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2007年12月 6日 (木)

変わりそうに見えれば見えるほど、物事は変わらないもの

軍事的な進歩という作り話

2007年11月27日

ロン・ジェイコブズ

占領をしておいて、それを平和と呼ぶ。相手を殺す人数を減らしておいて、それを進歩と呼ぶ。部隊を交代しておいて、それを撤退と呼ぶ。新たな殺し屋集団を作っておいて、その連中を同盟と呼ぶ。規準を下げておいて、新たなチャンスが開くと言う。

こうした上記の現象、現在のイラクにおけるワシントン軍事作戦の一部のようだ。今、イラクで死亡する米兵の数が減少しているが、それは兵士が基地から出ないからだ。なぜか? 最新のアメリカ同盟者となった部族に、自分たちになりかわって殺害をするよう現金を支払い、彼等が殺人を行い、彼等に弾が命中するからだ。実際、こうした命中の中でも、もっとも致命的なものは、アメリカがでっちあげた、本当にいるかどうかもわからない妖怪、イラクのアル・カイダ、アル・カイダ・イン・メソポタミア殺害に携わっている連中を、「誤って」爆撃するアメリカの空爆だったり。一方、こうした部族の連中はアメリカ軍の手法と所在地を学び、敵対するシーア派、あるいは恐らくは当面のところ同盟しているその同じアメリカ軍と将来戦うために、アメリカが提供した兵器を蓄積している。

そうした中、政治家たちはアメリカのなかで、戦争をするため、帝国を維持するため、何十億ドルも自国の男女達からかすめ取りながらも、本当の撤退日程を主張することを拒否して、人命商売を冷笑的に続けている。撤退法案ではない撤退法案を巡り、いつわりの論議が始まった。ホワイト・ハウスが自分達、戦争とその行動に対し、しっかり把握できているのだと言い張る一方、議会の野党が、間抜け漁師の破れた漁網よりも穴だらけな法律を立案したためだ。無力な法律なのに、野党はそれさえも通し損ね、ホワイト・ハウスに、政権が元々要求していた予算をすべて与える結末となった。野党は、選挙まで待てと主張する。そうなれば事態は変わるのだと。前回の選挙が多少参考になるとすれば、変わるものと言えば、ホワイト・ハウスの主人公の顔だけだろう。軍隊はイラクに駐留し続け、占領/戦争は油田支配のための場当たりなやり方を続けるだろう。あるいは、誰がホワイト・ハウスの主になろうと、この地域に対するワシントンの計画の失敗という結果になる可能性もある。

「我々は軍隊に資金を供給する」ミシガン州の民主党議員レヴィンは、今日(11/25/07)のテレビ番組「フォックス・ニューズ・サンデイ」で語った。「軍隊を弱くしようとする人はいない。」この発言の言外の意味は単純にこうだ。戦争の足をひっぱるようなことをする人間はいない。結局、戦争で戦うのは軍隊だ、そうではないだろうか? 歴史を学ぶものにとって信じがたいことだが、この国の歴史には、軍隊が今のような触れてはならない組織ではない時期もあった。実際、軍隊が純粋に防衛軍であるという、短期間ながら輝ける瞬間もあったのだ。不幸なことに、そうした期間は短かかったばかりでなく、かなり大昔のことだ。アメリカ合州国の第二次世界大戦への参戦以来ほど、軍部がアメリカの政治形態を支配したことは、アメリカの歴史上かつてなかった。この政治分野に対する支配こそが、議員の職に居続けたい政治家の誰一人として、ペンタゴンや、ペンタゴンが生み出した複合体に対する資金援助を止めようとしない理由だ。この状況が存在しているのは、必ずしもアメリカ国民が自分たちの税金の大半を武器製造企業に払ったり、帝国軍維持のために使って欲しいと思っているからではない。前述の複合体のプロパガンダ部隊が、この複合体に挑戦する政治家の人生を破壊できるし、破壊するからこそ存在しているのだ。その結果、二大政党の政治家で、アメリカ政治における、ペンタゴンの特に神聖な立場に対して本質的に反対する連中の数など片手で数えられるに過ぎない。これらの腑抜けの男女は、そうした恐怖にかられて動いているだけでなく、先に述べた複合体のメンバーとして儲けている企業が彼等に与えてくれるドルのおかげもあるのだ。明らかに実体のない恐怖にかりたてられた私たちの沈黙が、本当は殺人と呼ぶ以外ありえないようなことを連中がしでかし、何の罰も受けずにまんまと逃げるの許している。

