ブッシュ政権、ビルマ・サイクロン惨禍の悪用にうごく
2008年5月7日
Joe Kay
World Socialist Web Site
ブッシュ政権は、早速ビルマ(ミャンマー)の壊滅的惨事の活用につとめている。ブッシュ政権は、先週末ビルマを襲い、少なくとも20,000人が亡くなり 更により多数が亡くなっている可能性が高いサイクロン禍を、アジアにおけるアメリカの海外政策方針を強引に押し進める好機としてとびついた。
火曜日、ブッシュは、ホワイト・ハウスで、ビルマの反体制派指導者アウン・サン・スー・チーに連邦議会金メダルを授与する法案に署名をする特別式典を行った。破壊された国への、当初のしるしばかりの金額を越える、いかなる支援支払いについても、意図的に挑発的な条件を課するために、彼はこの機会を活用した。
「アメリカ合州国は、初期支援貢献はしたが、もっと支援したいと考えている」ブッシュは宣言した。「我々は、アメリカ海軍という資産を動かして、亡くなった人々の捜索、行方不明者の捜索、状況の安定化を支援する用意ができている。だが、そうするためには、軍事政権は、アメリカの災害査定チームの入国を受け入れなければならない。」
これまでの所、アメリカ大使館は、一人のソマリア人反抗者を殺害するのに、アメリカ海軍が先週使用したのと同形のトマホーク巡航ミサイル一発の半分にも満たない、わずか25万ドルの支払いを承認している。火曜日遅く、政権は、更に三百万ドルをアメリカ国際開発庁の災害対策チームに割り当てると約束した。
アメリカが、ビルマへの支援を、アメリカによるある種の要求を満たすことを条件にしているという事実そのものが非道だ。ブッシュは、なぜ更なる支援を行うために、アメリカ自身で査定をすることが必要なのか言っておらず、アメリカ軍が「状況の安定化」を支援するという約束は一体何を意味しているのかについても詳しく説明していない。アメリカ海軍艦船が介入しようとタイ沖に待機している。
こうした約束は、明らかに、無私の人道主義的な素振りとして意図されているわけではない。ブッシュ政権は、何年間にもわたり、ビルマ軍事政権の弱体化をはかっており、昨年の仏教僧侶による抗議を、ビルマとその支配者に対する経済制裁を課する好機として活用した。アメリカ合州国が、この惨事をビルマへの軍事的な足場を手に入れるために喜んで活用することは疑いようがない。
世界社会主義者ウェブ・サイトは、大部分が貧窮化した国に対し、独裁的支配を行っている残酷な政権であるビルマ軍事政権を決して支持するものではない。しかしながら、スー・チー支援を含む、アメリカやヨーロッパのたくらみは、ビルマ国民の民主的な権利や経済的福祉に対する懸念とは無関係なのだ。いつもの様に、アメリカ政府の人道主義的な装いは、アメリカの支配階級の利害と一致すべく入念に計算されたものだ。
ビルマの場合、アメリカは、この軍事政権と緊密なつながりを持ち、ビルマをインド洋への重要なアクセス地点として見なしている中国の影響に対抗することに関心があるのだ。ブッシュ政権に関する限り、ビルマ国民は、アメリカの戦略地政学的な目標を追求するための交渉材料に過ぎない。
シェブロン石油を含むアメリカの巨大エネルギー企業各社も、ビルマには利害関係をもっている。ブッシュ政権はビルマに対して経済制裁を課しているが、経済制裁は、子会社ユノカルを通したシェブロンによる数十億ものドル投資には影響していない。人権運動団体は、ビルマにおける虐待に対するシェブロンの連座は、同社のパイプライン経路を守るためのものだと非難している。
ブッシュ政権による声明は、アメリカ合州国そのものの国民を含め、世界中の人々に対する扱いという文脈でも、考慮されるべきだ。月曜日、アメリカのファースト・レディー、ローラ・ブッシュが、国民に警告し損ね、十分に災害に備えられなかった政府を非難する機会を利用して、サイクロンに対し、ホワイト・ハウスとして最初に反応を示した人物となった。
彼女は述べた。「危険の可能性を知っていたのに、ビルマの国営メディアは、国民にサイクロン進路について時宜を得た警告を発し損ねました。サイクロンに対する対応は、この軍事政権がビルマ国民の基本的な要求を満たし損ねている最近の一例に過ぎません。」
この発言の偽善と腐肉はあまりにも明白で、ひょっとすると、これは意図的な挑発ではないかと疑うほどだ。今年の8月29日で、ルイジアナ州とミシシッピ州を襲い、少なくとも1,800人が亡くなった大型暴風雨、ハリケーン・カトリーナ三周年だ。このハリケーンはアメリカの大都市ニューオリンズを破壊し、洪水をおこした。
連邦政府も各州政府も、何十年もの間、ニューオリンズにおける致命的な洪水の可能性を知りながら、避難計画は何も準備されておらず、閉じ込められた人々や、家を失った人々に対する計画も皆無だった。何万人もの人々が何日間もルイジアナ・スーパードームに閉じ込められたままだった。家を失った何千人もの人々は、米連邦緊急事態管理局(FEMA)の仮トレーラーに住まされたのだが、2007年には、これらのトレーラーが極めて高濃度の毒性化学物質ホルムアルデヒドを含んでいたことが明らかになった。
ハリケーン・カトリーナによってひき起こされたれた被害は、大半が防げたはずのものだったが、政府による全くの無関心と怠慢から、ニューオリンズの堤防体制は、必要な投資を拒否され、崩壊するままにされたのだ。これはアメリカ政府が「国民の基本的な要求を満たし損ねている」多くの例の一つに過ぎない。
下記も参照のこと。:
A new Asian disaster: cyclone kills tens
of thousands in Burma
[7 May 2008]
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