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2008年9月 3日 (水)

アフガニスタン、血まみれの8月

ジェイムズ・コーガン

2008年9月2日

アフガニスタンにおけるアメリカおよびNATO兵士の八月の死亡者数は、この日曜日で、45人にのぼり、ほぼ7年に及ぶ戦争で、月間死者数の過去最高となった。物資補給部隊を防御していたルーマニア兵士の一人が、乗っていた車両が、首都カーブルと東部諸州を結ぶ幹線道路に埋められていた地雷に乗り上げた際に死亡した。他のルーマニア兵3名が重傷を負った。

八月の死者数のうち、21人はアメリカ兵だ。四倍の以上のアメリカ人兵士が駐留するイラクでは、死亡者数は22人だった。死亡者1名につき、負傷者が5人いるという典型的な割合を考えると、8月アフガニスタン戦域では、100人以上のアメリカ兵士が何らかの負傷を負った可能性がある 。

8月18日、ゲリラが、カーブル東部への偵察部隊を奇襲した際に、フランス兵10名が死亡し、23名が負傷した。カナダ兵5名、ポーランド兵3名とイギリス兵2名が死んだ。ドイツ、デンマークおよびラトビア兵士それぞれ一名が死んだ。2008年の、アメリカとNATO兵士の死者総数は198人となった。

死傷者については、アフガニスタン政府軍と警察による正確な数値はないが、先月公表された数値によると、一カ月に、平均150人の警官が殺害されている。

NATOが指揮する国際治安支援部隊(ISAF)には、現在約52,000人の兵士がいるが、2006年と2007年、イラクでゲリラが最も激しかった段階に拮抗しはじめたゲリラに直面している。2001年のアメリカ侵略によって打倒されたタリバン政権に忠実なゲリラが南部アフガニスタンから、カーブル周辺の地域のパシュトゥーン族諸州におけるNATO標的への攻撃を拡大している。

アフガニスタン-パキスタン東部国境地域沿いの山岳地帯の険しい地域で活動している、アメリカが指揮する総勢19,000人の別部隊は、元アフガニスタン軍閥の長グルブッディーン・ヘクマティヤールが指揮するきわめて組織だった抵抗に直面している。1980年代のソ連占領軍に対するゲリラ戦の頃には、CIAのお気に入りだったヘクマティヤールは、パキスタンの連邦直轄部族地域(FATA)にある安全な隠れ場で指揮をしていると信じられている。

71,000人の外国人兵士を、総勢65,000人のアフガニスタン政府軍が補強している。ただし装備があまりに貧弱なので、この部隊はほとんど、アメリカ/NATOの航空支援、兵站と諜報無しでは活動できない。

タリバンとヘクマティヤールが動員できる戦士の数については、推計数はきわめて様々だ。主たるタリバン司令官のジャラルディン・ハッカーニは、15,000人から20,000人の兵士を結集できるようだ。ここ四年間で、アフガニスタン内で、著名な立場に戻ったヘクマティヤールは、ずっと少ない勢力を指揮している可能性が高い。アメリカ軍の空襲や、はるかに強力な装備をもったアメリカとNATOの軍による一方的な戦闘で、毎年何千人も死傷しているにもかかわらず、これら双方の派はゲリラ作戦を続行できている。対ソ連戦争時代にそうであったように、世界の他の国々から来たイスラム過激派が、現地アフガニスタン人ゲリラを支援していると信じられている。そうした外人過激派の人数の推計は、500人から、8,000人にも及ぶというものまである。

激しい戦闘の結果、ヘルマンド州のキャンプ・バスチォンでイギリスが運営する病院は、ある医師の言葉によれば、「世界で最も多忙な外科病院」と化している。そこでは週に100人以上の病人を治療しており、8月29日のロイター記事では「半数以上が、爆発による大外傷で、手術が必要なものである」という。負傷者の中には、アメリカ/NATO兵士、アフガニスタン軍兵士や警察官、タリバン戦士や民間人がいる。記者が訪問した日に、病院にいた負傷者の中には、アメリカ軍による「民間人誤爆」にあった、18カ月にも満たない女の子がいた。この女の子は助かりそうもないという。

