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2008年8月21日 (木)

恐ロ病の政治解剖学:なぜ対ロシア冷戦なのか?

Justin Raimondo

2008/8/19

ソ連帝国の崩壊から20年ほど後になって、なぜ、場所もあろうに、ポーランドに迎撃ミサイル基地をおきたがるのかという疑問に対するアメリカの説明など、アメリカ人でさえ信じはしない。この発想、ワシントンによれば、イランからの攻撃という脅威なるものからポーランド人を守るのだという。イランは、まだワルシャワに対するいかなる敵意も示しておらず、実際には、この新システムが迎撃しようとしている類のミサイルをまだ所有していない

「迎撃ミサイル防衛システムは、現在存在していないものに向けられていると聞かされている。控えめに言っても、これが滑稽だとは思われないだろうか?」というプーチンの不愉快そうな対応が、先週、グルジアの南オセチア侵略に対するロシアの反撃で最高潮に達したいらだちの姿を示している。ビル・クリントンがバルカン半島を侵略し、ユーゴスラビアという胴体からコソボを切り取って以来、信じられないほど忍耐強いロシア人は、長年のいやがらせ、侮辱、クレムリンに向けられた、ますますあからさまになった喧嘩腰に、じっと耐えてきた。それでも彼らは西側と通常の関係を保とうと努めていた。転機を迎えたのは、アメリカがグルジアの南オセチア侵略を支持し、国連が認可した平和維持軍の任務についていたかなり多数のロシア兵の殺害を、暗黙のうちに正当化したつい最近のことだ。

イラクにおけるアメリカの大災厄の準備期間中、ロシア指導部がこの戦争へ向かう動きに反対し、国連を使って、イラクのために時間稼ぎをし、この大惨事を合理化した嘘っぱちをあからさまにあざけった時以来、主戦論者はプーチンにつらくあたってきた。2003年春、鳴り物入りの「大量破壊兵器」捜索が、進んで騙された有志連合にとってすら耐えがたい厄介の種となった時、プーチンは、ロンドンでのトニー・ブレアとの記者会見で言い放った。

「二週間たっても大量破壊兵器は発見されていない。問題は、サダム・フセインはどこにいるのかだ? もしも存在したというのなら、その大量破壊兵器は一体どこにあるのだろう? サダム・フセインは、掩蔽壕で、大量破壊兵器の入ったケースに座って、その場所をすっかり吹き飛ばそうとしているのだろうか?」

ブレアは「険しい表情」でその場に立っていたと、ロンドンのタイムズ紙は書いた。なんとも素晴らしい光景だったに違いない。イギリス人の性格を考えれば、それだけでもロシア人指導者を決して許さない理由になるが、プーチンに向けられた西側の敵意は、イラク戦争に先立つものであり、このロシア人指導者の個人的性格に根ざしている。

プーチンの前任者ボリス・エリツィンは、西側にとって楽だった。権力の座にあった大半の期間、常に酔っぱらっていた、かつて二流の共産党政治局員だった人物が、共産主義崩壊の衝撃でいまだに動揺している、危機に見舞われた自国を、奇妙な経済とも呼ぶべき突貫計画に突入させ、予想通りの結果をもたらしたのだ。

「非常に奇妙な世界」とは、思い出して頂きたいが、全ての自然法則がひっくり返しになっており、常識が逆立ちしていて、異なる展開をする世界のことだ。上は下で、右は左で、入札の落札者は、我々が暮らす世界のように一番高い値付けをした入札者でなく、一番安く値付けをした入札者なのだ。

この最後の例は エリツィン政権のもと、彼の指示によって起きたことに、そのままぴったり当てはまる。政府、および/あるいは共産党がかつて所有していた財産の「入札」では、必ずしも一番高い値を付けた人々ではなく、ボリス皇帝の宮廷で最も政治的影響力を持った連中が落札するのだった。エリツィンは、国家の財産を安く、しばしば一番安い値を付けた入札者に売り渡した。入札者が一人しかいないことさえ頻繁にあった。このようにして、旧共産党から旧共産党幹部の子弟たちに、国有財産の管理が手渡され、ビル・ゲーツというよりはアル・カポネの類にずっと近いとは言え、彼らは今や「ビジネスマン」となった。

