counterpuch
2008年10月3 - 5日、週末版
タリク・アリのインタビュー
ワジャハト・アリ
かつてはインドの単なる「取るにたらない」隣国として、冷淡に見くびられていた国が、今や果てしなく続く「対テロ戦争」の鍵を握る次期戦場として、世界的な注目と精査の的になっている。マケイン上院議員もオバマ上院議員も、先週の大統領選候補者ディベートで、タリバンの本拠地である地域を平定する自分の政策案詳細を語りながら、パキスタンについて触れた。新たに選出されたパキスタン大統領アシフ・アリ・ザルダリとの忘れがたく友好的会談のために、サラ・ペイリンでさえもが、米パキスタン関係についての超現実的特訓コースを受けた。とはいえ、人望の厚い、多作な解説者、著者、評論家であるタリク・アリは、新刊“The Duel: Pakistan on the Flight Path of American Power”で、利己的で、不公平な両国間関係には、現代中央アジアの微妙な地政学的安定性に直接影響する、広範囲な歴史的な根源があることに注目している。本独占インタビューでは、ベテランのジャーナリストで、パキスタン人インサンダーでもあるタリク・アリが、パキスタンの現在の不安定さの、主な原因として、ブッシュ政権、ブット、ムシャラフ、パキスタン軍、そして利己的で圧政的なエリート、を含む全ての顔ぶれに焦点をあてている。
ワ・アリ: PPP [パキスタン人民党]広報担当者、ファラフナス・イスパハニが、最近ウォール・ストリート・ジャーナルに書いた記事の引用から始めましょう。
「ザルダリはパキスタンにとって、一番の期待だ。ザルダリ氏は有罪判決もなしに、政治的な動機による告訴で、11年間もの牢獄生活を味わった。民主的選挙で、彼の党を勝利へと導き、更に存続可能な民主的連立を作り出すのを巧みに助けた。彼は大統領として、安定したデモクラシーの過渡期へと、断固としてわが国を前進させるだろう。」
この引用文にたいする御意見はいかがでしょう?
タリク・アリ: その引用文についての私の答えは、そんなものは政治の白昼夢だということです。ザルダリが今の位置にいられる唯一の理由は彼が[ベナジール・ブットの]結婚相手だったからです。人民党内部においてすら- ベナジール・ブットが生きていれば、政府内に彼の居場所など全くないことは良く知られています。スイスの裁判所が、マネー・ロンダリングと買収で手配中の人物なのです。彼は長年にわたって、妻が二度首相になったのを利用して、パキスタンで一番裕福な人々の一人になった人物です。彼をパキスタンにとって、一番の期待だなどと描くのは、パキスタンの状況の信じられないほど悲しい反映です。
ワ・アリ: 同時に、マケインとオバマ、両者ともアメリカはザルダリと協力するといっていますね。基本的に、二人は彼を国際社会に歓迎しました。なぜアメリカはこれほどうさんくさい過去を持った人物に好意的なのでしょう?
タリク・アリ: ええ、連中が彼を権力の座につかせたのですから。連中は彼の妻と取引をしたのです。連中は、その取引の中身を彼に実行させたがっているのです。パキスタンが、いわゆる「対テロ戦争」で決定的に重要な同盟国と見なされていることを考えれば、彼等がザルダリと協力しようとしなければ、びっくりさせられるでしょう。この二人には - オバマとマケインには - ザルダリの波瀾万丈の経歴と、パキスタンでは彼が人気があるわけではないという事実に気づいてもらいたいと思います。
彼は、間接的に上院と下院によって選出されたことに留意すべきです。パキスタンに、大統領を選ぶ直接選挙があったなら、そしてそれが自由な選挙であったなら、ザルダリが勝っていた可能性はありません。二つ目の点は、基本的に、アメリカに関する限り、パキスタンには、本格的な組織はたった一つしか存在せず、それはパキスタン軍なのです。アメリカは、この組織と長期にわたって、仕事をしてきており、ペンタゴンは、軍こそが自分たちがこの国の中で、必要とし、また信頼しなければならない唯一の機関であることを十分に理解しています。ですから、公式的には、ザルダリが正式な大統領ということになりますが、この国で本当に権力を握っているのは軍なのです。
ワ・アリ: 私たちは、ある種の緊張を目にしているのではありませんか? 最近20人を殺害し、プレデーター無人飛行機が更に4回のミサイル攻撃をした、ワジリスタンでのアメリカの攻撃に対して、ザルダリはほとんど沈黙を保ったままです。パキスタンは、アメリカは承認を得ていなかったと言っています。キヤニ将軍は、アメリカに対して厳しい言葉を発言し、アメリカは、過激派と戦うために必要なことはすると言っています。パキスタン軍、アメリカ合州国とザルダリの間の、この緊張はどういうことになるのでしょう?
