愛し合って、戦争になった: 好戦国家アメリカとの遭遇 ノーマン・ソロモン
エミー・グッドマン: 民営化された戦争から、我々は永久戦争を論じるに至っています。「好戦国家は一過性のものではない。大統領選の選挙日一日だけで一挙に敗北させることは不可能だ。好むと、好まざるとにかかわらず、それはアメリカ合州国の中核であり、我々の存在そのものにまで浸透している」これはマスコミ評論家、ベストセラーの著者ノーマン・ソロモンの新刊からの引用文です。新刊書の書名は、Made Love Got War: Close Encounters with America's Warfare Sate(愛し合って、戦争になった: 好戦国家アメリカとの遭遇)です。
この本は、50年前の明日のスプートニク打ち上げで引き起こされたパニックから、現在のイランに対する戦争挑発に至るまでをたどったものです。アメリカ政府が、過去半世紀にわたって「人を殺し、人に殺される仕事」に没頭してきたことについての物語です。
ノーマン・ソロモンは、記事が全国的に配信されているコラムニストで、新刊War Made Easy: How Presidents and Pundits Keep Spinning Us to Deathを含む12冊以上の本の著者で、Institute for Public Accuracyの創始者兼理事長です。
デモクラシー・ナウ!にようこそ、ノーマンさん。
ノーマン・ソロモン: 有り難う、エミーさん。
エミー・グッドマン: 50年前の明日のスプートニク打ち上げは、現在とどのような関係があるでしょう?
ノーマン・ソロモン: ええ、公式説明は、アメリカは、50年前のソ連のスプートニク打ち上げによる屈辱から、69年に人類を月に送りこむ勝利に至り、以来、技術的な最上級を享受しているというものです。
しかしそこには暗い面もあります。アメリカ合州国と世界の多くの人々がさらされ続けている、極めて有害で破壊的な暗い面で、それはドワイト・アイゼンハワーが61年の辞任演説で、「軍産複合体」と呼び、それほどには有名ではない言葉では「科学技術エリート」と呼んだ目的のために、専門技術と科学研究を乗っ取り、何十億ドルも注ぎ込み続けているということです。そのエリート達が2,000ポンド爆弾をイラクの都市部に送り出しているのです。ブラックウォーターのような組織にたんまり支払うだけでなく、見えないところで、気がつかないところで、アメリカ人の名をかたって、アメリカ人の税金から得たドルでイラク人を虐殺していますが、公式な筋がきと全くかけ離れた任務をも遂行しているのです。
ですから、スプートニクが、シリコン・バレーやその他諸々のアメリカの専門技術発展という道筋を生んだのだといわれますが、同時にいかさま政治文化とでも呼ぶべきものの裏面があると言うことも可能です。1967年にマーチン・ルーサー・キングが、少数の人々を富ませ、好戦国家を作り上げるために、わが国の国民の才能、資源、科学的英知を使うという「誘導ミサイルと、誤誘導されている人類」の動力学と呼んだものには、デモクラシーや科学的な進歩にまつわるあらゆる美辞麗句にことごとく対照するものがあり、それが常にアメリカの一部なのです。
エミー・グッドマン: 破壊と、憎悪と反感を前にした、無邪気さについて発言しておられます。草の根的な状況についてお話ください。
ノーマン・ソロモン: 1960年代には、ある意味で、今でも、たてまえ論、おとぎばなし、英雄的なデモクラシーのためのアメリカの任務だと教え込まれているものと、真実の間には、対照的要素があります。1950年代と60年代の破壊性は、まさに子供たちの骨に、J.エドガー・フーバーやFBIが懸念した形ではなく、生身の人間の身体に、死の灰のストロンチウム-90が浸潤したのです。これらの核兵器はアメリカの税金で得たドルによって、ロスアラモスとリバモアで、今でも開発され続けています。つい最近ロスアラモス研究所を訪問し、核爆弾の技術がアメリカを救うと未だに信じている人々と話しました。これこそが、好戦国家の一部を構成する「軌跡」なのです。