石油部門、銀行、電力網、アルミニウム、貴金属、自動車のような大物製品といった国家の産業の大半を掌握し、これら「オリガルヒ」と呼ばれるようになった連中が権力の座についた。自分たちの地域や、産業全体にわたる領地を作り上げると、彼らは様々な犯罪組織と手を組み、用心棒軍団を手に入れた。エリツィンが昏睡状態でよろめくようになると、オリガルヒとロシア・マフィアのこの連合は、間もなくクレムリンに匹敵するような、権力の中枢を確立した。エリツィンが自らの不徳による荒廃にとうとう屈した時には、ロシアは混沌状態の中に沈没していた。

ところが、彼は身を引く前に、またもや栄光の瞬間に浴していた。政治家として出世を始める直前の、エリツィンにとって最初の輝ける瞬間は、ロシア議会正面のバリケード上に立って、改革者ミハイル・ゴルバチョフを打倒しようとする、ソ連クーデターを画策した連中は許さないと宣言した時だ。この姿勢のおかげで、アステカ族が突然絶滅して以来、最も急峻な国家の衰微の時期を取り仕切った、鼓吹するばかりの軟弱な指導者ゴルバチョフ退場の後、愛国的、英雄的行動というオーラをもって、彼は大統領の座に押し上げられた。はっきりしたしらふ状態の瞬間に、実際、自国利益に貢献した、プーチンを後継者に指名する出来事をもたらし、エリツィンの経歴が終焉する際もきらりと輝いた。

おそらくこれは、自らの罪を告白し償う、エリツィン流のやりかただったのだろう。なぜなら、プーチンは即座にオリガルヒを攻撃したのだから。またこれは西側の目からすれば、彼の最初の大罪であり、彼をスターリンの生まれ変わりとして誹謗する長きにわたるキャンペーンの始まりだった。

もちろんこれは、ロシアを弱くしておいて、しかるべく言いなりにしておきたい連中が、誰であれクレムリンの強力な指導者に対して実行することだ。アメリカ人顧問の大群に囲まれ、常時酩酊状態にあったエリツィンは、くみしやすい相手だった。プーチンは彼とはほど遠く、そしてそこにこそ、西側政府、特にアメリカとイギリスとそのエリート層が、彼に対して向けるかんしゃくの根源がある。

西側マスコミによって彼らが高く評価されると同じぐらい、オリガルヒは、ロシア国内では憎まれていることが分かっていた。法律が改変され、横領、脅迫、更には殺害という彼らの様々な悪行が、暴露され、告訴される数歩先に、連中は不正に得たほとんどの金を密かに隠した莫大な海外の銀行預金をもって、ロシアから逃亡した。多くがイギリスに亡命したが、彼らは西側に着くやいなや、そこで軟調な不動産価格に、素早く強力な注射をし、ソルジェニーツィンサハロフの衣鉢を継ぐ勇敢な政治的「反体制派」として称賛されている。 過去十年ほどの間、連中は、権力の頂点に自分たちの「正当な」場所を奪還して凱旋することを夢見て、モスクワの体制を転覆することに熱中してきた。冷戦の復活により、過去数年間放送されてきた多くの反ロシア・プロパガンダの黒幕であるこうした連中にとり大いに役立つものが手に入ったのだ。

経済的要素も極めて重要な役割を演じている。主要産油国としての立場によるロシアの突然の復活が、それぞれの経済が、一部の人々がもう一つの大恐慌と呼ぶ奈落へと急落しているアメリカとイギリスを逆上させた。ロシアの繁栄が英米の鼻につき、その反撃として、ロシア嫌いの連中は全く新奇な政治経済学理論を生み出した。それは、環境保護論者ブームやアメリカ支配者層の過激なナショナリズムの副産物だ。国民所得の大部分を石油に依存するあらゆる国は不自然で、本質的に欠点があり、内在的に攻撃的で、西側の安全保障に対する脅威でさえあるという、馬鹿げた発想だ。まさかテキサス州のことを言っているのだとは思わないのだが、産油国はその本性として独裁主義になりやすい、と彼らは主張する。