タリク・アリ: ええ、アメリカ軍とパキスタン軍との間の緊張だと思います。ザルダリは、おそらく悪役にされるカモなのです。つまり、もしも緊張が高まって、アメリカ兵士がパキスタンに入るような、何か馬鹿げた、分別のないことがおきれば、軍は抵抗せざるを得なくなります。ですから、その時点では軍が仕切るわけですから、ザルダリが何を望んでいるか、いないのか、あるいはどのような取引をしたのかというのは、全く無関係になります。
イスラマバード最大の5つ星ホテル、マリオットが、空高く吹き飛ばされニュースをお聞きおよびと思います。あれは信じられないほど見事に仕組まれています。私はあのホテルに泊まったことがあります。あそこの治安の厳しさは信じられないほどです。ですから一体どうやって事件が起きたのかは、今後様子をみなければなりません。けれども、確かに、これはパキスタンが御しがたい状況になりつつあるという印象を作り出しました。
ワ・アリ: NSCのトップ、スティーヴン・ハドリーが興味深い発言をしています。「パキスタンは、過激派の脅威と戦う用意がない。」彼はこれを公式に発言しています。この反響はどのようなものでしょう? そもそも、これを信用されますか、そしてパキスタンは外部からの助力を必要としているのでしょうか?
タリク・アリ: いいえ、もしもパキスタン軍が、そうしたければ、彼等は確実に、組織を粉砕できるはずだと思います。しかし、ここでまたもや、これは軍内部で物議を醸すものとなるのです。A) そうした連中もパキスタン国民です。B) 軍が、連中に対して行動を起こした時には、いつも大勢の無辜の人々が亡くなっています。C) 軍がこれをやろうとする時には、必ず軍内部、特に自国民を殺害したくはないと言う一般兵卒と下士官の間で緊張を生み出します。
そこで、パキスタン軍がこれをやるには問題があるのです。けれども、アメリカがやってきて、これをやろうとしても、彼等も同じ目にあいます。彼等は無辜の人々を殺害しました。女性たち、子供たちが亡くなっています。過激派とは全く無関係な人々が亡くなりました。たぶん、私たちは、何人かの聖戦戦士たちも死んだという本当の情報を持っていないのだろうと思います。しかし、パキスタン北西辺境地域を大規模な戦場に転換しても、誰の役にもたちません。本質的に、私たちが目にしているのは、非常におかしなことになってしまっている戦争、アフガニスタン戦争からの、ふきこぼれなのです。アメリカの民主党と共和党という、お互い共感して動く政治家達によって支持されている戦争です。権力を巡って争っている政治家たちが、真面目に注目していない戦争です。
ワ・アリ: イラクではなくて、中央アジアが、現在最も封じ込める必要がある主要なホット・ゾーンだという人々がいます。アフガニスタンと、今やパキスタンの両国で復活したタリバンを不安定化させるには、何をすれば良いのでしょうか? 両国での、何らかの形の攻勢が、武力抗争という形でのかなりの反応をひき起こすでしょうか?
