アメリカ軍はなぜいまだに沖縄にいるのか? 1997年4月
JPRI Critique Vol. 4 No. 2:1997年4月
特別報告:沖縄とアメリカ軍
アメリカ軍はなぜいまだに沖縄にいるのか?
チャルマーズ・ジョンソン
ジャパン・タイムズ編集者宛の手紙(1997年2月16日)で、アメリカの軍事理論家ラルフ・コッサは、沖縄の太田知事を「自分が暮らしている地政学的環境に対する理解の欠如(あるいは拒否)」と非難した。コッサは更に「アメリカの軍人たちが、日本の(そしてアメリカの)国家安全保障という利益防衛のために、自らの命を賭している事実」に対する太田知事の鈍感さをたしなめた。
しかしこの発言は意味をなさない。アメリカ下院議長であり、アメリカ政治指導者中で三番目の古株、ほかならないニュート・ギングリッチ本人が、1995年7月の演説でこう語っている。「アメリカ合州国を防衛するのに、今日の防衛予算は不要です。今日の防衛予算は、世界を率いるために必要なのです。世界をひきいること[つまり、アメリカの覇権]をあきらめる覚悟さえあれば、ずっと少ない国防予算ですむのです。」
たとえアメリカ軍がアメリカを守るために沖縄にいるわけではなくとも、アメリカ軍は日本を防衛するためにそこにいるのだ、とコッサは言う。しかし、朝日新聞の軍事記者、田岡俊次は、核兵器を除いては、1950年代後半以来、日本は自国の防空責任を負ってきたと最近書いている。田岡によると、アメリカ軍撤退よって日本が追加支出する必要は皆無だという。
アメリカの沖縄駐留を支持する人々の中には、兵士と航空機は、いかなる緊急時にもすぐ対応するための「前方展開戦力」だと言うものもいる。しかし沖縄そのものは、将来いかなる紛争の現場になりそうもない。沖縄に駐留するアメリカ軍は、たとえば韓国なり中東における、本当の交戦地帯まで輸送される必要があるだろう。佐世保に停泊するアメリカの強襲揚陸艦は、沖縄の膨大なアメリカ軍を輸送するのに十分なほど大きくはない。本当の危機にあたっては、沖縄のアメリカ軍はそのまま立ち往生する可能性が高い。
それならなぜ彼等はそこにいるのだろう? 植民地主義者として、つまり第二次世界大戦の結果、東アジアに存在するようになったアメリカ帝国の代表として、彼等は沖縄に駐留しているのだと私は考える。東アジアにおけるアメリカ合州国の初期の植民地前哨基地フィリピンが1898年のマニラ湾戦の結果であったのと同様に、現在の東アジアにおけるアメリカの植民地前哨基地、沖縄は、1945年の沖縄戦の結果だ。沖縄は過去50年間、1910年から1945年迄の間、日本の植民地としてあった朝鮮と同様の国際的立場のままでいる。
沖縄と韓国は、4つの特定の面でお互い似通っている。第一に、公式の法律的構造という点で、日本人は常に朝鮮人は日本支配に同意したのだと主張するが、これは丁度アメリカと日本双方が、日本政府は単にその領土の一部をアメリカに貸しているに過ぎないと主張するのと同じだ。これはもちろん、日露戦争の過程における日本の朝鮮軍事占領と、第二次世界大戦の過程におけるアメリカ合州国の沖縄軍事占領を無視している。
第二に、日本は朝鮮で(結果的には無駄にではあったものの)現地の人々の国民性を破壊しようとした。日本はこれを教育を通して行い、創氏改名を強い、朝鮮語を抑圧した。1950年代と1960年代の間、アメリカは同じことを沖縄人に対して試みていた。ニュースを沖縄方言で放送し、人々を琉球人と呼ぶことで、アメリカは沖縄人の日本に対する帰属意識を弱めようとした。
第三に、朝鮮の日本人と沖縄のアメリカ人は、それぞれの占領が二つの地域の経済発展に貢献したと頑強に主張している。だが韓国が日本支配から解放された後初めて、冷戦で分断されていたにもかかわらず、世界で最も豊かな国の一つになったのだ。沖縄もアメリカ基地が撤去された後に、初めて繁栄する可能性が高い。
