« 2008年5月 | トップページ | 2008年7月 »

2008年6月

2008年6月25日 (水)

タリバンのテト攻勢が始まった

Al-Ahram Weekly
2008年6月19 - 25日
Issue No. 902

タリバンのテト攻勢が始まった。「アフガニスタンを支持する」というローラ・ブッシュの明快な呼び掛けは、ご随意に解釈いただきたい、とエリック・ウォルバーグは語る。

先週、アフガニスタンで、二つの画期的な出来事がおきた。イギリス兵の死亡者が100人を超えたこと、そして同盟諸国兵士の公式月間死亡者数が、イラクでの公式月間死亡者数を越えたことだ。ペンタゴン当局者は幹部は5月、16人の同盟諸国兵士がイラクで死亡したが、そのうち14人はアメリカ人であり、一方、18人の同盟諸国兵士がアフガニスタンで死亡したが、うち13人がアメリカ人だった、と語っている。

更に二つの出来事が先週ニュースになったが、いずれも予見が可能だった点ぐらいしか、話題にする価値はない。アフガニスタン大統領ハミド・カルザイが、パリの援助資金供与者会議に出席し、そこで500億ドルを得ることを狙っていた。アメリカと友人たちは、170億ドルの提供を申し出たが、この約束された金額の半分以上は、以前のアメリカの102億ドルという約束から来るものだ。つまりカルザイが得た正味は68億ドルで、過去の実績からみて、決して固唾をのんで待っていてはいけないしろものだ。カルザイを訪問し、アフガニスタン女性を支援するためのカーブル訪問で、アメリカ大統領夫人ローラ・ブッシュは、スライドを披露した。指導者たちは、彼女の呼びかけに「アフガニスタンを支持する」と同調した。サルコジは「拷問をする人々に屈伏するわけにはゆかない」と言って、いつものように皆を混乱させた。アフガニスタン国民の心をとらえるため、カーブルのアメリカ大学と国立識字能力センターの支援に、ワシントンは8000万ドルを投入すると、ローラは発表した。

カルザイは、彼が厳重にバリケードで囲った大統領官邸の中に事実上引きこもっているカーブル内においてさえ、腐敗と麻薬密売を厳しく取り締まることができないようだ、と当局者たちがこぼした時には、リアリズムの響きがあった。政府は腐敗を根絶させるよう処理する、とカルザイは彼等に請け合った。恐らく、ハミド本人と共に、援助資金供与者達に対して、自ら熱心に非難している麻薬密売そのものに関与していると広く信じられている彼の弟、カンダハール州地方議会議長ワリ・カルザイを首にすることから始められるだろう。援助資金供与者達が、アフガニスタンに自らの運命に主導権を握らせ、資金の使い方をまかせることに余りに用心深いと文句を言って、アフガニスタン当局者たちは、シュールレアリズムの雰囲気をかもしだした。そう、何百億ドルもの金を、腐敗したカルザイの取り巻き連中に与えよ。そうすればかならずや、事態は逆転するだろう。

ローラのスライドもないので、より一層退屈で、実りのない、もう一つの会議が、アフガニスタンをめぐる議論で、今や良く知られたシナリオに沿ったNATO加盟諸国の国防大臣による二日間のセッションだ。アメリカ国防長官ロバート・ゲーツは、嫌がる同盟諸国に、虐殺のために更に兵士を派兵すると約束するよう、しつこく説教したが、巧く行かなかった。国防大臣デス・ブラウンが、アフガニスタン軍事作戦を「21世紀の高貴な大義」だと歓迎し、イギリスは230人の増派を自ら申し出た。

このごろは、一層卑劣なタリバンのために「安全な隠れ場」を提供している、卑劣なパキスタンを責めるのがはやりだ。今週、NATOからそれに対する対応がなされたが、それはパキスタン国境部隊の国境検問所に対する破壊的な空爆で、パキスタン首相のユースフ・ラーザ・ギーラーニーによれば、11人のパキスタン兵が殺されたという。パキスタン・イスラム教徒連盟の議員アミール・ムカームは70人の死者だと語っている。この「自衛」行動は、空前絶後の撞着語法である、NATOの「友軍の誤爆による死亡」の長い歴史のヒトコマではある。NATO軍は過去数年にわたりパキスタン内部への空爆を何度かおこなってきたが、パキスタン人兵士を殺害したのは今回が始めてだ。さほど目をしばたくこともなく、アメリカ統合参謀本部議長のマイケル・マレン海軍大将は、無力なパキスタン政府に、更に、全てのアルカイダを追放するのみならず、国境を越えて出入りする武装勢力の流れを即座に止めろと要求した。アメリカのポチ、カルザイは、アフガニスタン軍を送り込むぞと脅しさえした。「連中はやってきて、アフガニスタン人と同盟軍兵士を殺害している。従って、我々もまさに同じことをする権利が与えられる。」

だが実に目を見張るようなニュースをとりおいてある。先週金曜日のタリバン戦士による南部アフガニスタンの主要監獄の攻撃だ。正門で自動車爆弾を一発爆発させ、多面的攻撃によって、タリバンと目される400人を含む、1000人以上の囚人を解放した。複合的攻撃は、一発の自動車爆弾と、刑務所に入り込んだ人物による自爆攻撃、外部から発射されたロケット弾攻撃があった。「囚人全員が逃げた。一人も残っていない。」とカンダハールの地方議会議長ワリ・カルザイは語っている。囚人の多くはわずか数週間前には、ハンガーストライキをおこなったばかりで、その間、47人が口封じのために口を縫われてしまった。彼らの中には、裁判もなしに2年以上拘留されている人々や、また短期の裁判の後で、長期の実刑判決を受けている人々がいる。タリバンは更に、カナダ軍が確保しているはずで、今後4年間にわたって開発援助の見本にしようと計画している地域で、18の近隣の村を解放した。カナダ人よ、幸運を祈る。

占領に対するこの打撃は、1968年にアメリカが占領していた南ベトナムでおきたベトコンのテト攻勢ぐらいしか比較するものがない。いつになったら占領軍は目覚め、こうした勇敢で恐れを知らない人々が、祖国を守って死んでいることに気がつくのだろう? 「カナダ国民には、破壊的で、残虐な戦闘任務を停止し、カナダ軍を撤退させるよう、カナダ政府に要求して欲しいと思います。私たちの戦争は、あなた方占領軍がわが国にいる限り続きます。」と、タリバンの広報担当者ユスフ・アフマディは訴えた。

恐らくは、カンダハールのこの空いた牢獄のスペースは、アフガニスタンのグアンタナモと異名をとっている悪名高いバグラム基地の監獄を6000万ドルかけて改修する必要性を、未然に取り除くことになろう。「生活の質が大幅に向上するでしょう」とアメリカ陸軍の広報担当の女性ルーミー・ニールソン-グリーン中佐は語っている。「床面積が大幅に広がり、彼らの文化の一部である社会活動を行うための部屋数も増えます。」新しい監獄を作るという計画は、明らかにアフガニスタン法務省のアフガニスタン人高官たちにとって、全くの不意打ちであったようだ。

今の監獄の中で、アメリカ人の看守によって、繰り返しなぐられた後で、二人の抑留者が殺害された。この施設における虐待について、無数の申し立てがあり、尋問の間に、性的に屈辱を与えられ、殴打され、裸にされ、階段の下に投げ落とされた、と囚人たちは主張している。ところが、ニールソン-グリーンは、バグラムの抑留者が虐待されてきたことを否定している。ニールソン-グリーンが一体何をもって「虐待」と考えているのか、考えるだけでゾッとする。