タリク・アリ: しかし、イラクが穏やかだという説は私は受け入れません。先週アメリカの襲撃があったばかりで、それでイラクで無辜の人々が殺されました。ペトレイアスさえも、これからずっと増派が成功しつづけるとは言っておらず、今後もかなりの動乱があると考えています。大多数のイラク人は外国軍隊の基地を全く望んではいません。イラクが成功裏に制圧されているというわけではないのです。そう考えるのは幻想でしょう。
ただし、大統領候補者たちが、アフガニスタンのことに集中しているのは事実です。けれども、これは典型的な状況で、NATOとアメリカが率いる軍事占領は、爆撃攻撃で余りに多くの民間人を殺害しています。[アフガニスタン大統領]カルザイですら、余りに多くの民間人が殺害されていると言っています。二つ目は、ハミド・カルザイと、彼の取り巻き連中が、アフガニスタンを支配していることです。カルザイの弟がアフガニスタン最大の麻薬密輸業者だと噂される状況です。カルザイ周辺の人々が、国を食い物にし、入ってくる資金を食い物にし、外国の機関を食い物にし、大半の国民を犠牲にして豊かになるという状況は、そうした全ての理由から、占領を非常に不人気なものにしています。
この結果が、パシュトゥーン民族主義の大きな高まりです。そしてこのパシュトゥーン民族主義の高まりが、現時点では、古いタリバンの員数が膨れ上がるという形になっており、それがネオタリバンと呼ばれている理由なのですが、実に多くのイギリス人現地オブザーバーがこれを目にしています。この組織の構成と性格が、NATO占領の結果、変化しているのを彼らは目撃しています。それが今起きていることであり、ネオタリバンへの支持が日々増大しつつあるのです。これに対決するために、アメリカと西側が、それはパキスタンが悪いのだといっても、意味はありません。
パキスタンという国が、あらゆる非難から免れられると申し上げているわけではありません。おそらくそうではないでしょう。けれども、中心的課題は、アフガニスタン国内における戦争が非常にまずい状態になっていることであり、この戦争をパキスタンにまで広げても事態が良くなるわけではありません。一層悪化するでしょう。パキスタンはアフガニスタンよりもはるかに大きな国で、総勢2億人の人口で、核兵器を持っていますから、この国を不安定化させようとするのは愚劣なことです。
ワ・アリ: 多くの人なら尋ねようとしないような質問が一つあります。中国とロシアの将来的な対応についてお話ください。両国は国境を接する隣国で、既得権益を持っています。戦略的に、この地域における次の動きとして、何がおきるのでしょう?
タリク・アリ: NATO事務局長を含め、NATO幹部は、極めてオープンに発言します。戦略的理由と、軍事的理由で、アフガニスタンにいるのだと言っています。この国は戦略的に開かれた国で、中国と中央アジア、つまりロシアとイランと接しています。アメリカにとって、様々な理由から重要な三カ国なので、それで決してこの国から撤退しないわけです。ちなみに、公的に言われ書かれている占領の狙いだという、良い統治やら、アルカイダを壊滅したり、アルカイダを一掃したりなどというのは事実ではありません。
事実、西側諸国や西側の工作員達が、パキスタンやアフガニスタンのタリバンに、定期的に話をもちかけ、うまく協定がまとまらないものか、様子をみているのは皆が知っています。タリバンは、外国軍隊が撤退するまで、協力を拒否しています。こうしたこと全ての背後にあるのは、アフガニスタン国内に、永久に外国軍事基地を受け入れるような政府を作り出そうという目的です - そんなことは、誰も望んでなどいないのですが。つまり、カルザイは、これに合意しているでしょうが、彼はアフガニンタンで最も人気がある人物というわけではなく、西側の軍隊がアフガニスタンにいなくなれば、あっと言う間に倒れますが、それが問題なのです。そして、アフガニスタンが、永久的に、あるいは半永久的に占領されるということについて、ロシアと中国は非常に怒っており、イランもそうなのです。彼等はお互いの間で、これについて話し合ってきており、中国はこのことを、はっきりパキスタン軍にも言っています。
ワ・アリ: ご本の中で、パキスタンという国民国家が始まって以来、ムハンマド・アリー・ジンナーと顧問たちは、アメリカが命じる政策に従いつづけるように見えると言っておられるようです。両国関係の上で、アメリカは命令を下す側であり、パキスタンは、それに従う側という形です。これは始めからそういうことなのでしょうか、そして、これがわが国の現状につながっているのでしょうか? このような形の精神構造に?
