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2008年10月 7日 (火)

イラク戦争を阻止しようとした内部告発者キャサリン・ガンの物語、ようやく刊行

2008/9/25

ノーマン・ソロモン

もちろん、イギリス諜報機関における仕事の邪魔にならない限り、キャサリン・ガンが良心を持つのは自由だった。当局にとって、事実上、良心は、コンピューター画面上の一画素以下のものとしか思われなくなりがちだ。しかし、あるありきたりな朝、机で電子メールをスクロールしている時、突然、彼女の良心が目覚めたのだ。それはキャサリン・ガンの人生を変え、歴史をも変えた。

この若いイギリス人女性の国籍にもかかわらず、彼女の物語は、大いにアメリカ的だ。アメリカ合州国では、これが国民からほとんど隠されたままだったがゆえに、一層そうなのだ。キャサリン・ガンが、非常に大きな個人的なリスクを覚悟して、アメリカ政府が、上位パートナーとして存在している国連における、違法なスパイ活動を明らかにした際、彼女は、米英の暗部を、白日の下では耐えられないような特別な関係を暴いたのだ。

あの当時、2003年早々、アメリカ大統領は、すぐ背後についてきてくれるイギリス首相の断固たる支援を得て、イラク侵略を開始することを早くから決断していたことは明白だった。ガンの倫理的な懸念は珍しいことではない。彼女は、他の無数のイギリス人やアメリカ人と共に、差し迫った戦争開始への強い反対の意識を持っていた。ところが、運命の単純かつ複雑なねじれのおかげで、彼女は突然、ワシントンとロンドンから、戦争に向かう政治的行進の道をふさぐ、バリケードを投げ込める、稀な立場にいる自分に気がついたのだ。だが、何よりも非凡なものは、目ざましい事実を、世界に明らかにするため、自らを大変な危険にさらそうという彼女の決断だった。

このような機会をうらやみ、原理を貫くこのような勇気に感服することはありえよう。だが、戦争への道に敷石を置くために、服従と沈黙を必要としている機関では、内部告発者が、なぜほとんど現れないかという、十分な、あるいは、少なくとも理解可能な理由があるのだ。そうした理由は、個人の安全、経済的安全性、法律的に有罪になる危険性、社会的一体性や服従という既定の立場といった事柄に関係している。これは、たとえ甚だしく、嘘という基盤に基づいていようとも、なぜ、どのようにして、人々は、好戦国家と折り合って行こうとするのかを説明する助けになろう。

あの運命的な朝、キャサリン・ガンに衝撃を与えた、アメリカ国家安全保障局から電子メールで送られてきたあのメモは、何千人もの占領軍兵士や、何十万人ものイラク国民の死を招く結果となったイラク侵略まで、二カ月もない日付のものだった。現代は誠実さなど信用できない時代だと言われているが、予告もなしに机の上に現れたメモに対するキャサリン・ガンの対応には、誠実さを疑うようなところはほんのわずかもない。慎重な無為のための底無しの理由付けに従って、それを無視する理由など山のようにあった。倫理的関与と、それに対応する行動の基盤は一つしかなかった。

NSAメモの重要性が非常に大きかったため、トニー・ブレア政府を震撼させ、いくつかの大陸で騒ぎをひき起こした。しかし、アメリカ合州国のマスコミにとって、それは些細な話題だった。ニューヨーク・タイムズにとっては、それは話題でさえなかった。

とうとう一冊の新刊書がこの話を物語ってくれた。"The Spy Who Tried to Stop a War"は、強烈なパンチが山盛りだ。個人的、政治的、そして歴史的な意味で、キャサリン・ガンが何をしたのか、イギリスとアメリカの政府がどう対応し、アメリカのマスコミが、何を報じ、また何を報じなかったかを理解することは、彼女の大胆な良心の行動の直後に、イラク侵略へと突進した、軍産マスコミ複合体についてのはっきりとした実情を把握することだ。この複合体は、マーチン・ルーサー・キングJr.が、「軍国主義の狂気」と呼んだものを、依然として推進しつづけている。

政治家たちや、広く尊敬されているジャーナリストたちが、非常に洗練されたように見える姿勢を進んで示そうとする時代にあって、キャサリン・ガンの対応は拍子抜けするくらい単純だった。外交で戦争を避けるようとするのではなく、 戦争が、ペンシルバニア・アベニュー1600番地とダウニング街10番地それぞれの最高指導者たちの優先項目リストで一番上にあるという、明らかな証拠が手に入った時に、彼女は良心を発動させた。彼女は思い出して語る。「当時私が考えつけたことといえば、彼等は侵略を必死に正当化しようとしていて、世界に対して、戦争への合意が実現できたと連中が発表できるよう、腕をねじり上げ、恐らくは代表たちを脅迫するために、この新しい諜報情報を、彼等は喜んで使うだろうことを、私が知っているということでした。」

