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2008年2月17日 (日)

NATOの白鳥の歌: アフガニスタンおける敗北の本当のコスト

マイク・ホイットニー

Global Research、2008年2月14日

それは「良い戦争」になると思われていた。対テロ戦争だ。解放のための戦争だ。アメリカの最先端兵器と、兵士と、その圧倒的な射撃能力に世界中の目を釘付けにする予定だった。世界唯一の超大国は、もはや敗北することはなく、抵抗しようがないことを、今回限りの実演で示すはずだった。ワシントンは、兵士を世界のどこへでも展開して、対戦相手を意のままに粉砕できることを。

ところが全ての物事が変にずれてしまった。戦争はペンタゴンの脚本から脱線した。タリバンは撤退し、待機し、再結集し、報復した。彼らは、アメリカは決して約束を守ることはあるまいし、秩序は決して回復するまいことが理解できる、パシュトゥーン人や部族指導者の支持を取り付けた。限りなき自由作戦は、平和、繁栄、いずれももたらさなかった。占領だけだ。7年過ぎて、アフガニスタンは依然として軍閥の長や麻薬業者が牛耳っている。何の進歩も無かった。国はめちゃくちゃで、政府はまやかしだ。外国による占領という屈辱はそのままで、終わりが見えないままに殺人は続いている。

戦争は海外政策ではない。それは虐殺だ。7年後も、依然として虐殺だ。タリバンはアフガニスタンの半分以上を占領してしまった。彼らは首都カーブルで軍事作戦を遂行した。彼らはロガール、ワルダクやガズニに腰を据え、ザーブル、ヘルマンド、ウルズガンやカンダハール地域の広大な面積を支配している。今や彼等は作戦を強化し、春季攻勢を開始する体制を整えており、つまり戦闘は激しくなるばかりであることを意味している。

タリバンの手法は秩序だっており、周到だ。彼らは最も厳しい条件でも生き残れることを示し、より良い装備の敵に対して戦術的勝利を収めている。彼等は士気が高く、自分たちの大義が正しいことを信じている。結局、彼等は外国を占領するために戦っているわけではない。彼等は自分たちの国を守るために戦っているのだ。これが彼らの決意を補強し、志気を高く保っている。NATOとアメリカ軍がアフガニスタンを去っても、ロシア人が20年前にそうした時のようにタリバンは残る。違いはないのだ。アメリカ占領もこの国の悲劇的な歴史の、もう一つの脚注に終わるだろう。

アメリカ合州国は、アフガニスタン侵略によって何も得るところは無かった。アメリカ軍はアフガニスタンの土地の一平方インチたりとも支配していない。兵士がブーツのかかとを土地から離した瞬間、その土地は先住民のものに戻る。このどちらもおそらくは変わるまい。ダン・マクニール将軍は最近こう語った。「もし、適切なアメリカ軍の対内乱活動の原則に則るならば、アフガニスタンにおけるパシュトゥーンの部族抵抗を打倒するには、アメリカは400,000人の兵士が必要だ。」現在、アメリカとNATOには、わずか66,000人の地上軍しかおらず、同盟諸国は増派を拒否している。純粋に兵站段階で、勝利は不可能だ。

人々の心をとらえる戦争でも、敗北している。アフガニスタン女性革命協会(RAWA)は以下のように要約している。

「北部同盟を権力の座に復帰させたことは、国民の自由と繁栄に対する希望を粉砕し、ブッシュ政権にとって、テロリズム打倒は全く何の意味もないことを証明した....アメリカはタリバンとアルカイダを打倒したいとは思っていない。なぜなら、そうなれば彼等にはアフガニスタンに駐留する口実がなくなり、この地域における彼らの経済的、戦略的目標が実現できなくなるからだ ....7年たっても、アフガニスタンには平和も、人権も、デモクラシー、再建もない。アフガニスタン人の貧困と苦悩は日々に増している。...軍隊がアフガニスタンから撤退すれば、アフガニスタン人はもっと自由になり、現在の当惑や疑念から抜け出すだろうと考える...アフガニスタンの自由は、アフガニスタン人自身によってのみ実現が可能なのだ。一方の敵を倒すために、もう一方に頼るというのは間違った政策であり、北部同盟の支配力を強め、彼らがわが国の首根っこを押さえるのを助けるだけだ。」(RAWA www.rawa.org)

