らの戦争だと、懸念しているのだ。植民地時代のアフガニスタンとパキスタンとの間のデュアランド線と呼ばれる国境は、全く恣意的なものだ。アフガニスタンは、実際、共通の言語、文化と宗教を持った約3000万人のパシュトゥーン族とを区切るこの国境を、決して公式に認知していない。
1947年に、亜大陸がインドとパキスタンに分割された後でさえ、パキスタンの連邦直轄部族地域 (FATA)と、北西辺境州(NWFP)のパシュトゥーン族は、南部アフガニスタンのパシュトゥーン族との歴史的な絆を維持している。
国境を越えた動きや交易は、ソ連によるアフガニスタン占領に対する1980-1988年の戦争の間に幾何学級数的に増加し、500万人ものアフガニスタン人が、言い換えれば国民の20パーセントが、国境を越えて難民キャンプへと避難した。アメリカ、サウジ・アラビアや、パキスタン政府は、大半がもっぱらイスラム原理主義に基づく、大規模な反ソ連ゲリラ・ムジャヒディン勢力を生み出すために何十億ドルも注ぎ込んだ。
何年間もイスラム教プロパガンダに満ちた環境で暮らせば、タリバンが、1994年、ソ連の撤退後に権力を握った腐敗した軍閥長の打倒を呼びかけた際に、パキスタンのキャンプの元ムジャヒディン戦士や、アフガニスタンの若者が結集したのも驚くべきことではない。
何千人ものパキスタン国民が、彼らの側に立って戦った。2001年のアメリカの侵略後、非常に多数のアフガニスタンとパキスタン人のタリバンは、FATAとNWFPの安全な隠れ場へと逃れた。次第に勢力を建て直し、彼等は今や、南部アフガニスタン中で新たなゲリラ戦争を進め、国内での反政府活動を阻止するよう命じられているパキスタン政府軍とも戦っている。
タリバンは、アフガニスタンの半分以上で勢力をもっている。関連したイスラム教徒の集団がFATAに君臨し、彼等の影響力、は全NWFPから、更にはそれ以外のパキスタンにおよんでいる。NATOの補給は、カラチ港のドックまで攻撃されるに至っている。イスラム教徒の影響やアメリカ占領に対する抵抗を、軍事的に根絶するには、長期の、費用のかかる、国境の両側における血まみれの損耗戦争が避けられまい。
ワシントンからのあらゆる兆しは、中央アジアにおけるアメリカの地政学的野望を確保し、中国やロシアのようなライバル諸国が、資源の豊富な地域で主要勢力となることを防ぐため、オバマ政権が、そのような戦争を押し進めるつもりであることを示している。何万人もの追加の兵士がアフガニスタンへの展開準備をしており、オバマは繰り返し、反政府武装勢力の標的とされるものに対しては、パキスタン国内への攻撃を命じると発言している。
ブッシュのホワイト・ハウスは既にこの政策を実施し、パキスタン政府の反対の声にもかかわらず、8月以来、パキスタンの領土に30回もの攻撃を行っている。最近のアメリカの攻撃は、月曜日に行われ、南ワジリスタンの国境地帯で、リモコン操作の無人飛行機から、少なくとも二機のミサイルが発射された。現地の住民と役人は、ワナに近い村で4人、隣村で更に3人の、計7人が殺害されたと語っている。今年これまでに、そうした攻撃で、220人以上の人々が殺害されている。
軍隊の増加と、より大規模なアメリカによるパキスタンの主権侵犯の可能性から、補給路の治安が一層重要となる。中央アジア・アメリカ軍司令官の、デービッド・ペトレイアス大将や、他のアメリカ軍幹部は、危機管理計画を練っている。ここ数週間、ロシアを経由し、中央アジアの諸共和国経由で、アフガニスタン国内に、より多くのNATO補給の輸送を認めるように、圧力と予備交渉の誘いが、ロシア政府に対して向けられている様子だ。
先週、ロシア軍の幹部ミハイル・マルゲロフは、ジャーナリスト達にこう語った。「専門家は、詳細を議論している。静かにやってもらおうではないか。地図を見れば、アフガニスタンに行く道路は多数あるが、実際、それは皆危険なのだ... ロシア回廊が最も安全だ。それが、NATOとロシアが、共同の利害を持っている理由だ。」
もう一つの選択肢として、イランの港チャーバールを使う方法がある。インド政府は、アフガニスタン西部の都市ヘラートから、イラン国境にいたり、チャーバールからの道路と交差する多車線幹線道路の建設に10億ドル以上を投じている。テヘランの政権と、何らかの形で、政治的な交渉ができれば、アメリカとNATOは、全てではないにせよ、現在カラチへ向かっている運輸の大半の流れを変えることができ、ヘラートの支配を確保できる。
アメリカ-イラン関係改善の可能性について質問されて、ロシアのマルゲロフは明言した。「我々は、イランから、アメリカ、特に新政権との直接の接触を歓迎するというメッセージを受け取っており、もしそうであれば、彼等はより協力的にする用意があるはずだ。」
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