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2007年4月

2007年4月 4日 (水)

報告書『アフガニスタン株式会社』によれば「コントラクターはひどい仕事で大儲け」

Democracynow

2006年10月5日放送分の翻訳(冒頭の一部省略)

次のゲストは、アフガニスタンにおけるアメリカの再建事業をしっかり観察してきた人物だ。彼女はコープウォッチが刊行した研究書「Afaganistan, Inc.」(アフガニスタン株式会社)で、ハリバートンの下請けケロッグ、ブラウン & ルート、ブラックウォーター、ルイス・バーガー・グループやレンドン・グループといった企業の再建事業について検討している。彼女の名前はファリバ・ナワだ。アフガニスタン系アメリカ人ジャーナリストで、過去三年の大半をアフガニスタンで暮らしていた。アフガニスタンに生まれたが、八歳の時に国外に逃れた。911攻撃の際には、ファリバはニューヨークで暮らしており、それから間もなく、祖国にジャーナリストとして帰国することにした。ファリバ・ナワさんはサンフランシスコから参加してくださる。

文字おこし原稿

この速記原稿は無料でお読みいただけます。しかしながら、寄付を頂ければ、耳がきこえない人々や難聴の人々のためにTV放送用に字幕を入れる助けになります。寛大な寄付にお礼申し上げます。

エイミー・グッドマン:こちらはダーン・エバーツさんで、アフガニスタンにおけるNATOの上級民間人代表者です。

      ダーン・エバーツ:アフガニスタンにおけるNATOの任務は困難なものです。そういう中で、アフガニスタンにおける課題は国際的な軍事力や治安作戦だけでは解決できないことを知っています。治安の向上は、再建、開発活動や効率的で透明な統治と平行すべきなのです。これが、過激主義と戦い、民主的な統治の影響を広げ、アフガニスタンの人々の生活を向上する唯一の方法です。

エイミー・グッドマン:今週始め、上院院内総務多数派リーダーのビル・フリストは、タリバンに対する戦いには決して勝利できないかも知れないと認めました。彼は、今や余りに多数のタリバン戦士がおり、彼らは民衆の支持を大いに受けていると言いました。フリストは、タリバン支持者をアフガニスタン政府に取り込むべきだと述べたのです。

この数ヶ月、タリバンがこの国の全域を支配していた。自爆攻撃が今年600%も増加して、治安状況は悪化しました。アヘンとけし栽培は記録的な多さです。

次のゲストはアフガニスタンにおけるアメリカの再建活動を綿密に監視してきた方です。彼女はコープウォッチから刊行された「Afaganistan, Inc.(=アフガニスタン株式会社)」という調査本の著者です。この本は、ハリバートンの子会社ケロッグ・ブラウン&ルート(KBR)、ディンコープ、ブラックウォーター、ルイス・ベルガー・グループ、レンドン・グループといった企業の再建活動を検証しています。

彼女の名はファリバ・ナワです。彼女はアフガニスタン系アメリカ人のジャーナリストで、過去三年のほとんどをアフガニスタンで暮らしていました。アフガニスタンに生まれましたが、8歳の時に国を脱出しました。9/11攻撃の時には、ファリバはニューヨークに暮らしていました。まもなく、ジャーナリストとして祖国に帰ることに決めたのです。ファリバ・ナワさんがサンフランシスコから出演してくださいます。デモクラシー・ナウにようこそ!

ファリバ・ナワ:よろしくお願いします。

エイミー・グッドマン:ご出演ありがとうございます。アメリカが先導した侵略の五年後のアフガニスタン、あなたの祖国の状況についてお話願えますか?

ファリバ・ナワ:ええ、今は良い状態ではありません。2001年にタリバン政権を転覆して以来、更にひどくなっていると思います。しかも悪化しつつあります。アフガニスタンで私が調査し、暮らした時以降、人々がまた出国しつつあります。戻ってきた避難民がまたもや大変な人数が家を売り払って国を去りつつあります。大人数の国外移住者達は、実際、私同様に、持続可能な変化がおきるだろうと大いに期待していたのですけれども、そうは行きませんでした。そこで私のような人間までが出国しているわけです。今はもう悲惨な状態です。治安、再建 -- 再建は概して、失敗だったと申し上げましょう。そして、それは過去数年の間に治安が悪化したのと、歩をともにしています。

エイミー・グッドマン: タリバン支持者をアフガニスタン政府に入れるべきだという上院院内総務多数派リーダー、ビル・フリストのコメントに対するあなたのご意見は?

ファリバ・ナワ:それに対して「はい」なり「いいえ」とお答えする前に、私は十分考える必要があるだろうと思うのです。それはタリバンが本来アフガニスタン人勢力ではないと思うからです。アフガニスタンとパキスタンは、今では非常に密接につながっていて、自爆テロ犯の多くは、例えばアフガニスタン人ではありませんでした。彼らはチェチェン人でした。彼らはアラブ人でした。彼らはパキスタン人でした。要するに、だれがアフガニスタン人で、だれがそうでないのかを区別するのはとても難しいのです。基本的にパシュトゥーン族の境界である長大な国境があるためです。

彼らが民衆の支持を得ているかどうかについですが、私はあの国で暮らし、地方の方言も話せます。特に都会では、民衆の支持を得ていません。アフガニスタン人がタリバンの復帰を望んでいるというのは誤解だと思うのです。アフガニスタン人はタリバンと暮らした時期に幸せだったわけではありません。これは正確な表現ではありません。これまで何も変わることのなかった南部の村では、若い女性は学校には決して行かず、女性は決して働くことができない場所では、民衆の支持がおそらくあったのかも知れないと思います。けれども、まあ国の大半の部分では、タリバンが戻ってきて、かつてそうしていたような恐怖政治を再び行うだろうということを人々は非常に恐れています。

エイミー・グッドマン:ファリバ・ナワさん「Afaganistan, Inc.」について話してください。刊行されたばかりのあなたのレポートについてお話ください。悪事の関係者の名前をあげてください。最大の契約をしている企業のことを、実際に起きていることをお話ください。

ファリバ・ナワ:アフガニスタンにおける最大のコントラクターはルイス・ベルガー・グループです。同社はニュージャージーのエンジニアリング・コンサルタント会社で、この会社は四から五年の期間に対して、最初に66、500万ドル受け取りました。同社はインフラストラクチャーの仕事を与えられたのです。それには、学校、病院、道路、発電所、ダムの建設と再建が含まれています。しかも連中は法外な仕事をしたのです。レポートに書いてありまして、彼らのプロジェクトのうちのあるものがどのように失敗したかという詳細が書いてあります。連中にはいくつか成功談がありますが、彼らのやった仕事の大半は、実は成功などしていないのです。膨大な資金にしては仕事の質は低いのです。彼らは、どこに病院があったのかさえ知らないような場所に病院を建てることになっていたのです。学校の屋根は、学校が使われる前に崩壊しました。建設された道路は使われる前から崩壊しています。しかもそれはアメリカの納税者のお金で行われているのです。

そこで、こうした企業はこれに対してどのように譴責されているでしょう? それが譴責されていないのです。この夏更にブラック&ヴィーチという名前の他の企業と、インフラストラクチャーやウズベキスタン経由でアフガニスタンに電力をひく作業を継続する14億ドルの契約の契約を獲得しました。しかし、それは容認できないことです。なぜなら彼らの実績は、仕事を満足にできないことを示しているからです。

「Afaganistan, Inc.」はまさにそうした再建の詳細について述べているのです。お金はどのようにしてやってきて、一体それがどこからやってきて、お金はどこに使われ、お金がどのように無駄にされているのか? ほとんどが、過去五年間国際社会からアフガニスタンに寄贈された100億ドルが不正に管理されて、無駄に使われているのです。その大半は各企業を通して、援助国に環流しています。そしてわずかに、推計がありまして、これがどれほど正確か知りませんが、そうしたお金の僅か30%が実際にプロジェクトそのものに使われるにすぎません。それが、あなたのレポートが書いていることですね。他の企業として私が触れたものにディンコープ、ハリバートン、あなたが触れられたレンドン・グループ。ケモニックスは農業のグループです。これらは大半がUSAID資金によるプロジェクトですが、国務省とペンタゴンのものもあります。

エイミー・グッドマン:ブラックウォーターについても触れられましたね。どんな仕事をしているのでしょうか?