ブラックウォーターを、ある議員の言い方によれば、民主党議員で、ブラックウォーターを批判しているとされる人物が、ブラックウォーターはイラクにおけるアメリカの任務を傷つけていると言った、昨日のブラックウォーター聴聞のニューズクリップをわずか数分前に、私たちは聞きました。好戦国家の油断のならない特性が、ついつい我々に、任務のなかに、あたかも何か支持すべきものがあるのだという考えを、少なくとも暗黙裡に、認めさせがちです。しかも、一日に20億ドルがペンタゴンの金庫に流れ込むのですが、それはアメリカ国民のお金です。この国の国民のお金で、医療、教育、住宅に対して使われるべきものなのです。
それなのに、国民は鎮圧され、麻痺させられる過程で、それも好戦国家の一部分なのですが、国民は受動的にされ、受け入れさせられるのです。エミーさんもご承知の通り、私は国中を始終旅しています。皆さんとお話するのです。懸念している人は多数います。彼等はこの番組をみています。彼等は能動的です。一つの部屋に集まります。時には50人、時には5人、ある時には500人集まります。そして同じ質問をされることが良くあります。「結局、これは同じ考えを持った聖歌隊の仲間同士で説教しあっているのにすぎないのではありませんか?」それがひとつの懸念です。私たちは、進歩派という支持者仲間の外で活動しなければなりません。しかし現実は、より根本的に 好戦国家に対向するためには、聖歌隊はもっと上手に歌えるように学ぶ必要があるのです。当面のところ、私たちの黙従が、私たちの身にしみ込まされている「現実を受諾する」姿勢が、大変な被害を引き起こしているのですから。
エミー・グッドマン: 本当にあなた達は、聖歌隊だ、つまり今のところ、非常に限られた特定集団の人々だと考えておられますか? つまり、今やこの国でイラクでの戦争に対する反対のレベルは、特定のタイプの人々を超えて広がってはいないと?
ノーマン・ソロモン: 反対の声は世論調査に記録されますが、大半は静止しています。ベトナム戦争の進展を見てみれば、毎年、60年代後半から70年代の初期、世論調査では、大半のアメリカ人は戦争に反対しており、不道徳であるとさえ感じていたことがわかっています。そのまま早送りして、この十年間を見れば、長年、大半の世論調査では、大半の人々が反対していたことを示しています。しかし、どういうことでしょう? アメリカの政治文化は、国民に対して、受動的になるように、街路のデモには出ないように、政府の戦争遂行部局を封鎖せぬよう、議員会館に行かぬよう、家を出ないよう、不作法な、あるいは、破壊的なやり方で反対の声を上げないように、と奨励するものなのです。私たちは好戦国家の敵にならなければいけません。修辞的な意味ではなく、アメリカ人の人間的な価値観が一体どこにあり、本来どこにあるべきかということを、アメリカ人に語りかけるという意味で。
エミー・グッドマン: 最近「トーマス・フリードマンは戦争に夢中」という記事を書かれましたね。
ノーマン・ソロモン: はい。
エミー・グッドマン: 評論家達についてしばしばお書きになっていますね。なぜ今トーマス・フリードマンのなのですか?
ノーマン・ソロモン: ええ、当時は戦争を支持していたのですが、ブッシュ政権へのこの戦争に対する批判という点で、彼は非常にはっきりとものを言います。彼はアメリカ合州国で最も影響力のある評論家だといわれています。それなのに、ちょっと彼の記事を読んでみると、彼は軍事力に対する膨大な支出を認めているのです。世界中にマクドナルドの店を置くためには、アメリカ政府が助成する軍事産業マクダネル・ダグラスが必要だ、と彼は書いたのです。昨日のニューヨーク・タイムズのコラムで、トーマス・フリードマンは、彼が「9/11以前」と称する時代を懐かしんでいます。しかしそれは、軍国主義が問題になったのは9/11以降、あるいはジョージ・W・ブッシュ政権からだ、という神話の一部なのです。
私の本「Made Love、Got War」で詳細に描いていますが、5、60年間にもわたって、私たちは好戦国家の中で暮らし育てられてきたのです。ですからその影響は恐ろしいほど致命的です。マーチン・ルーサー・キングは「精神的な死」について語っています。彼の言葉は、毎年、社会福祉よりも、軍事の方に多額の金を支出する社会に不可避な「精神的な死」です。これは40年前の話です。そうした精神的な死の効果は一体どんなものでしょう? そして、これほど恐ろしい結果をもたらす、この類の危険で、恐ろしい流れに対し、対向する機会はあるのですが、そうするためには、私たち自身をまず活性化させねばなりません。
エミー・グッドマン: 40年間の活動を振り返えられて、あなたがその方向に行きたいと努めておられる未来の姿とはどのようなものですか?
