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2008年4月24日 (木)

反中国デモの偽善と危険

2008年4月14日、CommonDreams.orgで公開。

Floyd Rudmin

チベット人は「人口構成による侵略」や「文化的虐殺」で苦しんでいるという話を聞く。しかし、こうした言葉がスペインやフランスの少数民族バスク人政策について使われるのを聞いたことはない。こうした言葉が、1898年のアメリカによるハワイ王国併合について使われるのを聞いたことはない。そしてディエゴ・ガルシアについて。さほど遠からぬ昔、1973年、イギリスが、チャゴス諸島先住民全員を、インド洋のディエゴ・ガルシア島から強制的に国外退去させた。人々は衣装スーツケース一つしか持たせてもらえなかった。それ以外は何もなしだ。家族で飼っていたペットは毒ガスで殺され、埋葬された。完璧な民族浄化だ。完璧な文化破壊だ。何故だろう? 巨大なアメリカ空軍基地建設のためだ。それはアフガニスタンとイラク爆撃のために活用されたし、間もなくイランとパキスタン爆撃にも利用されるかもしれない。イギリス人とアメリカ人以外は誰もいないディエゴ・ガルシアは、引き渡しや拷問や他の非合法行為にも、うってつけの場所だ。

2012年のロンドン・オリンピックでは、ダライ・ラマやデズモンド・ツツは、きっとディエゴ・ガルシアでの「人口構成による侵略」や「文化的な虐殺」に対する抗議デモの先頭に立つだろう。国連事務総長、フランス大統領、ドイツ首相、そして新たなアメリカ大統領や全アメリカ議会が、開会式をボイコットするに違いない。

アメリカやイギリスや40以上の有志連合諸国が、イラクに対する侵略戦争をおこなっている一方で、ラサにおける人種的な暴動で100人が亡くなったことに対するこの道徳上の姿勢は、偽善の極みだ。イラクでの戦争は「人口構成による侵略」などでなく、むきだしの衝撃と畏怖による侵略だ。戦争犯罪だ。上下水道施設と配電網の意図的な破壊を含む、民間人に対する戦争だ。100万人以上のイラク人が亡くなった。500万人が難民にされた。西洋の侵略者は、「文化的な虐殺」こそしなかったかもしれないが、西洋文明のまさに揺籃の地で、膨大な規模の文化的破壊をおこなったのだ。なぜニュースは、チベット問題のデモの話題ばかりで、イラク問題のデモではないのだろう?

さらに「人口構成による侵略」や「文化的虐殺」は、イスラエルの入植地政策やパレスチナ人共同体の組織的破壊にこそぴったりあてはまるということを、誰もが知りながら、触れる人はほとんどいない。この点について、ダライ・ラマは沈黙したままのようだ。デモをする人々は、ブルドーザーで潰された家屋や、破壊された果樹園や、殺されたパレスチナ人の子供たちのためには旗をふらない。

中国という文脈

中国政府は人類の四分の一の福祉と治安に対する責任を負っている。仏教の僧侶によって行われた場合ですら、人種暴動や反乱は容認しえないのだ。

エジプト人がピラミッドを建築し始めた頃には、中国文明は既に成熟していた。しかしこの200年間はうまく行っていなかった。二度の阿片戦争で中国は麻薬の輸入を強いられ、植民地支配を完成する手段としてヨーロッパ人が沿岸の港を掌握し、更に義和団の乱、満州王朝の崩壊、内戦、日本による残虐な侵略と占領、更なる内戦、更に共産党による統一と社会変革、そして毛の文化革命だ。そうした出来事によって何千万人もの人が亡くなった。それゆえ、中国の近代史には、個人の権利より、社会秩序に高い優先順序を置く、もっともな理由がある。人種暴動や反乱は容認しえないのだ。

こうした文脈を考えて、西欧世界が自らの国内の少数民族に対して行ったことと比較すれば、中国の国内少数派民族の扱いは模範的だ。何千年もの中国支配にもかかわらず、中国には依然として50以上の少数民族がいる。北と南アメリカにおける数百年にわたるヨーロッパ支配の後、本来の少数民族文化は、根絶されたか、損なわれたか、減少した。