ファリバ・ナワ:ブラックウォーターの仕事は治安で、アフガニスタン人の麻薬取り締まり部隊を訓練しています。しかも彼らは訴訟されています。良く訓練されていなかったパイロットがからんだヘリコプターの墜落事故です。でも私はさほどブラックウォーターの件を扱っていません。それで、あの会社のことを話す自信が余りないのです。

エイミー・グッドマン:アフガニスタン人のこうしたアメリカ企業に対する考え方はどうなのでしょう?

ファリバ・ナワ:ええ、私企業部門と公的部門について誤解がありますね。それでアフガニスタン人は、彼らは全てNGOで、NGOは何もしないので全て悪いと考えているように見えるのです。しかしこれは情報が欠如している為なのです。こうした私企業コントラクター。また私企業はNGOとも仕事をしているのです。例えば、ケモニックスは40のNGOと仕事をしており、ケモニックスは資金提供者です。けれど期待している結果が見えないので、アフガニスタン人は非常に怒っています。

それはそれで、色々な進歩もあります。家が建てられています。人々が働いています。タリバン時代よりも、今のほうが仕事が色々あるのですよ。タリバンが去って以来、都市部、特に北部と西部の多くの人々の、暮らしが良くなったことは議論の余地がありません。

でも、まだ6月に起きた暴動では、多数のビルが放火され、「アメリカに死を! カルザイに死を!」と言いながら人々が通りを行進していました。あれが、ほとんど一般の感じ方なのです。でもだからといって、それで彼らが、今、正統なアフガニスタン人レジスタンスによるレジスタンス活動があるようには思いません。ですから、政治家がそういう言い方をすると、どうも同意できないのです。

エイミー・グッドマン:現在のけしとアヘン生産の問題についてお話いただけますか?

ファリバ・ナワ:ええ、アフガニスタンは世界でも最大量のアヘンを生産していて、アヘンは精製されてヘロインになります。それが叛徒の資金源になっているのです。叛徒というのは、誰であれ政府に反対している人々で、グルブディン・ヘクマチアールのような人物もふくみます。彼は元ムジャヒディンのメンバーで、ソ連と戦う為にアメリカ合衆国から膨大な金額の現金を得ていました。つまりタリバンです。つまりあそこに出かけているアラブの戦士です。けしの収入が、イラクでアメリカ人と戦うのに使われているのは確実だと思います。

けれども、彼らは再建にも資金を出しているのです。皮肉なことに、麻薬密売組織のボスの多くが、例えば、北部では病院を建設しています。彼らがまるで期待しなかったことをやっているのに皆は気がついたのです。麻薬の儲けを一般にばらまくという、コロンビアのメデリンで起きた、ある種パブロ・エスコバール的な出来事が、今アフガニスタンでも起きているのだと思います。多くの人々が今、それを麻薬国家と呼んでいます。今やまず間違いなくDFPの60%を占めているでしょう。

エイミー・グッドマン:もうあと30秒ほどしかありませんが、女性について伺いたかったのです。アフガニスタンの女性は、五年前と比較して今の状況はいかがでしょう。

ファリバ・ナワ:都市では良くなっています。またもや地方と都市には大きな格差があり、これまでにも格差はあったのだと思います。けれども今や非常に、非常に怯えています。タリバンが去った直後には多幸感がありました。女性がTVで歌を歌い、好きな服を着ることもできました。しかし今では恐れています。カンダハールの女性問題担当の長官が先週暗殺されたばかりだからです。このような出来事は、痛感させるのですが、もはや同じではありません。女性達の多幸感はすっかり消え去り、そして皆恐れています。

エイミー・グッドマン:ファリバ・ナワさん、ご出演有り難うございます。ほとんど誘拐された形でアフガニスタンに帰られ、様々な困難に直面されながら、そこに残られ、長年にわたるご報告に関してもっと詳しくお話頂くよう、またご出演をお願いしたいと思います。過去三年の大半をアフガニスタンで暮らし、コープウォッチから「Afaganistan, Inc.」という報告本を出されたばかりのアフガニスタン系アメリカ人ジャーナリスト、ナワさん、今日はご出演有り難うございました。

http://www.democracynow.org/article.pl?sid=06/10/05/1430204

スコット・リッター新著『標的はイラン: ホワイト・ハウスの体制転覆計画の真実』について語る

スコット・リッター新著『標的はイラン: ホワイト・ハウスの体制転覆計画の真実』について語る

Democracynowの2006年10月16日放送分の翻訳です。

元国連武器査察官スコット・リッター: 「合衆国が現在イランに対して進めている方針は、必然的に戦争に至る方針だ。このような行動路線は、イラクで我々がおかしてしまった歴史的な過ちさえも見劣りさせるほどだ。」[速記原稿あり]

欧州同盟の25人の首相が明日、イランに制裁措置を科するため国連安全保障理事会で会合する。イランがウラン濃縮の中止を拒否したので制裁措置が必要だと彼らは言っている。イランは核開発計画は発電の為だと強く主張しているが、アメリカとその同盟国の数カ国は、イランは核兵器を開発しようとしているのだと主張している。

土曜日、イランの外務大臣のスポークスマン、モハマド・アリ・ホセイニは、制裁措置をとるという西欧の脅しは「心理的戦争」の一部であり、イスラム共和国はさらに一層平和な核技術の追求を進めるべく決意を強くしたと述べた。

元武器査察官スコット・リッターの新著は、ブッシュ政権がイランに対して戦争をしかけることに決めていると主張している。新刊「目標はイラン: ホワイト・ハウスの体制転覆計画の真実」の中でリッターは現政権の体制転覆政策と、イランがアメリカの国家安全保障上の利害を脅かす可能性を検討している。

    * スコット・リッターは、1991年から1998年まで、国連大量破壊兵器破棄特別委員会(UNSCOM)の、イラクにおける国連武器査察官として勤務していた。彼の新著は「目標はイラン: ホワイト・ハウスの体制転覆計画の真実」(原題:"Target Iran: The Truth About the White House’s Plans for Regime Change")だ。前の著書は「イラク・コンフィデンシャル」だ。

速記原稿

この速記原稿は無料でお読みいただけます。しかしながら、寄付を頂ければ耳がきこえない人々や難聴の人々のためにTV放送用に字幕を入れる助けになります。寛大な寄付にお礼申し上げます。

エイミー・グッドマン: 元武器査察官、スコット・リッターさんの新刊書は、ブッシュ政権は、イランに対して戦争をする事に決めていると主張しています。「標的はイラン: ホワイト・ハウスの体制転覆計画の真実」(原題:"Target Iran: The Truth About the White House’s Plans for Regime Change")で、スコット・リッターさんは、政権体制転覆計画と、イランがアメリカの国家安全保障上の利害を脅かす可能性を検討しています。彼はこう書いています。「合衆国が現在イランに対して進めている方針は、必然的に戦争に至る方針だ。このような行動路線は、イラクで我々がおかしてしまった歴史的な過ちさえも見劣りさせるほどだ。」スコット・リッターさんが今私たちのスタジオにおいでです。Democracy Now!にようこそ。

スコット・リッター: ええ、どうも有り難う。

エイミー・グッドマン: 現在のイラン、アメリカが、あなたのご本の書名の、標的にしている、標的のイランを理解するための鍵は何だと思われますか?