イラクとアフガニスタンに話を戻そう。この二国における暴力は、戦争という野獣のみが知る、死と破壊のリズムを反映して盛衰している。その野獣のせいで、両親を失う子供たちがいる一方、子供たちを失う両親もいる。アメリカ国民が税金で払っているドルが、平和的な目的で使われるべきだとする大多数の率直な願いにもかかわらず、戦争怪獣の強欲に日々注がれている。我々が許してしまっている支配構造は、もはやたぶんその金を平和のためには使ってはいまい。恐らく連中は戦争とその儲けで腐敗しすぎなのだ。連中は、残酷な戦争に長く仕えた結果、平和が支配を意味するものでなく、そのような平和を確保するための無益な努力としての戦争など不要な世界を、恐らく想像できなくなってしまっている。

こうした支配を受けざるを得ない人々が抵抗をするのはきわめて当然のことだ。抵抗運動が武器をとるのは当然のことだ。そうでなければ自殺も同然だから。殺戮されている時に、自殺をする人間などいるだろうか? そういうことであれば、武装抵抗運動は自己防衛であり、何もしないことは敗北なのだ。そうなると再び疑問が湧き上がる。イラクとアフガニスタンの占領者に現在協力している部族民連中は、ガードが下がった時に、占領者に最終的な打撃を与えるために協力しているふりをしているだけなのだろうか? この戦略は、(西欧のマスコミによって、シーア派とレッテルを貼られている)ムクタダ・アル-サドルの反占領部隊のものではなかったろうか? そしてこれらの勢力は、今やアメリカ軍の照準に入っているのではないか?

一方で、バグダッドのグリーン・ゾーン政府は、アメリカ軍に対し、相当な規模でイラクに駐留し続ける長期条約をして欲しいと要求している。グリーン・ゾーン政府が実際にはアメリカ軍がいつまでイラクを占領するかについて発言権皆無であるという明白な事実に加えて、権力の地位にある連中が、軍隊に居続けて欲しいと頼んでいるという事実は 自分たちの権力がイラク国民から得ているものではなく、ワシントンの軍事力によるものだという自認だ。実際、グリーン・ゾーン政府によるこの「要求」を論じた2007年11月26日のAP通信社記事によると、「イラク政府が海外からの脅威と国内のクーデターからの保護を求めている」がゆえに、その要求がだされたのだという。こうした国内のクーデターというのは、ほぼ確実に反乱軍の勝利に対するワシントンの恐怖のことを言っているだろうことは明らかだ。あらゆる行動によって、アメリカによる占領に反対しているムクタダ・アル-サドルの支持者が、この「要求」に対する反対を表明したことが、そのあたりを物語っている。物事が変わりそうに見えれば見えるほど、物事は変わらないものだ。死傷者がこの問題の部分でさえなくとも、死傷者は増え続けるのだ。

ロン・ジェイコブズは、Versoによって復刊されたばかりのWeather Undergroundの歴史を描いた本The Way the Wind Blewの著者である。ビッグ・ビル・ブルーンジーについてのジェイコブズのエッセイは音楽、芸術とセックスに関わるカウンター・パンチのコレクション、Serpents in the Gardenで特集された。処女作小説Short Order Frame UpはMainstay Pressから刊行されている。メールアドレスはrjacobs3625@charter.net

http://www.counterpunch.org/jacobs11272007.html

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以下は補足と、よしなしごと。

ロン・ジェイコブズの、2004年記事、選挙と「死の部隊」:イスラム法学者協会聖職者殺害の翻訳は下記に。翻訳は益岡賢氏。

http://teanotwar.blogtribe.org/entry-036f472f5f004a1a455e2d7fdf085fd3.html

ロン・ジェイコブズの、2007年9月記事、「イラク分割統治という幻想」の翻訳は下記に。翻訳は益岡賢氏。

http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/places/znet070928.html

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食べ物の賞味期限切れで国民がいやいや殺されることはないだろう。

60年以上も、支配を続けて、賞味期限の切れた、宗主国支配層、属国傀儡層、軍産複合体による被害の方が、比較にならないほど大きいはずだ。

大東亜戦争当時と変わらずどうでもよいことだけを報道するマスコミこそ、国民に大きな被害をあたえる期限切れに違いない。

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