西欧マスコミは本当のチベット情報を報じそこねている
Michael Backman
The Age
2008年4月9日
数年間にわたって、このページで、アジアの犯罪人たちを明らかにしたり、世間一般に持たれている考え方と逆の視点を提示したりしてきたが、私はとうとう初めて殺しの脅迫を受けた。
それほど深刻なものではないのだろうが(匿名の電子メールだった)、小生の経歴上、非常に画期的な出来事ではあるだろう。それはインドに暮らすチベット人難民で、ダライ・ラマの信奉者だ、と称する人物から来たものだった。
私に投書してきた人物は、今度私がインドを訪れたら、殺され(食べられる、と彼は言った)、家族は私の遺骸を決して発見できまいと書いていた。
投書してきた人物が不快に思ったのは、私が昨年The Ageに書いたコラムで、その中で、大半のマスコミ報道が無視しているダライ・ラマのいくつかの側面を私は強調していた。たとえば、亡命政府の運営にあたり、多くの親族を高位につけ、かなり縁故主義的だったことや、1950年代、60年代中と、70年代初頭まで、彼が個人的にCIAから給料をもらっていた、といった事実だ。
先週そのコラムが、チベット問題という文脈で、北米のウェブ・サイトに承認なしで複製され、この問題をとても危ぐしている人々のそうでなくとも不安な感情に油を注いだ。
元のコラムは、昨年のダライ・ラマのオーストラリア訪問にあわせて書かれたものだ。当時のオーストラリア・マスコミがダライ・ラマに関しておこなっていた、莫大で無批判的なマスコミ報道と釣り合いをとるべく書かれたものだった。
中国のダライ・ラマに関するマスコミ報道が、あきれるほど否定的な方向に偏向しているのと同様、ダライ・ラマに対する西欧マスコミの報道は、これまで過度に好意的かつ無批判的だと私はいつも考えてきた。
明らかに、過去数週間に、チベット系住民が中国軍に殺害された。これは広く報道されてきた。
だが、人種問題を原因とする攻撃で、中国系住民がチベット系住民によって殺害されたことも明らかだ。これは、西欧のマスコミではそれと同じ様なレベルで明らかにされいるわけではない。にもかかわらず、1998年、同様の原因から、ジャカルタで中国系住民が強姦され、殺害された時は、西欧マスコミは、しかるべく愕然とした。非中国系現地人を犠牲にして過剰な経済支配をしている、と受け止められたのが原因だった。
ラサでは、働いていた洋品店がチベット人の抗議参加者に放火され、四人の中国人女性と一人のチベット人女性が焼死した。だが、中国人に対する狂暴な行為は、漢民族中国人に対する攻撃だけという単純なものではない。中国系イスラム教徒商人まで攻撃された。古代シルク・ロードの遺産であるラサには、イスラム教徒の商人は何世紀にもわたって住んできたのだ。しかし二週間前の騒乱では、ラサの古い地区にあった大寺院も焼け落ちた。
チベット文化が、中国人移住者によって、明らかに圧倒されているのは悲劇だ。だが、小企業を営む中国系住民の殺害は、あるいは実際、誰の殺害であれ、誤っており、疑いもなく、ダライ・ラマが退位をするぞと警告した理由の一つだ。
だがまたもや、この扱いは、西欧のマスコミには、チベット報道となると偏向があることを示唆している。不幸にして、この無遠慮な批判は、宣伝行為という点では、中国に対してもあてはまる。
中国とチベットに関しては、どちらかの側が絶対に正しいということはない。いずれの側も、自分の主張を強化しようとして、信頼できる歴史的主張を挙げる。中国は、チベットは長らく中国の一部だったと本気で信じている。チベット人は、その逆を本気で信じている。
中国国内の普通の中国人は、チベット人を恩知らずで、身勝手だと考えている。前回北京を訪ずれたとき、ある若い中国人がチベット人のことを、攻撃的で、中国がチベットに対しておこなったあらゆる開発に対し、感謝の念がないと言った。私は彼に、彼等は、自分たちが、中国人移住者たちによる、意図的に企てられた文化的大虐殺とも見えるもので、圧倒されつつあるのを一番懸念しているのだと説明した。彼の顔に驚愕の表情が一瞬よぎった。彼はこうした主張をこれまで聞いたことがなかったが、その論理は明らかに彼の心に訴えたのだ。中国のマスコミはこれを決して報道しないために、彼はそれまで聞いたことがなかったのだ。
中国の民族主義は高まりつつあるので、中国でこのような見方が受け入れられる可能性は少ない。おそらく多数の西欧の投資家は、この問題に関して、中国の肩をもった明白な発言をした方が、中国への参入がより円滑になることに気づいているだろう。
場合によっては、ダライ・ラマによる支配、豊かな僧院や、メンバーたちは大体、シチリアの珊瑚、イランのトルコ石やビルマのルビーだらけだったので、ほとんど身動きすらできなかったような、裕福な貴族的家族の一団を、打倒した時に、中国は普通のチベット人に対して、偉大な貢献ができる可能性があった。政権打倒は、土地と農民の生活に対する完全な支配を築き上げたイギリスの修道院が、ヘンリー8世によって解体されたのに匹敵する。
不幸なことに、チベットの場合、神政的で、私利的な支配と置き換わったものは、ずっとましだとは到底言えぬものだった。中国共産党だ。現地の独裁者が外国のそれに置き換わった。
スターバックスのラサ一号店は、おそらくわずか一、二年のうちにできるだろう。経済制裁のおかげで、ビルマが世界最大の生ける博物館として保存されたのと同じように、自分たちの個人的な楽しみのためには、むしろチベットは中世にとどまったままであって欲しいと考える多くの裕福な西欧人旅行者にとって、これは特に悲劇だ。
チベット問題を取り巻く利権は多く、「チベット解放」の類の単純なスローガンより、はるかに複雑なことになっている。もしも中国がこの問題を中和するつもりであれば、今はまだ欠けている、一定レベルの洗練、成熟と自信をもって行動することを学ぶ必要があろう。中国支配下での苦難に対し、チベット人に詫びるのは、そうしたひとまとまりのものの一部になるべきだろう。だが、そこまでのレベルの悟りにいたるのは、明らかに、ずっと何年も先のことだ。
おわり
Ageウエブ・サイト上のコラムのウエブ・アドレス:
http://business.theage.com.au/western-media-miss-the-real-tibet-story/20080408-24nz.html
上記記事のurlsアドレス:
www.michaelbackman.com/NewColumn.html
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文中言及されているものと思われるGlobalResearch.ca記事を「CIAの役割:ダライ・ラマの聖なる僧衣の背後」として先に訳出した。
「著者により否定・取り下げられたGlobalResearch記事...」というweb記事を貼り付けた匿名コメントを頂いた。記事が取り下げられたことには気づかずにいたので、訳は保留にした。
同じ著者のこの4月9日記事を訳しておく。
GlobalResearch.caでは取り下げた様だが、The Ageの元記事は下記で読める。記事のタイトルは「ダライ・ラマの聖なる僧衣の背後」である。
www.theage.com.au/news/business/behind-dalai-lamas-holy-cloak/2007/05/22/1179601410290.html
関連記事の翻訳:
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