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2008年2月19日 (火)

バラク・オバマ、二つの顔

ビル・ヴァン・オーケン

Global Research、2008年2月14日
wsws.org

バージニア州とメリーランド、ワシントン、D.C.で行われた火曜日の「ポトマック予備選挙」勝利の晩、満員のウィスコンシン大学講堂に登場して、イリノイ州選出上院議員で民主党の大統領候補バラク・オバマは演説を行ったが、イラク戦争のみならずアメリカの社会情勢についての大衆扇動は注目にあたいするものだった。

ウィスコンシン集会は、火曜日の予備選挙の晩、メリーランド大学で20,000人、そしてバージニア・ビーチで17,000人だったが、そうした多数の聴衆、主として若い人々を惹きつけた一連のキャンペーン催事最後のものだったが、そこでオバマは、より「左よりな」顔をして見せた。

イリノイ州選出上院議員は、煽動者の本能を持っていて、聴衆に聞きたがっていることを語ろうとするもののようだ。ウィスコンシンで、彼はエクソンの記録的な利益を、「ガソリン・スタンドでの価格」上昇と結びつけ、熱烈な喝采を巻き起こした。「仕事を海外に出してしまい、両親たちに最低賃金で、十代の若者とウォール・マートで競うよう強いている。」貿易協定について語り、更に「ウォール・ストリートだけではなく、メイン・ストリートにも耳を傾ける大統領、楽な時のみならず、困難な時にも、労働者たちを支持する大統領」になると彼は公約した。

イラク問題に転じ、「アメリカ兵は、決して是認されるべきではなく、決して始められるべきではなかった戦争で戦うよう、何回もの服務期間、派兵されている」と彼は言明し、「9/11を使って有権者を脅かす」連中をあざ笑った。

続けて、平均的アメリカ人が直面している悪化する社会的条件の例を挙げた。「夜明け前に仕事に出かけ、夜中に一体どうやって生活費を支払い続けようか思案する父親」、「昼間大学の後、夜勤で働いても病気の妹の医療費が支払えないと語ってくれた女性」、「人生を捧げた会社が倒産し、年金がなくなってしまった」退職者、そして「生活の収支を合わせるために、授業を終えた後、ダンキン・ドーナッツで働く教師」

勤労者の減税、医療保険改革、賃金増加と「CEOのボーナスではなく、年金を守る」政府という約束で彼は答えた。

マーチン・ルーサー・キングの雄弁を真似て、「我々の夢は延期されることはない、我々の未来は拒否されることはない、そして我々の変化の為の時はやって来た」という誓約で演説を締めくくった。

こうした演説の中には、民主党の権力層や、同党が代表している大企業を躊躇させるように見える要素がある。オバマの美辞麗句の旅は、危険な領域に入りつつあるものとも見える。結局、民主党は、ブッシュ政権の海外での戦争、国内での反動という政策にとって、必要不可欠のパートナーとして機能してきたのだ。

しかしこの大衆向けの予備選挙用美辞麗句は、オバマの一面でしかない。彼にはもう一つの顔があり、それは、彼のキャンペーンに何千万ドルも注ぎ込んでいる、彼が表向きには批判している、まさに大企業の利益そのものの方を向いている。

ポトマック予備選挙の翌日、ビジネス・ウイークは「企業はオバマを期待できるか?」という題の特別レポートを掲載した。記事はこの質問に対する直接の回答にはなっていないが、経済誌の姿勢から見て、「イエス」と判断されたように見える。主として、このイリノイ選出上院議員が、公的には「変化」を訴えながら、ウォール街や大企業インサイダー幹部と行ってきた私的会談に基づいて。

そこで、ビジネス・ウイークは書いている。先週日曜日、メイン州民主党党員集会での自分の勝利を知ってから、オバマはコンピューターの前に座って、UBSアメリカのCEOで、オバマの重要なウォール街の「寄付金まとめ役」で、オバマが「運動」と呼んでいるものへの資金として、仲間の億万長者たちから何百万ドルもの寄付をもたらした功績の主、ロバート・ウルフと電子メールをやり取りしたのだと。Center for Responsive Politicsの推計によると、昨年オバマ・キャンペーンで集められた資金の80パーセントは、企業関連の援助資金供与者からのものであり、中でもウォール街からのものが群を抜いている。資金の半分以上が、2,300ドルあるいはそれ以上の額面の寄付という形だ。