ゲリラの主要な標的の一つは、パキスタンのカラチ港から、パキスタンのFATA地域の峠を越えて、アフガニスタンに至るアメリカとNATOの物資補給部隊だ。先週イギリスのサンデー・テレグラフがインタビューした、カイバル峠地域のある部族民によると、カーブルに向かう物資補給部隊に対する攻撃は事実上毎日起きている。「ロケット弾で破壊された車両が道路脇にあるのをみることができますよ」と地元の部族指導者の一人は語った。「残骸はいつまでもそのままではありません。[パキスタン]軍が、まだ道路を掌握している振りをしたいので、すぐに撤去するのですが、実際は今にも支配権を失う瀬戸際です。」

テレグラフ紙によると、奇襲された物資補給部隊から略奪されたアメリカ軍備品は、パキスタン、ペシャワール市の様々な市場で堂々と売られている。記者たちは、ヘルメット、制服、地図、ざん壕用工具、支給食糧パックや従軍記章を目にしたと報じている。

兵士ではなく、契約業者が、アフガニスタンに品物を運び込む物資補給車両の大半を運転している。その多くは、かなりの額の現金をもらえる約束で、この危険な仕事に、誘い込まれたアフガニスタン人あるいはパキスタン人だ。最新の数値はないが、2007年6月には、少なくとも80人の契約業者が殺害され、少なくとも879人が負傷した。過去数カ月間だけでも、更に数十人の死が報告されている。

今年の、アフガニスタン民間人死亡者数は、8月22日のアメリカ軍による西部のヘラト州アジザバド村空襲で90人以上の男性、女性と子供の虐殺のおかげで、先月ほぼ1,000人にのぼった。ブッシュ政権とアメリカ軍は、依然、殺害がおきたことを否定している。

先週木曜日、ドイツ兵たちが、北部の都市クンドウスにある検問所に接近した際、すぐに減速しなかっという理由で、自動車の中にいた女性一人と子供二人を殺害した。報復行為として、道路脇爆弾一発が、週末市郊外を偵察していたドイツ部隊に対して爆発したが、死傷者は出していない。

アメリカ/NATO兵士による民間人に対する最近の虐殺だとする彼らが主張するものに抗議するため、昨日、何百人ものアフガニスタン人が、カーブル街頭でデモを繰り広げた。カーブル郊外での占領軍兵士による家宅捜査の際に、男性一名と、彼の二人の幼児が自宅で射殺されたといわれている。東部の州パクチカで、昨日地上部隊を支援するために用いた特科射撃が、民間住居にあたり、子供三人が死亡し、少なくとも七人の非戦闘員が負傷したことをISAFは認めた。

パキスタン国境周辺でのできごとのおかげで、ここ数週間、アフガニスタン、特に東部で、戦闘が激しくなる見込みだ。パキスタン政府は週末、連邦直轄部族地域FATAのバジャワル地区と、北西辺境州(NWFP)のスワット渓谷地域のタリバンと関係した過激派に対する、いくつかの軍事攻勢を中止したのだ。

当初、停戦協定は、戦乱から避難した何十万人もの民間人が、イスラム教のラマダン時期に、自宅に帰れるようにするためだという理由で正当化されていた。本当の動機は、むしろ先月の元独裁者ペルベス・ムシャラフ辞職を受けた、9月6日のパキスタン議会の新大統領選任投票だ。

与党パキスタン人民党(PPP)の候補者アシフ・アリ・ザルダリは、他の二候補の挑戦を受けている。イスラム教政党ウレマ・イスラム協会と、NWFP出身の政治家が、ザルダリ支援の代償である、軍事攻勢を終わらせた。多くの信心深いパシュトゥーン系パキスタン人はアフガニスタンにおける、対アメリカ/NATO占領軍ゲリラに共感しており、FATA地域における反タリバン作戦を、アメリカ合州国を代行する不当な代理戦争と見なしている。