第四に、日本人は朝鮮占領は日本の安全保障の為に必要だったと主張した。朝鮮は「日本の心臓に突きつけられた短剣」のようなものだと言われていた。しかし吉田茂元首相が再三指摘したように、もしも日本が朝鮮を占領していなかったなら、日本はアジア大陸に関与せずに済み、1930年代と1940年代における中国との悲惨な戦争も避けられただろう。東アジアの安全保障と安定の維持のために、アメリカ合州国の駐留が必要だという主張も、同様に疑わしい。アジアが平和で安定しているのは急速な経済成長のおかげであって、外国軍隊駐留のせいではない。
韓国と沖縄の違いは、韓国は50年前に植民地支配から解放されたが、沖縄は二十世紀末時点でさえ、依然として半植民地的飛び領土のままだということだ。
本エッセイの日本語版は琉球新報1997年3月16日に掲載された。
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英語原文のURLwww.jpri.org/publications/critiques/critique_IV_2.html
(日本政策研究所web)
(訳注:webでは琉球新報の日本語版がみつからないため、翻訳した。)
原文では、上記エッセイと並んで、太田知事(当時)のエッセイがある。
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参考:Democracy Nowでの放送の書き起こし原稿翻訳(彼の最新刊についての話)
チャルマーズ・ジョンソン: 『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日々』
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この文章が書かれて10年以上たった現在、属国化の程度はますますひどくなっている。
「アメリカ軍はなぜいまだに日本にいるのか?」 と読みかえれば、そのままだ。
少なくとも、日本の「国としての独立の度合い」、エクアドルとは比べ物になるまい。
「アメリカ軍はなぜいまだに日本にいるのか?」という話題、決してマスコミは扱わない。9条「壊憲」のための記事・番組なら作るが、安全保障条約という占領保障条約廃棄についての議論は意図的に、完全に除外している。マスコミは本来、大本営提灯報道組織だ。
田岡俊次氏の言説「アメリカ軍が日本を守っている」神話の実態をあかしてくれる。彼の新刊「北朝鮮・中国はどれだけ怖いか」の紹介は、たとえば「タカ派はバカ派」をどうぞ。
田岡俊次氏も出演している、パックイン・ジャーナル(Yahoo!動画)も是非ご覧を。
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2009年、4月、フィリピン人のカルデロン夫妻が、「違法」入国のかどで、強制退去させられた。
一方、アメリカ軍は、沖縄で、本土で、「合法」ということで、やりたい放題。
違法入国をしたとはいえ、入国後、真面目に仕事をして、日本人の同僚から、涙で送られた夫妻。
合法?とはいえ、戦闘機発着による、轟音公害の判決の日にも、堂々と編隊飛行を行う宗主国の軍隊。
入国・滞在が、違法であるか、合法であるかということと、国民(庶民)に対する寄与とは、必ずしも関係はないだろう。
合法滞在し、時に(いや頻繁に)おきる宗主国の皆様による違法行為は許容範囲というのは売国行為だ。
カルデロン・ノリコさんの中学の周辺で、「国に帰れ」というデモをした皆様、はたして、嘉手納や普天間で、「国に帰れ」というデモをしておられるのだろうか?そうでなければ、ダブル・スタンダード(二枚舌)だろう。北方領土返還!という意見には同意するが、まず膨大な同胞が暮らす沖縄から、基地をなくしてから、領土返還を要求するならば、説得力は増すだろう。もしもそういう趣旨で、南方基地の領土返還運動もされるなら、貧者の一灯、寄付もやぶさかではない。
文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記』の下記記事も是非ご一読を。
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