2004年9月まで、バグラムは、ほとんど本当のグアンタナモへと向かう囚人の通過駅として使われてきた。アメリカの当局者は、わずか9歳の子供たちまで、この施設に拘置されているという申し立てを否定している。性的虐待ということで言えば、カナダ人が訓練をしている、アフガニスタン軍兵士の間ではびこっている、民間人の性的虐待行為に対する、カナダ軍の「見ざる、言わざる」政策が、最近やり玉にあげられている。

だがもうたくさんだ。9/11前と後の、アフガニスタンにまつわる巧妙なトリックは、とうとう、雲散霧消し、粉々になりつつある。アメリカ大統領ジョージ・ブッシュが、ブカレストで4月に「何百万人もの人々の自由と平和の未来を確保する支援のため、世界中に軍を派兵する遠征軍同盟なのです」と言った通り、NATOはアフガニスタンにいる。言い換えれば、アメリカが承認しない国々に侵略し、抵抗する者は誰でも殺害するわけだ。アフガニスタンからの外国軍の全面撤退、アフガニスタン軍との話し合いによる解決、そしてNATO加盟諸国による、大規模な賠償こそが、世界が早急に要求すべきことだ。

パキスタンのせいにするのは、イラクでイランについて聞かされたり、ベトナムに対するアメリカの戦争中、ニクソンがカンボジア爆撃を始めた時に聞いたりしたのと、同じお話だ。爆撃はアメリカがベトナム人に打ち勝つ役にはたたずに、クメール・ルージュがカンボジアを乗っ取るという結果をもたらした。アメリカのアフガニスタン計画を成功させるには、事実上、国民を丸ごと殺害するしか方法はない。これが目的なのだろうか?

記事原文のurl:weekly.ahram.org.eg/2008/902/in3.htm

原文には、襲撃、破壊された施設の写真が掲載されている。

----------

関連記事翻訳

いっそNATOを廃絶しては?

NATO、 コソボ、アフガニスタンとパキスタン: NATOはアフガニスタンで一体何をしているのか?

NATO の白鳥の歌: アフガニスタンにおける敗北の本当のコスト

2008年6月22日 (日)

チェコの反対派、アメリカのミサイル・レーダーに対する国民投票を要求

ワルシャワ、6月19日(RIAノーヴォスチ)

チェコの反対派は、チェコ共和国内へのアメリカの早期警戒レーダー配備について、国民投票を行う提案を支持する100,000人以上の署名を集めたと、反対派の広報担当者が木曜日に語った。

5月21日に公式にチェコ政府によって承認されたプラハとワシントン間の合意は、2008年末までに批准される予定。

文書は、アメリカ国務長官コンドリーザ・ライスが文書に署名するためプラハ訪問する予定の7月上旬までにはまとまる予定の、アメリカ軍要員駐留に関する条項を定める第二の協定とともに、批准のため、国会に提出される。

広報担当者イヴォナ・ノヴォメスツカーは、反対派は7月9-10日のライス訪問時に、プラハ中心部での抗議デモを準備中だとも語った。

4月の世論調査によると、チェコ国民のおよそ2/3がレーダー計画に反対している。

チェコ国会では、本件についての公開討論を要求している、主要反対勢力の社会民主党による配備計画への相当な反対もある。

ロシアは、提案されている「中欧の楯」をロシアの国家安全保障に対する潜在的な脅威とみており、ヨーロッパにおける兵力の戦略的均衡を破壊すると考えている。

記事原文のurl:http://en.rian.ru/world/20080619/111366472.html

2008年6月19日 (木)

オバマは本格的な民主党拡張主義者

ジョン・ピルジャー

2008年6月12日

New Statesman

私の記憶にある限り、全てのアメリカ大統領選挙運動を巡って、本当にわくわくする歴史的瞬間がでっちあげられて来ており、超大規模なたわごととしか言えないものをもたらしている。

1941年、編集者のエドワード・ドゥリングはこう書いた。「アメリカ合州国における、デモクラシーにとって、最大の障害は二つあり、一つ目は、多くの貧しい人々が、我々がデモクラシーを享受しているという幻想を抱いていること、二つ目は、金持ちたちの間にある、我々にデモクラシーを手に入れられては困るという慢性的な恐怖だ」。何がかわったのだろう? 金持ちたちに慢性的な恐怖は、かつてない程大きく、貧しい人々は、ジョージ・W・ブッシュが来年一月にようやく辞任さえすれば、彼が人類に与えている無数の脅威は減少すると信じる人々に、幻想をまかせてしまっている。

予想通りのバラク・オバマ指名は、興奮してしゃべりたてる解説者によれば「アメリカ史上、本当にわくわくする歴史的瞬間」だというが、それは新たな幻想の産物に過ぎない。実際、新しく見える、というだけに過ぎない。私の記憶にある限り、全てのアメリカ大統領選挙運動を巡って、「本当にわくわくする歴史的瞬間」がでっちあげられて来ており、超大規模なたわごととしか言えないものをもたらしている。人種、ジェンダー、容貌、身ぶり、配偶者や子供、はたまた壮大な悲劇の爆発に至るまで、今や「バーチャル」技術によって強化されたマーケティングと「イメージ造り」によって、全てがすっかりとりこまれている。非民主的な選挙人団制度のおかげで(あるいは、ブッシュの場合には、改竄された投票装置のおかげで)システムを支配し、それに服従する連中だけが勝てるのだ。高ぶらない大衆の味方だと言われていたリベラルな民主党議員で、やがては二つの都市を原子爆弾で消滅させて、どれほどタフなのかを示してくれたハリー・トルーマンの、本当に歴史的でわくわくする勝利以来、ずっとそうだ。

本質的には変わっていない権力システムの要求を理解しない限り、オバマを有望なアメリカ大統領になりそうな人物として理解することは不可能だ。実際は、偉大なるマスコミのゲームなのだ。たとえば、私がこのページでオバマをロバート・ケネディと比較して以来、彼は二つの重要な発言をした。これらが意味するところも、祝典を汚すことは許されなかった。一つ目は、イアン・ウイリアムズが指摘したように、「自分のウェブサイトに、彼らの威力について引用するだけで、反ユダヤ主義として非難される」シオニスト・ロビー、アメリカ・イスラエル公共問題委員会 (Aipac)の会議におけるものだ。オバマは既に卑屈な態度を示してはいたが、6月4日には更に踏み込んだ。彼はイスラエルの首都として「分割されないエルサレム」を支持すると約束したのだ。エルサレムは国際都市であると指定する国連決議を認めているブッシュ政権を含め、イスラエルがエルサレム全体を併合することを支持する政府など、世界に存在しない。

二つ目の発言は、ほとんど無視されているが、5月23日にマイアミで行われたものだ。長年にわたり、アメリカの政権のために忠実に、テロリスト、暗殺者や麻薬密売人を生み出してきた在米キューバ人コミュニティーの前で演説しながら、毎年、国連からは違法と宣言されている、キューバに対する47年間も続いてきた禁輸を継続する、とオバマは約束した。

またもや、オバマはブッシュより踏み込んだ。彼はアメリカ合州国が「中南米を失った」と言ったのだ。彼は民主的に選出されたベネズエラ、ボリビアとニカラグアの政府を、満たすべき「真空」だと表現した。中南米に対するイランの影響などという戯言を彼は持ち出し、コロンビアが「国境を越えて安全な隠れ場を求めるテロリストを攻撃する権利」を是認した。これは言い換えれば、大統領や指導的な政治家たちが殺し屋集団とつながっている政権が、ワシントンになりかわって隣国に侵略する「権利」のことだ。彼はさらに、いわゆるメリダ・イニシアチブを是認したが、これはアムネスティ・インターナショナル等が、アメリカはメキシコに「コロンビア式解決策」を持ち込もうとしていると糾弾しているものだ。彼の発言はそこで止まらなかった。「我々は更に南方へと同様に押し進まねばなりません」と彼は言ったのだ。ブッシュでさえ、そこまでは言っていない。

