チャルマーズ・ジョンソン: 『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日々』
以下は、Democracy Now、首題放送の文字おこし原稿翻訳
CIAアナリストで、著名な学者で、ベストセラー本著者のチャルマーズ・ジョンソンは、アメリカ軍と経済の手の広げすぎが、憲法にかなった共和制としての国家の崩壊を引き起こしかねないと新著で主張している。新刊は彼の「報復」シリーズ三部作の最終巻で、ベストセラーの『アメリカ帝国への報復』(原題:Blowback)と『アメリカ帝国の悲劇』(原題:Sorrows of Empire)の続きである。この二冊の本で、アメリカの秘密の軍事行動が、アメリカ合州国における、本来意図していない、直接的な災厄を引き起こすにいたっているとジョンソンは主張している。[以下に文字おこし原稿あり]
チャルマーズ・ジョンソンはカリフォルニア大学サンデイエゴ校の国際関係の元教授である。日本政策研究所の所長でもある。ジョンソン氏はロサンゼルス・タイムズ、ロンドン・レビュー・オブ・ブックス、ハーパーズ・マガジンや、ネーションといったいくつかの雑誌にも寄稿している。2005年には、2005年には、賞を受けているドキュメンタリー作品「なぜ戦うか」(Why We Fight)の中で主要人物として取り上げられた。
チャルマーズ・ジョンソン氏は、昨日サンデイエゴから、私とお話くださった。彼の本の書名「ネメシス」ついての質問から話を始めた。
* チャルマーズ・ジョンソンは、作家で、学者で、アメリカ海外政策に関する有数の評論家。カリフォルニア大学サンデイエゴ校の国際関係の元教授。日本政策研究所の所長でもある。新刊書に『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日々』(原題:Nemesis: The Last Days of the American Republic)がある。
文字おこし原稿
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エイミー・グッドマン: 今日は、元CIA顧問で、著名な学者で、ベストセラー作家のチャルマーズ・ジョンソンさんとお話します。彼は新刊書を出されたばかりです。『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日々』(原題:Nemesis: The Last Days of the American Republic)というご本です。このご本は、三部作の最終巻で、その一冊目は『アメリカ帝国への報復』(原題:Blowback)、二冊目が『アメリカ帝国の悲劇』(原題:Sorrows of Empire)です。この二冊の本で、ジョンソンさんは、アメリカの秘密軍事行動が、アメリカ合州国の国内における、意図してはいなかった、直接的な災厄をもたらしていると主張されています。この新刊のなかで、ジョンソンさんはアメリカが、軍事的・経済的に手を広げ過ぎていることで、 実際、この国の、憲法にかなった共和制の崩壊にいたる可能性があると主張しておられます。
チャルマーズ・ジョンソンさんは、カリフォルニア大学サンデイエゴ校の国際関係の元教授です。日本政策研究所の所長もしておられます。ロサンゼルス・タイムズ、ロンドン・レビュー・オブ・ブックス、ハーパーズ誌やザ・ネーション等、多数の雑誌にも寄稿しておられます。2005年には、賞を受けているドキュメンタリー作品「なぜ戦うか」(Why We Fight)の中で主要人物として取り上げられました。チャルマーズ・ジョンソンさんには、昨日サンデイエゴからお相手していただきました。新刊書の書名、「ネメシス」についての質問から話を始めました。
チャルマーズ・ジョンソン: ネメシスというのは、古代ギリシャの復讐の女神で、人間の不遜や傲慢をこらしめる神です。彼女がナルシスを池に誘い、水面で彼の顔を写して見せ、彼は池に飛び込み、溺れたのを覚えておいでかもしれません。私がこの題名を選んだのは、たった今彼女はわが国にいて、まさに女神の任務をなし遂げようと待機しているように思われるからなのです。
しかし、副題が言いたかったことです。これは本を売らんがための誇大宣伝ではありません。「アメリカ共和国最後の日々」というのは、非常に現実的な、政治分析上の具体的な問題を懸念しているのです。つまり現代アメリカ合州国の政治制度は、歴史的に見れば、最も不安定な組み合わせの一つで、国内的なデモクラシーと、対外的な帝国で、全く対照的な選択肢なのです。一つの国家はどちらか一つになれるのです。デモクラシーか帝国主義者のいずれかで、その両方にはなれません。帝国主義に固執すれば、いにしえのローマ共和国のようになり、実際アメリカの制度の多くはローマに負っているのですが、いにしえのローマ共和国同様、デモクラシーを失い、内政も独裁体制になるのです。
本の中で、ひとつの代替策についてかなりの部分を費やしています。つまり世界第二次大戦後のイギリス帝国が、いかなる方法・手段についても、完璧に遂行したとは言えませんが、それでもともかくデモクラシーを維持するために帝国を放棄するという決断をしたことです。帝国のごく末期に、イギリスは、最も価値があるインドが、統治のための虐殺という対価によってしか維持できなことが明らかになったのです。統治のための虐殺をインドでは頻繁に遂行してきていたのですが。終わったばかりのナチズムに対する戦争の結果として、イギリスにとって、彼らの帝国を維持するには、専制政治にならねば済まないことが明らかになったのでしょう、彼らはそこで、帝国を諦めることを正しくも、立派に選択したように思われます。
彼らがそれを完璧になし遂げたと申し上げているのではありません。1950年代には、イギリス、フランス、イスラエルのエジプト攻撃のように、ひどい先祖返りという後退もありました。キクユ族弾圧、ケニアでの実に野蛮な弾圧。さらに、もちろん、全てのなかで最も露骨で奇妙な先祖返りは、トニー・ブレアと、イラクにおけるイギリス帝国主義を再興しようというその熱意ですが。しかしそれでも、イギリスの歴史で、デモクラシーであるために帝国を諦めたことは明白に思われるのです。このことは、アメリカ合州国でも、しっかりと議論されるべきだと思います。
エイミー・グッドマン: チャルマーズ・ジョンソンさんは、憲法にかなった政府の崩壊を、軍国主義と結びつけておられますね。
チャルマーズ・ジョンソン: はい。
エイミー・グッドマン: 憲法にかなった政府の崩壊の兆しと、それが軍国主義とどう関連するのかをお話願えますか?