スコット・リッター: 一番大切なことは、ブッシュ政権の標的として、イランはもろに照準線にさらされているという現実を理解すべきです。特に、合衆国の国家安全保障に関連したブッシュ政権の標的として。これは政治アナリスト、海外政治専門家の間の仮定の討論ではないのですよ。2006年版の国家安全保障戦略を読んでみてください。イランはアメリカ合衆国の国家安全保障に対する第一位の脅威だとして16回も名指しされています。同じ文書で、そのような脅威に対処するための合法的な手段として、正当な理由のない、先制攻撃戦争という考え方を容認しているからです。全世界での地域的な変換というブッシュ政権の基本政策、ただしこの場合、特に中東ですが、も再認証しています。ですから、ここでは仮定の状況について話しているわけではありませんで、あらゆる議論にもかかわらず、ブッシュ政権は、外交が存在するのだと皆に信じ込ませようとしています。外交など存在しません。イラクの時と一緒です。外交など体制転覆という究極の目的を隠すための煙幕に過ぎません。

エイミー・グッドマン: アメリカが北朝鮮に対してとっているやり方の違いについてお話いただけますか。自身の報告によれば原爆を爆発させたという北朝鮮と、イランに対して?

スコット・リッター: そうですね、ブッシュ政権の北朝鮮に対する対応とブッシュ政権のイランに対する対応の唯一の共通点は、最終目標は体制転覆だということでしょう。それ以外には、ご覧の通り、両国が共通して持っていることと、政権のやり方とは全く関係ないでしょう。いいですか、北朝鮮とイランを比較することなど不可能です。月とすっぽんです。

北朝鮮は原子力を持つと宣言しています。彼らは核兵器を所有するという意図の宣言までしています。彼らはこのことを誰に対しても隠してはいません。彼らは完全に法律に適合して核拡散防止条約から脱退しました。彼らは通告しています。彼らは、「我々は参加しない」と言ったのです。彼らは適切なスケジュールを与えました。彼らは査察官を招いたのです。そしてなんと、驚き、驚くことに、こうした事実にもかかわらず、ブッシュ政権は言ったのです。「ああ、ただのはったりだ」と。いいですか、はったりではないのです。北朝鮮は、一発爆発させたところです。考えてみてください。もしもアメリカが無責任に北朝鮮に圧力をかけ続けたら、また、えー何の話でしたっけか?

アメリカは北朝鮮で何を実現したいのでしょう? アメリカは本当に北朝鮮国民のことを人権を心配しているのでしょうか、 違います、体制転覆です。体制転覆が全てなのです。世界の皆と共存する為の条件を、合衆国が支配できるということが目的なのです。人々は中国に対する我が国の政策が体制転覆であることを理解しているのでしょうか? この波及効果がどういうことになるか理解しているのでしょうか? それが北朝鮮に対して起きていることです。彼らが言った通りのことを実行してもアメリカ国民が驚いてはいけません。

次にイランを見てみましょう。イランという国は「我々は核兵器計画を持っていない。そういう意図はない。」と言っているのです。実際、北朝鮮が原爆を爆発させた際、イランは非難しました。核兵器は世界均衡の一部ではあり得ないとイランは言っています。それなのに、アメリカは両国をひとくくりにして、あたかも北朝鮮とイランは、同じ政策の本質的な部分だと言い続けようとしています。両国は、ブッシュ政権が核拡散に対処するためにとってきた「同じ支離滅裂なやりかた」の本質的な部分ではあるかもしれませんけれども。

エイミー・グッドマン: スコット・リッターさんは、イランから帰国されたばかりですね?

スコット・リッター: 帰国、ええ私は9月上旬イランにいっていました。

エイミー・グッドマン: あちらで何をされたのですか?

スコット・リッター: ネーション誌のジャーナリストとして行ってきました。11月中にはたぶん発表される記事の為に調査に行ったのです。イラン政府も、多くの政府同様、言っていることと、やっていることが違うというのは奇妙でしたね。事前に合意した色々な予定がありました。Xとインタビュー、Yとインタビュー、現地見学等々。イランにいってみて、我々が色々合衆国内で調整していたにもかかわらず、イラン政府は、(a) 私が入国することも(b)私には日程があったことも全く知らなかったことがわかりました。それで、私は私一人でイランに入れたわけですが。

イスラム教のファシスト国家と呼ばれてきた国の中を一人で歩くというのは実に目を見張るような経験です。中東の独裁体制国家に行ったことがあります。治安対策がやかましい国々に行ったことがあります。イランはそうした国家の一つではありません。私は元諜報部員で、これまでイランに対してかなりきつい発言をしてきた人物ですが、それにもかかわらずイランでは何の干渉もなく、完全な行動の自由がありました。そしてその結果、認められた日程で行ったわけではなく、自分自身の日程で行ったのですが、それでも政府幹部、軍幹部、諜報組織幹部をインタビューし、機密と見なされている現場を訪れることができました。結論は、アメリカのマスコミはイランについて間違った思いこみをしているということです。非常に現代的で、西欧化された、親西欧で、しかも驚くほど親米国家で、どんな意味でも合衆国に対する脅威ではありません。

エイミー・グッドマン: あなたはイラク内部の元武器査察官ですね。

スコット・リッター: そうです。

エイミー・グッドマン: イラク侵略の下準備の時と、今イランに対して起きていることの類似性と差異についてお話いただけますか?