希望的観測をする人々も、政治的に成長して、自分たちがそうなって欲しいと願っているものとしてでなく、大国の実態そのものについて論議すべき時だ。過去と現在の、あらゆる真剣な大統領候補者たちと同様、オバマはタカ派で領土拡張論者だ。トルーマン、ケネディ、ジョンソン、カーターやクリントンらの大統領たちが戦争をけしかけたことで示されている民主党の伝統を、彼は受け継いでいるのだ。オバマの違いは、どれだけ自分がタフなのかを示す必要性を、より強く感じているということかも知れない。彼の肌の色が、どれだけ多数の人種差別主義者や、支持者を惹きつけようが、偉大なる権力争いには無関係だ。「アメリカ史上、本当にわくわくする歴史的瞬間」は、こうしたゲームそのものが問題にされるようになった時にこそ始めておきるだろう。

記事原文のurl:www.newstatesman.com/media/2008/06/pilger-obama-truly-bush

----------

関連翻訳記事:

バラク・オバマ、二つの顔

---------

名著「アメリカ・インディアン悲史」の著者で、「闇の奥」の翻訳や、「闇の奥」の研究書も書かれている藤永茂氏のweb「私の闇の奥」記事、「オバマ氏の正体みたり(1)」「オバマ氏の正体みたり(2)」「オバマ氏の正体みたり(3)」「オバマ氏の正体みたり(4)」を、是非お読みください。

それこそ、マスコミ解説記事では決して読めない、聞けない、深い洞察に満ちています。

2008年6月13日 (金)

NATO、コソボ、アフガニスタンとパキスタン: NATOはアフガニスタンで一体何をしているのか?

Faheem Hussain

Counterpunch - 2008-06-06

NATOはアフガニスタンで何をしているのだろう? NATOがこの地域に介入する本当の狙いはなんだろう? こうした疑問をこの記事で検討してみたい。アフガニスタンで何が起きているのかを理解するためには、1999年2月のNATO軍によるユーゴスラビア攻撃にまでさかのぼる必要がある。

ソ連とワルシャワ条約が崩壊して以来、西欧とアメリカ合州国はもはや東ヨーロッパからの侵略に脅かされることがなくなったので、NATOはその存在理由を喪失した。こうしてNATOは、自らを解体するか、それとも、新たな存在理由を作り出すか、いずれかを選択することとなった。これはアメリカ合州国にとって、NATOをアメリカの帝国的利益に役立つような形に作り直す好機となった。基本文書には、NATOは防衛的組織であり、加盟諸国のいずれかの国が攻撃された場合にのみ行動を起こす、とはっきり書いてあることを覚えておくことが極めて重要だ。

NATOの性格を作り替えるというアメリカ戦略の第一歩は、民族浄化を防止するためという口実によるユーゴスラビア攻撃だった。あきらかにユーゴスラビアはどこかのNATO加盟国を攻撃したわけではなく、NATOによる反撃の余地はなかったのだ。コソボについて何を言うのも自由だが、ユーゴスラビア固有の領土として国際的に認められていた(そして今でも国際的にセルビアの一部としてみなされている)し、しかもユーゴスラビアは、どこかのNATO加盟国を攻撃してなどおらず、脅してさえもいない。

90年代のコソボ危機開始以来から明らかなように、そして1999年4月ワシントンでのNATOの50周年祝賀でも確認された通りに、コソボにおける民族浄化の防止という口実による当時のアメリカ合州国によるユーゴスラビア攻撃の狙いの一つは、アメリカ合州国の利益と見なされるものを守るため、世界の警察官として、いや、より正しくは暴漢として活動することを狙いとする、NATOの将来の攻撃的組織という役割の例を、既成事実として、ヨーロッパ諸国に与えることにあった。アメリカがユーゴスラビアとの戦争と、それに続く爆撃をひき起こすつもりだったことは明白だった。

これはどのようにして実現されたのだろう? いかなるNATO加盟国をも攻撃していない主権国家ユーゴスラビアを攻撃するというアメリカ戦略の最終段階の一つは、1999年2月23日ランブイエ合意で提案された。こうしたことから、アメリカには、コソボ問題の平和的解決を求める意図は毛頭なかったことが明らかで、彼等はミロシェビッチを、受け入れることができない立場に追い込むのが狙っていたのだ。当時のイタリア外務大臣ランベルト・ディーニの言葉を引用すれば、ランブイエ合意は、意図的に「セルビア人に屈辱を与え」、彼等がそれを受け入れられなくするようにされていた。

提案されたランブイエ合意の最悪の要点、付属文書B「多国籍軍事和平実施部隊の地位」の一部をここに書き写そう。

    3. 当事者はNATO兵員のための迅速な出国および入国手順の必要性を認識する。そのような兵員は、外国人に対して適用される、パスポートとビザ規則および登録要求から免除されるべきこと。全てのFRY(ユーゴスラビア連邦共和国、筆者)への/からの入国地点および出国地点において、NATO兵員は、自国の身分証明書の提示によりFRYへの/からの入国/出国を認められるべきこと。NATO兵員は、FRYの当局者から提示を要求される可能性がある身分証明書を提示すべきであるが、作戦、訓練、および移動がそのような依頼によって妨げられたり、遅延されたりしてはならない。

    --

    6. a. 略。

    b. 略。

    --

     7. NATO兵員は、FRY当局によるいかなる形の逮捕、尋問、あるいは拘留からも免れるべきこと。誤って逮捕された、あるいは拘留されたNATO兵員は、即時NATO当局に引き渡されるべきこと。

    8. NATO兵員は、その車両、船舶、航空機、および機器と共に、無制限の自由通行を享受し、空域や領海を含めユーゴスラビア連邦共和国全土へのアクセスを妨げられないこと。これには、野営、作戦行動(原文のまま)、兵士用宿舎割り当て命令、支援、訓練、および作戦の必要に応じた、いかなる地域あるいは施設の利用の権利を含むが、これらに限定されぬべきこと。

    9. NATOは、作戦支援の為の兵員、車両、船舶、航空機、機器、補給品、および食糧、のユーゴスラビア連邦共和国領土入国、出国、通過に対し、関税、税、および他の課徴金、および検査や、目録の提出を含む他の所定通関書類通関規則を免除されるべきこと。

    ----

    15. 当事者は通信回線の使用が作戦に必要であることを認識する。NATOは、NATO内部の郵便サービス運用を認められるべきこと。当事者は、簡単な要求があれば、NATOが作戦に必要と判断した、放送サービスを含む、全ての通信事業サービスをgrant。これは通信の完全な能力を確保するのに必要な、そのような手段とサービスを使用する権利と、この目的の為、全ての電磁スペクトルを無償で使用する権利を含むべきこと。本権利の実行にあたり、NATOはFRY国内の該当当局と協調するため、あらゆる相応の努力を払い、FRY国内の該当当局の必要性と要求に配慮すべきこと。