チャルマーズ・ジョンソン: ええ。軍国主義というのは、社会科学で「媒介変数」といわれる原因と結果の関係です。つまり、帝国を維持するには、極めて大規模な常備軍と、武器のための膨大な支出が必要で、これで軍産複合体となるのですが、そこで概して、永久に続く戦争へと至る、利害関係の悪循環がおきるのです。
国民に対する、おそらく最も古い警告は、アメリカ初代大統領ジョージ・ワシントンの有名な退任演説にまでさかのぼります。新たな議会開会の際に毎回読まれるものです。ワシントンは共和国の最大の敵は常備軍だと言ったのです。常備軍は共和制体の自由の格別な敵であると。彼が言おうとしたのは、常備軍は、相互独裁制や専制政治に対するアメリカの最も基本的な防壁である、相互に点検し合うはずの、行政、立法、そして司法という権力の分離を破壊してしまい、常備軍、軍国主義、軍事関係の権力体制、つまり軍産複合体は、それ以外のあらゆるアメリカ中から税金も含めて、ワシントンへと権力を引き寄せてしまい、ワシントン内では権力を大統領に寄せ集めて、帝国的大統領を生み出し始めたのです。この大統領は、そこで軍の秘密に対する要望を実行し、議会メンバーによる政府の監視をほとんど不可能にしてしまうのです。ましてや一般市民においておや。
ドワイト・アイゼンハワーが1961年に彼の有名な退任演説で述べたのと同じ警告のように思えます。その中で、彼は極めて痛烈な言葉で、実にあけすけな言葉で語っています。アイゼンハワーの言葉を我々は振り返って読むべきです。監視しきれない巨大な軍需産業の勃興について語った時、彼が作り出した言葉、軍産複合体の利害は、効果的な管理のもとにないといった時、彼は本当に懸念していたのです。彼の書き物から、彼が軍産議会複合体について言いたかったことはわかっています。そこまでは言うなと彼は警告されたのです。けれども、まさにその意味で、因果関係、つまり、国内のデモクラシーと対外的な帝国主義は両立しがたい状況が生まれたと思います。
エイミー・グッドマン: 彼は誰に警告されたのでしょうか?
チャルマーズ・ジョンソン: 議会のメンバーです。共和党議--
エイミー・グッドマン: 彼らはなぜ反対したのでしょう?
チャルマーズ・ジョンソン: まあ、自分たちの監視能力を非難されたくなかったのでしょう。彼らもその仕事をしっかり実行していたわけでもありません。アイゼンハワーは、これについて称賛されすぎてきたと言わねばならないと思います。英雄的な発言ではありましたが、同時に彼はグアテマラの殺戮者、つまり、アメリカ最初の秘密作戦であり、アメリカが行った最も悲劇的な作戦の一つを承認した人物なのです。ブリティッシュ・ペトロリアム社の利益ための、1953年イランのモハンマド・モサデクの打倒です。彼はまた軍産複合体の素晴らしい成長、途方もなく狂ったような核兵器の過剰供給、空軍の権限強化、等々を統括していたのです。最後になって初めて、一体なんと言う怪物を育ててしまったのか彼は自覚したように見えます。
エイミー・グッドマン: チャルマーズ・ジョンソンさん、『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日』(原題:Nemesis: The Last Days of the American Republic)の著者とお話しています。すぐお話に戻ります。
[休憩]
エイミー・グッドマン: 新刊『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日』(原題:Nemesis: The Last Days of the American Republic)の著者チャルマーズ・ジョンソンさんのインタビューに戻りますが、世界中でのアメリカの軍事基地の拡張についてお話いただくようお願いしました。