オバマは、ウルフに加え、アメリカで二番目に金持ちの人物で、およそ520億ドルの資産をもつウォーレン・バフェットとも、常に連絡をとっている。彼の経済顧問には、シカゴ大学教授で、自由市場政策の著名な支持者である、オースタン・グールズビーがいる。

ボルカーの推薦

おそらく最も重要のは、ほとんど報道はされなかったが先月の、1979年、民主党のジミー・カーター大統領によって連邦準備制度理事会議長に任命され、ロナルド・レーガン右派共和党政権の元でほぼ7年間、アメリカ中央銀行責任者の立場にいた人物ポール・ボルカーによるオバマ推薦だろう。

ボルカーは、インフレーションとの戦いという名目で、金融資本の中枢部に要求された高金利政策を導入した責任者だ。彼の金融政策は、航空管制官の解雇とPATCOストライキ破りに始まった労働者階級に対する攻勢と、それに続く多くの基幹産業の閉鎖や、1930年代の大恐慌以来最悪の不況発生と表裏一体だ。こうした政策の究極的効果は、労働者大衆から少数の金融エリートへの、膨大な富の移転であり、そうした過程は今日に至るまで続いている。

オバマ支持を宣言する声明の中で、ボルカーは、これまでは党利党略を事とする政治に関与することを避けてきたと語った。「現在の市場の混乱」のためではなく、「わが国が国内と海外で直面する課題の幅広さと深さ」ゆえに、今介入しようと動いているのだと彼は語った。「こうした課題には、新たな指導力と新鮮な手法が必要だ」と彼は付け加え、オバマの指導力なら「世界中で、アメリカのビジョン、アメリカの力、そしてアメリカの目標に対して必要な確信を回復させる」ことができるだろう、と彼は結論づけた。

右派評論家で元レーガン政権経済顧問のラリー・カドローは、今月早々、この推薦についてコメントし、かつてボルカーの演説原稿作成者として働いたことがあると語ってから、彼のことを「偉大なアメリカ人...第一級の保守派... 公正な財政、金融政策の人だ」と語った。

カドローは書いている。ボルカーが「思いつきでこの推薦をしたわけではないだろう。本当だ。こうした類の政治的判断に、彼はこれまで関与したことはないのだ。」「ボルカーは、新たなロバート・ルービン[クリントン政権の経済政策を指揮したウォール街のインサイダー]なのだろうか? ボルカー氏が、何らかの形でオバマを指導していることがあり得るだろうか? オバマが、財政の上で、これまでそう思われていたよりも保守的だということがあり得るのだろうか?」と疑問を提示して筆を結んでいる。

これが、オバマが演壇では左翼的言辞を弄すなかで、舞台裏で構築されている本当の関係なのだ。ボルカーたちは、このイリノイ選出上院議員のことを、勤労者大衆の生活条件を改善するのではなく、アメリカ金融資本の世界的な利害を確保することを狙った、大きな変化をもたらすのに、便利な手段と見なしている。

引き続く経済危機と高まる社会的緊張によってもたらされている危機と立ち向かうのに、アメリカ最初のアフリカ系アメリカ人大統領となるであろうオバマが最適だと連中が考えているのは確実だ。全て挙国一致と「改革」という名の下で、労働者階級に更に多くの犠牲を要求するのに都合がいい」同時に、世界に対して新鮮な顔を見せることができ、彼等は、それでアメリカ帝国主義を、ブッシュ政権の遺産である、海外政策の壊滅と、世界的な孤立化の深化から救い出してくれるのではないかと願っているのだ。

こうした企業との太い絆を考えれば、貧困や社会的不平等に立ち向かうというオバマのキャンペーンの美辞麗句には、ある種の政治不信と大衆扇動が含まれており、実に驚くべきものだ。ひっきりなしの彼の「変化」という呪文は、巨大企業やウォール街の利益に対して根本的に挑戦するような、いかなる徹底的な経済計画とも繋がってはいない。