政府の通信本部で働いていた彼女や同僚達は、後に彼女が語ったように、「国際法に違反する侵略を実現するという究極的な狙いをもった、違法行為に加わることを要求されていた。」

"The Spy Who Tried to Stop a War"の著者マルシアとトーマス・ミッチェルは、そのシナリオを以下のように説明している。「扱いにくい[国連安全保障理事会]代表たちの腕をひねって、広く受け入れられる論理的根拠を提供できる新たな決議の承認を勝ち取ろうとするもの。」キャサリン・ガンが、何が進行中なのかを発見した後、「彼女は、戦争を合法的なものにしてしまうような、必要とされていた二つ目の決議、つまり引き金機構となり得るものを破壊することで、戦争を押しとどめようとしたのだ。」

単なる非難でなく、NSAメモは、証拠になっているのだ。この事実は、なぜアメリカの諜報機関が断固として、マスコミの質問への対応に妨害工作を行ったのかを説明し、なぜアメリカのマスメディアがこの話題を著しく冷淡にあしらったのかを説明する助けにもなろう。このスクープは、アメリカのマスコミという反響室の内部で、大きく鳴り響くことはなかった。なぜなら、それが、しくまれていた主流の話題に溶け込むには、余りに鋭く、多くを物語っていたため。

表向き、歴史の第一草稿を提供するような振りをしながら、アメリカのマスコミはワシントンの崇高な戦争計画立案者たちの主張も論破できるような、極めて重要な情報は取り除いてきた。「ジャーナリストのうち余りに多くの人々が、中には非常に明確に、自分の使命は、戦争準備を支援することだと考えていると語っている」あるアメリカのマスコミ評論家がイラク侵略の準備段階時期に警告した。「もしも自分の使命をそのように定義してしまえば、結局は、重要で、正確ではあっても、戦争準備には役立たないかも知れないようなニュースを差し止めてしまうことになる。」

この話がキャサリン・ガンの漏洩によって世に流れ、イギリスの新聞の一面中に書き立てられ、ようやくアメリカのマスコミにも滴り落ちようかとする前に、ジェフ・コーヘン(私の友人かつ同僚)は、この話を語っている。彼は、プロデューサー兼、時折、生放送に出演する解説者として働いていた、フィル・ドナヒューが司会するMSNBCテレビの番組で、それを発言した。ドナヒューのゴールデン・アワーの番組が、NBC経営陣によって、侵略の三週間前に中止されたのは、偶然にも、NSAメモの暴露がイギリスで極めて大きなマスコミの話題となり、一方、アメリカ合州国では非常に入念に避けるべき話題となったのとほぼ同時期のことだった。

間もなく漏洩されたあるNBCメモが、戦争に突進するのに邪魔になるような見解や情報を遮るべく、放送局がドナヒューの番組を見捨てたのだという疑惑を裏付けた。放送局のメモには、ドナヒューの番組は「戦時において、NBCにとって厄介な番組」だと書いてあった。さらに、「彼は、反戦、反ブッシュで、政権の動機に懐疑的なゲストたちを登場させるのを楽しんでいるように思われる。」中止することで、番組が"競合する他局があらゆる機会をとらえて、戦争への旗振りをしている時に、リベラルで反戦的な話題の基地"になりかねない可能性の危険が回避された。

概して、アメリカのマスコミの編集者たちにとって、キャサリン・ガンの行動と暴露は、とりわけ、それが大問題である間、ごくわずか、あるいは全く、報道には値しなかったのだ。包括的なLexisNexisデータベースを私が調べたところでは、彼女の名がイギリスのマスコミで初めて報道されてからほぼ三カ月間の間、彼女の名に触れるアメリカのニュース記事はほとんど存在しない。

キャサリン・ガン告訴が、とうとうイギリス裁判制度遍歴の旅を終えた際に、著者たちは書いている。結審する裁判に関するアメリカ・ニュース報道の激増は、「なぜ、そもそもの始めに、NSAスパイ活動について知らされなかったのか、人々に疑問を抱かせた。」本書には、私たち自身の勇気と良心を活性化するよう鼓舞してくれるような良心と勇気の物語と、ゾッとするような好対照である、ジャーナリズムの怠慢についての記事もある。

本記事は、マルシアとトーマス・ミッチェルの新刊書"The Spy Who Tried to Stop a War: キャサリン・ガンと、イラク侵略を承認させるための秘密の策略"へのノーマン・ソロモンのまえがきを、書き換えたものである。

記事原文のurl:www.commondreams.org/view/2008/09/25

出版社による書籍情報

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もちろん、日本のマスコミでは、ほとんど報じられていない。

日本のマスコミ、アメリカの傀儡政権たる「日本政府」広報機関なので。

万が一、別の傀儡、民主党政権になろうとも、変わることはありえまい。

記事を読まれる前に、Blog暗いニュースリンクの記事「黙殺されたキャサリン・ガン事件」を参照いただきたい。

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