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2008年7月20日 (日)

オバマ、果てし無き戦争政策の概要を説明

Bill Van Auken

Global Research、2008年7月18日

バラク・オバマが、2008年大統領選挙に「反戦」候補として出馬している、といういかなる誤解も、火曜日の民主党大統領選挙キャンペーンで、国家安全保障とアメリカのイラク戦争についての「重要な演説」だと喧伝されたものの中で、はっきりしたに違いない。

ワシントン、レーガン・ビルディングの密集したアメリカ国旗の背景幕の前で演説し、新植民地主義や侵略戦争に対する何らかの原則に基づく反対からではなく、イラク戦争では、武力展開の失敗のため、アメリカ帝国主義のグローバルな戦略的利益を推進し損ねているという理由から、現在のアメリカのイラク政策に反対していることをオバマは明らかにした。

イリノイ出身の初年上院議員の演説から浮かび上がるのは、11月の選挙は、アメリカ人にとって、戦争に反対の投票をする機会とはならず、単にアメリカ軍が今戦っている二つの植民地型戦争のどちらをエスカレートすべきかの選択になるということだ。

月曜日ニューヨーク・タイムズに掲載された彼についての社説にあったように、火曜日 イラクからのアメリカ戦闘部隊撤退させるという提案は、10,000人もの兵をアフガニスタンに派遣し、現地での戦闘をエスカレートさせる提案とい提案と結びついている。

オバマ演説が痛撃したのは、帝国主義戦略を遂行する上でのブッシュ政権の無能さ批判で、更に、自分がホワイト・ハウスに入ったなら、同じ基本戦略を、より合理的かつ効果的な方法で進めるという暗黙の約束も含まれていた。

彼は政策をこう要約した。「政治的解決にむけて、イラクの指導者たちに圧力をかけ、アメリカ軍を再建し、アフガニスタンと、アメリカのより広範な安全保障関係とに、焦点を合わせなおす、信頼のおけるアメリカ戦闘部隊の再配備である。」

オバマは、就任から16カ月以内にアメリカの「戦闘部隊」をイラクから撤退させるという選挙キャンペーンの約束を繰り返した。ただし、この「配置転換」後も、「残りの兵力」は、対ゲリラ作戦を遂行しながら、アメリカの施設を守り、イラク傀儡軍を訓練、支援し、イラクに残るのだ。疑うべくもなく、この国を無限に占領する何万人ものアメリカ兵が駐留するという課題だ。

オバマは、「現地の司令官たちやイラク政府」との相談に基づいて、自分の計画の「戦術的調整」をするつもりだと強調し、提案している部分的撤退すら、約束したほど迅速には実施される可能性がないことを示唆した。

演説は、オバマが翌週に予定している、イラクとアフガニスタン両国を訪問し、両国にいるアメリカ軍司令官達と会談する「事実調査」出張前になるように計画された。

第二次世界大戦の余波の中、「国連やNATOや世界銀行」等の新たな国際機関を設立し、荒廃したヨーロッパの資本主義を、マーシャル・プランを通して再建するためにアメリカが活動したという、アメリカ帝国主義戦略の遺産を思い起こさせて、オバマは演説を始めた。彼は、60年間にわたる政策を、ワシントンが、2001年9月11日テロ攻撃の後、再びグローバルな指導力を握る為の機会を無駄にしてしまったと考えていることに対比した。

「世界も、また、この邪悪な行為の犯人たちに対し、古くからの同盟諸国も、新たな友人たちも、更には長らく敵対していた国々さえも、団結し、アメリカの側に立った」とオバマは語った。「今一度、アメリカの力と道徳的説得を生かすべき時でした。変化し続ける世界のために、今一度、新たな安全保障戦略を形作るべき時なのです。」

この千載一遇の好機を活用するための原点は、オバマによれば、「アメリカ軍の全力を配備し、9/11に関与した、オサマ・ビン・ラディンや、アルカイダや、タリバンや、全てのテロリストを追い詰めて壊滅させ、一方、アフガニスタンにおける本当の治安を確保する」ことなのだ。

ブッシュ政権は、そうではなく、こうした軍事資源を「9/11攻撃とは全く何の関係もなかった国」イラクに対する戦争に振り向けた、と彼は非難した。彼は続けて言った。「どう考えても、ひたすらイラクだけに、無制限に集中していることは、アメリカを安全に保つための健全な戦略とは言い難い。」

この説明は、アフガニスタン戦争と、イラク戦争の両方の背景となった動機の全く意図的な歪曲だ。いずれも「アメリカを安全に保つ」という目的で始められたものではなく、アメリカ帝国主義の明確な戦略的利益を促進させるためだった。

