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2008年10月 4日 (土)

イラク: 街を破壊し人気を絶やすことを、彼らは平和と呼ぶ

エリック・マーゴリス

08年10月2日 "ICH"

がらくたを金に変えた、あのウォール街の金融錬金術者連中が、 ジョン・ マケインが、先週金曜日のバラク・オバマとのディベートの準備するのを手伝ったに違いない。

彼の"増派"戦略のおかげで、アメリカはイラクでの戦争に勝利しつつあるという、マケイン上院議員の執拗な主張は、ウォール街のいかがわしい金融業者たちが世界中に売りつけていたがらくた証券の、軍事-政治的な等価物にすぎない。

マケインは、イラクにまつわるこの最新の嘘を、金曜日の晩、熟練と気迫で、まんまと売り込んだ。バラク・オバマ上院議員は、ほとんどそれを見過ごしたままにしていた。オバマは、マケインが支持する、イラクやこの不必要な戦争をひき起こした全ての嘘に対して、彼を激しく攻撃するべきだったのだ。イラク戦争を巡って、電話帳が一杯になるくらい、沢山の犯罪行為がおこなわれている。アメリカ人の三人のうち二人は、これは大変な過ちだったと考えている。

だが、オバマの上品な、学者ぶったイラク戦争批判は、なまぬるい、効果の薄いもので、マケインが暖め直した冷戦弁舌で愛国主義の旗をもぎとるままにさせた。

誤って始められたイラク戦争が、アメリカにおける現在の金融界の臨死体験上で、主要な役割を演じていることを、なぜオバマはアメリカ人に語らなかったのだろう?

オバマは、グルジアをめぐるマケインの大言壮語も突き返すべきだった。「マケイン上院議員、あなたは、グルジアを巡る、ロシアとの戦争に行く覚悟がありますか? あれが、あなたの計画の行く先でしょう。」

二人の候補者はディベートで、それなりに頑張っており、いずれも大統領らしく見えた。しかし、マケインは"勝利"や"自由世界"という類の慎重に選んだスローガンを使い、アメリカの十八番、イランのアフマディネジャドやロシアのプーチンをこきおろして、愛国主義的な優位な立場を手に入れた。二人は、どちらがより完全にイスラエルを支持することができるかを巡って競い合った。

彼が考え出した軍事リーダーシップのおかげで、アメリカはイラクにおける勝利に向かっている、というマケインの主張で、古代ギリシャのエペイロス王、ピュロスの叙事詩的なセリフをすぐさま連想した。紀元前281年に、彼の軍勢が重大な打撃を被った、極めてむごたらしい激戦で、ローマ軍をヘラクレアで打ち破った後、ピュロス王は周知の通り叫んだのだ。「もう一度、このような勝利があれば、我々は破滅する!」

エペイロス(現代のアルバニアにあたる)の赤毛王は、イラクのことを語っていたも同然だ。マケインの語る勝利など大間違いで、ローマの歴史家タキトゥスの言葉こそ適切だ。「街を破壊し人気を絶やすことを、彼らは平和と呼ぶ。」

まさにそれが、アメリカがこれまでのところ、人口わずか2500万人の、小さな、荒廃した国家イラクに対しておこなったことそのものだ。五年間の戦争の後、4000人以上のアメリカ兵が死亡し、30,000人(数字によっては75,000人)が重傷を負い、その内の多くは不治の頭部損傷だ。

一体何人のイラク人が亡くなったのかは誰も知らないが、推計では100万人にものぼっており、しかもこれには、イラクに対するアメリカ主導の過酷な禁輸や、1991年のアメリカ空軍による全国的な浄水、下水システムの破壊の結果、飢えと病気で亡くなった500,000人は含まれていない。

マケインが主張するように、"増派" つまり、30,000人以上のアメリカ兵をイラク紛争に追加派兵したことが、過去12カ月にわたるイラクにおける武力衝突激減の主要因なのではない。増派も、補助的な役割は演じてはいるが。

武力衝突や、アメリカ占領軍への攻撃が急減した本当の理由は、別の三つの原因にある。第一は、民族浄化。アメリカ占領軍は、シーア派民兵による何百万人ものスンナ派イラク人民族浄化をひそかに煽動していた。アメリカは、イスラエルのヨルダン川西岸占領というお手本の別ページに習って、イラクの都市地域全体を、高い、コンクリートの壁で隔離し、四六時中、家宅捜査作戦を遂行している。

現在、四から五百万人のイラク人が、近隣諸国への避難民となったか、国内で住むところを追われており、これは世界でも最大の避難民人数の一つだ。大半はスンナ派イスラム教徒だ。アメリカ合州国は、この人災に対して、全面的に責任がある。

アメリカは、そういうことには反対すると表明したことを行っている。イラクを三つの脆弱な部分に隔離した。シーア派、スンナ派、そしてクルドだ。事実上、三つのイラク人ミニ国家ができているのだ。イラクの分割と、シーア派暗殺部隊によるアメリカが承認した民族浄化、アメリカが、ボスニアとコソボにおいて、非難したまさにその類の犯罪的行為が、スンナ派-シーア派の対立の緩衝器となった。しかし、それは、イラクを破壊された国家にしてしまい、スンナ派地域は無人地帯に、シーア派地域はイランに支配され、そして、クルドは、アメリカとイスラエルの庇護のもとに入った。