逆に、オバマは保守的な財政政策を進め、「現金払い」手法をとることを誓い、債務と赤字を削減する必要性を強調している。過去最高に近い4000億ドルの赤字をブッシュ政権から引き継ぐことを考えれば、既に金融引き締め政策の方針は決まったようなものだ。

水曜日、候補者はウィスコンシン州、ジェーンズビルのゼネラル・モーターズ工場を訪問し、インフラストラクチャーと代替エネルギーに対する10年間で2100億ドルにのぼるであろう投資を含む、いわゆる就業計画を提唱した。アメリカ資本主義が直面している根本的な危機を前にしては、これは焼け石に水にもならず、この一滴でさえ、赤字削減の要求の前には、あっと言う間に蒸発する。

資本主義について語りたくない人々は、本来、貧困や失業の話題について語るべきではないのだ。社会生産力の私的所有と、それが生み出す途方もない社会的不平等に立ち向かうことなしに、このいずれにも、まじめに対応することは不可能だ。何億人ものアメリカ人のための就職口、生活水準、きちんとした住宅、医療や教育の権利の確保は、スーパー・リッチから、膨大な人数の勤労者への富の広範囲な再配布によってしか推進され得ない。

ウルフやバフェットやボルカーのような連中がオバマを支援しているのは、彼にはそういう政策を実行するつもりがないことを連中が知っているからだというのが明白だ。

戦争の問題については、オバマ・キャンペーンがアメリカ軍国主義を終わらせる方法だと期待している人々はひどく失望するだろう。このイリノイ選出議員は、推計年間7000億ドルを消費している膨れ上がったアメリカ軍事予算は削減せず、むしろ増加させると公約している。更に65,000人の陸軍兵士および27,000人の海兵隊員の新兵徴募を彼は求めている。ブッシュ政権が「先制攻撃戦争」を正当化するためにでっちあげた「対テロ戦争」という口実、すなわち中東と中央アジアの石油が豊富な地域において、アメリカの覇権を擁護することを狙った軍事侵略のために、更に多くの「地上軍」を置くと彼は公約している。

イラクそのものについては、何万人ものアメリカ兵や海兵隊員が、今後何年もの間イラク占領を継続し、イラク国民を抑圧することになる処方、つまり「アメリカの利益」を守るため、イラク駐留アメリカ軍を維持し、「対テロ作戦」を遂行するという彼の公約によって、戦争を終わらせるという彼の約束は、既に裏切られている。

オバマの雄弁は、人々の期待をかなり喚起するもののようだが、そうした期待は必然的に打ち砕かれるだろう。ほぼ確実に、予備選挙シーズンが終わればこれが起こり、オバマは、彼に計画を明確にするよう要求する、共和党右派および民主党自身内部の分子と直面するだろう。彼が11月にホワイト・ハウス入りするような場合には、国内、海外双方におけるアメリカの利益を守ることに専心する政権を率いることになる。

アメリカにおいて進歩的な社会変化を生じさせ、海外でのアメリカ軍国主義を終わらせる方法として、オバマ・キャンペーンを支持している人々は、民主党や、民主党が代表する大企業や財界の利害関係が、そのどちらも許さないことを知るようになるだろう。

こうした必須の目標は、民主党や二大政党制度そのものと断固決別し、大規模な社会主義運動の構築により独自に労働者階級を動員することによってのみ実現可能だろう。

ビル・ヴァン・オーケンによるGlobal Research記事


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免責条項:この記事の意見は著書独自のものであり、必ずしもCentre for Research on Globalizationの意見を反映するものではありません。

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補足:Wikipediaからの抜粋

ビル・ヴァン・オーケンは、Socialist Equality Partyの政治家、活動家。

Socialist Equality Partyは、アメリカの小さなトロツキスト政治政党で、International Committe of the Fourth International系の世界各地の数少ないSocialist Equality Partyの一つ。

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katuteさんから、人名ウルフ、ウォルフのゆらぎをご指摘を頂いたので、とりあえずウルフに統一した。katuteさんに感謝。

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