9/11の攻撃のずっと前から計画されていた、アフガニスタン戦争の中心的な狙いは、ソ連崩壊によって生じた、中央アジアにおける権力の真空状態を利用し、石油と天然ガス資源の世界で二番目の埋蔵量を持つ、この地域におけるアメリカの支配を確保することだった。

この作戦の標的だとされた、オサマ・ビン・ラディン、アルカイダや、タリバンについて言えば、これらはいずれも、最終的分析としては、アメリカ帝国主義自身のこの地域への介入という血まみれの歴史の産物だ。とりわけ1980年代、ソ連が介入した時に、ソ連が支援したアフガニスタン政府とソ連軍と戦うムジヒディン勢力に対し、ワシントンは何百万ドルも資金援助をおこなった時の産物だ。そうした勢力の中に、ビン・ラディンや、アルカイダとタリバンを立ち上げた連中がいたのだ。

CIAが指揮したこの戦争の遺産が、アフガニスタンの荒廃と、ワシントンが、タリバンが権力につくのを支援して、食い止めようとした長引く政治的混沌なのだ。

アメリカがアフガニスタンを侵略してほぼ7年になる今、「大統領として、アルカイダやタリバンに対する戦闘を、しかるべく最優先課題にする。これは我々が勝利しなければならない戦争だ。」とオバマは宣言している。

その目的のため、「更に二つの戦闘旅団をアフガニスタンに」派兵し、ワシントンと同盟するNATO軍に、彼ら自身の兵士を展開する上で、より制限の少ない「大いなる貢献」をさせるよう圧力をかけるとオバマは明言した。

アフガニスタンでの介入を、隣国のパキスタンにも拡大すると彼は続けて明言した。

    「安全保障に対する最大の脅威は、パキスタンの部族地帯にあり、そこでテロリストを訓練し、ゲリラたちがアフガニスタンに出撃している」と彼は警告した。「我々はテロリストの聖域など許せない。大統領として、私は許さない。我々は、アフガニスタン、パキスタンとNATOとの間のより強い、継続的な同盟関係を維持し、国境を確保し、テロリストのキャンプを排除し、国境を越えるゲリラには断固たる処置をとる。アフガニスタン国境地帯に、我々はより多くの兵士、より多くのヘリコプター、より多くの衛星、より多くのプレデーター無人機が必要だ。そして、もしも、パキスタンが行動できない、あるいは、行動しようとしないのであれば、我々はビン・ラディンのような高い階級のテロリスト標的を見つけ出し次第、排除するつもりであることをはっきり言わねばならない。」

アメリカ軍がアフガニスタンでアルカイダと戦闘しているという証拠も、アメリカ人やNATO諸国軍を攻撃している連中の大半が、タリバンの残滓が発布した命令に従っているという証拠も全く無い。5月と6月に69人のアメリカとNATO兵士が死亡した激化した戦闘で、アルカイダの工作員を捕獲したという報告を、ペンタゴンはしていない。

7月6日のアメリカ軍の空爆で、結婚式出席者47人が死亡したが、彼らのほとんど大半が女性と子供であったことにみられるような民間人虐殺をエスカレートした直接の結果として、アメリカが先導する占領に対する抵抗は劇的に増大しているのが現実だ。アメリカ軍部隊やアフガニスタン傀儡軍によって捕獲された人々の恣意的な拘留や頻繁な拷問や、アメリカが支援するハミド・カルザイ大統領の政権の全くの腐敗によっても、怒りは生み出されている。

アメリカ兵9名が死亡したとされる先週日曜日の米軍基地攻撃では、現地の村人達が参加し、攻撃を実施したゲリラに対し、直接の支援を行ったとされている。

「より多くの兵士、より多くのヘリコプター、より多くの衛星、より多くのプレデーター無人機」によって、オバマはこの虐殺をエスカレートすることを提案しているのだ。それにより、更に大きな抵抗をもたらし、更に多くのアメリカ兵士を巻き込む戦争は拡大し、必然的に、アメリカ兵士は国境を越えて、パキスタンにも配備されることになる。

イラクにおける戦争より更にはるかに激しいことが判明した戦争に対し、アメリカ軍を増強するとオバマは明言した。65,000人の兵士と27,000人の海兵隊員による、アメリカ地上軍の全体的な増加と、「正規軍を打ち破り、現代の不正規戦に対応するのに必要な能力に投資する」ことを彼は主張した。

オバマの演説に対するマスコミの反応のほとんどが、これは、民主党基盤に対し、彼がイラクからのアメリカ軍撤退を実現する約束を変えずにいることを請け負うことを狙ったものなのか、あるいは、これが、アメリカ全軍最高司令官として、軍隊を進んで使うことを強調した、更に「中道への移行」なのか、という憶測を中心とするものだ。