チャルマーズ・ジョンソン: 基地構造報告というものの公式な計算によると、現在、ペンタゴンが世界中に所有する不動産目録とそれを元に戻すのにかかる費用に関する機密でない情報によると、あらゆる大陸の130以上の国に今や737のアメリカの軍事基地があります。ペンタゴンの擁護者の中には、いやそれは間違いだ、それは大使館の海兵隊衛兵まで数えているのだ、というようなことを言う連中もいます。それはとんでもないたわごとだと保証します。海外に737ものアメリカ大使館などありはしませんし、これは全部本物の、基地固有の問題を抱えた軍事基地なのです。
日本の一番南の県、沖縄、1945年の沖縄戦の現場は、小さな島で、ハワイ諸島のカワイ島よりも小さいのですが、130万人の沖縄人がいます。そこには37のアメリカの軍事基地があります。軍事基地に対する反乱は、50年間、特有の問題となっています。知事は現地の軍司令官にいつも言っていたのです。「あなた方はいつ何時噴火するかわからない火山の側面に暮らしているのですよ」と。これまでにも噴火しています。その意味するところは、もう果てしない、連続的な、性暴力犯罪、酒の上の喧嘩、ひき逃げ事故、環境汚染、騒音公害、普天間海兵隊空軍基地ヘリコプター墜落で、沖縄国際大学のキャンパスへの落下ということです。次から次、きりがありません。かつて1995年に、これまででも最もひどい出来事がおきました。二人の海兵隊員と水兵が12歳の少女を誘拐し、打擲し、強姦したのです。これで数十年前にアメリカが日本と安保条約を結んで以来、アメリカ合州国に対する最大のデモとなりました。そういうものなのです。
私が初めて沖縄に行ったのは1996年です。強姦事件の後、当時の太田知事に招かれたのです。私は日本研究に専念してきましたが、大半の日本人、多くの日本専門家同様、一度も沖縄に行ったことはありませんでした。目にしたものに衝撃を受けました。イギリスのインド統治でした。東ドイツに駐在するソ連軍のようなもので、アメリカ本国、言ってみればキャンプ・ペンドルトンのすぐそばカリフォルニアのオーシャンサイドで暮らすより快適なのです。もうこれはあらゆる意味でスキャンダルです。それに対する私の最初の反応は、私は決して隠してはいないのですが、ソ連崩壊前は、確かに冷戦の戦士でした。私が最初に思いついたのは、そこが余り人の知らない所にあるからだ、はるばるここまでやってきて報告しないからだ、ということでした。世界中の基地ネットワークとそこでおきる事件、アメリカが承認する体制や政府の変換をもたらした軍事クーデターを研究し始めるにつれ、沖縄が例外ではないことがわかり始めたのです。沖縄は不幸にして、典型でした。
これらの基地は、申し上げたように、いたるところに広がっています。アメリカ軍事帝国として最も最近の発露は、ペンタゴンによる決定で、もちろん大統領の承認を得てですが、アフリカにもうひとつの地域司令部を作るというものです。これは「アフリカの角」のジブチに持っている基地を変えるのかも知れません。石油産出を期待しているギニア湾に置くのかも知れません。まず海軍はアメリカ海軍を駐留させることになるでしょう。アフリカにアメリカの何らかの軍事的駐留が必要かどうかは全く不明ですが、アメリカは拡張版を作るつもりなのです。
これが意味するところを常に想起して下さい。帝国主義は専制の一つの形式です。決して統治される人々の合意を通して統治する訳ではありません。統治する人々には合意を求めはしないのです。アメリカ人はデモクラシーを広めることについて語りますが、突撃銃をつきつけてのデモクラシー普及を言っているのです。これは言葉の上で矛盾しています。そんなものはあり得ません。こうした方面に民主的で、自尊心がある人間なら誰でも報復することを考え始めます。ネメシスが、ふさわしいものになるのです。
エイミー・グッドマン: チャルマーズ・ジョンソンさん、アメリカ軍事基地に大きな抗議がありましたね。最近イタリアのヴィチェンツァで、およそ10万人が抗議しました。エクアドルは、あの国にある軍事基地、マンタ空軍基地を閉鎖すると発表しました。この世界中を覆う基地の網に対する反応、抵抗はどうなのでしょうか?
