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2008年1月 6日 (日)

ベナジール・ブット暗殺とパキスタン不安定化の背後にある英米連合の野望

アメリカのパキスタンに対する政治支配を強化し、この地域全体での「対テロ戦争」の拡大と深化へのお膳立てをするためにブッシュ-チェニー政権とその同盟国が画策をしていることは、もう何カ月も知られていたことだ。ベナジール・ブット暗殺が、この計画を変えるわけではない。実際、ブッシュ-チェニーの選択肢を簡素化してくれたのだ。

口実を使って、混沌の種をまく

「イスラム世界にデモクラシーをもたらす」というのは、ブッシュ-チェニーによる圧力と軍事力の適用、パキスタン政府再建策の(ブット/シャリフ-ムシャラフ連合)連立、そして軍事介入の秘密計画という劇的な企みを覆い隠すために使われるオーウェル風詭弁だ 。様々なアメリカによる不安定化計画が、既に何カ月も、高官やアナリスト達には知られていた。パキスタン軍部の転覆案だ。

ブット暗殺は予期されていたことのように見える。実際に暗殺がおきるずっと前から、アメリカ高官の間ではペルベス・ムシャラフかベナジール・ブットどちらかの暗殺がありそうだという「うわさ」があったという報告さえある。

ジェレミー・ページの記事、「誰がベナジール・ブットを殺したか? 主な容疑者」で簡潔に要約されている通り、主な容疑者は1) 「ブットのことを異教徒で、アメリカの傀儡と見なしていたパキスタンと海外の戦闘的なイスラム教徒」、そして、2)Inter-Services Intelligence(三軍統合情報部)、つまりISI、事実上CIAの支局だ。ブットの夫アシフ・アリ・ザルダリはISIが10月の攻撃に関与していたとして直接非難している。

ブット暗殺が、アルカイダそのものが英米共謀の軍事-諜報作戦であることには触れずに、「アルカイダ」だけのせいにされるのは予想通りだ。

ページの記事は、今や主な容疑者とされている人物の名前を挙げた始めてのものの一つだ。バイトゥッラー・メスードは、ワジリスタンの外でパキスタン軍と戦っているタリバン戦士だとされている。矛盾した諸報告が、メフスドを「アルカイダ」、アフガニスタンのタリバン、ムラー・オマール(いずれもここを参照)と結びつけている。彼をテロリストのA.Q. カーンと結びつけるアナリストもいる。

メスードのプロフィール、そしてその報道は、9/11後の全ての「テロリスト」に対するプロパガンダ処理をそのまま繰り返している。これはそこで、英米共謀した軍事-諜報機関のプロパガンダ関与というおなじみの疑問を引き起こすこととなる。メフスードはISIあるいはCIAにつながっているのだろうか? ISIやCIAは、メフスードについて何を知っているのだろう? より重要なのは、メスード、あるいは彼をめぐるプロパガンダ操作は、ブッシュ-チェニーにとって、この地域における今後の攻勢の口実をもたらすのかどうかだ?

古典的「対テロ戦争」プロパガンダ

ブット暗殺にまつわる詳細は明らかになりつづけようが、明白なのはそれがレバノンにおけるアメリカの手先ラフィク・ハリリの場合同様に政治的な暗殺だったことが。極めて怪しいハリリ暗殺同様、ブット暗殺も、西欧風「デモクラシー」の偉大なメッセンジャーの殉教として大手マスコミにとりあげられている。その間、舞台裏でのアメリカ政府の冷酷な行動は、ほとんど注目を集めていない。

2007年12月28日ニューヨーク・タイムズのブット暗殺に関わる報道は、見え透いたプロパガンダの煙の背後にあるブッシュ/チェニーの狙いの真実を覆い隠す主流マスコミのオーウェル風報道歪曲の完璧な例である。この記事は、ブッシュの主目的は 「イスラム世界にデモクラシーをもたらし」て、「イスラム過激派を追い出す」のだというホワイト・ハウスの詭弁をそのまま繰り返している。

