オバマ移行チーム、更なる戦争と抑圧を示唆
2008年11月14日
次期大統領バラク・オバマの、民主党予備選挙、最終選挙の双方における勝利は、大部分、拭うことのできないブッシュ政権の名残を構成する、長年の軍事侵略、拷問、臨時引き渡し、国内でのスパイ活動や、その他のあらゆる犯罪に対するアメリカ人の圧倒的な反感のおかげだ。
こうした政策に対する入念に計算した批判や、主要な民主党のライバル、ヒラリー・クリントン上院議員に対する、彼女が2002年10月アメリカのイラク侵略に賛成票を投じたことに対する非難のおかげで、オバマの「あなたが信じられる変化」なるものは、アメリカ国内、海外両方で多くの人によって、彼が選出されれば、軍国主義やら民主的な権利に対する攻撃が終わることになるという約束であるかのように受け止められている。
ところが、新政権への移行が進展するにつれ、オバマの変化という約束に対する信頼など、このプロセスに関与する連中の政治的実績を検討しそこねた場合にのみ、維持できるものにすぎないことがわかる。
オバマ-バイデン移行チームの大半は、バルカン半島でのアメリカの戦争と、ブッシュ大統領のもとで、行われた戦争の準備をしたイラク体制転覆政策に関連したクリントン政権のベテラン達が占めている。
この関係で象徴的なのが、クリントンの元国務長官マデレーヌ・オルブライトを、今週末のワシントンでの金融サミット(G20)に、彼の名代として送るというオバマの決断だ。1996年のCBSのニュース番組“60 Minutesでのインタビューで、アメリカの対イラク経済制裁が、50万人のイラク人児童の死をもたらした事実を突きつけられた際、オルブライトは答えた。「難しい選択でしたが、その価値はあったと思っています」彼女は後に、アメリカが支援したユーゴスラビア解体と、それに続く、民間の標的に対する広範な爆撃で突出していた対セルビア戦争の、主な計画立案者となった。それが、オバマの世界に対する顔なのだ。
オバマ次期大統領の軍事政策で言えば、期待される変化なるものは、実にささやかであることの最もはっきりした徴候は、次期大統領が、ブッシュの国防長官ロバート・ゲーツが、政権交代後も、居残る可能性があると公表したことだ。
次期大統領の顧問二人の発言を引用して、ウォール・ストリート・ジャーナルは火曜日に報じた。「次期大統領バラク・オバマは、国防長官ロバート・ゲーツに、少なくとも一年間、留任するよう依頼する方向にあるようだ。」
ゲーツの留任は、ジャーナルが指摘しているように、ブッシュ政権の軍国主義的な海外政策を、本質的には継続するという、きわめて明らかな前兆を示すこととなろう。「次期大統領同様、ゲーツはアフガニスタンにより多くの兵員を展開することを支持している」と同紙は書いている。「しかし国防長官は、イラクからのアメリカ軍撤退に関する固定した日程には強く反対しており、彼が任命されれば、2010年中頃までには、イラクから大半の兵員を撤退させるという、選挙キャンペーンの約束を、オバマが事実上棚上げすることを意味するだろう。」
ゲーツを留任させることに対して、民主党指導部内部が本格的に支持していることを示したのは、先週末CNNインタビューでの、(ネバダ選出の民主党議員)ハリー・レイド発言だ。「彼は残せば良いではないですか?」とレイドは言った。「彼は決して登録した共和党員だったわけではない。」
国防長官に選出される可能性が高いとして、もっとも頻繁に引用されるもう一人の人物は、元クリントン時代の海軍長官リチャード・ダンツィヒだ。六月に、ダンツィヒは、ゲーツを留任させることへの個人的な支持を表明し、イギリスのタイムズ紙に語った。「私の個人的な立場は、ゲーツは非常に素晴らしい国防長官で、オバマ政権では、もっと素晴らしくなるだろう。」
ゲーツが留任しようが、退任しようが、オバマが選んだペンタゴン移行チームの主要メンバーは、次期政権は「イラクとアフガニスタン問題を、ブッシュ政権とは違ったやり方で扱うが、それもせいぜいこの二つの戦争地帯における、アメリカ軍事戦略をすっかり再構築するところまでの話である」ことを示していると、ジャーナルのYochi Dreazenは、続きのコラムで書いていた。