タリク・アリ: 本の中で私が主張したのは、最初の二、三年、パキスタン人エリートたちは、アメリカ合州国を追いかけ回していたことです。なぜなら、最初の10年間、パキスタンを運営した人々の大半は、政治的にも、軍事的にも、イギリスと協力した人々でした。イギリスがパキスタンから退去して以来、彼等は穴埋めをしてくれる誰かを切望していたのです。47年、48年、49年に、アメリカ合州国に対してされながら、インドの方がより重要な大国だと考えていたアメリカによって拒絶された嘆願の数々を、私は詳細に引用しています。
やがて、冷戦の高まりとともに、そしてインドが非同盟運動の中で中心的な国となると、パキスタンは、ワシントンにほぼ乗っ取られ、イランやトルコと一緒に、あらゆる安全保障の場に組み込まれたのです。
その時以来、パキスタン軍は、パキスタンの政治上、非常に重要なメンバーとなりました。また著書の中で、50年代以後、パキスタンがアメリカ権力の飛行航路上にあるという事実が、パキスタンにおける政治の自発的発展をむしばみ、次々と危機がおきるのだというようなことを私は主張しています。
そして、冷戦終結後、アメリカはアフガニスタンとパキスタンを放棄し、彼らのするがままにまかせました。この時期、ベナジール・ブットは、タリバンのカーブル支配を押し進め、パキスタン軍は、彼らが「戦略的深度」と呼ぶものを手にいれました。後方支援無しに、タリバンのような寄せ集めの軍隊がカーブルを制圧できたはずがありません。多くのパキスタン人幹部将校や兵卒が加わった良く訓練された軍隊なのです。
9/11以後、今やアメリカが再びこの地域にもどると、ある程度自分自身の判断をすることに慣れていたパキスタン軍も、彼等には卑屈に振る舞う必要があるのです。そして、これが、パキスタン国内で緊張を生み出しているものです。パキスタンが、ロシアに対する戦争において、強力で頼りになる同盟者だった時期は、良く知られているように、これら全ての聖戦集団が、国家によって生み出され、アフガニスタンで戦うよう送り込まれた時代です。
ワ・アリ: 誰であれ国を運営している人物について語る際には、「少なくとも、彼はほかの連中よりは、まだましな悪漢[悪党/ギャング]だ。」というパキスタン的精神構造を、あなたも私も知っています。それが人々の理解であるように思えます。パキスタン人は、どうすれば立ち上がって、機能するデモクラシーの外観を取り戻せるのか、ご説明ください。それともそれは不可能なのでしょうか? これは近未来に期待すべきことではないのでしょうか?