チャルマーズ・ジョンソン: はい、れっきとした抵抗運動が長いこと続いています。申し上げたように、沖縄の場合には、アメリカの存在に対して少なくとも三つの歴史的反乱が起きています。日本政府とペンタゴンとの間には、この島の利用、つまり日本版プエルトリコについて協力関係があります。ここは常に差別されてきた場所です。おいしいところだけ良い所取りする日本式のやり方です。日本はアメリカとの同盟は望んでいるのですが、アメリカ兵士には、本土国民のそばに駐留して欲しくないのです。そこで彼らはアメリカ軍をこの島に、本質的に、兵士を押しつけるというか隔離して、そこの住民を犠牲にしているのです。
これは本当で、イタリアで今起きていること、CIAの引き渡し問題には非常な抵抗があります。つまり、アメリカが怪しいとにらんだ人物を拉致し、彼らを秘密裏に、そこで拷問を受けるであろうと承知している国々に空路で送り込むのです。現在イタリアで、アメリカ合州国スパイによる重罪で、イタリア政府によって名前を挙げて起訴されているCIA職員は25人ほどいます。そして、実際、ヴィチェンツァでも大規模なデモがあったばかりです。そこの住民たちは、既にある基地を拡張すれば、つまり、そこは要するに古いパラディオ様式の都市で、偉大で有名な建物の都市なのですが、自分たちはテロの標的になるだろうし、他にもいろいろあるだろうと考えているのです。
スペインのザパテロ首相からの抵抗というものもあります。国民に対して自分が権力についたら、イラクから撤退すると彼は約束したのです。そして彼は、もしもデモクラシーに何か意味があるとするなら、それは世論こそが大事だということをわきまえていることを明らかにした少数の人々の一人です。ただしそれは非常に多数の国々では、そうではないようなのですが。彼はスペインにおいて、アメリカの軍事的存在を劇的に低めたのです。
そしてこれは世界中で続いています。アメリカという大国が、世界に逆らって、軍事力を好きなことをするのに使っていることに対するいらだちはつのっています。今まさにペルシャ湾の人々は、米中央軍(CENTCOM)のペルシャ湾の海軍第五艦隊に、二から四の巨大な航空母艦機動部隊、しかもその全てがイラン攻撃準備のように見えるものを欲しいと思っているのかどうか、尋ねられてはいない現状を目の当たりにしています。確かなことはわかりませんが、様々な状況は我々に疑いを抱かせるには十分です。
歴史を振り返れば、おそらく世界中でギリシャ以上の反米デモクラシーはないでしょう。60年代後半と70年代前半に、アメリカが、ギリシャ人大佐をあの国の権力者にしたことを決して彼らは許さないでしょう。もちろん、大佐たちが、単に余りにやり過ぎて最後に自滅するまで、ギリシャに無数のアメリカ兵居住地を建設していたのです。
そして同じようなことが、今日のラテン・アメリカでも、アフリカでも、いたるところで起きています。おそらくいまだに最も重要な地域に、ユーラシア南部に、ソ連が崩壊して以降、海外の帝国主義的圧力が手を出せるようになった、もちろん軍事帝国主義なものが始まっています。
ペンタゴンの職務から引退した多くの重要な評論家たちが、イラクの戦争の基本的な理由は、まさにアメリカの中東海外政策の二つの古い柱石を置き換えること、新たな柱石にすることだと明らかにしています。第一の柱石、イランは、もちろん1979年に、アメリカが権力の座にしつらえたシャーにたいする革命によって崩壊しました。第二の柱、サウジアラビアは、アメリカの不手際ゆえに、ますますアメリカにとって有用性が減っています。アメリカは、1991年の湾岸戦争後、サウジアラビアに軍事力を、地上軍と空軍を置きました。これは不必要なことで、愚劣で、傲慢なことでした。これが、無数の愛国的なサウジ人の間に、とりわけ、そのうちの一人は元我々の要員で仲間だったオサマ・ビン・ラディンですが、サウジアラビアにはイスラム教上、二つの最も聖なる場所、つまりメッカとメジナを防衛する義務がある。わが国の宗教も、わが国のことも、わが国のライフ・スタイルも、何も知らないような異教徒の軍隊を使わずに、自分たちで防衛できなければいけない、という敵意をひきおこしたのです。時間がたつにつれ、サウジ人は、リヤド郊外のプリンス・サルタン空軍基地の使用制限を始めました。アメリカは実際サウジの主要な作戦司令部をイラク侵略直前に閉鎖し、カタールに移動させました。
そこでアメリカは、第二位の石油埋蔵国として、アメリカ軍駐在に実にうってつけの場所として、イラクを選んだという訳です。この件については多くの人が発言しており、顕著な人物がシーモア・ハーシュだと思いますが、重要なことは、アメリカにイラクからの出口政策が無いことの大きな理由は、アメリカが去るつもりがないからだと思うのです。そしてたしかに今やその証拠は、少なくとも五つの実に、実に大きな、しっかり補強した、長い二本の滑走路、イラクの国中に戦略的に配置された五つの空軍基地というわけです。アメリカの大使、国防長官、大統領、あるいは他の誰にも、基地を持つつもりはないと、はっきりと、発言させることはできていません。これは、議会が何としても絶対に口を開かない話題です。時に軍当局者、米中央軍(CENTCOM)空軍司令官は繰り返し、「アメリカはどのくらいここに駐留すると思いますか?」と尋ねられるたびに、いつも彼一流の何気ない態度で「ああ、この基地には少なくともあと十年はいます」と答えています。そしてアメリカは基地を強化しようとしています。
今、アメリカは、中央アジアのカスピ海盆地の、いかなる意味でもデモクラシーではありませんが、1991年のソ連崩壊によって独立した石油産出諸国に基地を作ろうとしています。アメリカは、あまりにも高圧的な干渉ゆえに、その一つから追い出されてしまいました。キルギスタンでの駐留費用は四倍になりましたが、実際はそれよりもっとかかっているでしょう。数百万ドルだったものが、1億ドルをはるかに上回るようになっています。それでもアメリカはこのゲームを続けており、これはゲームであり、このゲームは適切にも帝国主義と呼ばれています。