この新たな経済的誤謬という「非常に奇妙な世界」の「論理」は、石油はどこか他の商品と異なり、他のあらゆるものを超越した、何か特別な地位を持っているという概念に基づいている。しかし、これは明らかに、事実と異なっている。石油は、小麦や、牛の腹肉や、プラチナ同様に、市場動向に支配されており、地理的には、偏在している。石油の生産、配給と販売にまつわる経済的制度は、バナナから、高品質の鋼までに至る他の商品にまつわるものと基本的に異なるものではない。アメリカは、少なくとも過去には、主要な産油国だったし、それがアメリカの経済的、政治的発展をゆがめたり、遅滞させたりはしなかった。全く逆に、石油は、産業的、知的イノベーションの新時代を推進し、個人を土地から解放し、政治的、経済的リベラリズムの新時代を切り開いたのだ。

ところが、我々は、石油は、どんなことがあっても、そのように貴重な商品を委任することなどできない独裁者に対し、力を与える、忌むべきものなのだと説教されるわけだ。これこそが、石油による収益がたっぷりあるプーチンのロシアに対する多くの騒音の背後にあるもので、クレムリンと西側との摩擦の、本当の原因だ。経済的には、まったくのたわごとだが、またもや、大半の戦争プロパガンダ同様、道理にかなっている必要性はないのだ。敵をできるだけ多くの角度から、悪者扱いさえできれば良いのだ。

この「反自由主義の淵源としての石油」理論と合致するのは、ロシアと中国は、彼らの顧客や同盟国と共に、西側のリベラルなデモクラシーに対抗して、イデオロギー的に魅力ある新たな極を形成するという発想だ。これは本格的な「非常に奇妙な世界」流儀の、間違った思い込みだ。

過去百年間程の射程でみてみると、ロシアは、近代でも、最も抑圧的な政権のくびきを投げ捨てて、自由の方向に動いており、一方、西側では、監視国家が、現代生活の現実となり、また、アメリカ合州国憲法として知られている文書は、もはや単なる紙切れのようなものとなり、独裁的支配へと向かっている。中国について言えば、歴史的には、一瞬ともいえない時間の間に、文化大革命から北京オリンピックにまで進歩している

アメリカと、東欧やカフカスのアメリカの同盟諸国は、ロシアの熊をけしかけて、対決状態にもちこもうと決心したもののようで、南オセチアをめぐる危機は始まりにすぎない。永遠とも思われるほど長い間、このコラムで私が警告してきたように、アメリカとロシアとの間の新たな冷戦は、主戦派の関心にとって大切なプロジェクトだが、それが先週あたりに、完全に実を結んだもののように思われる。

主戦派は、新たな敵が見つかるまで決して眠らない。連中は常時、新たな動機を密かに用意している。デモクラシーと良識の名において壊滅せねばならない、またそれに対して西側のあらゆる資源を動員しなければならない新しい「ヒトラー」だ。最新のそうした敵が、プーチンのロシア、とりわけ、今や複合型の怪物、ヒトラーとスターリンの独裁的混合物と見なされているプーチン自身だ。

兵器製造業者が得る利益の激増は別として、冷戦の復活は、かつてのソ連政治問題研究者が、再びワシントンではやりになるということ、またチェコスロバキア共産党の歴史に関して書かれた学位論文の類は無駄ではなかったということも意味する。冷戦というのは、単なる一つの時代ではなく、大物政策通、反共専門家や国内破壊活動者狩りの連中、そして、こうした連中の活動に気前良く資金を提供してくれる軍産複合体などから成り立つ立派な産業でもあるのだ。こうしたネットワーク全体が、1990年代、国際共産主義とともに崩壊したのだったが、反プーチン主義によって、それがよみがえり、たとえ我々が街頭で物売りをする羽目になっても、そうした連中の一部は仕事にありつけるのだ。