次第に、同盟諸国はブッシュの戦争は勝利不可能で、戦闘の継続は逆効果であることを理解するだろう。アフガニスタンにおける紛争に対する軍事的解決はありえず、政治的目的はますますあいまいになりつつある。つのっているフラストレーションをこれが更に強めるのだ。

最近、ロバート・ゲーツ国防長官は、同盟諸国を丸め込んで、南部で戦うために、より多くの戦闘部隊を派兵させようとしたが、強硬な反対に遭った。彼は言った。

「この大陸の多くの人々が、ヨーロッパの安全保障に対する直接の脅威の大きさを理解できないのではないかと懸念している」 ゲーツはこう語っている。「私たちは、進んで戦おうという国々とそうではない国、という二重構造の同盟になってはならない。そのような進展は、集団安全保障に対するあらゆる意味合いからして、事実上、同盟を破壊するだろう。」

だがヨーロッパでは、戦争への支持は衰えている。これはアメリカの戦争であって、彼らの戦争ではない。ヨーロッパ人にはエネルギー需要を満たすために外国を占領する必要はないのだ。彼らの国々は繁栄しており、自由市場で石油を買う金銭的余裕がある。アメリカだけが戦争を欲している。全てがアメリカの覇権をこの地域に広げ、資源を支配するための地政学的「大戦略」の一部なのだ。これまでの所、この計画が成功する兆しは全くない。

ドイツの経済は世界で三番目の規模だ。過去数年間、ドイツはロシアとの関係を強化しており、ドイツの長期的エネルギー需要を満たすような契約をロシアと結んだ。だがドイツのアフガニスタンへの関与が、モスクワとの関係に試練を課している。アメリカは、カスピ海盆地からのパイプライン経路を支配できるよう、中央アジアに腰を据え、ロシアと中国を軍事基地で包囲すべく、戦争を利用しているのだ、とプーチンは考えている。当然、プーチンはアメリカが率いる同盟に対抗するために、アンゲラ・メルケル首相にドイツ軍をアフガニスタンから撤退させるよう説得しようとするだろう。

結局は、ドイツ指導者は、ワシントンの冒険を支持するためだけに、自分たちにエネルギーを供給してくれる人々(ロシア)の鼻をひねるのは馬鹿げたことであることを理解するだろう。ドイツが撤退アフガニスタンから撤退すれば、NATOは解散し、新たな同盟が形成され、欧米の同盟関係は崩壊する。割れ目は既に見えている。

ブッシュは、アフガニスタン戦争は継続しなければならない、さもないとこの国は麻薬と、テロリズムと組織犯罪の天国になる、と言った。彼は言う。「世界的運動になりそうな危険があるイスラム原理主義という有害なイデオロギー」と我々は戦っているのだと。

だが、タリバンとパシュトゥーンの部族民は違う見方をしている。彼らは衝突を、国民の苦悩を増すだけの侵略帝国戦争と見なしているのだ。国連の?人材育成基金最近の報告も この見解を裏付けているようだ。それは、全ての範疇で、アフガニスタンが低下していることを示している。平均寿命は下がり、栄養失調が増え、識字率も低下し、人口の半数以上が最低生活線以下で暮らしている。戦争のおかげで、何十万人もの人々が、国内で行き場をなくしている。

アフガニスタンは今や世界のアヘンの90%を生産している。どの国よりも多い。成長著しい麻薬取引はアメリカ侵略の直接的な結果だ。ブッシュは世界最大の麻薬植民地を生み出した。これが成功だろうか?

今のところ、軍閥の長たちを排除したり、一般のアフガニスタン人の暮らしを良くしたりしようという計画はない。再建は行き詰まっている。もしもアメリカがアフガニスタンに駐留すれば、今後10年の状況は現在と同じで、更に多くの人々が不必要に死ぬだけだ。大半のアフガニスタン人は今やデモクラシーの約束が嘘であったことを理解している。占領がもたらした唯一のものは、より過酷な貧困と無差別暴力だ。

アフガニスタンに対する代替案はない。実際、計画は全く何もないのだ。アメリカ政権は、タリバンがアメリカのハイテク、レーザー誘導兵器を見れば、丘の上に逃げるだろうと考えた。彼等はそうした。今や彼等は戻ってきた。そして今我々は日に日に強くなる粘り強い敵との「勝てない」戦争に巻き込まれている。

結局は、ヨーロッパ人は戦争の無益さを理解して去るだろう。そしてそれがNATOの終焉となるだろう。

マイク・ホイットニーはGlobal Researchの常連寄稿者。マイク・ホイットニーによるGlobal Research記事

 


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