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2008年10月12日 (日)

NATOの拡張バブルは破裂するか?

サラ・フランダース

2008年9月24日

Workers World

自己の存在を主張し、衰えつつあるアメリカの世界支配を逆転しようとする、アメリカ帝国主義のあらゆる努力は、アメリカの弱体化した立場の確証だ。それぞれの問題や課題を解決するのに、ワシントンは、ますます、経済制裁の脅威、および/または軍事攻撃に、依存するようになっている。だが、ブッシュ政権が、それぞれの新たな侵略に、帝国主義同盟諸国を結集させることは、益々困難になっている。アメリカの傀儡諸国や属国中にすら、今やアメリカの唱導に距離をおこうとしている国々がある。

アメリカと競合する全ての主要資本主義諸国は、なによりもまず自国の経済的利益が優先だ。彼等の認識は、アメリカが競争力ある経済的地位を失い、アメリカ金融機関が危機に瀕しており、資本主義制度全体が弱まりつつあるということだ。手を広げ過ぎたアメリカ軍機構は、壊滅的な占領の泥沼にはまり、長期的な抵抗運動に直面している。

ディック・チェイニー副大統領が、9月早々、グルジア、ウクライナとアゼルバイジャンを歴訪していた間ほど、アメリカの立場があからさまになったことはない。グルジアによる8月7日の南オセチア侵略とロシアの反撃後、ロシアに経済制裁を課するようにという、アメリカの要求を、NATO加盟諸国が避けた際に、それは確認された。NATO加盟諸国の帝国主義者ドイツ、フランスおよびイタリアは、グルジアとウクライナを、アメリカが指揮するNATO同盟に加盟させろというアメリカの圧力を、丁重に保留にした。

ヨーロッパの帝国主義諸国は、自らの産業にロシアからの石油と天然ガスを供給する必要がある。それに、彼等は、アメリカの崩壊しつつある立場を支援したいというより、ロシアへの自らの企業投資を守りたいのだ。

軍国主義-唯一の選択肢

ロシアに対する軍事的脅威を徐々に増強し、ロシア国境にある、この戦略的地域を支配するというアメリカの決意を示すというワシントンの尽力の一環として、チェイニーはグルジア、ウクライナとアゼルバイジャンを歴訪した。彼の訪問時、巡行ミサイルを含む戦略兵器を装備した18隻のNATO戦艦が、グルジアとロシア沖の黒海に出現した。アメリカ海軍第六艦隊の旗艦マウント・ホイットニー(揚陸指揮艦)が、9月6日グルジア、黒海の、ロシア軍事基地から6マイル離れた港、ポチに着いた。

チェイニーが訪問している頃合いに、ジョージ・ブッシュ大統領は、対グルジア新規援助として10億ドルを発表し、これは多年度の約束だと語っている。アメリカが支配する国際通貨基金も、グルジアへの緊急援助として、更に7億5千万ドル用意している。更に何十億ドルもの軍事援助が計画されている。

黒海におけるNATOの攻撃的な姿勢と、同時に見られるのが、アメリカの同盟国パキスタンにおけるアメリカ/NATOの武力侵略と爆撃の拡大だ。このパキスタンの主権に対する侮辱は、既にenflamed反米および反NATO感情。9月16日の声明で、パキスタン首相ユスフ・ラザ・ギラニは、アメリカ侵略の即時停止を要求し、「わが国の主権と領土的一体性は、いかなる犠牲を払っても守るつもりだ。」と加えた。

主としてアフガニスタンの子供たちや民間人を90人以上を殺害した、アフガニスタンの村へのNATOの爆撃を、アフガニスタンの傀儡政権すら非難せざるをえなくなっている。

五年以上すぎても、イラクにおけるアメリカ占領軍は、未だに、地位を確立することも、圧倒的に占領を拒否してきた国民に、飲料水や電気のような最も基本的なサービスさえ提供することも出来ていない。

こうしたあらゆる事のさなか、イランに対する軍事攻撃の可能性は減じていないと、アメリカが、脅し、リークした。アメリカ海軍の半分はイランをすぐ攻撃できる距離にある。

同時にアメリカは、両国民の圧倒的な反対にもかかわらず、とりとめないエスカレーションを推進してきた。ポーランドの迎撃ミサイル基地、チェコ共和国内のレーダー基地設置計画だ。