西側マスコミは、ここのところひどく立腹しており、プーチンと新たな「独裁的」ロシアを罵っているが、この記述は、事実によって裏切られている。あるアナリストは、海外政策協会(Foreign Policy Association)のブログにこう書いている

「ロシアのマスコミが耐えている、国家による検閲のような、いかなる強制手段もないのに、政府の施政方針にぴったり従おうとする、アメリカ・マスコミの意欲は困ったものだ。昨日見たCNNの報道番組は、サアカシュヴィリがロシアの犯罪を主張する場面の果てしない連続等々、完全な親グルジア報道の一環として、どれも「ロシアの侵略」という構図で描かれていた事実があったとはいえ、CNNには王室に重用された宮廷詩人ウイリアム・ダンバーのような人物はいたためしはない。グルジアは、主要なアメリカ同盟国の一つであり、イラクには三番目に大きな派遣部隊を送っており、戦略的な、石油の豊富な地域にある。基本的に、政府の論点を無批判に普及しているだけの、アメリカ・マスコミによる自己規制は極めて気がかりだ。」

該当サイトで、記事全文をお読みいただきたい。記事は無署名だ。お互いにほとんど関係のない、二つの全く異なる戦争についての記事を、ロシアと西側のマスコミがどのように一つにまとめているのかという内容だ。

ロシアが、間欠的ながら、より自由な方向に進んでおり、我々西側が、自由のより少ない方向に進んでいるので、この両者はどこか途中で出会うことになるのだという議論がある。事実、アメリカとイギリスにおけるマスコミは、本筋から外れるよう、あまりに良く訓練されている一方で、ロシアでは、マスコミは依然として、公式の諸規制に縛られていると主張することも可能だ。公的な検閲など西側では必要ですらない。誰もが何を言うべきか、そしてより重要なことに、何を言ってはいけないかを、知っているからだ。

これは確かに気がかりではあるが、少なくとも、私の視点からすれば、決して驚くべきことではない。9/11以来、いやあの象徴的な出来事の前からでさえ、(煽動的政治家と組んだ)マスコミが、いかなる反対派もいなくなるよう、自分自身ばかりでなく、社会全体までも規制する中、我々はこの方向に導かれてきた。そこで、先週もそうであったように、Antiwar.comの存続という話題に立ち返りたい。

我々は晩夏資金カンパの最中であるが、大変な時期を味わっている。私は決して驚かない。私たちの大半にとり、経済的に厳しいご時世であり、寄付金は、おしなべて減少している。これこそ、ご寄付いただくことがそれほど重要な理由だ。今日にもご寄付願いたい。債権者たちが我々の戸をノックしており、我々が直面する難題は冷戦復活の新時代、益々面倒なものとなってきた。平和への見通しは、今までになく暗く見えるが、事実、これは私たちの仕事と、Webサイト維持の重要性を一層強調するものだ。

単に事実として誤っているのみならず、大いに危険な主戦派の狙いを、社会通念がほとんどの場合に助長している時代の中、それに代替できる意見を私たちはご提供している。アメリカ人に、不干渉主義者の視点から、海外政策の問題をお知らせするという、私たちの課題は、一層重要になっているが、資源不足により、一層の危機にさらされている。私たちは苦戦を強いられている。対等な立場で、ごく少額なりとも、ご協力いただけまいか? 主戦派には無限の資源がある。我々には皆様がおられる。このサイトを維持する上で、アメリカの海外政策にかかわる真実を皆様にお伝えする上で、私たちは皆様からの、課税控除対象の寄付に依存している。

この四半期は、70,000ドルの資金調達が、必須目標だ。それが実現できなければ報道を大幅に削減することが必要になる。ごく単純なことだ。皆様の寄付こそが雲泥の差をもたらしてくれる。本日ご寄付を願いたい。

Justin Raimondo

記事原文のurl:www.antiwar.com/justin/?articleid=13317

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