エイミー・グッドマン: チャルマーズ・ジョンソンとお話をしています。さて、チャルマーズ・ジョンソンさんは、リチャード・ニクソン時代を通して、1967年のジョンソンから始まって、1973年までCIAの顧問でおられましたね。用途がどのように変わったのかと考えておられるのかうかがいたいのですが。中央情報局については、大統領の私兵だと発言され、本にも書いておられますが。
チャルマーズ・ジョンソン: ある部分では、この組織を廃止しない限り、決して平和にはなるまいと書いています。あるいは、少なくとも、ここまで育ってしまった怪物を制限しない限りは。1947年の国家安全保障法は五つの機能を挙げています。これで中央情報局が作られたのです。国家安全保障法は中央情報局の五つの機能を挙げています。狙いは、何よりも、奇襲を防ぐこと、攻撃、真珠湾でのような出来事の再現を防ぐことでした。この五つの機能のうち、四つは様々な方法の情報収集で、公開情報から、スパイ、敵の通信に関する情報、などの類です。五番目は単純に、汎用のもので、CIAは、国家安全保障会議、つまり大統領に直属するホワイト・ハウスの海外政策担当官僚が命じることなら何でも実行するというものです。
これが、本末転倒になってしまったのです。諜報というものは、それほどまじめに受け止めるものではありません。諜報はさほど立派なものではありません。60年後半、70年前半における私の職務は、国家評価室(Office of National Estimates)での仕事でした。妻は良く私に尋ねたものです。「一体どうしてこうした情報が重要機密なの?」私は答えていました。「うーん、おそらくは、単純に、それが我々が出来る最上のことで、それがしかも、まるで低俗な海外政策記事のような内容だからだろう」たいして技術的詳細もなければ、諜報情報の確実性もありません。
しかしながら、機関が時間とともに大きくなり、大統領に、トルーマン以来のすべての大統領が、就任すると間もなく、自由に使える私兵をお持ちなのですよ、とはっきりいわれるようになったのです。これは全く秘密の存在です。監視する方法が何もないのです。1970年代後半まで議会が監視する方法はありませんで、イラン-コントラといった類の出来事に対して、議会は無力であることがばれてしまいました。CIAを使って大統領は何でもできるのです。暗殺を命じることが出来ます。政府転覆を命じることができます。アメリカの邪魔になると思われる経済体制を打倒するよう命令できるのです。ラテン・アメリカの軍当局者に国家テロを指示できるのです。アメリカの法律に明らかに違反しているという事実にもかかもらず、特別引き渡しを実行して、人々の拷問を命じることが出来るのです。拷問の犠牲者が死ぬような可能性があれば、死刑を課するのですが、エジプトのような国への引き渡しの場合に、よくそうしています。
トルーマン以来、どの大統領も、自分にそうした権力があるのだと教えられて、それを活用しなかった人はいません。これがCIA内で急速に発展する部門になりました。不正工作、秘密活動、誰かを打倒しろという大統領命令の実行、最初は1953年イランのモハンマド・モサデクの打倒から始まりました。アメリカ海外政策にかかわる三冊本第一巻で使った言葉「報復(blowback)」は、最近ようやく機密解除された作戦報告書から来ています。「報復(blowback)」という言葉はそこから来ているのです。それは、海外で行われた秘密活動に対する報復のことです。
しかし、これらの秘密活動には、ひとつ欠陥があるのです。アメリカ国民に対して完全に秘密にしているので、報復が行われた場合、連中は、その報復を因果関係で考える、意味が通る文脈で説明できないのです。連中は普通、犯人とされる人物にひどい難癖をつけるのですが、普通は単にあらたな報復(blowback)サイクルを始めることになります。一番良い例は、もちろん2001年の9/11で、あれは明らかに、アメリカが遂行した最も巨大な秘密作戦、つまり1980年代にアフガニスタンのムジャヒディンを採用し、武器を供与し、ソ連に対する戦闘に送り込んだことに対する報復(blowback)でした。しかしCIAはこういう形で発展してきたのです。
CIAは、チリのサルバドール・アジエンデ打倒と、冷戦の双方においておそらく最も忌まわしい独裁者、つまりアウグスト・ピノチェト将軍を権力の座につけたことに対して責任があります。60年代後半と70年代初期に、ギリシャでギリシャ人大佐を権力の座につけたこと。相次いだクーデター、無数のラテン・アメリカ諸国、全てフィデル・カストロが遂行しているソ連帝国主義策を妨げるという名目ですが、実は本当の目的はユナイテッド・フルーツ社の利益を守り、中央アメリカのひどく貧しく、本質的に無防備な人々を搾取し続けることなのです。
このリストは無限です。インドネシアのスカルノ打倒、スハルト将軍を権力者に据えつけたこと、スハルト将軍がアメリカの気に障るようになってからは、彼の除去。これは、紛れもなくローマ帝国的な性格を帯びています。問題は、しかも、有効な監視方法がないのです。概しておかしな下院議員、監視役を任されているランディ・「デューク」・カニンガムのような連中も多少いますが。下院議員、テキサス第二地区選出のベテラン下院議員チャーリー・ウィルソンが、アフガン時代に下院諜報活動監視委員会の議長に任命された時、彼はすぐさまCIAにいる仲間にこう書いたのです。「きつねは鶏小屋にいる。諸君、何でも好きなことをやりたまえ」