アメリカ軍の脅威のエスカレーションは、西欧帝国主義者同盟の事業利益だけを憂慮させたわけではない。ロシアに出現しつつある資本家階級との鋭い対立をも、もたらした。

この集団は、これまで、あたかも自分たちが、巨大な、かつては社会的に所有されていたソ連産業を、長期的に搾取する、アメリカ帝国主義のパートナーであり続けるかのように振る舞ってきた。彼等はソ連邦の解体に、全面的に迎合していた。そして彼等は、残念なことに、帝国主義の海賊たちは約束を守らないことに気がついたのだ。

1990年、ベーカー国務長官が、NATOはその支配権を東方には拡張しないという確約を与えた後で、ソ連の指導者ミハイル・ゴルバチョフが、併合した資本主義ドイツは、NATOに加盟しても良いと、驚くべき降伏をしたのだと、多くの歴史研究が主張している。ドイツのハンス・ディートリッヒ・ゲンシャー外務大臣、フランスのフランソワ・ミッテランも、イギリスのジョン・メージャーも同様な約束をしていた。

アメリカ帝国主義は、究極的に資本主義国としてライバルになるような、資本主義パートナーは許容しない。政策文書にはっきりと述べられている、1990年代中期のワシントンの政策は、社会主義的な計画と所有が再登場することを防ぎ、新たなライバルとなるロシア資本主義勢力や、ライバルとなるヨーロッパでの軍事ブロックが確立してしまうのをしっかり防ぐために、NATOをアメリカが指揮する軍事同盟へと転換させることだった。アメリカ軍と企業による地域全体の支配が目標だった。

NATOの爆撃、1994年以来のユーゴスラビアの解体と占領が、アメリカが支配する軍事同盟としてのNATOの急速な拡張の先例となった。

ロシアの新たな資本主義階級は、東欧の全諸国や、ソ連邦旧共和諸国の多くが、反ロシア軍事基地として利用される手先へと変えられさまを見つめてきた。今、ロシア首相プーチンが、ソ連時代以来、すっかり弱体化した、広大な、包囲された国をめぐる主権を、遅まきながら、いささか主張しようとし始めたのだ。

押し戻されたアメリカの政策

"人道支援"物資をグルジアに送るのだとされる黒海でのアメリカ戦艦の役割を、プーチンが非難しても、何ら驚くべきものではない。しかし、NATOの1999年のユーゴスラビアに対する爆撃キャンペーンを「人道的戦争」と呼んだフランスの外務大臣ベルナール・クシュネルさえもが、現在のアメリカの戦術に疑念を呈し、「人道的支援を送るのに戦艦を使うことは、ロシアとの緊張を燃え上がらせかねない。」と、辛辣に語った。

クシュネルの発言は、この重要な同盟内部の、この同盟を破綻させかねない、あららゆる緊張、亀裂や弱さを表している。クシュネルは、危機は「政治的手法によってのみによって解決するのであり、戦艦によってではない。」とも発言した。チェイニーのグルジア、ウクライナとアゼルバイジャン歴訪の政治的価値にも彼は疑念を呈した。(ブルームバーグ・ニューズ、9月6日)

カスピ海の石油資源豊富な国家で、かつてはソ連の共和国の一つだったアゼルバイジャンへのチェイニーの訪問は、大失敗だった。アメリカは、40億ドルかかる、延長1,000マイル、アゼルバイジャンの首都バクーから、グルジアの首都トビリシを経由し、トルコの港ジェイハンに至る一日百万バレルの輸送能力をもつ石油パイプライン建設に資金をだしていた。

バクー-トビリシ-ジェイハン、あるいはBTCラインと呼ばれる、この巨大かつ高価な建設プロジェクトは、クリントン政権時代に始まったアメリカの取り組みである。西欧市場向けの石油を、ロシア経由をせずに搬出する経路を作ることがその大目的だった。同じ理由から、何十億ドルもの資金がバクーから、グルジアを経由してトルコへとつながるナブッコ・ガス・パイプラインにも使われた。