スコット・リッター: 指摘すべき最大の類似は、いずれの場合も、申し立てられている主張を裏書きする証拠がまったく示されていないことです。イラクは大量破壊兵器計画を持っていると非難されていました。化学、生物、核、長距離弾道ミサイル計画を再編していると。問題の施設に対して自由に出入りできるという査察手順がありましたが、こうした査察によってはブッシュ政権の主張を裏付けるデータは全く得られませんでした。それなのに、イラクは言われたのです。武器を発見するのは査察官の責任ではない。それが存在しないということを証明するのはイラクの責任だ。イラクは「否定の証明」をしなければなりませんでした。彼らはそれはできませんでした。1991年にサダム・フセインが兵器計画を完全に破壊したということを今なら我々は知っています。見つけ出すべき何物も残されてはいなかったのです。何の脅威もなかったのです。

そこでイランです。イランは核兵器計画を持っていると疑われています。けれども国際原子力機関が、イランの施設に自由に出入りできる査察官が、現れてこう言ったのです。「そう、我々が知らない秘密の計画が存在しないとは言えない。我々が言えるのは、調査の結果としては、核兵器計画があるというブッシュ政権の主張を支持するデータは何もないということだ。」それなのに、ブッシュ政権は、またもや責任をイランになすりつけています。アメリカの言い分はこうです。「核兵器計画を発見するのは査察の責任ではない。そういうものが存在しないことを証明するのはイランの責任だ。」なぜアメリカはこういうやり方を続けるのでしょう? なぜなら、誰も「否定の証明」はできないからです。ブッシュ政権を満足させるためにイランができることなど何もありません。要するに、政策は不拡散が目的なのではありません、軍備縮小が目的なのでもありません。体制転覆が目的なのです。そしてブッシュ政権がしたいと望んでいるのは、軍事介入という彼らの究極の目的を支持するような条件を作りだすことなのです。

エイミー・グッドマン: スコット・リッター、ご本の中でお書きになっていることのなかに「イランは明白な核兵器所有を拒否する」と言った最高指導者のファトワという形での宣言に、全く注目していないというのがありますね。

スコット・リッター: 「最高指導者」というと、そもそも、大半のアメリカ人は頭を掻いていうでしょう。「それは誰だ?」なぜならば、悪者扱いする看板男がいるからです。彼の名前はアフマディネジャドです。彼は現れては実に愚劣なことを言ううすのろです。「イスラエルを世界の表面から消し去ることがイランの目標だ」合衆国等にたいしてとんでもない発言を彼はするのです。そして、もちろん、彼はアメリカのマスコミ、西欧のマスコミが存分にやれる対象となっていて、繰り返して使われる断片的な映像をやたら見せられるわけです。アフマディネジャド、アフマディネジャド、イラン大統領。しかし皆が理解していないことは、彼が色々発言できても、彼の指がどんな権力のボタンの上にも無いという点です。イラン憲法を読めば、イランの大統領はほとんど飾り物であることがわかります。

イランにおける本当の権力は最高指導者が持っています。最高指導者はアヤトラ・ハメネイです。彼は護憲評議会という組織に支持されています。便宜評議会と呼ばれる別の組織があります。彼らが、軍隊、警察、核計画、全ての権力の道具を支配しているのです。しかも最高指導者が、核兵器はイスラム法には適合しないというファトワを発しているだけでなく、シーア派の信仰体系で責任を持っている最高指導者が、2003年に実際にスイス大使館経由でブッシュ政権に接触して言ったのです。「聞いてくれ、合衆国との関係を正常化したいと思っている。イスラエルとイランの間で平和条約を結べるような交渉を始めたいと思う。」いいですか、イスラエルとイランですよ。彼は「我々はイスラエルを地表からぬぐい去りたい。」と言っているわけではないのです。彼は「イスラエルとの平和を望んでいる。」彼らの核計画も進んで議論しようとしていたのです。

なぜブッシュ政権がこれを歓迎しないのでしょう? なぜなら、そうすれば正常化という方向に進み、合衆国が神権政治の正統性を認め、進んで神権政治と平和的に共存しようとすることになるからです。それはブッシュ政権の立場ではありません。彼らは神権政治を終わらせたいのです。それを正統化するようなことは何もするつもりはありません。平和を支持するようなことは。彼らは平和を拒絶したのです。ですから、アメリカ-イラン関係ということでは、国際的な平和と治安に対する脅威をもたらしているのは、アフマディネジャドではないのです。脅威をもたらしているのはブッシュ政権です。平和について検討することをブッシュ政権が拒否しているのです。ブッシュは外交について語っています。彼がコンドリーサ・ライスを飛行機に乗せて、テヘランに派遣して最高指導者と交渉させるまでは、外交は、本当の外交はありません。

エイミー・グッドマン: スコット・リッターさんとお話しています。彼は新刊を出しました。書名は「標的はイラン: ホワイト・ハウスの体制転覆計画の真実」です。表紙の絵にはアメリカの銃の柄があります。アメリカの国旗が描かれた銃です。この柄とその背景について話していただけますか。

スコット・リッター: あの図柄が私の功績だったらと思いますよ。でも残念ながら、あの絵は、いや残念ながらではなく、幸運にですね、あれは、魅力的なだけでなく、象徴的な表紙を考えてくれたネーション・ブックスの非常に優秀なグラフィック・デザイナーの作品です。ただここで重要なのは、イランが標的だという点です。我々は、アメリカとアメリカの象徴について議論したのです。そこで、アメリカ国旗を、世界が「合衆国」という言葉を聞いた時に思い起こす象徴に変身させたのです。武器です。合衆国を、人権、個人の市民的自由を擁護するはずと思われていた国家をそう考えるのは非常に悲しいことです。現代の世界が合衆国について語る時、彼らはアメリカを、暴力として、銃によってもたらされる暴力として見ているのです。アメリカはそうなっているからです、暴力国家です。

エイミー・グッドマン: アメリカとイランに関してあなたがお考えの筋書きは?

スコット・リッター: 戦争です。結論は、ブッシュ政権はあと二年間合衆国を支配することができるということです。彼らは中東で地域を変換する政策を持っています。体制転覆です。現在、あらゆる恐ろしい兆候を表しながら、この政策がイラクで行われているのを目にしています。彼らも何か学んだのではと期待されるでしょうが、何も学んでいないのです。連中はイランを存続可能なデモクラシーに変える必要があると言い続けています。今のニュース放送やら他のニュースによると、どうやらアメリカはイラクのデモクラシーはあきらめるようですが。

ブッシュは既に「イランを次期大統領にまかせたくはない。今自分で解決すべき問題だ。」と言っています。取り込むべきであって、ここに取り込んでいないもう一つの要素は、合衆国に、イランに対して極めて攻撃的な姿勢をとるよう圧力を加えている、イスラエルが果たす役割です。イスラエルは超えてはならない一線を引いて、言っています。イランにおける核兵器計画を許さないだけでなく、彼らは原子力に関わること全て、特に、核兵器計画にも使える濃縮は許容しないのです。ですから、たとえイランが本当のことを言っていても、イランは「核兵器計画など全くない。平和な原子力が欲しいのだ。」と言っていますが。イスラエルは言うのです。「イランが濃縮能力を持ち続ける限り、イスラエルに対する脅威である」。そして強硬な措置をとるよう、合衆国に圧力をかけています。

エイミー・グッドマン: どんなやり方でですか?