タリク・アリ: 私はそう思いません。ご指摘になっている、パキスタンについて、様々な理由から西側マスコミでほとんど報道されないことの一つに、アメリカ憲法でそうなっているように、裁判官を政府から切り離そうという要求の、弁護士達が率いた大規模な憲法運動があったと思います。この動きは実に大いに高まりました。そして最高裁判所の最高裁長官に対するムシャラフの二度の別個の解任が、運動に油を注ぎました。
こうした運動は今や鎮圧され、軍ではなく、ザルダリが、最高裁判所を分裂させ、最高裁長官が戻るのを拒否し、最高裁判所に他の最高裁判所長官を選び、彼もまた、首にされ、同僚に反対し、復帰しました。そこでこの運動は非常に強烈な打撃を受けました。
しかしこれで明らかになったのは、国民側からの違う秩序に対する要求です。それがパキスタンの国民が望んでいるものだということは疑う余地がないと私は思っています。ただ不幸なことに、国民を代表する政党は芯まで腐敗しています。彼らの大半は- 主要政党は全て - 腐敗しています。
今の状況はこうです。またもや西側のマスコミでは報道されるのを見たことがないのですが、ブット家の政党が、公式な名称はPPPですが、こうしたムシャラフ政権のかなめであったグジャラート出身の政治家たちと背後で交渉をして、パンジャブにあるシャリフ兄弟政府のムスリム同盟を一掃することができるよう、連立して欲しい、と彼らに懇願しているのです。それで、またこの国の常として、商売の話になるわけですが、当面、国家が危機的な状況にある今、これは極めて気が滅入ることです。
ワ・アリ: パキスタンには同じ顔ぶれしかいなというのは残念なことです。彼の経歴はそれを反映したものとは言えないにせよ、デモクラシーの先鋒にたっているかに見える、パンジャブのナワズ・シャリフに触れておられます。そして、ザルダリとPPPが、もう一つの封建的な一家があるわけです。そしてパキスタン軍です。この三者が、アメリカが今相手にすべき顔ぶれなのでしょうか?
タリク・アリ: 彼らが主要な三者です。パキスタンには、このレベルでは他に誰もいません。ついでながら、ナワズ・シャリフは、全く封建主義的な人物ではありません。彼らは都市の企業利益の代表です。常にそうだったのです。彼らは土地所有の家族ではありません。PPPの中には、依然として非常に多数の地主がいます。特にシンドーでは。しかし、全部がそうだというわけではありません。そして軍 - この三者がパキスタンにおける主役です。願っても無駄だとはわかっていますが… もちろん、他にも顔ぶれがいたらと思います。今のところ、彼らが主な顔ぶれなので、誰であれパキスタンと話そうという連中は、彼らと話すしかないのです。これを避けることはできません。
ワ・アリ: 西欧の多くの人々や、また多くの国外居住パキスタン人がおこなう発言に、「ほら、ムシャラフにやらせておけばよかったのだ。ムシャラフがいればこういうことは起きなかったろう。彼が最善だったとは言えないにせよ、少なくとも彼は過激派と戦った。」この発言は真実でしょうか? あなたのお考えではムシャラフの遺産とは何でしょう?
タリク・アリ: ええ、ムシャラフの遺産というのは非常に複雑なものだと思います。彼が過激派に対処できるなどというのは本当ではありません。本質的に、彼は連中と合意したのです。「我々を攻撃しなければ、我々もそちらを攻撃しない。」ムシャラフを暗殺しようとする企みが三度ありました。過激派連中が招かれ、言われたのです。「我々に近づくな、そうすれば我々もお前たちには近づかないし、我々が何かをするためにお前たちを必要とする時が来るかも知れない。」ですから、ムシャラフがこの件については非常に強力だという考えは、もちろん全く嘘です。第二に、ムシャラフが、最高裁判所から裁判官を排除するためだけの目的で、国の非常事態を宣言した時に、彼の足場は完全にくずれました。彼に留任して欲しいと願っている人は誰もいませんでした。軍における彼自身の権力基盤がもはや存在しないのです。軍を離れ、軍服を脱ぐよう強いられたのですから。それで彼は立ち往生させられたのです。彼を権力の座に留めようとしていたのはアメリカ合州国だけです。ジョン・ネグロポンテは、ブッシュがホワイト・ハウスにいる間は、ムシャラフも権力の座にあって欲しいと言っています。