実際は、演説は民主党も共和党も一様に含め、大半のアメリカ政治的支配層内部で、合意事項となっていることを反映したものだ。アメリカは、イラクでのアメリカの戦略的利益を、より少ない兵力で、アメリカ資本主義の深化しつつある経済危機を悪化させている経費を月100億ドル以上は使わずに、確保することが可能だという確信が強まりつつある。

このメッセージを強調するために、火曜日、オバマは、アメリカ軍の刷新と、アメリカのイラク介入を救援することを目指した外交政策を主張したイラク・スタディー・グループという超党派パネルで、共和党員の元国務長官ジェームズ・ベーカーと共に議長をした元民主党下院議員リー・ハミルトンに紹介された。

ロバート・ゲーツ国防長官と統合参謀本部議長と、マイケル・マレン海軍大将、いずれもが、アフガニスタンには、アメリカが同国の支配を確保するのに不十分なレベルの兵力しかいない懸念を表明している。二人は、当国に更に10,000人を配備したいと語った。オバマが提案したのと同じ人数だ。

ブッシュさえもが、火曜日朝のホワイト・ハウス記者会見で、ワシントンとNATO同盟諸国は、既にアフガニスタンでの「増派」を始めていると主張し、このテーマを語った。

右側への移行を示す演説について言えば、現実には、オバマは大統領選挙出馬以来、同じテーマを繰り返してきたのだ。民主党プライマリーでは、彼は、主要なライバルのヒラリー・クリントンやジョン・エドワーズが支持した決議である、ブッシュにイラク戦争を始める権限を認める2002年の上院議員投票には反対であることを強調しながらも、イラクとアフガニスタン侵略の両方を正当化するのに使われる「グローバル対テロ戦争」というイデオロギー的な枠組みを受け入れていることを、常に明らかにしてきた。

この立場や、2005年上院に加わるやいなや、戦争に資金供給することに賛成投票したことを考えれば、彼が当時アメリカ上院議員であったなら、ライバルたちと一緒になって、ブッシュにイラク侵略をするための無制限の権限を与える投票をしていただろうと思えない理由はほとんど無い。

フォーリン・アフェアーズ誌に一年前に書いた記事で、イラクでの大混乱の教訓で学んだことは、新たなアメリカの戦争に備える必要性だとオバマは強調している。「我々は、この瞬間を、我々の軍を再建し、軍には未来の任務に備えさせるために使わねばならない」と彼は強調していた。「我々は、わが国や我々の重大な利益に対するあらゆる通常の脅威を迅速に打ち破る能力を保持しなければならない。しかし我々は、非対称的に戦闘し、地球的規模できわめて適応的な軍事作戦を展開する敵と戦うために、現地に兵力を投入するよう、良く準備するようにしなければならない。」

オバマの「左派」擁護者たちが、候補者演説の中の、あけすけな軍国主義や戦争挑発を、「中道派」投票者を獲得することを狙った単なる政治的な道具だとして許すのは明白だが、現実には、候補者は、2009年に実現する民主党政権が期待していることを説明しているのに過ぎない。

政策は、オバマのおはこであった「変化」などという虚ろな政治キャンペーンの修辞によって決められるものなどではなく、深化しつつある、アメリカ資本主義の経済的、社会的危機と、アメリカの経済的衰退を相殺する手段として軍事力を活用し続けるという、アメリカを支配しているエリートの決意によって決まるのだ。

ビル・ヴァン・オーケンによるGlobal Research記事

 


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記事原文のurl:www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=9616


免責条項:この記事の意見は著書独自のものであり、必ずしもCentre for Research on Globalizationの意見を反映するものではありません。

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補足:Wikipediaからの抜粋

ビル・ヴァ・オーケンは、Socialist Equality Partyの政治家、活動家。

Socialist Equality Partyは、アメリカの小さなトロツキスト政治政党で、International Committe
of the Fourth International系の世界各地の数少ないSocialist Equality Partyの一つ。

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彼による記事の翻訳に下記がある。

バラク・オバマ、二つの顔

また、彼の記事ではないが、同じテーマについて書かれた記事に下記がある。

オバマの立候補とアフガニスタンに関する新たな合意

同様に、彼の記事ではないが、アフガニスタンへの(話題の日本から云々も含め)軍隊派兵という世界的な先進資本主義大国の動きの背後にふれている記事として、下記がある。

NATO、コソボ、アフガニスタンとパキスタン: NATOはアフガニスタンで一体何をしているのか?

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