中国通貨には五カ国語が表記されている。中国語、モンゴル語、チベット語、ウイグル語、チワン語だ。これに比べ、カナダ通貨には英語とフランス語表記はあるが、クリー語もイヌクティトゥト語表記もない。もしアメリカが中国と同じくらい少数民族に配慮しているなら、ドル紙幣には英語、スペイン語、チェロキー語とハワイ語表記があるはずだ。

中国では少数民族は小学校教育を彼等自身の共同体によって運営される学校で、自らの言語で始める。中国語教育は10歳になるまで導入されない。これは大半の西洋諸国における強制的な言語的同一化の歴史とは、際立って対照的だ。最近オーストラリア政府は、子供たちを家族から引き離し、子供たちに英語を話すよう強制し、母語を話すと子供を叩いたことを、オーストラリア先住民少数派に対し謝罪した。中国は、チベット人や他の少数民族に対して、そうした謝罪をする必要はない。

中国の一人っ子政策は西欧人にとっては圧政的なものに見えるが、これは少数民族には適用されてはおらず、漢民族中国人にだけ適用されている。チベット人は好きなだけ何人でも子供を育てることができる。もしも漢民族が一人以上の子を持つと処罰される。

大学入学の点でも、少数民族に対する同様な優遇策がとられている。たとえば、チベットの学生は、中国のエリート大学たる北京大学に、漢民族の中国人学生より低い試験成績で入学できる。

中国は少数派民族の権利問題に関して完璧な国ではないが、大半の西欧諸国よりはましだ。また中国は、自らを復興し、200年の連続的な危機と外国による侵略から回復するという歴史的文脈の中でこれをなし遂げたのだ。

歴史的主張

国境というのは自然にあるものではない。国境は常に歴史から生まれるものだが、あらゆる歴史が、議論の余地があるものだ。国境に対する主張やら証拠というものは、いつでも見つかるものなのだ。中国は過去200年間、その主張を執行することは困難ではあったのだが、チベットは自国領土の一部だと長らく主張してきた。ダライ・ラマは、チベットに対する中国の主張に反論はしていない。最近のチベットにおける人種暴動と反オリンピック・デモによって、中国が縮小し、自国領土の一部を放棄するようなことにはなるまい。暴徒やデモ参加者もそれを知っている。

チベット分離主義者を後押ししている外国政府や、チベット独立を要求しているデモ参加者たちは、自分の国をもっと良く見つめるべきだ。カナダ人は、ケベック独立運動のキャンペーン活動をすることができる。アメリカ人は、プエルトリコ、バーモント州、テキサス州、カリフォルニア、ハワイ、グアム、そしてアラスカの分離主義者を支持することができる。イギリス人はウェールズ解放と、「スコットランド人の為のスコットランド」のために働くことができる。フランス人は、タヒチ人、ニュー・カレドニア人、コルシカ人、そしてバスク人の解放を支援することができる。スペイン人もバスク人や、カタロニア人を支援することができる。イタリア人はシチリア人分離主義者や、北部同盟を支援することができる。デンマーク人はフェロー諸島を独立させることができる。ポーランド人はカシュビア人を支援できる。日本人は沖縄の分離主義者を支援することが、フィリピン人はモロ民族を支援することができる。タイ人はパタニ独立を促進することができる。インドネシア人はアチェ人の独立を促進することができる。ニュージーランド人は、島々をマオリ族に渡すことができる。オーストラリア人はパプアを立ち退くことができる。スリランカ人はタミール人独立主義者を支援することができる。インド人はシーク人分離主義者を支援することができる。

ほとんど全ての国は、なんらかの独立運動を抱えているものだ。民族的分離主義を推進するために、はるばる世界の頂上のチベットにまででかける必要はない。中国は他国において、独立運動を推進しているわけではなく、他国が中国内で独立運動を推進することを喜ぶわけもない。最も抑圧され、最も自分たちの国を必要としているのはパレスチナ人だ。推進し、デモをするに値する他のプロジェクトがあるのだ。