けれども、当時舞台裏では、アメリカ支配層の中で、チェイニーのオフィスと(ザルメイ)ハリルザドの間で、派閥間の激烈な戦いが起きていたのです。ハリルザドは、ムシャラフを脇に追いやって、直接ザルダリと交渉しており、国務省には知らせずにムシャラフを排除するキャンペーンを組織するのを手助けして、本当の怒りをひき起こしました。リチャード・バウチャーのハリルザドについての電子メールを読めば、実行されたことに対して、彼が激怒していたことが非常にはっきりしています。
ハリルザドが、ムシャラフを追い出した理由は、ムシャラフと、ハリルザドのカーブルにいる子分ハミド・カルザイとが、お互い嫌いあっているからだと思います。ムシャラフは、そのことを全く隠そうとしていません。それにハリルザドは、おそらくザルダリを見て、もう一人のカルザイ的人物として使えそうだと思ったのでしょう。いくつもの海外の裁判所でのザルダリに対する告訴や、彼の海外財産を考えれば、彼を支配することが可能なのですから、アメリカ合州国にとって、彼は願ってもない人物なわけです。
ワ・アリ: ご本の中に興味深い文章があります。それは「パキスタンは、インドに対して、永久的な危険だというコンプレックスを抱いている。」というものです。これを説明いただけますか?また、今にも爆発しそうな、現状に対して、それはどのような影響をもつのでしょうか?
タリク・アリ: 事実、パキスタン人エリートは、確かに[劣等感]を持っているということです。とても面白いことですが、ニュー・アメリカン・ファウンデーションによって行われたパキスタンでの最近の大規模世論調査では、大多数の国民はアメリカ合州国を世界平和にとって最大の脅威と見なしており、国民のわずか11パーセントしかインドを敵と見なしていないことがわかりました。これはつまり、インドに関する限り、大きな変化で、大変に前向きなものだと思います。私の主張は、パキスタンはワシントン時間から、南アジア時間に移行すべきだということです。亜大陸の将来として、政権を作り、問題のいくつかの解決を進めるには、全ての南アジアの国家間でのある程度の共通性と協力とが必要です。それこそが、なされるべきことです。
しかし、インドに対するこの永久的な憎しみは危険です。核保有国であるインドやパキスタンにとって危険なことです。二国間の戦争は、容易に何百万人もの死を招く核戦争を生み出しかねません。これを今、両者が認識したのだと思います。
ワ・アリ: 最後の質問です。パキスタンにおける「原理主義」の高まりについてお話したいとおもいます。パキスタンは信仰深い国です。人々は宗教や精神的な信仰を信奉しています。パキスタンにおける宗教の役割についてはどうお考えで、どうあるべきだとお思いでしょう?
タリク・アリ: パキスタンがイスラム教国家だということについては、議論の余地はないと思います。国民の大半はイスラム教徒です。けれども事実は、西側におけるパキスタンの一般的なイメージ、聖戦テロリストが核施設を乗っ取るおそれがあるというのは、全くの誤りです。パキスタン人の大半は、聖戦テロを支持していないのです。選挙のたびごとに、それは明らかにされています。
プンジャブの田舎、シンドーに暮らす人々の宗教は、依然として、本質的にかなりの程度、スーフィ過激主義の反映で、それぞれ個人的に創造主を見いだし、既成宗教に敵意を抱いているというのが、地方では依然として強力です。インドや、言うまでもなく、アメリカ合州国の、極めて信仰深くなって、信心深さに惹かれて、タブリーギ・ ジャマートの組織に加わる人々と同様、パキスタンの中流と中流の上の階級です。
しかしながら、普通の人々は、全く、そのような兆しは表していません。ごく少数の人々だけが聖戦テロに惹かれているわけですが、国の大きさを考えれば、これはもう極微小です。ですからパキスタンが直面している本当の問題は、宗教の大幅な伸長ではなく、国民に対して何もしようとしない、腐敗して酷薄なパキスタン人エリートの大失敗、完敗なのです。
