グルジア戦争は、ネオコンの大統領選挙用策略か?
Robert Scheer
2008年8月12日
大統領選挙で、相手に不利な情報を選挙直前の10月に流す、おきまりの「オクトバー・サプライズ」が、今回は10月ならぬ8月に試みられ、ロシアという熊の支配から離れて生存しようと苦闘する、大胆で勇敢なグルジアというたわごとが、アメリカ大統領選挙に影響を与えるべく準備された可能性がある。
そうした可能性をはねつける前に、4年間グルジア政府から給料をもらうロビイストをしていたが、共和党大統領候補ジョン・マケインの上級外交政策顧問となった数カ月後の三月に公式ロビー活動を辞めたばかりのランディ・シェーネマンの役割を検討していただきたい。
シェーネマンは、かつてアメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)の理事だった時に、イラク戦争を巧妙にしくんだネオコンの一人として良く知られている。マケインの2000年大統領選挙戦で働いた後、アメリカのイラク侵略を擁護したイラク解放委員会(CLI)を率いたのは、シェーネマンだった。
最近のグルジアでの紛争炎上でも、同じような役割を演じていることについて、隠そうとしてもおのずとあらわれる示す徴候がある。親しい友人で、元の雇い主である、グルジア大統領ミヘイル・サアカシュヴィリの、南オセチアの分離脱退地域への侵略、つまり、ロシアの反撃をひき起こすことが明らかな侵略を命令するという愚行を、他にどうやって説明できよう? 彼が信頼する、シェーネマンのような影響力あるアメリカ人からの、アメリカ合州国が支援してくれる、といった何らかの保証なしに、サアカシュヴィリが、この危険なエスカレーションをひき起こしたなどとは想像できない。公式にマケインの大統領選挙戦の外交政策を担当する前でさえ、シェーネマンは、こうした諸問題で、長らくマケインを導いていた。
2005年、グルジアの有給ロビイストとして登録する一方、グルジアのNATO加盟を推進する議会決議案の草案作りのため、シェーネマンはマケインと働いていた。一年後、グルジアから給料を貰いながら、シェーネマンはマケインのグルジア出張に同行し、サアカシュヴィリと会見し、彼のロシアのウラジーミル・プーチンに対する好戦的な見方を支持したのだ。
対イラク戦争に至る道筋を再演する形で、共和党候補者の海外政策の姿勢を支配するようになったネオコン結社の中心に、シェーネマンは位置している。この連中は常に、新たな冷戦の種にする外国の敵を探しているのだが、サダム・フセイン体制の崩壊とともに、次第にプーチンのロシアが、その必要条件を満たすようになったわけだ。
そう、これは不愉快に聞こえるかも知れないが、戦争と平和という問題に関する、マケイン選挙戦の設計を評価する上で、最も正確な方法かも知れない。すべてが、この候補者が、ロシア指導者プーチンを悪魔化しているのは、前回のサダムを利用し、アメリカ軍国主義がどうしても必要としている恐ろしい敵によって、油をそそいだものよりも、ずっと壮大な計画であることを示唆している。
戦うべき新たな冷戦があれば、マケインは強そうにみえることになり、一方、民主党大統領候補バラク・オバマの、より慎重な海外政策で筋を通そうとせいている姿は、それと比較すれば、弱く見えよう。一方、マケインが相続した、ブッシュの遺産というイラクの大災厄から、経済破綻にいたるまでの恐ろしい結果は、好都合にも無視されよう。だがネオコンへの資金供給を助けた軍産複合体は、アメリカ以外の世界を全部足したよりも既に大きな軍事予算を、更に増やすための口実を与えられることになるだろう。
ここで機能しているのは、ネオコンの自己達成的予言であり、そこでは、ロシアはかつて大幅に削減した軍隊を増強する敵となり、プーチンは新たなヨシフ・スターリンの妖怪としての役を振り付けられ、古いソ連のイメージを喚起しているのだ。マケインは、再び封じ込めねばならない「失地回復主義者ロシア」と非難した。プーチンは、共産党後のロシアでは、選挙で選ばれた極めて人気の高い指導者だが、彼のDNAの中だけではなく、ロシア人の中には、常に帝国主義が潜んでいるのだと見なされている。
スターリンがグルジア人だったことを忘れるとは、なんとも都合のよいことであり、実際、もしもロシア軍が危機に瀕しているグルジアの都市ゴリを占領したなら、そこの博物館が今でも、ロシア革命を掌握して出世した、ご当地生まれの人物を讃えているのに気がつくことだろう。実際に、火曜日、5発のロシアの爆弾が、ゴリのスターリン広場に投下されたと伝えられている。
共産党後のグルジアは、南オセチアとアブハジアに対し、帝国主義的な狙いをもっていることも言及しておかねばなるまい。コソボのセルビアからの独立を擁護したアメリカ合州国が、今やグルジアが、民族的に反抗的な州地域を侵略するのを無視しているとは、なんとあからさまな矛盾だろう。
大統領選挙戦の間、タフであることをアピールするのを狙うべく、ロシアを悪者化するシェーネマンのネオコン路線を、マケインがこれほど熱心に受け入れるのは、上院議員というものは、年こそとっても、まったく無責任でいられる、ということを思い出させてくれるものなのかも知れない。
記事原文url:www.truthdig.com/report/item/20080812_georgia_war_a_neocon_election_ploy/
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