    ---

    17. NATOとNATO兵員は、作戦遂行にあたり、その行動から生じるあらゆる種類の申し立てから免れるべきこととする。しかしながら、NATOは申し立てを、好意ベースで検討する。

    ---

    21. 略

私はここに悪名高い付属文書の条項の一部を挙げたに過ぎない。他の条項もほぼ同じ類だ。付属文書全文が一読に値するものだ。これは、例えばイタリア駐留の米軍が享受している特権の一部だ。(アメリカ政府とイラクのマリキ傀儡政権の間で提案されている新たな秘密協定は、もっとずっと酷い)。ランブイエ合意はユーゴスラビアの主権に対する攻撃であり、NATOがユーゴスラビアを完全に乗っ取りたがっていたことは明白だった。上記条件は、主権国家にとって、明白に全く受け入れられないものであり、こうした条件は、ミロシェビッチを、そうしたものを受け入れることができないように追いやり、セルビア爆撃が開始できるようにすることが明らかだった。事実、まさにそれが、実際に起きたことなのだ。

これは明白であり、これにまつわる証拠はたっぷりあるのだが、この記事があまりに長くなりすぎるのでここに引用はできないものの、対ユーゴスラビア攻撃は民族浄化を防ぐこととは全く何の関係もなく、ひたすらアメリカの絶対的命令を受け入れない国家の懲罰という問題だったのであり、NATOの役割改造に向けた重大なステップだった。

注意深いパキスタンの読者なら、NATOによる78日間のユーゴスラビア爆撃に先立って提案された1999年のランブイエ合意提案と、パキスタン人軍事アナリストで、イスラマバード戦略研究所(ISSI)の元所長シリン・マザリが暴露した、アメリカ合州国が最近パキスタン政府に対して行った一組の要求(ザ・ニューズ紙 2008年3月8日)との間の、気味悪い類似点にお気づきになるだろう。誰も確信を持つことなどできないが、私としては、当時のムシャラフ政府も、現在の政府も、パキスタンの主権を否定するそうした要求を拒否したであろうことを望みたい。新たな「民主的」政府が、彼女がアフガニスタンにおけるNATO駐留に反対し、この地域におけるアメリカ政策を批判していることを理由に、マザリ女史をISSIの筆頭職から追い出せというアメリカの圧力に屈してしまったのではないかと私は懸念する。

爆撃が開始される一日前にセルビア議会が協定に合意したにもかかわらず、これは意図的に無視されたことは指摘すべきだろう。もうひとつ重要なのは、78日間の爆撃後、コソボからのユーゴスラビア撤退を承認する最終的協定では、ランブイエ合意に押し込められていたものより、ずっとわずかなことしか達成されなかったという事実だ。ずっとわずかなことしか受け入れられなかったのであれば、爆撃の真意は一体何だったのだろう? これは当時も明らかだったし、現在ましてなおさら明らかなのだが、主な狙いは、東地中海と中央アジアの石油パイプライン経路を支配するというより広範な戦略の一部として、NATOの本質を変更することにあったのだ。

NATOの役割を、アメリカ海外政策の侵略武力に作り替えるという目標は、ワシントンでの会議で実現された。1999年4月24日、新たなNATOの誕生は、19の国家元首と政府により、以下の表現で承認された。

    この新たな同盟は、より大規模で、より強力で、より柔軟に、集団防衛に関与し、新たな任務を引き受けることができるが、任務の中には、危機に対応する作戦を含め、危機管理に対する積極的なコミットメントがある。(ワシントン・サミット・コミニケ、1999年4月24日)

こうして新しく生まれた生物は、遺伝子工学操作の果実だ。1949年4月4日の条約の第5条に基づいて、その加盟諸国が(武力によって)、北大西洋地域内で攻撃されているいかなる加盟国をも支援することを認可するという同盟が、新たな「戦略概念」に基づき、加盟諸国が同盟の領土外でも作戦を遂行することに責任をもつ(5条にあたらない作戦)同盟へと変身した。これは1999年4月24日に元首と政府により承認された文書「同盟の戦略概念」で何度か強調されている。例えば31条にはこうある。

    NATOは、他諸機関と協力のもとに、紛争を予防し、あるいは、危機が生じた場合、5条にあたらない危機対応作戦を遂行する可能性をも含め、国際法に合致する、危機の効果的な管理に貢献することを追求する。(同盟の戦略概念、1999年4月24日; 防衛能力イニシアチブ、1999年4月24日)

国際法を尊重するという隠蔽をはがせば、そこにあるのは、世界中で、好きなように作戦を遂行するというNATO本当の狙いだ。

NATOの狙いに関するあらゆる疑念を払拭しようとして、クリントン大統領は、1999年4月24日の記者会見で、北大西洋同盟諸国は、適切な状況において、NATO加盟国の領土外の地域紛争に立ち向かう体勢にあることを再確認したのを明らかにした。(筆記録: クリントン、NATOは国境を越えて介入する可能性があると発言、1999年4月24日)

NATOが介入する用意のある地理的な領域はどのようなものかという質問に対し、「NATOがどれだけ遠い距離まで、兵力を投入しようと意図しているかについては、大統領は、それは地理的な問題ではないと言って、明言を避けた」。言い換えれば、ヨーロッパの国境内に限らず、そうした国境を越えて、中東、アフリカやインド洋といった他地域にまで、兵力を投入することをNATOは意図しているのだ。NATOはその利益が脅かされたと感じたら、国連と協議することなしにいつでも、世界のどこにでも介入する権利を自らに与えたのだ。最大かつもっとも危険なならずもの国家、アメリカ合州国に率いられ、NATOは世界中の平和に対する最大の脅威となるべく本格活動を始めた。現代ヨーロッパで見られた、驚くべき、かつ胸の悪くなるような光景の一つは、これらのいわゆるデモクラシー諸国が、この新たなNATOを、ヨーロッパのどの国の国会における論議も無しに。まるであたかも、NATOに対する忠誠(それはすなわち、事実上、アメリカの絶対的命令への服従だ)が、他の全ての国家主権やデモクラシーに関する事項類を、はるかに超越するものであるかのごとく受け入れたことだ。元共産党員で当時のイタリア首相マッシモ・ダレマは、NATOに対するコミットメントと忠誠心ゆえに、イタリアは参戦しなければならないのだと発言した。ニュルンベルク裁判では、人道にもとる行為を犯しつつ、命令に従うという原理が、犯罪の減算要素としては受け入れられなかったことを、彼はたぶん忘れていたのだ。

アメリカのあらゆる侵略的帝国主義政策に対し、人はブッシュや彼の郎党を非難しがちだが、上記の全てが起こったのは、不当に称賛されていたクリントンと、イラクに対する当時の禁輸措置の結果として、50万人のイラク児童が死亡したことが、サダムを排除するために支払う代償として正当化できるものだ、という発言で悪名高い国務長官マデレーヌ・オルブライトのもとでのことだったのは、時節柄、記憶に値する。全てのアメリカ大統領がそうした政策をとってきたことを、私たちは忘れがちだ。ブッシュや彼の郎党が諸手を挙げてNATOの新たな役割を受け入れていることでもこれは明らかだ。実際にこれが最近のルーマニアにおけるNATO加盟諸国首脳会合で再度強調され、NATOの役割は「世界的遠征軍」だとブッシュは明言した。世界の未来にとって悪い前兆となる恐ろしい言葉だ。