スコット・リッター: ええ、それは外交的圧力です。2002年に始まったのですが、イラクとの戦争準備のさなか、イスラエル首相と国防相があたふたと合衆国にやってきて、言ったのです。「おい、余りイラクのことを心配するのは辞めようぜ。あんなものは大した問題ではないさ。大量破壊兵器をタネに色々屁理屈をこねればいいじゃないか、大問題はイランだぞ。」するとブッシュ政権は言ったのです。「今はイランの話しはしたくない。今はイラクを処理しているところだ。」戦争直後に、イスラエルがやってきて言ったのです。「結構。サダムを追い出してくれて有り難うよ。今度はイランをやってもらいたい。」それでも合衆国はイランを後回しにしたままでした。そこでイスラエル政府が諜報情報をイラン人の反体制組織ムジャヒディン・エ・ハルクに漏らし、連中がしゃしゃり出てきて「ほら、見てくれ、このナタンス工場を。連中はここで濃縮をやっている。」と言ったというわけです。そこで合衆国は突然こう言わされました。「ああ、イランを最優先しなけりゃならんな。」マスコミによる対イラン操作の調子を支配しているのはイスラエルなのです。

エイミー・グッドマン: マスコミが言っているのは、イランは原子力など必要ない。石油が十分にあるのだから、原子力など核兵器を得るための方法に過ぎないと。

スコット・リッター: ええ、イランが豊富な石油を持っていることは疑いようがありませんが、世界経済の中でやってゆけるものということでは、イランは唯一石油しかないのです。1976年に、イランのシャーが合衆国に来て、仲裁の為の代理人を派遣して言ったのです。「我々は分析を行い、石油の量は有限だというのが分かった。今の所は我々はそれを輸出する必要がある。しかもそれを輸出しないと、金が儲けられない。これを維持し続けるだけの十分な石油は持っていない。石油を輸出に回せるようにするための自前のエネルギー政策が必要だ。我々は原子力を使いたい。」そこでアメリカ政府は言いました。「名案ですね、シャー。大賛成ですよ。」ジェラルド・フォードが言ったのです。

当時のホワイト・ハウスの主席補佐官はディック・チェニーでした。国防相はドナルド・ラムズフェルドです。ですから、チェニーとラムズフェルドの二人は、今、イランは石油があり余っている国だから、原子力計画など不要だと主張していますが、1976年に原子力を手に入れるというイランの目標を、二人とも支持していたのです。原子力だけではありません。彼らはこう言ったシャーを支持していたのです。「制裁措置や戦争のような、予想のできない変動で原子力計画の燃料が人質の取られのを認めるわけには行かない。完全なウラン濃縮処理を含めた自前の燃料製造能力が必要だ。」1976年にアメリカ政府何と言ったか考えてください。「問題ありませんよ、シャー。それで結構です。」もちろん1979年に、イスラム教主義者が登場して、私たちは突然意見を変えたのです。結論は、イランは、法律上も、経済上も、原子力計画をすすめるあらゆる権利があるということです。アメリカは既にそれが進むべき正当な方法だと認めたのです。

エイミー・グッドマン: スコット・リッターさん、ピューリッツァー賞を受賞した調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュと退役空軍大佐サム・ガーディナーの二人は、イランで、アメリカ軍の秘密工作がすでに始まっていると言っています。本当だと思われますか?

スコット・リッター: シーモア・ハーシュの報道を尊敬しています。サム・ガーディナーの分析を尊敬しています。それを知る立場にいて、私に話しをしてくれる人々の誠実さを尊敬しています。いいですか、アメリカは既にイラン上空に無人の航空機、パイロットを載せない無人飛行機を飛ばしているのです。地上では、CIAがムジャヒディン・エ・ハルクを採用し、クルド人を採用し、アゼリー人を採用し、彼らがイラン内部でアメリカ合衆国の為に活動しています。実際に合衆国軍隊メンバーと、CIA準軍事組織員としてのアメリカ国民が諜報情報を集めるためにイラン領土内で活動していると信ずべき理由があります。

準軍事組織や軍隊によって、主権国家の国境と領空を侵犯すれば、それは戦争行為です。これは戦争行為なのです。ですから、アメリカ人が「ああ、イランで戦争なんかないさ」と言う一方、既にイランでは戦争になっているのです。アメリカはイランと戦争しているのです。通常段階の戦争をこそ宣言してはいませんが。ブッシュ政権は体制転覆という政策をもっています。彼らは軍を使うつもりで、今軍が使われているのです。

エイミー・グッドマン: 後一分しかありませんが、こうしたことに全てについてのマスコミの役割は。あなたが侵略に反対した国連の武器査察官だった時、イラク侵略準備の段階で、彼らはあなたをけなし、中傷しましたね。

スコット・リッター: そうですねえ、連中は、また私にはしたい放題でしょうね。知ったことではありません。蛙の面に小便です。問題は私の側にあるのではありません。私が肝心なのではありません。肝心なのは真実と事実です。今やはっきりしていると思います。我々は、準備段階でイラク戦争の真実と事実を知らされていなかったのですし、イランでも同様に、マスコミが真実と事実を知らせていないことは明らかです。イランについて否定的なことならなんでも額面通りに、本当だと受け止めるように、私たちは前もってプログラムされてしまっています。それが私が本書を書いた理由の一つです。適切な総合的観点からものごとを考えられるように。

エイミー・グッドマン: スコット・リッターさんでした。彼の新刊書は「目標はイラン: ホワイト・ハウスの体制転覆計画の真実」(原題:"Target Iran: The Truth About the White House’s Plans for Regime Change")です。彼は元国連の武器査察官です。今晩、リッターさんは、ピューリッツァー賞受賞者のジャーナリスト、シーモア・ハーシュとご一緒にニューヨーク市の倫理文化ソサエティーに出席されます。

http://www.democracynow.org/article.pl?sid=06/10/16/144204

2007年4月 3日 (火)

チャルマーズ・ジョンソン: 『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日々』

以下は、Democracy Now、首題放送の文字おこし原稿翻訳

CIAアナリストで、著名な学者で、ベストセラー本著者のチャルマーズ・ジョンソンは、アメリカ軍と経済の手の広げすぎが、憲法にかなった共和制としての国家の崩壊を引き起こしかねないと新著で主張している。新刊は彼の「報復」シリーズ三部作の最終巻で、ベストセラーの『アメリカ帝国への報復』(原題:Blowback)と『アメリカ帝国の悲劇』(原題:Sorrows of Empire)の続きである。この二冊の本で、アメリカの秘密の軍事行動が、アメリカ合州国における、本来意図していない、直接的な災厄を引き起こすにいたっているとジョンソンは主張している。[以下に文字おこし原稿あり]

チャルマーズ・ジョンソンはカリフォルニア大学サンデイエゴ校の国際関係の元教授である。日本政策研究所の所長でもある。ジョンソン氏はロサンゼルス・タイムズ、ロンドン・レビュー・オブ・ブックス、ハーパーズ・マガジンや、ネーションといったいくつかの雑誌にも寄稿している。2005年には、2005年には、賞を受けているドキュメンタリー作品「なぜ戦うか」(Why We Fight)の中で主要人物として取り上げられた。

チャルマーズ・ジョンソン氏は、昨日サンデイエゴから、私とお話くださった。彼の本の書名「ネメシス」ついての質問から話を始めた。

    * チャルマーズ・ジョンソンは、作家で、学者で、アメリカ海外政策に関する有数の評論家。カリフォルニア大学サンデイエゴ校の国際関係の元教授。日本政策研究所の所長でもある。新刊書に『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日々』(原題:Nemesis: The Last Days of the American Republic)がある。

文字おこし原稿

この速記原稿は無料でお読みいただけます。しかしながら、寄付を頂ければ、耳がきこえない人々や難聴の人々のためにTV放送用に字幕を入れる助けになります。寛大な寄付にお礼申し上げます。

エイミー・グッドマン: 今日は、元CIA顧問で、著名な学者で、ベストセラー作家のチャルマーズ・ジョンソンさんとお話します。彼は新刊書を出されたばかりです。『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日々』(原題:Nemesis: The Last Days of the American Republic)というご本です。このご本は、三部作の最終巻で、その一冊目は『アメリカ帝国への報復』(原題:Blowback)、二冊目が『アメリカ帝国の悲劇』(原題:Sorrows of Empire)です。この二冊の本で、ジョンソンさんは、アメリカの秘密軍事行動が、アメリカ合州国の国内における、意図してはいなかった、直接的な災厄をもたらしていると主張されています。この新刊のなかで、ジョンソンさんはアメリカが、軍事的・経済的に手を広げ過ぎていることで、 実際、この国の、憲法にかなった共和制の崩壊にいたる可能性があると主張しておられます。

