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2008年10月 9日 (木)

9/11陰謀論者の新たな友人 ロシア政府、9/11陰謀論を蒸し返す

キャシー・ヤング

The Weekly Standard

2008年10月13日、014巻、05号

グルジア戦争後の米ロ関係の冷却が継続する中、もしもアメリカ合州国が、同様に報いてくれて、冷戦的言辞をやめるなら、友好的関係を回復するのはやぶさかではないと、ロシア政府は繰り返し主張してきた。しかし、同時に、モスクワは、体制支持派のロシア・マスコミを通じて、反米ヒステリーのばか騒ぎを奨励した。9月12日、アメリカ叩きは、最低レベルに達した。ゴールデン・アワーの国営放送特別番組が、2001年9月11日のワールド・トレード・センターとペンタゴンへの攻撃は、アメリカの戦争挑発者達による内部犯行だったという考え方を広めたのだ。

「非公開上映(ロシア語原題Закрытый показ)」と題し、政府が支配するチャンネル・ワンで放映され、最大3000万人が視聴した特別番組は、イタリア人ジャーナリストで、ヨーロッパ議会議員であるジュリエット・キエザが制作したドキュメンタリー映画Zeroを中心に構成されていた。ヨーロッパのほとんどで無視され、イタリアのマスコミに酷評されたZeroは、お馴染みの「9/11に関する真実」なる主張(ツイン・タワーは建物内部の爆発物によって破壊された。ペンタゴンには、飛行機ではなく、ミサイルが突入した)や、ノーベル賞受賞者である文学的道化師ダリオ・フォのような「専門家」の洞察に、不気味な音楽伴奏をつけたごた混ぜだ。

キエザ自身、ソ連時代のイタリア共産党の党官僚で、共産党日刊紙ル・ウニタのモスクワ特派員だったが、ソビエト連邦から、今日の腐敗した国家資本主義ロシアへと、円滑に宗旨変えを果たしたように思われるのだが、スタジオでの論議に出席した。西欧とアメリカ合州国で配給業者を見つけられないことを、彼はひどく悔やんでいた。有り難や、ロシアは、依然として、自由な言論のための公開討論の場を許容しているのだ。

全くのソ連時代というわけではないので、少なくとも、ディベートのようなうわべはあった。建築専門家と(愉快なことに)退官したKGBアナリストを含むパネリストの何人かは、陰謀論を否定した。元チャンネル・ワンの特派員で、攻撃当日にはワシントンD.C.におり、数日後にはニューヨークにいたウラジーミル・スホイは、目撃した恐ろしいできごとを感動的に語り、キエザの理論に信憑性を与えて、そうした記憶を"裏切る"ことはできないと述べた。キエザの共著者、フランス人の9/11陰謀論者ティエリー・メイサンが、見てはいないはずだと熱心に断言したにも関わらず、スホイはまたペンタゴンで、77便の残骸を自分は見たと語った。スホイは、精神異常者が荒れ狂っているのを耐えるよう強いられている人物であるかのように、辛抱強い、困惑したような表情で耳を傾けていた。

だが、ほとんどの部分は、まるで精神異常者が精神病院を経営しているような状態だった。論議は"洞窟のオサマ・ビン・ラディンに指揮された19人のアラブ人"によるものだという"公式説明"を、馬鹿げたものであることは自明だと片づけた数人の陰謀論者寄りのパネリストによって、かなり支配されていた。(しつこい「19人のアラブ人」のからかいは、意見を異にする人々の一人、中東専門家イリーナ・ズヴャゲルスカヤが、厭味な質問をしたほどだった。つまり、25人あるいは50人だったら、より信じやすいということですか?) ロシア語が流暢なキエザは、TVで放送されたビン・ラデンのビデオテープは「明らかに」ビン・ラデンに扮した何人かの異なる人物を主役にしていると主張した。

過激な反米派のTV解説者ミハイル・レオンチェフは、あたかも当然のごとく、アメリカの指導者たちは、自国民の大量虐殺を、海外政策の目標を実現するための、全く問題がない手段だと考えているのだとほのめかし、フランクリン・ルーズベルトが"真珠湾を仕組んだ"などという極右のデマまで持ち出した。評論家のヴィタリー・トレチャコフとロシア・イスラム委員会議長のガイダル・ジェマルは、9/11攻撃が、ホワイト・ハウスの関与なしに活動していた謎につつまれた戦争挑発者達の徒党(トレチャコフ)か、ブッシュ自身(ジェマル)のどちらが仕組んだものかで、意見は別れた。

何人かの論者は、マスコミ、つまり西側マスコミの"情報の不足"と"情報操作"を嘆いていたものの、もちろん、反体制派のブラックリストを作り、フォックス・ニューズのキャスターが、ロシア寄りの意見を言ったオセチア人少女を黙らせようとしたことを示唆するよう改竄したビデオを放映するロシアのテレビは対象外だ。たしかに予想通り、マスコミが、丁度9/11事件の隠ぺいで共謀したように、ロシアの侵略という嘘を反復したという、節度のない偏向と、偽情報の一例として、グルジア戦争に関する西側報道が引用された。