二つ目は、アメリカ占領軍も、とうとう賢くなり、敵の全員を殺そうとするより、敵を買収するほうが安くつくことを悟ったのだ。それで、今やアメリカは、覚醒会議と呼ばれる、80,000人のスンナ派武装集団に、抵抗勢力と戦うよう給与を支払っている。イラクのアル-カイダ狂信者による、アメリカ占領に反対するスンナ派同国人への攻撃は、droveより温和な抵抗集団を into アメリカの手先。

だが今や、エルサルバドルの暗殺部隊を模倣した、このスンナ派武装集団の支配を、アメリカは、シーア派の支配下に移管しようとしている。アメリカ側に着くことで、シーア派政府軍に対する保護を求めていた、アメリカが装備を与えているスンナ派民兵は、今や新たな大問題になりかねない。

三つ目は、かつてアメリカ軍と戦った寄せ集めのマフディ軍団、シーア派民兵の扇動的指導者、ムクタダ・アル-サドルは、身を隠し、武装集団には、武器を山積みにするよう命じた。彼の180度の転換は、シーア派内部政治の変化を反映しているが、アメリカに攻撃されるのを恐れたイランが圧力をかけ、ムクタダに攻撃を停止するよう命じたのだ。

しかし、少なくとも当面の間、武力衝突が減少していることは、いかなる意味でも勝利を意味するものではない。世論調査では、75%のイラク人が、アメリカ軍が去ることを望んでいる。イラクは外国占領下の国家のままである。アメリカがしつらえた政権は、バグダッドのグリーン・ゾーンしか支配していない。実権は、シーア派とスンナ派民兵と、もはやほとんど独立国家状態にある、クルドの二政党の手中にある。石油の分配方法についての合意は未だにできていない。

占領のため、アメリカには、減価償却を計算にいれずとも、少なくとも一カ月に100億ドルかかっており、装備の取り替え費用が670億ドル、負傷者の医療費や、退役軍人給付金用に数十億ドルだ。2008年末には、イラクの"容易な仕事"だったはずものが、アメリカの納税者に1兆ドルもの負担をかけており、その大部分は日本と中国からの借り入れで、これはアメリカ史上、二番目に費用のかかる戦争となった。

アメリカ陸軍の半数はイラクで泥沼にはまりこんでいる。この戦争とアフガニスタンが、アメリカ軍の幹部司令官たちの言葉によれば、アメリカ地上軍と空軍を、"限界点"に至らせている。歴史上、あらゆる占領軍が、非人間的になり、堕落し、士気阻喪した。

少なくとも30,000人のイラク囚人がアメリカによって拘留されており、定期的に拷問を受けたり、裁判なしに処刑されたりしている。彼等は政治囚と見なされるべきだ。サダム・フセインの監獄の方が、囚人の数は少なかった。アメリカのイラク占領の残忍さが、イスラム世界を、アメリカに対して激怒させ、アメリカの諜報機関によれば、新世代の反米闘士を多数生み出した。

ブッシュ政権のイラクに関する嘘の連発や、継続中の占領は、世界中で、19世紀イギリスのインド支配、あるいは、かつてのソ連にも等しい粗野な帝国主義だと見られている。オバマ上院議員が、ディベートの中で、アメリカのイメージは、国家安全保障上、重要な一つの要素だと言ったのは、少なくとも正しかった。現在、アメリカは、世界中で嫌われている。ジョージ・ブッシュとディック・チェイニーのおかげだ。

傀儡政権と、アメリカの空軍力に支援された傭兵軍隊を使って、イラク支配を継続しようというワシントンの現在の計画は、イギリス帝国がイラクを支配し、その石油を搾取したやり方を真似しようとする企みだ。しかし、ひとたび大半のアメリカ軍が撤退すれば、イラクは、再び暴力と混沌に打ちのめされてしまうか、あるいは、三つのミニ国家へとバラバラになる過程を完成して、強欲な近隣諸国の介入を招くだろう。イランは既に東部イラクにおける支配的勢力となっており、イラクの石油が喉から手が出るほど欲しいトルコは、脅すように見守っている。

オバマには、こう切り返して欲しかったと思う。「マケイン上院議員、もう一度、このような戦勝があれば、アメリカは破滅します。あなたや、無二の親友のネオコン、ジョー・リーバーマンが、イラン、ヒズボラ、パキスタン、タリバン、アル-カイダ、反抗的なアラブ人、ロシアや中国との対決をかりたてておられますが、このことを良くお考えになった方がよろしいですよ。」

追伸:それに、ベネズエラ、キューバ、ソマリア、そしてスーダンも決してお忘れなく。

エリック・マーゴリス[margolis@foreigncorrespondent.com]は、Sun National Media Canadaの海外寄稿編集者で、War at the Top of the Worldの著者。彼のウエブは下記のとおり。http://www.ericmargolis.com/

記事原文のurl:www.informationclearinghouse.info/article20918.htm

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