教育制度は惨めな状態です。健康保険制度はほとんど機能していません。保護シェルターの問題があります。今や著しく高い小麦価格の状態で、国民を食べさせるという大問題があります。パキスタンでは、赤ん坊の60%が栄養失調で生まれるひどい栄養状態だという国連統計があります。これこそこの国が直面している本当の問題です。
これに対処できる政府が実現しない限り、パキスタンの危機的状態は続きます。今、持てるものと持たざるものとの間の、金持ちと貧乏人の間の大きな溝に対する本当の怒りが存在しています。それはごく些細な口実で、暴力沙汰へどっと流れだしかねません。国民は、これにたいして今本当に怒っています。
ワジャハト・アリは、パキスタン系のイスラム教アメリカ人。彼は脚本家、エッセイスト、ユーモア作家で、and Attorney at Law, 彼の作品 “The Domestic Crusaders” は、9-11以後のアメリカに暮らす、イスラム教アメリカ人についての、始めての演劇。彼のブログは http://goatmilk.wordpress.com/. 彼の連絡先は wajahatmali@gmail.com
記事原文のurl:www.counterpunch.org/waj10032008.html
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インタビューのもとになっている書籍、パキスタンでは禁書のようだ。
「対テロ戦争」というテロ行為の火種の仕込みを担当しているのがパキスタン。戦費をまきあげられているのが日本。両国は、アメリカのテロ行為の両輪だ。パキスタンの話、とうてい人ごとと思われない。民主党の協力を得て、やがて軍もアフガニスタンで血を流す。戦争資金をむしられた上に、違法な侵略への傭兵計画を押し進める二大政党や宗教政党、国民には空虚な「愛国心」を強いながら、「売国政治」に邁進している。計画倒産ともいえるアメリカ・バブル崩壊でも、日本はまたもや、資金を搾り取られる。
インタビューの言葉、国名を入れ換えれば「そのまんま日本」。
50年代以後、日本がアメリカ権力の飛行航路上にあるという事実が、日本における政治の自発的発展をむしばみ、次々と危機がおきている。
ただ不幸なことに、国民を代表する政党は芯まで腐敗しています。彼らの大半は- 主要政党は全て - 腐敗しています。
「少なくとも、民主党は自民党よりは、まだましな悪党だ。」という日本的精神構造を、あなたも私も知っています。それが人々の理解であるように思え
ます。日本人は、どうすれば立ち上がって、機能するデモクラシーの外観を取り戻せるのか、ご説明ください。それともそれは不可能なのでしょうか?
これは近未来に期待すべきことではないのでしょうか?
これに対処できる政府が実現しない限り、日本の危機的状態は続きます。
しかし、末尾は大きく違う。
それでも、属国日本の国民は、これにたいして怒ることはありません。
(ガバン・マコーマック「属国」のご一読を、強くお勧めする。冷戦からガイドライン以降(92ページから)の実態。東アジアの英国になる日本(121ページから)の悲惨な未来、目に見えるようだ。これも、事実上、禁書状態?大手紙には一切書評が載らない。ただし中日新聞は、書評を掲載した。敬服する。作家目取間俊氏の「海鳴りの島から」にも秀逸な書評がある。)
ガバン・マコーマック「属国」、もちろん小泉・竹中らによる郵政破壊についても触れている(80ページ)。
「森田実の時代を切る」に掲載されている10/22のエントリー「10.16森田塾東京教室における林良平氏(調布小島郵便局長)の講義録 郵政民営化の中の郵政事業――職場の現状と問題点」は、読んでいて胸がいたくなる。アフガニスタンや、イラクの問題以前に、国内の郵政破壊問題を解決するのが、「アメリカ支配層向け、属国政治ではなく、日本の庶民に向いた国政」だろう。
民主党、もしも庶民の方を向いているなら、ソマリア沖の海賊より、国内の離島を問題にしただろう。
マスコミがはやしたてる、二大政党政権交代からは、そうした国政、望むべくもない。
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