チャルマーズ・ジョンソンさんは、カリフォルニア大学サンデイエゴ校の国際関係の元教授です。日本政策研究所の所長もしておられます。ロサンゼルス・タイムズ、ロンドン・レビュー・オブ・ブックス、ハーパーズ誌やザ・ネーション等、多数の雑誌にも寄稿しておられます。2005年には、賞を受けているドキュメンタリー作品「なぜ戦うか」(Why We Fight)の中で主要人物として取り上げられました。チャルマーズ・ジョンソンさんには、昨日サンデイエゴからお相手していただきました。新刊書の書名、「ネメシス」についての質問から話を始めました。

      チャルマーズ・ジョンソン: ネメシスというのは、古代ギリシャの復讐の女神で、人間の不遜や傲慢をこらしめる神です。彼女がナルシスを池に誘い、水面で彼の顔を写して見せ、彼は池に飛び込み、溺れたのを覚えておいでかもしれません。私がこの題名を選んだのは、たった今彼女はわが国にいて、まさに女神の任務をなし遂げようと待機しているように思われるからなのです。

      しかし、副題が言いたかったことです。これは本を売らんがための誇大宣伝ではありません。「アメリカ共和国最後の日々」というのは、非常に現実的な、政治分析上の具体的な問題を懸念しているのです。つまり現代アメリカ合州国の政治制度は、歴史的に見れば、最も不安定な組み合わせの一つで、国内的なデモクラシーと、対外的な帝国で、全く対照的な選択肢なのです。一つの国家はどちらか一つになれるのです。デモクラシーか帝国主義者のいずれかで、その両方にはなれません。帝国主義に固執すれば、いにしえのローマ共和国のようになり、実際アメリカの制度の多くはローマに負っているのですが、いにしえのローマ共和国同様、デモクラシーを失い、内政も独裁体制になるのです。

      本の中で、ひとつの代替策についてかなりの部分を費やしています。つまり世界第二次大戦後のイギリス帝国が、いかなる方法・手段についても、完璧に遂行したとは言えませんが、それでもともかくデモクラシーを維持するために帝国を放棄するという決断をしたことです。帝国のごく末期に、イギリスは、最も価値があるインドが、統治のための虐殺という対価によってしか維持できなことが明らかになったのです。統治のための虐殺をインドでは頻繁に遂行してきていたのですが。終わったばかりのナチズムに対する戦争の結果として、イギリスにとって、彼らの帝国を維持するには、専制政治にならねば済まないことが明らかになったのでしょう、彼らはそこで、帝国を諦めることを正しくも、立派に選択したように思われます。

      彼らがそれを完璧になし遂げたと申し上げているのではありません。1950年代には、イギリス、フランス、イスラエルのエジプト攻撃のように、ひどい先祖返りという後退もありました。キクユ族弾圧、ケニアでの実に野蛮な弾圧。さらに、もちろん、全てのなかで最も露骨で奇妙な先祖返りは、トニー・ブレアと、イラクにおけるイギリス帝国主義を再興しようというその熱意ですが。しかしそれでも、イギリスの歴史で、デモクラシーであるために帝国を諦めたことは明白に思われるのです。このことは、アメリカ合州国でも、しっかりと議論されるべきだと思います。

      エイミー・グッドマン: チャルマーズ・ジョンソンさんは、憲法にかなった政府の崩壊を、軍国主義と結びつけておられますね。

      チャルマーズ・ジョンソン: はい。

      エイミー・グッドマン: 憲法にかなった政府の崩壊の兆しと、それが軍国主義とどう関連するのかをお話願えますか?

      チャルマーズ・ジョンソン: ええ。軍国主義というのは、社会科学で「媒介変数」といわれる原因と結果の関係です。つまり、帝国を維持するには、極めて大規模な常備軍と、武器のための膨大な支出が必要で、これで軍産複合体となるのですが、そこで概して、永久に続く戦争へと至る、利害関係の悪循環がおきるのです。

      国民に対する、おそらく最も古い警告は、アメリカ初代大統領ジョージ・ワシントンの有名な退任演説にまでさかのぼります。新たな議会開会の際に毎回読まれるものです。ワシントンは共和国の最大の敵は常備軍だと言ったのです。常備軍は共和制体の自由の格別な敵であると。彼が言おうとしたのは、常備軍は、相互独裁制や専制政治に対するアメリカの最も基本的な防壁である、相互に点検し合うはずの、行政、立法、そして司法という権力の分離を破壊してしまい、常備軍、軍国主義、軍事関係の権力体制、つまり軍産複合体は、それ以外のあらゆるアメリカ中から税金も含めて、ワシントンへと権力を引き寄せてしまい、ワシントン内では権力を大統領に寄せ集めて、帝国的大統領を生み出し始めたのです。この大統領は、そこで軍の秘密に対する要望を実行し、議会メンバーによる政府の監視をほとんど不可能にしてしまうのです。ましてや一般市民においておや。

      ドワイト・アイゼンハワーが1961年に彼の有名な退任演説で述べたのと同じ警告のように思えます。その中で、彼は極めて痛烈な言葉で、実にあけすけな言葉で語っています。アイゼンハワーの言葉を我々は振り返って読むべきです。監視しきれない巨大な軍需産業の勃興について語った時、彼が作り出した言葉、軍産複合体の利害は、効果的な管理のもとにないといった時、彼は本当に懸念していたのです。彼の書き物から、彼が軍産議会複合体について言いたかったことはわかっています。そこまでは言うなと彼は警告されたのです。けれども、まさにその意味で、因果関係、つまり、国内のデモクラシーと対外的な帝国主義は両立しがたい状況が生まれたと思います。

      エイミー・グッドマン: 彼は誰に警告されたのでしょうか?

      チャルマーズ・ジョンソン: 議会のメンバーです。共和党議--

      エイミー・グッドマン: 彼らはなぜ反対したのでしょう?