ユーゴスラビアは、もちろん、ランブイエ合意によってなされた要求を受け入れることはできず、実際に受け入れず、それゆえ野蛮な爆撃を受ける羽目となった。セルビア爆撃は、領域外のNATO行動の承認であり、アメリカの侍女としての、NATOのアフガニスタン関与の前触れだった。そもそもNATOは決してアフガニスタンに入るべきではなかったし、多くのヨーロッパ諸国が、自国の兵士をそこで死ぬべく派兵するのに乗り気でない様子なのは結構なことだ。アフガニスタンで起きていることは、何百人もの無辜の人々が、アメリカとNATO軍による無差別爆撃によって、またタリバンの報復やレジスタンス爆撃で亡くなっているという悲劇なのだが、NATOはアフガニスタンでの戦争で敗北するであろうということだけは確実だ。これが良いことであるのは、そのおかげでNATOが冷戦後世界における自分の役割を再考し、おそらくは、もし我々に運が向いていれば、NATOは将来解体される可能性もあるからだと期待したい。アフガニスタンにおけるNATOの勝利は、この地域にとっても、世界にとっても破滅的だ。勝利すれば、ブッシュが指定したグローバルな「遠征軍同盟」というNATOの役割を奨励することになる。4月のブカレストにおけるNATOサミットでブッシュはNATOについてこう語った。「NATOは今や遠征軍同盟だ。つまり何百万人もの人々の自由と平和の未来を確保する手助けとして、軍隊を世界中に派兵するのだ。」言い換えれば、新たな「白人の責務」、つまり自由と平和の推進の為という口実で、他の貧しい南の国々に介入し、侵略するのだ。イラクやアフガニスタンの国民は、そうした、いわゆる自由と平和は、もうたくさんなのだ。それゆえに、NATOがアフガニスタンで敗北することが必要なのだ。

アフガニスタンからの外国軍隊全面撤退後に、アフガニスタン軍との間の交渉による和解というのが、アフガニスタンでの唯一の解決策なのだ。NATO軍の撤退は混乱、より多くの死、アフガニスタンの再タリバン化を招くと語る人々がいる。だが、真実は、外国軍隊の駐在こそが、アフガニスタンにおける暴力の主要因の一つなのだ。アフガニスタンにおいて、これ以上、一体どのような混乱と破壊があり得るだろう? アメリカとNATOが喧伝する全ての目的は死に果てた。当地にはデモクラシーなど存在せず、カルザイはアメリカの傀儡で、軍閥の長たちが実権を握っており、安定欠如の度合いは増し、自動車爆弾は日常茶飯事となっている。パシュトゥーン人は、他の人々と同様に、外国による彼らの土地の占領を決して認めず、タリバンが、パシュトゥーン人の民族的感情を巧みに動員して、外国軍隊と戦闘するように仕向けたことは明白だと私には思われる。

NATOがアフガニスタンの武装勢力を打ち負かせそこねた後、アメリカはパキスタンは、パキスタン国境地帯で、タリバンやアルカイダのための聖域や訓練キャンプを提供しているといって非難している。しかし、これは以前にも聞いたせりふだ。アメリカは、イラクで武装勢力を支配できないと、イランやシリアがイラクの武装勢力を訓練したり、武器を供与したりしているといって非難している。だが、これは一層奇妙な話だ。アメリカがベトナム人革命家たちを打ち負かすことができなかった時、アメリカは近隣のラオスやカンボジアに、訓練キャンプや聖域があると言ったのを、記憶力の良い方々なら覚えておられよう。1969年から1973年にかけての、カンボジアへの残酷な爆撃を覚えておられよう。この爆撃は、アメリカがベトナム人民族主義者を打ち負かす助けとはならず、この戦争の間に殺された三百万人のベトナム人に加え、10万人以上のカンボジア人死者をもたらした。今や連中は、怪しげな「諜報情報」に基づき、ワジリスタンの、いわゆるアルカイダやタリバンを爆撃し、何百人もの無辜の人々が殺害されており しかも、これに対して、わが国の選出された議員たちは、黙認とは言わずとも、反対の一言もない。

かけられ通しのアメリカからの圧力にもかかわらず、最初の課題の一つとして、イスラマバードの新政府がアメリカの「対テロ戦争」へのパキスタンの関与の見直しに着手したのは良い兆しだ。この関与は既に、辺境地帯での死や破壊、軍内部における幻滅、そして主要都市での自爆攻撃をひき起こしている。一月に、アメリカとムシャラフ政府との間で、パキスタン国内で無人偵察機基地を提供し、無人機の操縦者は、今や「確かな」諜報情報に基づくのではなしに、疑念を持った時点で発砲することを認可されるという、無人航空機の交戦規則を変更する秘密取引がなされたといううわさがある。選挙で選ばれた政府に、一体そのような秘密取引があったのかどうか、そして、もしもそういうものがあった場合、政府はそうしたを否認するつもりなのかどうかを聞いてみたいものだ。すでにCIAとFBIはパキスタン内で自由に活動しており、アメリカ人は、軍と民兵に対する指導者を装った地上部隊を受け入れるよう我々に要求している。連中はパキスタン軍に、対ゲリラ作戦を教えたがっている。これほど険悪な状況にある以上、ベトナムのゲリラとの戦闘や、現在のイラクやアフガニスタンにおけるアメリカ軍の失敗を考えるだけで、まことにもって、こっけいなことだろうに。一体どのような手法を、パキスタン軍に教授するつもりなのだろう? ベトナム戦争最高の伝統としての大規模爆撃と集団懲罰だろうか?

現在の政府が、いわゆる「対テロ戦争」から距離をおくという動きに恐る恐る踏み出し、適切にも、ワジリスタンの人々に語りはじめたとは言え、まだ十分な行動とはいえない。政府は、アメリカ合衆国に、はっきりと、アフガニスタンとパキスタンの辺境におけるアメリカの政策は破綻したことを告げなければならない。そうした政策は、ひたすら、死、破壊とテロの拡散しかもたらさない。アフガニスタン問題に対しても、パキスタンにおけるイスラム教徒の先鋭化現象の激増に対しても、純粋に軍事的な解決策などない以上、唯一の解決法は、全ての外国軍隊がアフガニスタンから退去すること、そしてアメリカが、パキスタンへの介入を止めることだ。これらの軍隊がこの地域から去りさえすればその時に、まさに唯一その時にのみ、政治的解決策に至ることが可能となろう。パシュトゥーン人は、明らかにイスラム法学者やら過激派に対して反対投票したが、同時にムシャラフをも拒否したことは、この地域におけるアメリカの破滅的な政策とのパキスタンの強制結婚を、パキスタン国民が拒否したという証しでもある。きっぱりと離婚する時期なのだ。

Faheem Hussainは、パキスタン、ラホールのラホール経営科学大学、理工学部の物理学客員教授。

記事原文のurl:www.counterpunch.org/hussain06062008.html

付属文書は、引用されているものの一部だけを翻訳してある。

----------

意図的に「屈辱を与え」、それを受け入れられなくするようにされていた。

という文章で、ハル・ノートを思い出した。

それは地理的な問題ではないと言って」というのもどこかで聞いたセリフだ。

「日本周辺地域における事態で、日本の平和と安全に重要な影響を与える場合」であるとされたが、その概念は、「地理的なものではなく、事態の性質に着目したものである」としている。

周辺事態法。1999年5月24日に可決・成立、同月28日に公布。

1999年4月24日の新NATOの誕生と、ほぼ同時期。

上記記事、固有名詞を置き換えれば、そのまま日本の話のように読める。

「これは、例えば日本駐留の米軍が享受している特権の一部だ。」

武力は根本解決策にはならない。根本的対策は他にあるはずだ。

本来は医師でありながら、病気を減らす根本策は水の確保にあると考え、長い年月をかけてアフガニスタンで用水路を掘ったペシャワール会の中村哲氏

この人に聞きたい」マガジン9条インタビュー

最新刊「医者、用水路を拓く」の説得力は素晴らしい。日本という国家がイラク派兵にかけた予算より二桁もすくない費用で、大規模な用水路を開拓し、何桁も多いアフガニスタン人を救っている。「医者、用水路を拓く」「医者、用水路を開く」で検索すると、数多くの素晴らしい書評が読める。