デモの危険性

これらのデモはチベット人の役には立たず、むしろチベット人を隠された動機のために利用している。多くのチベット人は、したがって、こうしたデモには反対している。多くの中国人は歴史を忘れてはおらず、ラサの暴動とそれに続くデモを、中国を分断し、弱体化しようとする外国勢力の新たなたくらみだと見なしている。中国がチベット人を裏切り者として恐れるようになり、中国において、反チベット感情が広範に広がる結果となるという深刻な危険性がある。

少数民族が外国勢力のために働くのではという恐怖から、カナダは、第一次世界大戦の間、カナダ国内のウクライナ人少数派を強制収容所に監禁した。同じような理由で、オットーマン帝国は、自国内のアルメニア人少数派を国外退去させ、死の行進で100万人以上を殺害した。ドイツのナチスは、ユダヤ人少数派が第一次世界大戦敗北を招いた裏切り者だと見なした。それで、1930年代に国外追放がおこなわれ、1940年代に死の収容所があったのだ。第二次世界大戦中、カナダとアメリカ両国は、日本人移民という少数派が裏切るのではないかと恐れ、彼等を強制収容所に移送した。自国内の中国人少数派を恐れたインドネシア人は、1959年には100,000人を国外追放し、1965年には何千人以上も殺害した。同様にイスラエルは自国内のアラブ人少数派を恐れており、国外追放と弾圧をおこなっている。

願わくは、中国政府と中国人が、チベット人を、外国の強国の手先というより、外国の強国の犠牲者と見なして欲しいものだ。だがもしも中国が、歴史上他の国々がしたように対応して、チベット人に対し、体系的で過酷な弾圧を始めるようなことになれば、現在デモをしている人々は、そうした出来事を招来した自分たちの役割を忘れるべきではあるまい。

結論

現在中国を非難しているデモ参加者達は、自らが、そして他の人々が、自国政府の現在の失敗を見つめ、改めることからそらせる役にしか立っていない。もしもデモをする人々が、しばし耳を傾けるなら、彼等自身の偽善という沈黙の声が聞こえるだろう。

こうしたデモの結果は 1) 中国が、チベット人に暴動をあおった外国の影響を見いだそうという決意を固めるであろうこと、そして 2) アメリカ、イギリス、フランス、そして他の西欧諸国の政府では、ここ数週間、国内での政府批判は減ったろうということだ。それだけのことだ。これらのデモはなんら好ましい結果をもたらせまい。

Floyd Rudminとは、emailで連絡がとれる。

記事原文のurlアドレス:www.commondreams.org/archive/2008/04/14/8287/

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関連記事翻訳:

「国境なき記者団」のまやかし

2009年7月13日追記

今度は、新疆ウイグル自治区。

今年、沖縄にでかけた。安保の丘というか、嘉手納道の駅で、しばらくラプターの離着陸を見学した。米軍航空機騒音判決の日にも、米軍機の離着陸演習はやまなかったというが、本土の新聞には、そのような話題は全くのらず、テレビ・ニュースでも流れなかった。

昨年、北海道に何度かでかけた。アイヌの人々の蜂起、1789年 クナシリ、メナシの蝦夷の蜂起が最後だという。そこで、下記のような感想を持った次第。(上記記事を流用させていただく)

ウイグル分離主義者を後押ししている外国政府や、ウイグル独立を要求しているデモ参加者たちは、自分の国をもっと良く見つめるべきだ。

ナオミ・クラインの名著『ショック・ドクトリン』の第9章 「歴史という扉をバタリと閉鎖 ポーランドの危機、中国の虐殺」を読んで初めて、天安門事件とフリードマン流経済政策との結びつきの深さを知った。

『ショック・ドクトリン』翻訳もでないまま、日本は、こりずに小泉911欺瞞選挙の繰り返し。政権交代が自己目的化しているというのは、異常だが、全ての茶番、巧妙に長い年月をかけて、計画されてきたのだろう。植民地支配に邪魔な小政党の排除という目的のために。

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