      チャルマーズ・ジョンソン: まあ、自分たちの監視能力を非難されたくなかったのでしょう。彼らもその仕事をしっかり実行していたわけでもありません。アイゼンハワーは、これについて称賛されすぎてきたと言わねばならないと思います。英雄的な発言ではありましたが、同時に彼はグアテマラの殺戮者、つまり、アメリカ最初の秘密作戦であり、アメリカが行った最も悲劇的な作戦の一つを承認した人物なのです。ブリティッシュ・ペトロリアム社の利益ための、1953年イランのモハンマド・モサデクの打倒です。彼はまた軍産複合体の素晴らしい成長、途方もなく狂ったような核兵器の過剰供給、空軍の権限強化、等々を統括していたのです。最後になって初めて、一体なんと言う怪物を育ててしまったのか彼は自覚したように見えます。

エイミー・グッドマン: チャルマーズ・ジョンソンさん、『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日』(原題:Nemesis: The Last Days of the American Republic)の著者とお話しています。すぐお話に戻ります。

[休憩]

エイミー・グッドマン: 新刊『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日』(原題:Nemesis: The Last Days of the American Republic)の著者チャルマーズ・ジョンソンさんのインタビューに戻りますが、世界中でのアメリカの軍事基地の拡張についてお話いただくようお願いしました。

      チャルマーズ・ジョンソン: 基地構造報告というものの公式な計算によると、現在、ペンタゴンが世界中に所有する不動産目録とそれを元に戻すのにかかる費用に関する機密でない情報によると、あらゆる大陸の130以上の国に今や737のアメリカの軍事基地があります。ペンタゴンの擁護者の中には、いやそれは間違いだ、それは大使館の海兵隊衛兵まで数えているのだ、というようなことを言う連中もいます。それはとんでもないたわごとだと保証します。海外に737ものアメリカ大使館などありはしませんし、これは全部本物の、基地固有の問題を抱えた軍事基地なのです。

      日本の一番南の県、沖縄、1945年の沖縄戦の現場は、小さな島で、ハワイ諸島のカワイ島よりも小さいのですが、130万人の沖縄人がいます。そこには37のアメリカの軍事基地があります。軍事基地に対する反乱は、50年間、特有の問題となっています。知事は現地の軍司令官にいつも言っていたのです。「あなた方はいつ何時噴火するかわからない火山の側面に暮らしているのですよ」と。これまでにも噴火しています。その意味するところは、もう果てしない、連続的な、性暴力犯罪、酒の上の喧嘩、ひき逃げ事故、環境汚染、騒音公害、普天間海兵隊空軍基地ヘリコプター墜落で、沖縄国際大学のキャンパスへの落下ということです。次から次、きりがありません。かつて1995年に、これまででも最もひどい出来事がおきました。二人の海兵隊員と水兵が12歳の少女を誘拐し、打擲し、強姦したのです。これで数十年前にアメリカが日本と安保条約を結んで以来、アメリカ合州国に対する最大のデモとなりました。そういうものなのです。

      私が初めて沖縄に行ったのは1996年です。強姦事件の後、当時の太田知事に招かれたのです。私は日本研究に専念してきましたが、大半の日本人、多くの日本専門家同様、一度も沖縄に行ったことはありませんでした。目にしたものに衝撃を受けました。イギリスのインド統治でした。東ドイツに駐在するソ連軍のようなもので、アメリカ本国、言ってみればキャンプ・ペンドルトンのすぐそばカリフォルニアのオーシャンサイドで暮らすより快適なのです。もうこれはあらゆる意味でスキャンダルです。それに対する私の最初の反応は、私は決して隠してはいないのですが、ソ連崩壊前は、確かに冷戦の戦士でした。私が最初に思いついたのは、そこが余り人の知らない所にあるからだ、はるばるここまでやってきて報告しないからだ、ということでした。世界中の基地ネットワークとそこでおきる事件、アメリカが承認する体制や政府の変換をもたらした軍事クーデターを研究し始めるにつれ、沖縄が例外ではないことがわかり始めたのです。沖縄は不幸にして、典型でした。

      これらの基地は、申し上げたように、いたるところに広がっています。アメリカ軍事帝国として最も最近の発露は、ペンタゴンによる決定で、もちろん大統領の承認を得てですが、アフリカにもうひとつの地域司令部を作るというものです。これは「アフリカの角」のジブチに持っている基地を変えるのかも知れません。石油産出を期待しているギニア湾に置くのかも知れません。まず海軍はアメリカ海軍を駐留させることになるでしょう。アフリカにアメリカの何らかの軍事的駐留が必要かどうかは全く不明ですが、アメリカは拡張版を作るつもりなのです。

      これが意味するところを常に想起して下さい。帝国主義は専制の一つの形式です。決して統治される人々の合意を通して統治する訳ではありません。統治する人々には合意を求めはしないのです。アメリカ人はデモクラシーを広めることについて語りますが、突撃銃をつきつけてのデモクラシー普及を言っているのです。これは言葉の上で矛盾しています。そんなものはあり得ません。こうした方面に民主的で、自尊心がある人間なら誰でも報復することを考え始めます。ネメシスが、ふさわしいものになるのです。

      エイミー・グッドマン: チャルマーズ・ジョンソンさん、アメリカ軍事基地に大きな抗議がありましたね。最近イタリアのヴィチェンツァで、およそ10万人が抗議しました。エクアドルは、あの国にある軍事基地、マンタ空軍基地を閉鎖すると発表しました。この世界中を覆う基地の網に対する反応、抵抗はどうなのでしょうか?

      チャルマーズ・ジョンソン: はい、れっきとした抵抗運動が長いこと続いています。申し上げたように、沖縄の場合には、アメリカの存在に対して少なくとも三つの歴史的反乱が起きています。日本政府とペンタゴンとの間には、この島の利用、つまり日本版プエルトリコについて協力関係があります。ここは常に差別されてきた場所です。おいしいところだけ良い所取りする日本式のやり方です。日本はアメリカとの同盟は望んでいるのですが、アメリカ兵士には、本土国民のそばに駐留して欲しくないのです。そこで彼らはアメリカ軍をこの島に、本質的に、兵士を押しつけるというか隔離して、そこの住民を犠牲にしているのです。

      これは本当で、イタリアで今起きていること、CIAの引き渡し問題には非常な抵抗があります。つまり、アメリカが怪しいとにらんだ人物を拉致し、彼らを秘密裏に、そこで拷問を受けるであろうと承知している国々に空路で送り込むのです。現在イタリアで、アメリカ合州国スパイによる重罪で、イタリア政府によって名前を挙げて起訴されているCIA職員は25人ほどいます。そして、実際、ヴィチェンツァでも大規模なデモがあったばかりです。そこの住民たちは、既にある基地を拡張すれば、つまり、そこは要するに古いパラディオ様式の都市で、偉大で有名な建物の都市なのですが、自分たちはテロの標的になるだろうし、他にもいろいろあるだろうと考えているのです。

      スペインのザパテロ首相からの抵抗というものもあります。国民に対して自分が権力についたら、イラクから撤退すると彼は約束したのです。そして彼は、もしもデモクラシーに何か意味があるとするなら、それは世論こそが大事だということをわきまえていることを明らかにした少数の人々の一人です。ただしそれは非常に多数の国々では、そうではないようなのですが。彼はスペインにおいて、アメリカの軍事的存在を劇的に低めたのです。

      そしてこれは世界中で続いています。アメリカという大国が、世界に逆らって、軍事力を好きなことをするのに使っていることに対するいらだちはつのっています。今まさにペルシャ湾の人々は、米中央軍(CENTCOM)のペルシャ湾の海軍第五艦隊に、二から四の巨大な航空母艦機動部隊、しかもその全てがイラン攻撃準備のように見えるものを欲しいと思っているのかどうか、尋ねられてはいない現状を目の当たりにしています。確かなことはわかりませんが、様々な状況は我々に疑いを抱かせるには十分です。

      歴史を振り返れば、おそらく世界中でギリシャ以上の反米デモクラシーはないでしょう。60年代後半と70年代前半に、アメリカが、ギリシャ人大佐をあの国の権力者にしたことを決して彼らは許さないでしょう。もちろん、大佐たちが、単に余りにやり過ぎて最後に自滅するまで、ギリシャに無数のアメリカ兵居住地を建設していたのです。