ノーマン・ソロモン: はい、私が想像している未来の形というのは、とりわけ楽観的というわけではありません。決して宿命論的なものでもありません。これら全て、容易に実現可能なのです。軍産複合体やそれにかかわる諸々という意味で、我々が立ち向かっている動きに対して、対向することは可能です。市販のホールマーク社カード用のセリフにしたいわけではありませんが、私は人間精神を信じています。人間精神は殺すことはできませんが、鎮静されうるのです。ですから私たちはこの鎮静作用を振り払うことができなければなりません。つまり覚醒で、精神的無感覚を克服するのです。そのためには、お互い助け合い、組織化、ひたすら組織化することが必要です。
エミー・グッドマン: 最後になりますが、お作りになった映画War Made Easyと、前のご本のあと、多少は世の中が良くなったと感じておられますか。評論家達が、事実を歪曲して、我々を死に追いやると仰っておられるわけですが?
ノーマン・ソロモン: 歪曲(スピニング)というのは、強制的な無秩序の反復です。これは大手マスコミの仕事の一部です。それに対向するつもりなら、この放送や、他の多くのアメリカ中の、必要なウェブサイト、刊行物、ラジオ放送、あらゆる様々な努力を支援しなければなりません。もしも評論家連中に任せてしまえば、今イランに対してやっていること、5年前に見たのと同じ、「イラン攻撃」大本営配給記事の危険という出発点に連中は戻ってしまいます。これは止めなければなりません。
エミー・グッドマン: イラン、そう最後にイランについてお話ください。
ノーマン・ソロモン: テヘランには二年前に、アフマディネジャドが権力についた選挙の間、行っていました。真実は、アメリカ合州国は、実際上の意味でも、道徳上の意味でも、気の狂った人々に率いられているのです。現今の展望はといえば、シーモア・ハーシが昨日これについて言っていましたが、アメリカのイラン攻撃は、どのような外観であれ、どのような論拠であれ、ゾッとするようなシナリオだということです。狂信者の枢軸です。小物はイラン政府指導者で、大物はブッシュ政権のグローバル狂信者です。連中を抑え、この好戦国家を押し返すためにできるあらゆることを、私たちはしなければなりません。
エミー・グッドマン: ショーン・ペンと一緒に行かれましたね?
ノーマン・ソロモン: ショーン・ペンと一緒に行きました。
エミー・グッドマン: たしか、彼とイラクにも行かれましたね?
ノーマン・ソロモン: その通りです。
エミー・グッドマン: なぜショーンはイランやイラクのような場所に行くのでしょう。アカデミー賞受賞俳優が?
ノーマン・ソロモン: ええ、彼の代りに話すわけではありませんが、彼は世界中の子供に対してとても深い思いやりをもっています。子供が二人いるからという理由だけではなく。イラク侵略の三カ月前にバグダッドをサイクリングした時に話したのです。次の列に写っているあるイラクの子供を見て彼が言ったのです。「なぜ私がサンフランシスコからのこの旅をしたかを忘れるようなことがあったら、この子を見れば何のためだったか思い出せるよ。」
エミー・グッドマン: ノーマンさん、ご出演有り難うございました。彼の最新刊、Made Love, Got War: Close Encounters with America's Warfare State(愛し合って、戦争になった: 好戦国家アメリカとの遭遇)には、ダニエル・エルズバーグ氏が序文を書いています。
2007年10月3日のデモクラシー・ナウ放送記事
本対談の英語原文は下記で読めます。
http://www.democracynow.org/2007/10/3/made_love_got_war_norman_solomon
愛し合って、戦争になった: 好戦国家アメリカとの遭遇
日本のデモクラシーナウでは、新刊書の書名邦題は「殺し合うのではなく愛し合おう」の反戦スローガンは戦争を回避できなかった:好戦国家アメリカとの遭遇)」となっている。
ちなみに、このダニエル・エルズバーグの序文は、「原爆がおとされたのはしょうがない」などと発言する属国傀儡政党の大臣とは全く違う、原爆への関与を快しとしなかった潔い父親の行動にふれた素晴らしいものだ。
もちろん、属国の傀儡マスコミがそれを紹介することは決してないだろう。
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