また、中村哲医師講演会の様子は、例えば下記で読める。

医者、用水路を拓く、中村哲の生き様を学ぶ

ペシャワール会中村医師「丸腰だから現地の人に伝わるものがある」JanJanニュース

中村氏、自衛隊派兵となれば、安全が保障されなくなるので、医療、用水確保活動に関わる日本人スタッフを全面撤退せざるを得ないと発言している。下記は西日本新聞記事。

陸自派遣なら邦人撤退 ペシャワール会アフガン支援 現地活動停止も

彼は国際治安支援部隊(ISAF)にも、きっぱり反対している。

マスコミ、秋葉原事件や、マンション行方不明事件を熱心に報道するが、アフガニスタン派兵の可能性についての報道はあまりしてくれない。もとより期待などしていない。

アフガニスタン:陸自派遣を視野に調査団を近く派遣 政府

この毎日新聞記事の一部を引用しよう。

アフガン支援では、現在実施しているインド洋での給油活動の根拠となっている新テロ対策特措法が来年1月に期限切れとなる。民主党は同法に反対したが、一方で小沢一郎代表が、アフガン本土で活動中の国際治安支援部隊(ISAF)参加に前向きな考えを示したことがある。このため、陸上での活動を可能にする同法改正を視野に、民主党の理解をとりつけたい思惑もあるとみられる。

民主党、名前の通り、アメリカ二大政党のコピーのようだ。

繰り返そう、中村氏は国際治安支援部隊(ISAF)にも、きっぱり反対している。

ペシャワール会

2008.08.20追記 以下は共同通信のニュース ただし、ストライクアウト、太字、斜体は、当方による勝手な訂正。

米大使が海自の給油継続を要請  麻生幹事長に

 シーファー駐日米大使は20日、自民党の麻生太郎幹事長を党本部に訪ね、インド洋での海上自衛隊による給油活動を継続するよう要請した。麻生氏も給油継続の重要性を指摘した。

 大使は会談後、記者団に「日本の給油活動は日米同盟だけでなく、日本と国際社会の関係重要だ」と述べ、継続に必要な新テロ対策特別措置法改正案の臨時国会での成立に強い期待感を表明した。

 同時に「アフガニスタンが日本のような属国民主主義の国になるようほかの形での貢献も期待している」と、日本の追加的な支援の必要性に言及した。大使は9月の民主党代表選の結果が出た後に新代表と会い、給油継続問題について意見交換したいとの考えも示した。

----------

「NATO=アメリカ帝国の道具としての世界遠征軍」に関する関連翻訳記事

いっそNATOを廃絶しては?

----------

もともとタリバンの活動が激しくなかった場所で、アフガン給油法延長議論が始まるというタイミングで、08年8月27日、「とうとう」ペシャワール会の日本人メンバー誘拐殺人がおきた。自分たちの健康を守り、治水をし、新たな商業作物の導入を指導してくれる武器をもたない人を、タリバンが、あるいは盗人が、殺す理由があるのだろうか?

早速、これを奇貨として、世界遠征軍に加わるべく、日本からの軍隊派遣を言い出す人物があらわれた。予想はできたことだが、実に不謹慎。アメリカ留学体験などなくとも、実質、日本版サアカシュビリ予備軍の一人。せめて、こういう人物を続々と生み出す松下政経塾を作った家電企業の製品、たとえ会社名が変わっても、極力買わないようにしているのが、貧乏人のささやかな抵抗。家電を売っていても、行動様式は「死の関西商人」。

と思っていたら、アメリカ留学組の山本一太議員も言い出した。これまた日本版サアカシュビリ予備軍の一人。こういう人物が、選挙で選ばれるというのだから、そういう投票を喜んでするように洗脳し続ける、属国化政策の徹底に感心するしかない。それをいうなら、一番売国的だった首相の息子も、現在アメリカで洗脳教育中だ。間もなく、親を継いで、海軍基地の町から選出されるだろう。

2008年6月 7日 (土)

イラク、アメリカとの安保条約を拒否

PRESS TV

2008年6月3日 03:25:48

イラク副大統領タリク・アル-ハシェミは、提案されているアメリカ合州国との安保条約にイラクは反対していると表明した。

五日間のヨルダン訪問を月曜日に終えるアル-ハシェミは現在バグダッドとワシントンの間で交渉されている「条約案を拒否するというイラクの国民的合意がある」とDPAは報じている。

2008年以降、イラクでのアメリカ軍の駐留を規定するためにイラク政府とアメリカ合州国間で合意に達したと言われている条約案についての質問に、彼が答えたもの。

イラク副大統領の条約への反対発言は、提案されている条約が、イラクの宗教、政治指導者によって攻撃の的になっている最中に行われた。

イラクで最も尊敬されているシーア派の聖職者大アヤトラ、アリ・アル-シスタニもやはり安保条約に反対し、自分の目の黒いうちは、イラクが「占領者アメリカ」とそのような条約に署名することなど許さないと繰り返した。

イラク人の反米聖職者ムクタダ・アル-サドルは、提案されている条約は「イラクの国益に反する」と述べ、条約が破棄されるまで、金曜日の礼拝後に、毎回抗議しデモをするようイラク人に呼びかけている。

「イラクは、その主権を害し、イラクの利益に反するような、いかなる方策も受け入れない」とアル-ハシェミは月曜日アンマンでのヨルダン科学文化協会での演説で語った。

彼は、イラクが「危険な課題に直面している」ことに言及した上で、イラクを助ける上で、イラクが現在の苦境から抜け出し、国家的和解を作り上げるために、アラブ諸国は効果的な役割を果たすことができると述べた。

訪問の間、イラク副大統領は、国王アブドゥッラーII世とナデール・ダハビ首相と会談し、明らかに、両者に対し、ヨルダン大使館再開のため、バグダッドに大使を送るよう説得を試みた。

この地域のアメリカに同盟するアラブ諸国は、ワシントンの要求にもかかわらず、これまでのところバグダッドでは大使館を開設していない。

MGH/DT

関連記事(英文):

'US bribing Iraqi MPs to sign deal'

Iraq rejects US security pact version

'Ayatollah will not allow US-Iraq deal'

記事原文のurl:www.presstv.ir/detail.aspx?id=58467&sectionid=351020201

---------

関連翻訳記事:

ア メリカ、新安保条約で、イラク国内からいかなる国への攻撃も可能に

---------

日本で、与党やエセ野党(民主党)の幹部政治家や、大手宗教団体の方が、同じような発言をしていただいていれば、貧者の一灯、ささやかな献金をするのにやぶさかではない。

どなたか、そういう例をご存じであれば、お知らせ頂きたい。

「普通の国」というのは、アメリカや国連の言いなりに、外国に傭兵を送り出して、殺したり、殺されたりすることが可能な(属)国という以前に、まずは「独立国家」のことだろう。

名著「空虚な楽園」の著者、ガバン・マコーマック教授が現代日本を論じた2007年新刊の題名はまさに、Client State、「=属国」。

本書の紹介には「従属国―アメリカに抱きしめられた日本」 等がある。

日本語翻訳は下記。

----------

属国
米国の抱擁とアジアでの孤立
ガバン・マコーマック[著]
新田 準[訳]
凱風社
定価2500円+税
四六判 336頁 並製
ISBN978-4-7736-3213-2 C0031

アメリカ、新安保条約で、イラク国内からいかなる国への攻撃も可能に

特派員Basil Adas

公開: 2008年6月3日、13:42

バグダッド: 提案されているイラク-アメリカ安保条約は、同国におけるアメリカ軍の永久基地と、アメリカ合州国が、イラク領土内から、アメリカの国家安全保障への脅威とみなすいかなる国をも攻撃する権利、を認める項目を含んでいることを、ガルフ・ニューズは突き止めた。