実際は、あからさまに犯罪的なブッシュ-チェニー政権はデモクラシーの正反対のことだけを支持し、推進してきている。混沌、ファシズム、そして英米に忠実な傀儡政権のでっちあげだ。

実際、ブッシュ-チェニーと、世界中にいる連中の相手役にとって重要で揺るぎない戦略地政学は、でっちあげられた「対テロ戦争」押しつけと拡大の継続だ。偽装作戦とでっちあげた口実によって引き起こされた事態による、ユーラシア亜大陸いたるところでの戦争の継続だ。

実際、「対テロ戦争」で使われる小道具はきまって、英米軍事情報機関になりかわって活躍するイスラム教過激派だ。その一つが「アルカイダ」であり、パキスタンのInter-Services Intelligence(三軍統合情報部)、ISIだ。メスードはまさにこのプロフィールにぴったりあてはまる。

ブッシュ-チェニーのパキスタンを救済する

同じニューヨーク・タイムズ紙の記事からの愉快な引用の中で、ウェンディー・チェンバレン、元駐パキスタン・アメリカ大使(であり9/11につながるアフガニスタン縦断パイプライン建設という多国籍工作の陰の主人公)が、得々と述べている。「アメリカはパキスタン政治制度中の重要な参加者だ。」

アメリカは「重要な参加者」であり続けるどころではなく、もう何十年も最高経営者の一人なのだ。

1990年代初期以来、パキスタン指導者は、ブット、シャリフそしてムシャラフまで、ことごとく西欧の利害に屈してきた。ISIは、事実上、CIA支局だ。

ブッシュ-チェニーにとって、ムシャラフはこの国の政治指導者であったし、そうであり続けているが、彼の「信頼度」と、支配力に対する疑念、つまり彼の政権の大衆に対する支配と、民衆不安の増大、そして世界支配エリートによる彼の政権に対する支配という見地から、ブッシュ-チェニーは、不細工な(親米、イラク風)連立政権の押しつけを試みるに至っている。ロバート・シーアが書いているように、ブッシュ-チェニーは、ムシャラフ、ブットとナワズ・シャリフの間で「ロシアン・ルーレット」をさせてきた。彼等全員ひどく腐敗し、進んでアメリカの手先になりたがっている

ブットともうひとりの元首相ナワズ・シャリフという二人の帰還は、アメリカの地域権力の代理となる有力者を分散してリスクを回避するというアメリカの企みであったに過ぎない。

ジョン・ネグロポンテとコンドリーサ・ライスは過去数カ月の間、本当は一体何を仕込んでいたのだろう?

ブット暗殺の恩恵を受けるのは誰か?

「対テロ戦争」戦略地政学とプロパガンダ環境という青写真は、9/11以来、世界戦争の継続を押しつける世界支配エリートの利害の為に使われてきたが、これも明らかなブット暗殺の受益者だ。ブッシュ/チェニーや、彼等に共謀する民主党内の戦争支持/占領支持派の片割れ連中は、戦争継続政策を押しつけるのに「テロ」という口実の日常的な使用を熱心に支持している。

例のごとく、恐怖、「テロ」、「治安」と軍事力は、またもや、ワシントンの政治的詭弁と、24時間対応のマスコミ集中砲火の焦点だ。

2008年のアメリカ大統領候補者やその選挙キャンペーン顧問たちは、ごく一部を除き熱心に「対テロ戦争」を支持し、代わる代わる、それぞれの言い方の「アメリカはテロリストを押しとどめなければならない」という詭弁を思考の混乱した支持者に押しつけている。9/11共謀者で日和見主義者ルディー・ジュリアーニや、タカ派のネオリベラル、ヒラリー クリントンやらを筆頭とする支持率の下がりかけた候補者たちは、大衆の恐怖が、また新たに追加されたことで既に恩恵を受けている。