このチームの共同代表者ミシェル・フルールノアは、クリントン時代に国防省にいた、軍事政策に関する超党派シンク・タンク、センター・フォー・ニュー・アメリカン・ストラテジーの理事長だ。アメリカ軍のイラクからの撤退に、固定した日程を設定するという考え方に、彼女は公然と反対している。2007年3月、彼女はセンターのために、イラクに対する政策方針書を共著したが、そこでこう明言している。「アメリカは、あの包囲された国や周囲の地域には、永続的な利害関係を有しており、これらの利害関係は、予見しうる将来において、大規模な軍事駐留を必要としている。」
移行チームメンバーで顕著なもう一人の人物にサラ・シューワルがいる。彼女は、ハーバード大学“人権”専門家で、イラクで、デヴィッド・ペトレイアス司令官の顧問として働き、軍の対ゲリラ野外教本草稿作成に参加している。
ペンタゴンの移行準備の上級顧問として働く人物にサム・ナンがいる。彼は1987年から1995年まで上院軍事委員会委員長だった。右派の民主党議員で、冷戦の戦士であるナンは、ビル・クリントン大統領による、ゲイが軍に公然と勤務することの禁止解除、というクリントン提案に反対するキャンペーンを率いた後、上院を去っていた。
この移行チームの性格は、次期オバマ政権の本当の狙いと一致している。何万人ものもアメリカ兵によるイラク占領の継続と、進行中のアフガニスタン植民地戦争の大幅なエスカレーションだ。
中央情報局(CIA)の移行チームでも図柄は同じだ。公刊されている報告書類によると、この工作の主役を担っているのは、現在国家テロ対策センターとして知られている機関を率い、かつてCIA高官として働き、元CIA長官ジョージ・テネットの首席補佐官を勤めたジョン・ブレナンだ。彼は2005年にCIAを退職した。
いわゆるグローバル対テロ戦争の上席担当者であったブレナンは、彼がCIA在籍中に実施された、拷問、暗殺、臨時引き渡し、国内スパイ行為を実行する判断に非常に詳しく、また関与していこものと推測せざるをえない。
オバマの諜報関連移行チームで、目立つ人物には、テネットの元で、CIAの情報分析作戦を率いていたジェイミー・ミスチクもいる。戦争を売り込むのに活用された、イラクの「大量破壊兵器」やら、アルカイダとのつながり、というまやかしの諜報情報を作り出し、いずれの主張も、根拠がないと否定したCIAのアナリスト報告を抑え込む上で、彼女は主導的な役割を果たしていた。2004末にCIAを辞めた後、彼女は、比較的短期で終わったとは言え、非常に実入りが良い仕事を見つけた。今や破産したウォール街の企業リーマン・ブラザーズで、グローバル・ソブリン・リスク・アナリストのトップという仕事だ。
選挙遊説中、オバマは時折、令状なしの盗聴、水攻め、裁判なしの無期限拘留といった、ブッシュ政権の諜報機関の乱用を非難してきたが、夏の上院での投票では、国家安全保障局に大幅に強化した国内スパイ権限を与えることや、違法な盗聴を実行する上で、ブッシュ政権に協力した通信会社に対する遡行免責に賛成する投票をしている。
ゲーツの場合同様、ブッシュの元でアメリカの諜報活動を担当した連中が、オバマの元でも居残る可能性は否定されていない。国家情報長官マイケル・マコネルとCIA長官マイケル・ヘイデンの両者はいずれも、次期民主党政権でも、留任する用意があることを明らかにしている。先週、オバマに大統領向け諜報ブリーフィングを行ったマコネルは、次期大統領のチームを「非常に頭が切れ、非常に戦略的だ」と表現した。
オバマの移行チーム全体のトップ、ジョン・ポデスタは、先週末、次期大統領は、ブッシュ政権によって発せられた多数の大統領命令を速やかに廃止する予定だと強調し、特に、幹細胞研究や、国内での石油採掘、等を例として上げた。これには、アメリカ軍や諜報部隊に、世界中で侵略行動を遂行することを承認した複数の大統領命令は含まれていなかった。
パキスタンに対する越境攻撃のエスカレートと、地球上の石油の豊富なこの地域を支配するために、ワシントンが軍事力を行使するのを正当化するのに使われた口実である、いわゆる対テロ戦争の遂行を、オバマが誓っていることを考えると、これらの大統領命令を自分のものとして採用する可能性が極めて高い。
ブッシュ政権に対する民衆の反感の波によって、オバマが大統領選挙で勝利してから、わずか10日にすぎない。それでも、次期大統領と彼の顧問の行動は、来年1月就任の就任後も、アメリカ軍国主義や国際的犯罪の増長を終わらせたいという、何百万人ものアメリカ人の切望は実現しそうもないことを、既に明らかにしている。
Bill Van Auken
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