ホスト役、ロシア人ジャーナリストで映画作家のアサクサンドル・ゴルドンは、真摯な関心と不安感をにじませてはいた。だが彼の偏向は、キエザ-メイサンの主張に懐疑的なゲストを、「アメリカの公式説明で十分満足している人々」とどこか痛烈に呼んだ、そもそもの出だしから明らかだった。懐疑派の発言は、無視されるか、多少装いを変えたあざけりで迎えられた。最後の30分間、彼らの発言はほとんど完全にかき消されてしまった。ゴルドンが生放送のスタジオの聴衆に、9/11の"公式説明"を、一体何人が信じているのか質問した時には、一人も挙手しなかった。

番組の終わり近くで、メイサンはアメリカ帝国主義とその悪に対する激しい非難を始めた。「この極悪の略奪者が、地球を荒廃するのを止められるのは誰でしょう? 私たちはあなたがた、ロシアに、大いに期待しています。これを止められるのはあなた方だけです」と彼は叫び、スタジオの聴衆から騒々しい拍手を受けた。

「非公開上映(Закрытый показ)」は"物議を醸す"話題を目玉としていたが、当局の承認なしで、映画を放映できたとは考えがたい。この放送は、評論家のボリス・ソコロフが、無党派のオンライン・マガジン、Grani.ruで書いているように、「少なくともロシアのテレビでは、冷戦がしっかり進行中であることを示している。」番組が放送された二日後、ロシアで政治的に独立した唯一の大手ラジオ局エホー・マスクヴィ(モスクワのエコー)にゲストとして出演したゴルドンは、番組が米ロ関係の最近の冷却化と関係していたのかどうかと質問された。彼は答えた「そうかも知れません。そうでないかも知れません。」

皮肉なことに、Zeroが放送された日、ロシア大統領ドミトリー・メドベージェフは、西側評論家の集会で、8月8日のグルジアの南オセチア攻撃は、無力なロシア国民が殺害された日で、ロシアの9/11だと語っていた。(実際は、彼等は近年発行されたロシア・パスポートを持った南オセチア人だ。)Zeroの放映を考えれば、この無理なこじつけは、モスクワが南オセチアにおける衝突を秘かに仕組んだということを無意識に告白したものと見ることも可能だ。

だが、多数のロシア人が、こうした類の考え方を深めたり、これに匹敵する悩ましい事件について熟考したりする可能性はまずない。1999年ロシアで、およそ300人の命を奪い、チェチェン人テロリストの犯行とされ、チェチェン戦争に対する一般の支持を生み出すのに役立ったアパート爆破に、ソ連崩壊後のKGB後継者であるFSBが関与していた、というかなり信ぴょう性のある疑惑だ。

称賛に値するのは、政府寄りロシア・マスコミの解説者の何人かさえもがZeroの放映に驚いたことだ。イズヴェスチアのコラムニスト、マクシム・ソコロフ(上記のボリスとは無関係)は、この番組は「人間の知性に対する侮辱であるばかりでなく、極めて趣味が悪い。」と書いた。彼は、米ロ関係が最良とは到底言えない時期の、アメリカ合州国に対するこの計画的な侮辱の狙いに疑問を呈した。

ロシア国民の間に、反米感情をかき立てる他に、仕返しという面もあったかも知れない。グルジア戦争に関する我々の主張を受け入れようとはしないわけか? 結構、我々も、9/11に関するそちらの説明は受け入れないからな。だが、チャンネル・ワンでの狂ったようなサーカスは、遊び場におけるあざけりの、政治版等価物どころではなく、遥かに深刻なものだ。ロシア国内における影響は別として、正統性という風格を与えることによって、9/11陰謀論という毒を、世界中に広める助けになりかねない。

今のところ、この侮辱に対し、ワシントンは反撃していない。反撃をするに違いない。今度、ロシア外務大臣セルゲイ・ラヴロフがコンドリーザ・ライスと会う時には、二人は議論するには不愉快な話題に事欠くまいが、それでもなお、Zero放映は言及に値しよう。意図的な挑発であるとともに、ロシアの指導者たちが、ロシアをどこまで、主流の文化的諸国から引き離そうとしているかという、更なる徴候だ。

キャシー・ヤングは、「リーズン(理性)」誌の寄稿編集者である。

記事原文のurl:www.weeklystandard.com/Content/Public/Articles/000/000/015/661hwlum.asp?pg=1

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決して、筆者意見に同意し翻訳したものでないことは、明記しておきたい。ロシアの番組に対する、アメリカの反応の例をご紹介するだけのこと。

アメリカが「主流の文化的国家」だという傲慢な発想!これが『理性』!

アメリカ「主流テロリスト国家」以外の何ものでもあるまい。

ただ「1999年ロシア・アパート連続爆破事件」は、恐らくロシア版9/11だ。

ロシアがアメリカの9/11の実態を、アメリカがロシア「アパート爆破事件」の実態を、暴露してくれたら有り難いことだが、それはあり得まい。

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