果てしない戦争へのオバマの「とぎれのない移行」
wsws.org
2008年11月18日
次期大統領バラク・オバマは、11月4日の大統領選勝利後、始めてのテレビ放送インタビューとして、日曜に、CBSの番組「60ミニッツ」に出演した。
彼は広範な話題を論じたが、具体性を欠きながらも、落ち着いた様子は、ブリーフィング用書籍の山は通読したが、自分自身の立場というものをほとんど持たず、また何より、誰も不快にさせないよう躍起になっている人物を思わせるものだった。
しかしながら、この一週間一体何に「集中していた」のですかと問われた時、彼はきっぱりと答えた。「何よりも国家安全保障チームを機能させておくことが重要だと考えています。なぜなら移行期間というものはテロ攻撃に対して潜在的に脆弱な時期ですから。国家安全保障の移行に関しては、できる限りとぎれがないようにしたいと考えています。」
次期オバマ政権に、権力を引き渡そうとしている政権が追求してきた戦略や政策を考えると、「国家安全保障のとぎれがない移行」という言いまわしは、熟考に十分値する。
ブッシュ政権はブッシュ・ドクトリンとして知られるようになった明らかな国家安全保障政策を公言していた。本質的にドクトリンは、アメリカ政府が、アメリカ合州国にとって軍事的な脅威をもたらすと思われるいかなる国へも先制攻撃を行う「権利」を宣言していた。公式に述べられたこの侵略戦争政策の基礎となっているのは、海外での戦争と国内での圧政によって、富と権力の独占を強化するというアメリカ支配層エリートの決意だ。
ブッシュ・ドクトリンは、イラクとアフガニスタンの戦争と占領の継続、並びに、パキスタン、シリア、ソマリアやイエメン等、他の多数の国々に対する一連の軍事攻撃とに至ったアメリカ軍国主義の爆発を、政治的表現に表現したものだ。
同様に、「国家安全保障」と「グローバル対テロ戦争」も、誘拐、臨時引渡し、拷問と裁判なしの拘禁を含む、犯罪的政策の正当化として発動されたのだ。
この分野において「とぎれがない移行」を行うというオバマの決意は、彼が大統領選で勝利できたのは、こうした政策のおかげで喚起された大衆の嫌悪感による部分がかなり大きいという事実に反するように見える。選挙民が見たいと期待したものが何かあったとすれば、それは「とぎれ」つまり、差異、中断、とぎれこそが、ここにあらわれるはずだ。
ところが、すでに選挙の準備段階から、ブッシュと自分との違いは、戦略的というよりは、戦術的なもの、あるいは、節操ある人格だということを、オバマは繰り返し明らかにしていた。彼は予防戦争政策を暗黙裡に奉じているが、これはつまり、彼はパキスタン国内の標的を攻撃し、イランの核兵器開発といわれているものにも先手を打つ策をとるであろうことを意味している。
移行プロセスが進行するにつれ、アメリカの外交政策をめぐる戦術的な違いにもかかわらず、軍事的侵略や国際的な犯罪を通したアメリカの金融独裁者たちの世界的な戦略目標追求は、オバマが一月にホワイト・ハウスに入った後、まもなく終了するというわけではないことが一層明らかになりつつある。
むしろ、体制支配層内部では、政権交代は、アメリカ資本主義の世界的な利益追求に対する、オバマという人物による、より好都合な政治的隠れみのを実現しながら、アメリカ軍国主義をより効率的なものにする変化をもたらす手段の一つと見なされているのだ。
日曜日のインタビューで、オバマは、イラクの兵員を「引き下げる」が、それは、アフガニスタンでのアメリカの戦争に「てこ入れ」するためにすぎないという決意を繰り返した。自分の「最優先課題」は「アルカイダをきっぱりと撲滅する」ことだと宣言して、「世界対テロ戦争」は単に継続するばかりでなく、エスカレートする可能性が高いことを明らかにしている。
日曜日に、オバマの元で追求されるであろう軍事政策の本当の姿が、次期政権の政策を設定している民主党支配者層との緊密な結びつきを反映している見解をもった新聞の一つニューヨーク・タイムズの論説という形で、多少詳しく説明された。
「危険な新世界のための軍隊」という題の論説は、イラクやアフガニスタンで見られたもののいずれもが小さく見えてしまうような規模の複数の戦争に備えるべくアメリカ軍を増強するための、背筋が凍るような青写真を描いている。