エイミー・グッドマン: チャルマーズ・ジョンソンさんは、三部作を完成されたばかりです。一冊目は『アメリカ帝国への報復』(原題:Blowback)、二冊目が『アメリカ帝国の悲劇』(原題:Sorrows of Empire)、そして三冊目『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日々』(原題:Nemesis: The Last Days of the American Republic)です。ひとやすみしてからインタビューを続けましょう。
[休憩]
エイミー・グッドマン: チャルマーズ・ジョンソンさんインタビューの結論部分をつづけましょう。ジョンソン教授は著名なアジア政治専門家でおられます。中国革命や、日本の経済発展に関して多くの本をお書きになっています。カリフォルニア大学には三十年勤められ、ジョンソンさんはカリフォルニア大学、バークリー校の中国研究センター所長もされました。成長しつつある大国としての中国の役割についてお話いただくようお願いしました。
チャルマーズ・ジョンソン: 中国については私は楽観的です。中国は節度もった方向せの素晴らしい動きを見せていると思います。国民がして欲しいと思っていることを彼らが行ったので、国民は政府を支持していると思います。国民は、つまり、エリツィンのロシアで起きたような生活条件の低下なしで、レーニン主義経済からの脱却ができるか懸念していました。中国は素晴らしい成長の可能性を解き放ち、素晴らしい能力と洞察を持って前進しています。
事態の進展のしかたにはアメリカには気に入らない側面も多々あります。特に、アメリカのネオコンが持っている中国への恐怖など。連中も、現状に適応する以外の選択肢はありません。二十世紀にドイツ、ロシア、日本という新興勢力が登場した際になされるべきだったのと同じような適応です。満ち足りた英語圏の大国、何よりもイギリスとアメリカ合州国が、これに適応しそこねたことで、野蛮で、本質的には何の価値もない戦争に至ったのです。しかしアメリカは、またもや中国の成長にたいして同じことを繰り返しています。しかし、実際、中国が、必ずしも中国のことを好きではない諸国、たとえば、インドネシア、ベトナムの利益にいかにも易々と適応したのに大いに感心させられました。
連中は日本に、中国に敵対するようにと絶えず煽動しています。中国は、日本が第二次世界大戦に最大の戦争犯罪を犯した現場で、日本は決して十分な賠償も補償もしていません。なんと言う愚かさかと思います。中国との戦争も同じに、ベトナム戦争と同じ形になるでしょう。アメリカはきっと破れるでしょう。
接着剤、現代中国の政治的な接着剤、その正当性の淵源は、ますます中国人の愛国心になっています。中国人はそれを情熱的に抱いています。香港のジョークが言うように、中国は何世紀かがひどくまずかっただけで、本調子に戻ったのです。
ブッシュ政権初期、極めて攻撃的なやり方で中国の沿岸地域に侵入していたアメリカ偵察機一機を、中国が強制着陸させたというスパイ事件の後、我々は必ずしも十分注意深く見守ってきたわけではありません。アメリカ沿岸に中国の飛行機が侵入したのであれば、アメリカはそれを撃墜していたでしょう。中国は強制着陸させましたが、中国飛行機一機とパイロット一名を失いました。覚えておいででしょう。ジョージ・ブッシュはテレビで、万一中国が台湾島を脅かしたら、中国に対してアメリカ軍の総力を使うつもりだと言いました。これは狂気の沙汰、れっきとした狂気の沙汰です。他に方法はないのです。つまり、仮に中国人一人がそれぞれ一人のアメリカ人と相討ちしても、中国にはまだ8億人残るのですから、我々は単純に、彼らを敵にまわすのではなく、適応すべきなのです。中国とうまくやれるという証拠はいくらでもあると思います。
エイミー・グッドマン: チャルマーズ・ジョンソンさん、一月に、中国は中国初の対衛星撃墜実験をしましたが、宇宙の軍事化に話を続けたいと思います。
チャルマーズ・ジョンソン: ええ、まさに、「ネメシス」中に「究極の帝国主義プロジェクト: 大気圏外空間」という章を設けたことを誇りに思います。それは議会におけるミサイル・ロビーの話で、使い物にならないことがわかっていることに対する途方もない資金の無駄のことです。そんなものが機能するわけはありません。これはアメリカ経済を軍事支出によって維持するという軍事ケインズ主義の一部なのです。これによって、軍産複合体が押し込める限りのできるだけ多くの得意先企業に職を作り出すわけです。
アメリカは、傲慢にも、大気圏外空間からの地球支配における全面的優位を、低周回と高周回軌道の支配がどうしても必要だと言うのです。全地球位置把握装置、通信、地図、天気予報、等々と多様なもので、今日、我々はみなすっかり大気圏外空間の衛星に依存するようになっています。実際、中国、ロシア、ヨーロッパはアメリカに対して、宇宙を兵器化するのを防ぐための、衛星にとって極めて致命的な、周回する破片による大惨事を防ぐための、何度も適切な国際的手段、国際条約を要求しています。アメリカのスペース・シャトルの機長の一人サリー・ライドが、ペンキの一片が、軌道で、低周回軌道で時速17,000マイルで、チャレンジャーの風防に衝突して、ひどいへこみを作った出来事を経験しています。
ペンキの一片でそれだけのことになるなら、レンズの蓋やら古いレンチだったらどうなるかはご説明に及ばないでしょう。宇宙には、こうした類が非常にたくさんあるのです。ジョンソン宇宙センターでは、こうした古い破片、場合によっては、兵器、ある場合には、衛星打ち上げ機、といった類の増えつつあるものの一覧表を定期的に管理しています。二十年前のアメリカの宇宙カプセルの断片が、中国が打ち上げた宇宙船に追突し、更に破片を生み出したかを書いた、ごくちょっとしたニュースレター刊行しています。これは大惨事です。
しかし、そうではなく、アメリカでは、他に表現しようがないのですが、傲慢で、ほとんどローマ風の、制御不能の空軍が、軍産複合体、宇宙関連圧力団体の利益のために働き続け、彼ら自身機能しないとわかっているものを作り上げたのです。
エイミー・グッドマン: 宇宙版真珠湾というのは何でしょうか?