「西側は、エネルギー冷戦で、どのように敗北しているか」http://www.timesonline.co.uk/tol/comment/columnists/guest_contributors/article4698316.eceと題する9月8日のタイムズ記事によると、アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領は、チェイニーを公然と鼻であしらい、チェイニーと会った直後に、ロシアのメドベージェフ大統領に電話をかけ、ガスをナブッコ・ガス・パイプラインに供給する可能性を除外した。「不機嫌なチェイニーは、とうやら公式晩餐会を欠席した模様だ。」

そして、9月16日には、モスクワに対して団結させておこうというワシントンの尽力にもかかわらず、ウクライナ政権の二つの親米党派が分裂し、政権が崩壊した。これはこの地域全体のほぼ二十年間にわたるアメリカ企業や政治的支配の大きな方向転換だ。

アメリカ傀儡の崩壊

黒海におけるNATO艦船の危険なエスカレーション、NATO加盟国の更なる拡大、ロシアに対する経済制裁に、他の西欧のNATO帝国主義諸国を加わらせようというたくらみ、チェイニーの示威的な歴訪と支援金の劇的な増大は、自らの立場を補強するための全アメリカ帝国主義者の死に物狂いの尽力だ。だがこれらの対策も、グルジアという属国におけるアメリカの大きな挫折を覆すことはできない。

グルジア軍は、アメリカとイスラエルによる軍事訓練を五年間受け、何百万ドルものペンタゴンのハイテク器機をもらい、NATO加盟に対する、アメリカによる政治的支援と激励を得てきた。何千ものアメリカ企業が財政支援する非政府組織が大半の国家機構を運営して、グルジアをしっかりアメリカの軌道上に抑え込んできた。

そしてグルジア大統領サアカシュヴィリは、ちっぽけな南オセチア自治区への破壊的攻撃を8月7日に開始し、首都ツヒンバリと、周辺地域を爆撃し、多くの南オセチア人を殺害した。

その日のうちのロシアの反撃に、グルジア軍は全くの混乱状態で崩壊した。将校たちは持ち場を放棄し、救急車をハイジャックしてトビリシの首都へと逃げ帰った。各部隊間の通信もできなかった。兵卒たちは何トンもの真新しいアメリカの兵器を路上に放棄し、やはり逃走した。

9月3日のニューヨーク・タイムズ記事はこう説明している。「グルジア軍の欠陥は深刻で、装備のアップグレードだけでは、到底改めがたい。」記事は、それでも、更に「新たな旅団の訓練と装備、既存軍隊の再装備と最新防空網の設置には、80億ドルから90億ドルもかかりそう」で、それも議論中であると書いている。

アメリカにとって唯一の解決策は更なる戦争だ

アメリカの企業支配者階級は、自分たちの立場を救い出す方策には、戦争以外の選択肢は無いと考えている。これは、共和党と民主党両方が、NATOの更なる拡大、イラクとアフガニスタンの兵員、そして世界中の米軍基地に対する、継続的な支持と並んで、アメリカの対グルジア支援を支持していることに反映されている。

アメリカが、政治的、経済的、軍事的挫折を味わっているとはいえ、戦争の恐れの高まりを常にもたらしてきた矛盾は、軍国主義というものは、何千社もの契約業者、下請け契約業者と並んで、ボーイング、ロッキード・マーチン、マクドナルド・ダグラスやGEといった主要なアメリカ企業、つまり軍需企業への果てしない助成であることだ。カフカスにおける戦争は「軍需関連株にとって、鐘を鳴らして祝うべきものだ。」(ウォール・ストリート・ジャーナル、8月16日)

新たな戦争や、新たな武器の出荷のための口実は、こうした死の商人たちにとって、母乳のようなものだ。

アメリカ軍予算は、既にアメリカ以外の国々の予算をあわせたものより大きく、しかも増大しつつある。今日のアメリカ帝国主義には、世界中に起きつつある危機に対して、軍国主義、戦争と戦争の恐れ以外に、解決策はない。これは資本主義制度全体を、一層危うく、一層、絶望的にするものだ。

労働者階級運動と進歩的、反戦活動家たちが、単にアメリカ帝国主義の個別の戦争にだけ反対するのではないことが肝要だ。今や、全てのアメリカの戦争に反対し、NATOの廃絶を要求することが課題なのだ。

Workers World, 55 W. 17 St., NY, NY 10011

Email: ww@workers.org

記事原文のurl:www.workers.org/2008/world/nato_1002/

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