空爆を避けるべく、解散、あるいは身を隠したゲリラ勢力が、一カ月間の停戦協定のおかげで、再結集し、国境を越えてアフガニスタンへともどることが可能になる。ヘクマティヤールは、現地のパキスタン人タリバン司令官による保護のもと、バジャウルで指揮をしていると考えられている。かなりの人数の外国人イスラム過激派がこの地区にいるという報告がある。

七月には、バジャウルとの国境からわずか数マイル、ワナトのコナル村にあるアメリカ軍前哨基地に対するゲリラの攻撃が大規模な戦闘となり、守備隊45名のうち、アメリカ兵9人が死亡し、15人が負傷した。先週コナルで、もう一つの小規模なアメリカ軍駐屯地が攻撃されたが、襲撃者は撃退された。

下記も参照。

Pentagon denies responsibility for US massacre of Afghan villagers

[2008年9月1日]

Military offensive displaces 300,000 in north-west Pakistan

[2008年8月23日]

French troops killed in Afghanistan: another sign of an escalating war

[2008年8月21日]

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2008/sep2008/afgh-s02.shtml

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個々の誤射、虐殺、もちろん理不尽な誘拐殺人をとりあげることは大切だろう。

しかし、そうした個々の戦乱全体をひき起こす状況は、決して偶然の結果ではなく、大国の意図的な長期基本計画の中で起きていることを知り、個別事件のみならず、そうした壮大な企みを立案、実行する大国の実情を知ることも大切だろうと思う。

日本国憲法にたいする壊憲の主張、集団安保論議、在日米軍再編成、日本からのイラク派兵、テロ対策特別措置法等々は、世界新秩序を目指す、アメリカの一貫した施策の大きな流れの中にあるにすぎない。個別の法律にいくら反対していても、きりがない。

アフガニスタンをネタに世界遠征軍創設を進めるアメリカの施策とその現状については、下記をお読み願いたい。

いっそNATOを廃絶しては?

NATO、コソボ、アフガニスタンとパキスタン: NATOはアフガニスタンで一体何をしているのか?

タリバンのテト攻勢が始まった。

NATOの白鳥の歌: アフガニスタンおける敗北の本当のコスト

売国政治家と売国マスコミが支配する体制が変わらなければ属国体制は変わらない。とはいえ、変わるべき理由とて皆無。

女性売国宰相があらわれようと、野党を装う与党分派の売国代表が政権をになおうと、属国体制は強化されるばかり。

「周辺自体」というあやしい概念を押しつけられ、のみこんだのは、日本だけではなかった。NATOヨーロッパは喜んで飲み込み、憲法9条がないので、アフガニスタンのISAFに兵員を派遣し、無辜のアフガニスタン人を無差別に殺している。

小選挙区制度を導入し、憲法9条を破壊し、今や、アフガニスタンのISAFに、兵員を派遣しようと提唱しているのが、マスコミが手放しで絶賛するエセ野党代表ではないか?

911選挙にころりだまされ、売国自民党に投票した総員B層国民、今度は二大政党政権交代のトリックに騙され、一層逃げ場のない状況に陥るに違いない。政権交代など政権後退の誤変換。飛んで火にいる夏(秋)の虫。

マスコミは、小選挙区導入を煽動した。その結果はどうなったろう。

マスコミが、さんざん小泉人気をあおった。その結果はどうだったろう。

マスコミが、今、女性宰相や政権交代をあおるなら、その結果も想像がつくではないか。

マスコミは、読者の幸福より、宗主国とスポンサーの幸福が大切。壮大な詐欺手品だ。

正気で生きるには、「テレビは見ず、新聞は読まず」にいるしかなさそうだ。

二大政党制なるものの末路、宗主国のインチキ大統領選を見れば猿でもわかろうに。

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