チャルマーズ・ジョンソン: 宇宙版真珠湾というのは、連中が考えていることで、中国が一月にやったものですが、中国の古い余った衛星の一つに対して、対衛星兵器の実験をしたのです。衛星は燃え尽きます。衛星を修理する方法はありませんから、彼らはロケットで打ち落としたのです。この爆破は地球の周囲を低軌道でヒューッと飛んで行く膨大な量の破片をうみ出しました。もしも、これをもう少し高い軌道に乗せれば、本物の衛星を破壊し始めることになります。まあ、ひょっとするとこのテレビ放送がそれに頼っている衛星も。しかも高周回軌道を周回しているものを一掃する方法は無いのです。低周回軌道では、そのうちのあるものは大気中に落下して燃え尽きます。
しかし空軍は、このいわゆる我々が目が見えなくされてしまうという脅威を使い続けてきました。アメリカは非常に全地球測位システムに依存するようになっていますから。アメリカのいわゆる「スマート爆弾」は、それに依存しており、爆弾がとても賢い訳ではなく、ヨーロッパが作っているガリレオという名前の平和的な全地球測位システムほどには優れてはいません。連中はこれを、いわば宇宙を武装せねばならない、宇宙に対衛星兵器を持つ必要があるといい、アメリカはこれを抑えようとするあらゆる努力をはねつけてきて、中国に化けの皮を剥がされたわけです。
エイミー・グッドマン: アラスカのグリーリー基地、ミサイル・サイロはこれとはどういう関係になるのですか?
チャルマーズ・ジョンソン: はい、つまり、飛来するミサイルとされるものを打ち落とすには方法が三つあります。対ミサイル防衛法があるかどうかというのは、もう茶番でしかないのですが。至って高速で軌道に乗るロシア製ミサイル・トポリ-Mのように、 極めて迅速に軌道に乗るものに対しての防衛など決してあり得ません。こうしこミサイルは操縦が可能であり、つまり探知不能なのです。
基本的にアメリカは、北朝鮮のような国から来るレベル低い兵器を考えており、迎撃には三つの方法があるのです。クリントン政権のもとでは、アメリカはその一つだけをやろうとしていたのです。今のネオコンが熱中している方法は三つあります。ひとつは、ミサイル発射時です。これは実行が極めて困難ですが、ボーイング747に搭載するレーザー兵器で、敵ミサイルに命中するものをアメリカは作ろうとしました。そうするためには、事実上、ミサイル発射場の真上にいなければなりません。全く機能しませんでした。これはまず機能せず、ただ高価なばかりです。
それよりもずっと一般的なのは、敵ミサイルが打ち上げ装置を切り離して、アメリカ合州国に高速で向かって、大気圏外にいる間に打ち落とそう、というものです。アラスカのグリーリー基地地下と、カリフォルニア・バンデンベルグ空軍基地にも何基かおかれた迎撃ミサイルが、そうするはずだということになっています。それでうまく要撃できたことはかつてありません。敵ミサイルだとされるものを実際に追跡するレーダーは、そこにはありません。ペンタゴンのある上級科学者が先日言っていたように、こうしたものは実は本質的に、北朝鮮を脅して追い払いたい、という単なるこけおどしです。
これは、弱小な出来損ねの共産主義国家北朝鮮に対する破局的な資源の誤用です。敵ミサイルの発射を探知することより困難なことはないのです。それを防止する適切な方法は、抑止です。もう何十年もにわたって、私たちはそれについて思考し、取り組み、実行し、研究したきたのです。北朝鮮は、合理的行動に素晴らしい定評があります。彼らはもしもそのような兵器を日本なりアメリカ合州国に向けて発射すれば、翌日には報復攻撃で自分たちが地上から消滅することを知っており、そんなことはしないでしょう。
それが、イランの場合、唯一論理的な行動は、核武装したイランとともに暮らすことを学ぶことだという理由です。ペルシャ湾のアメリカ合州国、ソ連、イスラエル、パキスタンやインドといった核を持った国家に取り囲まれている国にとって不可避です。イラン人は合理主義者で、核戦力を使うのを押しとどめさせる唯一の方法は報復の脅威でアメリカを威嚇することだと考えているのです。ですからアメリカとしては、最小限の抑止力を開発して、彼らとうまくやってゆくことを学ばねばなりません。
エイミー・グッドマン: 最後に、チャルマーズ・ジョンソンさんは、三部作を完成されたばかりですね。一冊目の『アメリカ帝国への報復』(原題:Blowback)、二冊目が『アメリカ帝国の悲劇』(原題:Sorrows of Empire)、そして最後の巻が、『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日々』(原題:Nemesis: The Last Days of the American Republic)です。今後どうなるとお考えですか?
