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2008年11月22日 (土)

アメリカのミサイル網

Manjit Singh

Geopolitical Monitor - 2008-11-17

ブッシュ政権外交政策の主眼点ともいうべき、アメリカが計画中のヨーロッパ・ミサイル防衛網は、最近の大統領選挙でのバラク・オバマ勝利後、どうやらごみ箱入りの運命のようだ。

金曜日、ロシア大統領ドミトリー・メドベーシェフとのサミットで、フランスのニコラ・サルコジ大統領は、ワシントンに対し、計画中のミサイル防衛網配備は、ヨーロッパに対し安全保障をもたらし損ねるのみならず、緊張を高め、国際関係を複雑化し、必然的に、大陸に不安定をもたらすだろうと警告した。フランスはヨーロッパの大国の一つで、主要なアメリカ同盟国で、現在は欧州連合理事会議長国だ。従って、フランスがミサイル防衛計画に対して新たに反対を表明したことは、ブッシュ大統領の外交政策資産に対する大打撃だ。

興味深いことに、サルコジ大統領は、前任者ジャック・シラクより、ブッシュ大統領にはるかに親密に提携してきており、これまで、公的にブッシュの外交政策を支持しながら同時にフランス独自の外交政策イニシアチブを構築してきた。そこで、ブッシュの最も意欲的な対ヨーロッパ外交政策課題に対する、近しい同盟者サルコジからの直接的な異議申し立ての大きな理由は、ミサイル網に反対してはいないが、技術的な実現可能性に関して懐疑的な態度を表明し、「可能性を検討する」意図に対しては承認している次期大統領バラク・オバマの最近の勝利だろう。

事実、オバマが大統領選挙に勝利した数時間後、金曜日の仏露サミットにおけるサルコジの相手役はアメリカのミサイル防衛網提案への対応を発表した。メドベーシェフ大統領が、対抗策として、ロシアは、ポーランド国境に近い、バルト海地域にあるカリーニングラードに自前のイスカンデール・ミサイルを配備する意図を表明したのだ。アメリカのミサイル防衛網を打ち破るというロシアの狙い(それによって核抑止力を維持する)は、何十年ものヨーロッパの非軍事化を逆転させ、ヨーロッパ-アメリカ同盟内部での離反を深めることはまず確実だ。

実際、サルコジは既に、この件をNATO同盟諸国と話し合うつもりで、更に、ロシアをメンバー国として含む欧州安全保障協力機構(OSCE)の支援の元で、汎ヨーロッパ安全保障会議を開催する予定だとほのめかしている。確かに後者のグループは、アメリカのミサイル防衛網によるヨーロッパの再軍備に反対するだろうし、ヨーロッパのNATO同盟諸国、特に西ヨーロッパ(元アメリカ国防長官ドナルド・ラムズフェルドが、あざけるように「古いヨーロッパ」と呼んだ国々)が、ヨーロッパ-アメリカ防衛同盟で仲間割れする可能性が一層高まろう。

しかもオバマは、特にヨーロッパにおいて、NATOの協力強化なしには外交政策目標を進めることができないのだ。西ヨーロッパのNATO加盟国が、オバマが、ヨーロッパ再軍備というブッシュ路線を破棄してくれれば、我々もアフガニスタンからの軍撤退のペースをゆるめよう、というような交換条件を提案する可能性が高そうだ。

ロシアとしては、もしオバマが、ヨーロッパ再軍備という、ブッシュの計画を放棄すれば、見返りとして、カリーニングラードにミサイルを配備するというロシアの計画を中止すると既に譲歩している。

とはいえこの危機の結果を左右するのは、経済的な懸念の可能性がある。昨年ロシアとヨーロッパは、1000億ユーロの貿易をしており、特に最近の世界同時不況を考えればヨーロッパの諸大国が、そうした貿易を駄目にしようとするなどとは考えがたい。EUはロシアの第一の顧客で投資家であり、一方ロシアはヨーロッパの主要エネルギー源となっている。ヨーロッパにおいて、再会された冷戦のための防衛力強化への資金拠出を巡る懸念が、大半のヨーロッパ諸国にとって抑止的効果を持つことも確かだ。

経済以外にも、ロシアは使えるカードがある。安保理事会拒否権を使って、ロシアはイランに対するいかなる新規制裁措置をにも反対すると表明した。一方で、メドベージェフは、今月末、更にアメリカとは不和の二国を訪問予定だ。キューバとベネズエラ(ロシアは最近、ベネズエラ軍の戦力向上契約をしている)だ。

ロシアが対決路線カードを活用し続けて、オバマが自称する国際主義的な狙いに協力するのを交換条件に、ヨーロッパの現在の非軍事化という現状を維持するという互恵的な合意を、オバマに受け入れさせようとするのはまず確実だ。

半世紀昔のキューバ・ミサイル危機を見ているようで気味が悪いが、今回は大団円の方が、クライマックスより優先しているようだ。

記事原文のurl:www.geopoliticalmonitor.com/content/weekly_forecasts/2008-11-17/us-missile-shield-november-17-2008/

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ヨーロッパでのMDをめぐる状況の展開と、東アジアでのそれとは実に対照的。

費用60億円の迎撃ミサイル発射実験、海自が失敗 読売記事

日本の軍・政治のトップは、第二次大戦の教訓を学ばず、かつての敵国の走狗となって、ごみ箱入りミサイル・システムに驚くほど巨額なむだ金を投じている。

陸では、パトリオット(愛国者)ミサイルPAC3なる売国的ミサイルが配備されている。

ミサイルで幸せになるのは、属国・宗主国のトップと軍需産業だけだろうに、さほど報道されずに、厚生省暗殺事件一辺倒。

昔攻めたアジア諸国との信頼関係がない、アパ論文が大手を振って通る日本には、ロシアに対するフランスのように、同調してくれる近隣諸国の声など決してあらわれない。

「属国でいてくれた方が安心」「余剰資金はごみ箱に捨ててほしい」と周囲の国々には思われているのかも知れない。今回の金融バブル崩壊で、宗主国に、10兆円既に献上したのだろうか、するのだろうか?

いや、そう思われるような特殊なイデオロギーを持っていればこそ、宣伝してくれればこそ、ごみ箱ゆきのミサイルを売りつけるのに便利なので、傭兵の「トップにしてもらえる」のだろう、と今気がついた。

彼のトンデモ発言が宣伝されているのは、イラクでの安保条約・地位協定成立と並行する、対アジア諸国向けの日本属国恒久化の高等戦術のようだ。

「安保をなくして、独立したい」という異論反論を言うようでは、属国での出世はおぼつかない。

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