ムシャラフは強敵がいなくなったことで恩恵を受けてはいるが、秩序を再確立する方法を見つけ出せねばならない。ムシャラフは「テロリスト」取り締まりや、本格的な戒厳令を押しつけるのに理想的な正当化ができ、ブッシュ-チェニーはムシャラフ背後の陰で動いて、あやつり続けるか、あるいは、もしもムシャラフが余りに信頼できないことがわかったり、英米の計画にあいそこなったりした場合は、追い出せる。

ブット暗殺の背後におけるISI関与の可能性は誇張しすぎることはない。9/11以来あらゆる主要な「テロ」活動の背後におけるISIの役割は、現在の戦略地政学的現実の背後にある、常に語られることのない揺るがぬ事実だった。シャリフやムシャラフではなくブットならISIの計画を脅かしたろう。

ブット、イスラム過激派、そしてパイプライン

彼女が殉教者となった以上、ベナジール・ブットにまつわる多くの不都合な歴史的な事実は隠されるか、忘れられるかするだろう。

ブット自身が、自分の暗殺に関わっていると噂されている、まさにその「テロ」環境そのものの創生に深く関与していた。政治家として経歴の間ずっと、彼女は戦闘的なイスラム教徒、タリバン、ISIや、西欧政府の野望を支持してきた。

ミシェル・チョスドフスキーがアメリカの「対テロ戦争」で書いているように、ブットの第二期政権の間に、ジャミアト-ウル-ウレマ-エ-イスラム(JUI)とタリバンが躍進し、ブット連立政府に歓迎されて入った。JUI、軍部とISIとの間のつながりができたのは、この時のことだ。

ブットのISIやタリバンとの関係は、混乱だらけだが、ブットが権力を握っていた時、この双方を支持していたこと、そして熱心に英米の介入を支持していたことは明らかだ。

彼の二冊の画期的な本「タリバン: イスラム過激派、中央アジアにおける石油と原理主義」および「ジハド:中央アジアのイスラム過激派」の中で、アフメド・ラシドは、ブット政権の、ISI、タリバン、「イスラム過激派」、多国籍石油企業の利害、英米高官や、諜報機関代理人たちとのコネの詳細を十分に描いている

著書「ジハド」の中で、ラシドはこう書いている。

「ISIではなく、パキスタンの最近の歴史で最もリベラルで、非宗教的な指導者ベナジール・ブット首相が、中央アジアとの新たな関係にとどめの一撃を加えたのは皮肉なことだ。アフガニスタンにおけるより広範な和平過程の可能性を開いたであろう、より広範な平和過程を支持するのではなく、新たな西欧指向の貿易や、トルクメニスタンから南部アフガニスタン経由で、パキスタンに至るパイプライン経路を作るという性急で押しつけがましい政策でブットはタリバンを支援した。タリバンがこの経路の治安をもたらすはずだった。アフガニスタンにおける子分ガルブディン・ヘクマチアルのカーブル攻略がまるで進まず、タリバンはそうするのに十分な力があるように見えたので、ISIは、間もなくこの政策を支持した。」

著書「タリバン」の中で、ラシドは更に詳しい歴史を書いている。

「ブットが1993年に首相に選ばれた時、彼女は中央アジアへの道路を通したがっていた。いらだつパキスタンの運輸、密輸マフィア、JUIとパシュトウーンの軍部、政治高官によって強く支援された新たな提案がだされた。」

「ブット政権はタリバンを全面的に支援したが、ISIは、彼らの力については懐疑的で、彼等は使えるが、南部の周辺的勢力だと確信していた。」

「アメリカ議会はイランを不安定化するためCIAに2000万ドルの秘密予算を認め、テヘランはワシントンがこの予算の一部をタリバンに注ぎこんだと非難した。この嫌疑を常にワシントンは否定してきた。ブットはワシントンに何人か特使を送り込み、アメリカに、パキスタンとタリバン側についてより公的に介入するよう促した。」