イラクでの長引く戦争と占領のおかげで、アメリカは「兵員と装備に無理をさせすぎてきた … 」ために、アフガニスタンにおいて必要と思われているエスカレーションや、「次の脅威」と対決する用意ができていないという事実の悲嘆で論説は始まっている。
「アフガニスタンのタリバンとアルカイダを打ち破るべく」「世界中のアルカイダ勢力を追跡して」戦うことに加え、「イランの核を持とうという野望、常軌を逸した北朝鮮、勃興しつつある中国、独断的なロシアや、ソマリアや核兵器を持ったパキスタンのような多数の不安定な国々」との対決にアメリカ軍は備えなければならないのだとタイムズ紙は主張するのだ。
更におよそ100,000人の兵士と海兵隊員を、アメリカの地上軍に加えて、総計759,000人の現役兵員とするというオバマ自身の呼びかけを同紙は繰り返している。しかしながら、これは「大変な規模に見える」が、それでもまだ不十分だとまで断言するに至っている。
軍がイラク戦争のおかげで「ひどく伸びきってしまっている」と宣言した上で、タイムズ紙は、「これらの問題を克服する、最も確実な処方箋は、はるかに大規模な地上軍だ」と結論づけている。
一体どこから、どうやって、オバマ政権は、こうした「極めて大規模な」数の兵員を調達するのだろう? タイムズは言及していない。だが、一つの論理的な結論は、もしも、それほど大規模なアメリカ軍規模の変化が必要なのであれば、それはおそらくは、徴兵制の再開、徴兵復活を意味しよう。大統領選挙キャンペーンで、オバマは「国家への奉仕」と「犠牲」を反復して欣求することによって、またもや何万人ものアメリカの若者を駆り集め、アメリカ帝国主義の軍国主義的な投機地おける砲弾の餌食に使うことの、イデオロギー的な基盤を置いたのだ。
タイムズ紙は、アメリカ軍は大幅に拡張しなければならないと考えているだけではなく、「新たな技術」の開発、とりわけ「ゲリラ反抗勢力」を鎮圧し、「非正規戦争」を遂行する能力に磨きをかけるよう呼びかけている。言い換えれば、「21世紀の戦争」を継続するということは、ジョージ・W・ブッシュの言葉を借りれば、アメリカ資本主義のための原材料、市場と、安価な労働力のプールを確保するための、より汚らしい植民地型の占領と抑圧された諸国の従属をも意味している。
同時にタイムズ紙は、アメリカ軍の「揚陸能力」、つまり「膨大な量の兵員と資材を、速やかに世界中に移動させ、必要な時に海運で供給する」能力の増強を擁護している。
同紙はまた、中国の海軍強化について警告し、ワシントンは 「いかなる国による重要な海運レーンに干渉も許す」ことはできないと断言している。海兵隊による迅速な介入に必要な補給品を保持する領海事前集積部隊艦船と、標的とする諸国の沿岸で、攻撃を実行できる小型船舶である沿岸戦闘艦に、大規模な新規投資をするよう、この論説は強く促している。
「私たちが要求しているものは、費用がかかるだろう」とタイムズ紙は認め、92,000人の地上部隊を追加する現在の計画は、今後六年間にわたり、1000億ドルかかるだろうと語っている。同紙が擁護している、かなり大規模な増強は、海軍の強化と他の軍用ハード購入と同様に、はるかに膨大な支出を必然的に伴う。
「イラクから軍を撤退することによって得られる蓄えの多くは、軍隊の修復と再建」に充てなければなるまいと論説は述べている。イラクで一カ月に100億ドルも消費するのを止め、その代わりに「アメリカ再建」に投資するというオバマ選挙キャンペーンの約束はだいなしだ。それどころか、その資金は更なる死と破壊の準備に使われるのだ。
緊急救済で何兆ドルもウォール街の銀行に注ぎ込むという状態下、社会的支出を増やすという約束は棚上げせざるを得ない、という継続的な警告をもたらしている中、アメリカの戦争装置に何千億ドルもの追加資金を注ぎこむ必要性に疑問の余地がないことは、単なる偶然ではない。
タイムズ紙の論説とオバマへの移行の進展が、アメリカ資本主義の絶望的な経済危機が、これからの歳月、更に爆発的なアメリカ軍国主義の展開をもたらすだろうという厳しい警告の役割を果たしている。
Bill Van Auken
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