チャルマーズ・ジョンソン: そうですね、解決策は何も思いつきません。もう手遅れだと思います。国内事情的に、アメリカは軍産複合体に依存しすぎていますから。いつでも、つまりどの国防長官でも、余計で、無用な、ぼろぼろになった、南北戦争時代に作られたような軍事基地を閉鎖しようとするのは全く合理的なことだと思います。国防長官がそうしようとするなり、周囲のコミュニティ、新聞、テレビ、聖職者、地方政治家たちから、わめき声がわき上がります。「基地を救え」
上院軍事委員会の防衛施設小委員会でしっかり面倒を見ている二人、 アメリカの基地を守ることに打ち込んでいる人物は、疑いなく、一番軍事基地の数が多い二つの州、テキサス州のケイ・ベイリー・ハッチンソンとカリフォルニア州のダイアン・ファインスタインです。この二人の上院議員は基地を残すためなら出来る限りどんなことでもするでしょう。こうした狡猾なやりかたで軍産複合体はアメリカのデモクラシーに入り込み、それを大幅に弱めています。国防省向けの単一予算だけに含まれるものでなく、他の全てをまとめると、今や0.75兆ドルもの国防予算の利用・操作という、私が軍事ケインズ主義と名付けた既得権益を作り出してしまったのです。
これはもはや制御不能です。私たちは軍事ケインズ主義に依存しており、私たちははそれを好み、私たちはそれで生計をたてているのです。ゴルバチョフが、ソ連を改革するという狙いから1980年代末期にそれを実行出来たように、どんな政党のどんな大統領でも、こうした既得権益団体に対して手をつけ始められるほど、様々な勢力をまとめられるとは考えられません。
エイミー・グッドマン: チャルマーズさん、何か希望はあるのでしょうか?
チャルマーズ・ジョンソン: ええ、それでまさに私たちはこうして今朝動いているのです。つまり唯一の方法は、アメリカの憲法制度を建て直さなければならないのです。でなければ、おしまいです。つまり、帝国は、一度帝国への進化を始めてしまうと、究極的には、過度の軍事力拡張、破産、その帝国主義に敵意を持つ諸国の連合に至ります。アメリカは今その途上にあります。
それをくい止める方法は、怠慢な国民を動員することです。そうなるかどうか私にはわかりません。コングロマリット支配、たとえば、広告収入が目的であるアメリカのテレビ放送ネットワークの本質を考えれば、私は非常に懐疑的です。ルパート・マードックが、ロサンゼルス・タイムズの三分の一を手に入れると話しているのを目にします。しかし、それでも、インターネットがあり、エミー・グッドマンさんがいて、昔よりも今はずっと多くの情報がありますから。
私がこの三冊の本で経験したことの一つは、不安を感じているアメリカ人たちが、以前の二冊の本よりも「ネメシス」をずっと良く受け入れてくれることです。本書は相当懐疑的なのですが。ですから、もしもアメリカで公民権のルネッサンスが起これば、私たちは政府を取り戻せると思います。アメリカがこれまでの政治を続けて行けば、ネメシスがわが国にあらわれ、彼女がアメリカの中にいて、神としての任務を遂行しようと待ち構える、という以外の道は無いと思います。
エイミー・グッドマン: チャルマーズ・ジョンソンさんの新刊は、『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日々』(原題:Nemesis: The Last Days of the American Republic)です。これは、ベストセラーになった『アメリカ帝国への報復』(原題:Blowback)と『アメリカ帝国の悲劇』(原題:Sorrows of Empire)に続く、Blowback三部作の最終巻です。
Democracy Now 2007年2月27日放送分の翻訳
チャルマーズ・ジョンソン: 『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日』(原題:Nemesis: The Last Days of the American Republic)
記事原文URL:http://www.democracynow.org/article.pl?sid=07/02/27/1454229
「デモクラシー・ナウ」の日本サイト(下記)で、日本語字幕のビデオが見られます。
Democracy.now
http://democracynow.jp/stream/070227-1/
また、日刊ベリタに下記記事あり
軍事優先の果てに「米破産」も 復讐の女神が降り立つ帝国 C・ ジョンソン氏インタビュー (2006年04月28日記事)
沖縄は世界でも例外的な「軍事植民地」(2006年04月21日記事)
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本日のタイトルは、「反戦な家づくり」明月さんの記事の〆のセンテンスのパクリです。明月さん、のっけから、すみません。
〇反戦な家づくり:ハトを刺して米を突く
http://sensouhantai.blog25.fc2.com/blog-entry-864.html
ところで左上の写真は、去る4月28日の満月です。実はその日に書きかけて非公開にしていた記事があり、ちょっと落ち着いて考える時間のできた今、日にちと内容を改めて仕上げようとしていたとき、明月さんの記事を拝読しました。なんという... [続きを読む]
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