ブットは一つ失敗をした。彼女はアルゼンチンの石油会社ブリダスが提案したパイプラインを頑強に支持し、(アメリカお気に入りの)ユノカルによるパイプラインに反対した。このおかげで彼女は1996年に放逐され、ナワズ・シャリフが権力に返り咲いた。ラシドはこう書いている。

「1996年ブット政府解散の後、新たに選ばれた首相ナワズ・シャリフと、その石油相チョードリ・ニサル・アリ・カーン、軍部とISIはユノカルを全面的に支持した。パキスタンはタリバンにたいするより直接的なアメリカの支持を望み、タリバンを正当化するため、建設を早く始めるようユノカルを促した。基本的にアメリカとユノカルはISIの分析と狙いを受け入れた。アフガニスタンにおけるタリバンの勝利によって、ユノカルの仕事がずっとやりやすくなり、アメリカの承認が促進されるというものだ。」

魅力的で華やかな親西欧風イメージにもかかわらず、ブットの本当の経歴は汚職と便宜供与に満ちている。

よみがえった「対テロ戦争」

英米の主要な戦略地政学的犯罪はどれも、アメリカの軍事諜報組織と直接、間接につながる「テロ」代理人によって練り上げられ、実行されたか、あるいは、諜報組織の要員として遂行すべく操られておきた、都合のよい口実が先行している。ベナジール・ブットの暗殺はそうしたもう一つの暴力的な例に過ぎない。

これはパキスタンの9/11だ。パキスタンのJFK暗殺であり、その衝撃は長期にわたって続くだろう。

大手商業マスコミのニュース報道とは逆に、混乱はブッシュ-チェニーの「対テロ戦争」のためになるのだ。「世界的に治安を強化する」という掛け声が、力強いアメリカの対応、ブッシュ-チェニーによるこの地域全体に対するアメリカが先導する武力や他のやり方でのブッシュ-チェニーによるこの地域全体に対する「取り締まり」の道ならしとなるだろう。言い換えれば、暗殺はアメリカが永遠に撤退しなくなっただけでなく、その駐留を強化することを可能にした。

パキスタンの選挙は、それがもし行われればだが、単純な二者択一だ。親米派ムシャラフか、親米派シャリフだ。

ブッシュ-チェニーの9/11計画の狙いは、成否様々な結果となった一方で、様々な抵抗にも出くわした(「テロ」によっても、また政治的にも)が、「対テロ戦争」というプロパガンダの基盤はしっかりとし、ゆるぎもせず、いつも決まって強化されていることは疑うべくもない。

今やムシャラフに対する唯一の競争相手として現れたナワズ・シャリフについていえば、彼もムシャラフやブット同様、英米の利害つまり、パイプライン、貿易、アメリカ軍事駐留の継続への迎合は伝説的なほどだ。ジャン-シャール・ブリサールとギヨーム・ダスキーが著書Forbidden Truth(禁じられた真実)で書いているように、シャリフの政権を転覆させた、ムシャラフが率いた1999年10月の軍事クーデターは、二つの派閥の敵対意識や、「シャリフの個人的な汚職と政治的な誇大妄想癖」、そして「シャリフがカシミールとアフガニスタン問題について、あまりにワシントンの調子に合わせすぎるという懸念」とがあいまって誘発された。

言い換えれば、どちらの手駒が大統領の座を得ようと、ブッシュ-チェニーの勝利だ。

ラリー・チン

グローバル・リサーチ、2007年12月29日

http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=7699

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テロ以外は、人ごとでないように読めるのは被害妄想だろうか?

属国の政治は、疑似二大政党という独裁政治の帝国本国によって、

A. テロと、傀儡政党大連立の組み合わせ

B. テロは当面ないが、傀儡政党の大連立

の、いずれかを押しつけられるもののようだ。日本の場合はさしあたってB案か。

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