イラク軍幹部筋は、ガルフ・ニューズに、物議をかもす長期的条約には三つの大きな項目が含まれているようだと語った。

その条約のもとで、国防省、内務省および国家安全保障省といったイラクの治安機関と、兵器契約は、10年間アメリカの監督下におかれる。

条約はまた、アメリカ軍に同国における永久軍事基地と、更に、世界の安定に対する脅威、あるいはイラクまたはアメリカの利益に反する動きをしていると見なされるいかなる国に対しても、行動する権利を与えそうである。

軍事筋は「この条約によれば、アメリカ軍はイラク領土に永久軍事基地を保持することになり、それにはシリア国境に近いバグダディ地域のアル・アサド軍事基地、イランに近い北部バグダッドのバラド軍事基地、都市ファルージャに近いハバニヤ基地、およびイラン国境に近い南部の州ナシリヤにあるアリ・ビン・アビ・タリブ軍事基地が含まれる。」と補足した。

同筋は、アメリカ軍が、永久基地のための軍事施設や滑走路の建設を完了する過程にあることを認めた。

彼はまた、キルクークとモスルのアメリカ空軍基地がアメリカ軍に所有されるのは3年以内だとも付け加えた。しかしながら、アメリカ人はキルクーク基地を永久基地リストの中に入れようと頑張ったとも彼は語った。

同筋はまた、アメリカ軍がイラク国内の永久基地に駐留する限り、イギリス軍の一旅団がバスラ国際空港に10年間駐留する予定だと語った。

イラク領土内のアメリカ軍が、アメリカが脅威と見なす、いかなる国に対する軍事攻撃をも開始することを認めるという、この物議をかもす条約の第二項は、主にイランとシリアに対して向けられていると、イラク人アナリストは語っている。

過去数日間、イランはイラク-アメリカ安保条約を、深刻に懸念しており、更に、主としてイラン寄りの有力なシーア派指導者、ムクタダ・アル-サドル派の運動が、条約に反対する宗教上のファトゥワを発したり、デモを呼びかけたりしている。

記事原文のurl:www.gulfnews.com/region/Iraq/10218150.html

----------

アジアでは日本に負わせている不沈空母役、中近東ではイラクに負わせようということか。

一方、Press TVで6月3日付け「イラク、アメリカとの軍事条約を拒否」

という記事がある。

本当なら、イラクの方が属国の程度が低いことになる。

'Iraq to reject US defense pact'

Tue, 03 Jun 2008 03:25:48

www.presstv.ir/detail.aspx?id=58467&sectionid=351020201

該当記事の翻訳:

イラク、アメリカとの安保条約を拒否

日本という(属)国、憲法より上に位置する「安保」占領条約支配下にあって長い。

「押しつけられた憲法を改憲(壊憲)する!」と、与党やら陰与党の政治家たちは威勢の良い声をあげ、マスコミもそれを取り上げるのに、そうした政治家やマスコミ、「押しつけられた安保廃棄!」とは口が裂けても言わない

ソ連なき後、用済みになったはずの「安保」、廃絶かと思いきや、グローバルで便利な「テロ戦争」が、好都合に出現したおかげで、米日軍は「安保」すらも、はるかに乗り越える再編成。不沈空母国家はますます住みにくい要塞化。

戦闘中の要塞は強化しても、要塞に女子供老人は不要。米兵がオーストラリア女性を強姦した慰謝料は国民の税金で払い、再編にかかる費用には気前が良く、永久基地にかかる費用には「思いやり予算」すらとる。

要塞に不要な老人は、邪魔ということで後期高齢者医療制度(国営うば捨て山制度)

敗戦間近の沖縄における軍と民間人の関係、今や全国的に展開中。

韓国や中国とは違って、何があっても反政府デモなど起こらない国の政治家を、李明博大統領や胡錦濤主席は羨ましがっているだろう。

2008年6月 5日 (木)

人道的介入という暴力的愚行:西欧の妄想

Jean Bricmont

2008年5月27日

Counterpunch.org

なぜある人々が、本気でイラク戦争など「容易なこと」だと考えたのかを理解することは可能だ。まず、第二次世界大戦を考えてみよう。アメリカは、ドイツと日本を、民間人を含め、情け容赦なく爆撃し、これらの国々を軍事的に占領し、ほとんど完全な支配を押しつけた。それなのに、現在、ドイツと日本は、世界の中で最も信頼できるアメリカの同盟国だ。この同盟がどれほど深いものか、またどれほど長く続くかは今の時点ではわからないが、当面の所はそれが現実だ。

さて、冷戦について検討してみよう。かつて、ポーランドからブルガリアに至るまでの国々の政府は、アメリカに敵対的だったことを覚えておられよう。今や、彼等は、ひたすらNATOへの統合、高度なアメリカの対ミサイル防備システムと、イラク占領への参加を望んだのだ。あるいは更に驚くべきこととして、さほど遠からぬ昔、アメリカがベトナムを猛烈に爆撃し、何百万人もの人々を殺害し、環境を汚染したのに、アメリカの投資家がベトナムで諸手を挙げて歓迎されていることを考えて頂きたい。

彼らの小さな国を1999年に爆撃した後でさえ、セルビア人は期待通りに振る舞い、ミロシェビッチを選挙で追い出し、少なくともしばらくの間は、親西欧的な政府を受け入れ、自らの国への爆撃を、あからさまにではないにせよ、暗黙のうちに承認した。

こうした全ての結果、西欧、特にインテリ層の間で、(必ずしも、「特に」ではないにせよ)リベラル、あるいは左翼的知識人の間でさえ、大いなる西欧の妄想とでも呼べる支配的な世界観を生み出している。この見方によれば、世界、特に第三世界は、政治独裁者や 経済的に管理の下手な連中が支配する自国政府によって抑圧されている人々に満ちており、これら国民は良き、民主的で、リベラルな、開放市場の西欧によって、援助されたり、支持されたり、あるいは解放されたり(もし必要であれば軍事的手段によって)することだけを期待しているのだ。こうしたことから、左翼の大半が、数あるなかの、ウクライナ、ベラルーシ、レバノン、ジンバブエにおける「民主革命」や、中国国内の人権運動やチベットの独立を支持することになっている。

これが妄想だという理由は、二十世紀における根本的な変化、少なくとも、最も長期的に持続する衝撃をもっている、あるものを見おとしているためだ。それは、もはや過去に属することといえるファシズムあるいは共産主義の歴史ではなく、非植民地化だ。この動きは、人種差別主義者の支配というとりわけ暴虐な形から、何億人もの人々を解放しただけでなく、16世紀末以来、世界史における支配的な傾向であったもの、つまりヨーロッパ拡張の動きをひっくり返したのだ。二十世紀、ヨーロッパは衰退し、世界システムの中心としてのヨーロッパにアメリカが置き換わったが、そう長くは続くこともなさそうだ。

それさえ理解してしまえば、現代の妄想の源を理解するのはむしろたやすい。ドイツと日本は、第二次大戦前は帝国主義勢力であり、その理由もあって、強烈な反共産主義者だった。そこで、戦後アメリカが、そうした国々のエリートに対して進めたのは、基本的に、連中がそれまでしてきたこと、つまり共産主義との戦いを、比較的平和な手段で、アメリカの指導の元で、続けることだった。これは敗北した両国にとり、第一次世界大戦後の同盟国に対するヴェルサイユ条約よりも、遥かに受け入れやすい「解決策」だった。これが、なぜ第二次大戦後のドイツと日本におけるアメリカの政策が相対的に成功し、すくなくともこれまでのところは、むしろ安定した同盟に至ったのかの説明になる。

