準備通貨としてのドルの役割は終わりつつある
ポール・クレイグ・ロバーツ
Global Research、2008年2月6日
Online Journal
ブッシュが、イラク経済、それともアメリカ経済、一体どちらで最大の破壊を完遂したのか判断するのは難しい。
マニュファクチャリング・&・テクノロジー・ニューズ最新号で、ワシントンのエコノミスト、チャールズ・マクミリオンは、ブッシュ政権の7年間で、連邦政府の負債は三分の二増大し、アメリカの家計借金は倍増したと述べている。
この膨大なケインズ型刺激は、痛ましい経済的結果をもたらした。中位の実質所得は低下した。就労率も減少した。雇用の増加は惨めなもので、新たな職の28パーセントは政府部門だ。全ての新規民間部門雇用は、私学と医療業務、バーとレストランだ。325万の製造業雇用と50万の管理職業務が失われた。製造業の雇用者数は65年前のレベルにまで落ちた。
これは、まるで第三世界経済の統計データだ。
「ニュー・エコノミー」は2002年以来、先端技術製品での貿易赤字を続けている。アメリカの製品輸入の貿易赤字は、アメリカの石油輸入の貿易赤字さえ小さく見せる。アメリカは輸入代金に支払うのに十分なだけ稼いではおらず、政府の財政赤字を賄うのに十分なだけ貯蓄をしていない。
赤字を賄うために、アメリカは、ドルの噴出とドル建て債務を受け入れ続けてくれるという、外国人の思いやりを当てにしている。
ドルが受け入れられるのは、ドルが世界の準備通貨だからだ。
先週、スイスのダボスでの世界経済フォーラム会議で、億万長者の為替投機家ジョージ・ソロスが、ドルの準備通貨としての役割は終わりつつあると警告した。「現在の危機は、住宅建設ブーム後の単なる破綻ではない。それは根本的に、準備通貨としてのドルに基づいた、60年間の継続的信用拡大の終わりだ。世界の国々はドルを貯めるのを益々嫌がるようになっている。」
もしも世界がドルを貯め続けるのを嫌がれば、アメリカは貿易赤字も、財政赤字も賄うことができなくなる。このいずれも、甚だしく均衡を欠いているので、その影響はドル交換価値の一層の低下と物価高騰ということになる。
エコノミストたちはグローバリズムを美化して、アメリカ・ブランドの製品に、無数の外国製部品が入っているのを喜んでいた。これは、貿易の均衡がとれている国、あるいは通貨が準備通貨の役割を果たしている国には許される。経済活動を海外に出してしまう仕事に忙しい一方で、自国通貨の交換価値を破壊しているアメリカのような国にとって、それは恐ろしい依存状態だ。
ドル価値が低減して、準備通貨としての特権的な立場を失えば、アメリカの生活水準は深刻な経済的打撃を受けるだろう。
万一、アメリカ政府が、支出を削減するか税金を上げるかして、財政を健全化できなければ、最早借り入れができなくなった日には、バナナ輸出依存度が高い不安定な第三世界諸国のように、紙幣を刷り続けて、政府は支払いをする。インフレと更なる為替レート切り下げが時代の流れとなるだろう。
ポール・クレイグ・ロバーツはレーガン政権の財務次官補をつとめた。Supply-Side Revolution : An Insider's Account of Policymaking in Washington; Alienation and the Soviet Economy および Meltdown: Inside the Soviet Economyの著者であり、The Tyranny of Good Intentions : How Prosecutors and Bureaucrats Are Trampling Constitution in the Name of Justice、のローレンス・M・ストラットンとの共著者。
ポール・クレイグ・ロバーツはGlobal Researchの常連寄稿者。ポール・クレイグ・ロバーツによるGlobal Research記事
Global Researchをご支援ください。
Global Researchは、読者からの財政支援に依存しています。
本記事原文のURLアドレスwww.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=8021
« オバマの偽りの希望:なぜ私はオバマに投票しないか | トップページ | アメリカを衰亡させる方法:なぜ累積債務危機が、今アメリカ共和国とって最大の脅威なのか »
「アメリカ」カテゴリの記事
- 欧米帝国主義は常に嘘の溜まり場だったが、今やメディア・トイレは詰まっている(2024.11.30)
- 熟練専門家を前線に派兵して、戦争遂行努力の失敗を示しているウクライナ(2024.11.26)
- ネタニヤフに対するICC逮捕令状はアメリカの政策と共謀に対する告発でもある(2024.11.27)
「通貨」カテゴリの記事
- 「人類に対する犯罪」容疑のかどでビル&メリンダ・ゲイツ財団捜査を開始すべき時期か?(2020.05.09)
- 米ドルの世界準備通貨という地位を潰す上で、イランは中国の秘密兵器(2019.10.15)
- トランプを打倒するため、連邦準備制度理事会は次の暴落を画策するだろうか?(2018.10.15)
- イランとの貿易を巡り、アメリカを殴ったEU(2018.10.05)
- さほど静かではない戦争のためのワシントンの沈黙の兵器(2018.09.07)
「ポール・クレイグ・ロバーツ」カテゴリの記事
- 腐敗したアメリカ支配層に宣戦布告したかどでトランプは暗殺されるのだろうか?(2023.06.26)
- ポール・クレイグ・ロバーツは大量虐殺が好きなのか?(2022.05.01)
- ロシアの安全保障提案をワシントンが拒絶したのはまずい判断(2022.01.31)
- 欧米で、ジャーナリズムは宣伝省にとって替わられた(2021.11.23)
« オバマの偽りの希望:なぜ私はオバマに投票しないか | トップページ | アメリカを衰亡させる方法:なぜ累積債務危機が、今アメリカ共和国とって最大の脅威なのか »
コメント