同じような考え方が、冷戦における「勝利」にもあてはまる。ソ連のアキレス腱は、常に東ヨーロッパ支配だった。実際東ヨーロッパの諸国民たちは自分を「ヨーロッパ人」と思っており、エリートたちは、「文明化した」 西欧を羨望のまなざしでみつめ、「野蛮な」東から目をそむけていた。そこで、彼らを「支配」することは、ソ連にとり、常に悩みの種だった(1953年の東ドイツから始まり、1956年のハンガリー 、1968年のプラハ、ポーランド等々)。そしてもちろん、アメリカを1989年以後熱烈に歓迎したのは、これらの国々だった。だが、その熱意は基本的に、西部ウクライナにまで広がり、そこで止まっている。ロシア人も、旧ソ連圏のアジア諸国も、自分をさほど西欧とは思っておらず、自分たちが決して「西洋」の一部とみなされまいことも分かっている。

そしてこれは、中国、中南米あるいはイスラム教世界には、ましてあてはまる。今日のイラクやアフガニスタンに対し、アメリカが戦争の代償として提供できるものに、何ら「前向き」なものはない。2002年にシリアを旅行していた時に、一人の(ある意味で親西欧的な)小柄なビジネスマンが私に話した「地域の人々の80%は、サダムに去って欲しいと願っていますが、もしも彼を撲滅するのがアメリカであれば、アメリカは100%の人々を敵に回すことになるでしょう。実際の所、かつてはトルコが我々を支配し、次にイギリス、 フランス、そして今やイスラエルです。我々はもはや植民地主義などいらないのです。」。彼は全く正しいのだが、この明白な真実は、当時西欧で反戦派の人々の間ですら(ブッシュよりは、より穏やかで、非軍事的な西欧の介入をよしとすることが多い)理解されることは稀だった。

現代西欧左翼の主な弱みの一つは、まさにその世界観に、第三世界で、デモクラシー支持や人権支持や少数派支持のキャンペーンに熱烈に乗り出す際に、植民地主義の消滅を十分に考慮していないことにある。そのようなキャンペーンの最も新しい例は、特にパリで猛威をふるっている、中国でのオリンピック大会をめぐる騒動だ。パリは昨今そうした「人道的」帝国主義 (当地では、マルクス主義と、68年代のえせ革命主義の両方に置き換わっている)の首都となってしまった。問題は「フリー・チベット」運動が正統であるか否かではなく、あるいはダライ・ラマが元奴隷所有者で、CIAの手下であるかどうかですらなく、もっと基本的なことだ。「我々」(西欧の左翼)は、そこで一体何を実現しようとしているのかだ。中国はセルビアではなく、爆撃されて服従するようなことにはならない。中国が西欧に依存する以上に、我々の方が中国に経済的に依存しているので、(人道主義的左翼お好みの手段の一つ)経済制裁も有効ではあるまい。

ちょうど我々が第二次世界大戦やホロコーストを覚えているのと同様、中国も外部の強国に従属したり、国土分割されたりしたことを覚えている。中国はまた「二度とさせない」とも言っている。中国は、我々の今のチベットをめぐる騒動を、明らかに(正しかろうと、誤りであろうと)西欧による過去の政策の継続とみている。しかも、それは彼等の政治的信条とは無関係に、中国全体にあてはまる。チベットに対して我々ができる最善のことはと言えば、我々は世界のこの部分については、帝国主義者的な野望を持っていないということを、中国に請け合うことだ。しかしチベットをめぐる騒動やら、中央アジアにおけるアメリカ軍事基地の設置やらで、まさに反対の方向に進んでいる。

もちろん、介入するたびに、反体制派あるいは少数派の人々が、あきらかに「我々の側につく」のを目にすることになる。だが殆どの場合、例えば、コソボのアルバニア人民族主義者やイラクの現在の支配者のように、それは単に彼等がアメリカの権力を使って自分たちの狙いを実現しようとしているという理由だ。しかし、コソボで民族的に純粋な国家を作り上げる、あるいは、イラクにイスラム国家をうちたてる、といった目標は、必ずしもアメリカ支配者(西欧の妄想をも患っているのだが)のそれと一致するとは限らず、西欧左翼のより広義の目標とは、まして一致するまい。

対抗する国家を弱体化させるために、帝国主義者がいつも使っている「少数派への支援」は、連中の最も無責任な政策の一つだ。帝国が撤退し、自分たちのことを裏切り者と見なしている隣人たちと一緒に暮らすはめになった時、実際そうした少数派に何が起きるだろう? アメリカが撤退した後、ラオスのモン族に何が起きたろう? あるいはドイツ敗北後の東ヨーロッパにおける親ドイツ集団には?

西欧の左翼がすべきことは、世界の状況についての現実的な見方を促進すること、そしてそのような現実主義に基づく海外政策なのだ。今や「現実主義」というのは、左翼の耳にはおおかた汚らわしいものに聞こえてしまうものだ。しかし、これは全て現実主義的な分析が、どういう結果をもたらすかにかかっている。ある国が、自分が極めて強力だと思っており、実際にそうである場合(過去何世紀もの間、西欧対それ以外の世界の関係がそうであったように)、現実的な政策は、暴虐的略奪となる可能性がある。しかし、ある国が自分で思うほど強力ではない場合には、より現実主義的になれば、より慎重な政策をもたらすはずだ。もしもヒットラーが「現実主義者」であったなら、彼は第二次世界大戦を始めなかっただろうし、決してソ連を侵略しなかったろう。もしもアメリカがより現実的であったなら、60年代初期に、ベトナム戦争を拡大していなかったろう、2003年のイラク侵略もしなかったろう。しかも、現実主義は、なんら石油を生産せず、膨大な費用がかかり、しかもアメリカに対して大変な敵意を生み出しているイスラエルを、アメリカが絶えず支持するのをやめる方向に向かわせるだろう。

皮肉なのは、こうした物事における、最も進歩的な立場(少なくとも客観的には)が、往々にして、人道的な理由から、ボイコットや経済制裁(あるいは戦争)するよりも、開かれた貿易を好む資本家たちのものであることだ。もちろん、社会的あるいは経済的理由から、貿易を含む、資本家の権力の制限を支持することも可能だが、国際関係に関する限り、左翼は同様な立場を支持すべきで、それは中立主義的な動きの一つでもあるが、つまり相互協力と(国連決議に基づかない)一方的な経済制裁の拒否だ。

アメリカと西欧のエリートの問題は、単に彼等が、自分たちの利益のために、暴力的な政策を進めるためではなく、むしろ彼等が、その果てしない傲慢さゆえに、自分たちの利益に逆行するような暴力的な政策をも進めることにある。私たちはもはや世界を支配してはおらず、この事実を受け入れなければ、大変な苦難を受けることになろう。「人道的」介入を奨励するのではなしに、左翼は、世界における武力関係のより現実的な評価や、対話に基づく政策、国家主権の尊重と非介入をこそ助長すべきなのだ。

Jean Bricmont

ベルギーで物理学を教授しており、Brussels Tribunalのメンバー。新刊書「Humanitarian Imperialism」がMonthly Review Pressから刊行されている。

連絡先は jean.bricmont@uclouvain.be.

記事原文のurl:www.counterpunch.org/bricmont05272008.html

« 2008年5月 | トップページ | 2008年7月 »

お勧め

  • IWJ
    岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

カテゴリー

ブックマーク

無料ブログはココログ