      そして同じようなことが、今日のラテン・アメリカでも、アフリカでも、いたるところで起きています。おそらくいまだに最も重要な地域に、ユーラシア南部に、ソ連が崩壊して以降、海外の帝国主義的圧力が手を出せるようになった、もちろん軍事帝国主義なものが始まっています。

      ペンタゴンの職務から引退した多くの重要な評論家たちが、イラクの戦争の基本的な理由は、まさにアメリカの中東海外政策の二つの古い柱石を置き換えること、新たな柱石にすることだと明らかにしています。第一の柱石、イランは、もちろん1979年に、アメリカが権力の座にしつらえたシャーにたいする革命によって崩壊しました。第二の柱、サウジアラビアは、アメリカの不手際ゆえに、ますますアメリカにとって有用性が減っています。アメリカは、1991年の湾岸戦争後、サウジアラビアに軍事力を、地上軍と空軍を置きました。これは不必要なことで、愚劣で、傲慢なことでした。これが、無数の愛国的なサウジ人の間に、とりわけ、そのうちの一人は元我々の要員で仲間だったオサマ・ビン・ラディンですが、サウジアラビアにはイスラム教上、二つの最も聖なる場所、つまりメッカとメジナを防衛する義務がある。わが国の宗教も、わが国のことも、わが国のライフ・スタイルも、何も知らないような異教徒の軍隊を使わずに、自分たちで防衛できなければいけない、という敵意をひきおこしたのです。時間がたつにつれ、サウジ人は、リヤド郊外のプリンス・サルタン空軍基地の使用制限を始めました。アメリカは実際サウジの主要な作戦司令部をイラク侵略直前に閉鎖し、カタールに移動させました。

      そこでアメリカは、第二位の石油埋蔵国として、アメリカ軍駐在に実にうってつけの場所として、イラクを選んだという訳です。この件については多くの人が発言しており、顕著な人物がシーモア・ハーシュだと思いますが、重要なことは、アメリカにイラクからの出口政策が無いことの大きな理由は、アメリカが去るつもりがないからだと思うのです。そしてたしかに今やその証拠は、少なくとも五つの実に、実に大きな、しっかり補強した、長い二本の滑走路、イラクの国中に戦略的に配置された五つの空軍基地というわけです。アメリカの大使、国防長官、大統領、あるいは他の誰にも、基地を持つつもりはないと、はっきりと、発言させることはできていません。これは、議会が何としても絶対に口を開かない話題です。時に軍当局者、米中央軍(CENTCOM)空軍司令官は繰り返し、「アメリカはどのくらいここに駐留すると思いますか?」と尋ねられるたびに、いつも彼一流の何気ない態度で「ああ、この基地には少なくともあと十年はいます」と答えています。そしてアメリカは基地を強化しようとしています。

      今、アメリカは、中央アジアのカスピ海盆地の、いかなる意味でもデモクラシーではありませんが、1991年のソ連崩壊によって独立した石油産出諸国に基地を作ろうとしています。アメリカは、あまりにも高圧的な干渉ゆえに、その一つから追い出されてしまいました。キルギスタンでの駐留費用は四倍になりましたが、実際はそれよりもっとかかっているでしょう。数百万ドルだったものが、1億ドルをはるかに上回るようになっています。それでもアメリカはこのゲームを続けており、これはゲームであり、このゲームは適切にも帝国主義と呼ばれています。

      エイミー・グッドマン: チャルマーズ・ジョンソンとお話をしています。さて、チャルマーズ・ジョンソンさんは、リチャード・ニクソン時代を通して、1967年のジョンソンから始まって、1973年までCIAの顧問でおられましたね。用途がどのように変わったのかと考えておられるのかうかがいたいのですが。中央情報局については、大統領の私兵だと発言され、本にも書いておられますが。

      チャルマーズ・ジョンソン: ある部分では、この組織を廃止しない限り、決して平和にはなるまいと書いています。あるいは、少なくとも、ここまで育ってしまった怪物を制限しない限りは。1947年の国家安全保障法は五つの機能を挙げています。これで中央情報局が作られたのです。国家安全保障法は中央情報局の五つの機能を挙げています。狙いは、何よりも、奇襲を防ぐこと、攻撃、真珠湾でのような出来事の再現を防ぐことでした。この五つの機能のうち、四つは様々な方法の情報収集で、公開情報から、スパイ、敵の通信に関する情報、などの類です。五番目は単純に、汎用のもので、CIAは、国家安全保障会議、つまり大統領に直属するホワイト・ハウスの海外政策担当官僚が命じることなら何でも実行するというものです。

      これが、本末転倒になってしまったのです。諜報というものは、それほどまじめに受け止めるものではありません。諜報はさほど立派なものではありません。60年後半、70年前半における私の職務は、国家評価室(Office of National Estimates)での仕事でした。妻は良く私に尋ねたものです。「一体どうしてこうした情報が重要機密なの?」私は答えていました。「うーん、おそらくは、単純に、それが我々が出来る最上のことで、それがしかも、まるで低俗な海外政策記事のような内容だからだろう」たいして技術的詳細もなければ、諜報情報の確実性もありません。

      しかしながら、機関が時間とともに大きくなり、大統領に、トルーマン以来のすべての大統領が、就任すると間もなく、自由に使える私兵をお持ちなのですよ、とはっきりいわれるようになったのです。これは全く秘密の存在です。監視する方法が何もないのです。1970年代後半まで議会が監視する方法はありませんで、イラン-コントラといった類の出来事に対して、議会は無力であることがばれてしまいました。CIAを使って大統領は何でもできるのです。暗殺を命じることが出来ます。政府転覆を命じることができます。アメリカの邪魔になると思われる経済体制を打倒するよう命令できるのです。ラテン・アメリカの軍当局者に国家テロを指示できるのです。アメリカの法律に明らかに違反しているという事実にもかかもらず、特別引き渡しを実行して、人々の拷問を命じることが出来るのです。拷問の犠牲者が死ぬような可能性があれば、死刑を課するのですが、エジプトのような国への引き渡しの場合に、よくそうしています。

      トルーマン以来、どの大統領も、自分にそうした権力があるのだと教えられて、それを活用しなかった人はいません。これがCIA内で急速に発展する部門になりました。不正工作、秘密活動、誰かを打倒しろという大統領命令の実行、最初は1953年イランのモハンマド・モサデクの打倒から始まりました。アメリカ海外政策にかかわる三冊本第一巻で使った言葉「報復(blowback)」は、最近ようやく機密解除された作戦報告書から来ています。「報復(blowback)」という言葉はそこから来ているのです。それは、海外で行われた秘密活動に対する報復のことです。

      しかし、これらの秘密活動には、ひとつ欠陥があるのです。アメリカ国民に対して完全に秘密にしているので、報復が行われた場合、連中は、その報復を因果関係で考える、意味が通る文脈で説明できないのです。連中は普通、犯人とされる人物にひどい難癖をつけるのですが、普通は単にあらたな報復(blowback)サイクルを始めることになります。一番良い例は、もちろん2001年の9/11で、あれは明らかに、アメリカが遂行した最も巨大な秘密作戦、つまり1980年代にアフガニスタンのムジャヒディンを採用し、武器を供与し、ソ連に対する戦闘に送り込んだことに対する報復(blowback)でした。しかしCIAはこういう形で発展してきたのです。

      CIAは、チリのサルバドール・アジエンデ打倒と、冷戦の双方においておそらく最も忌まわしい独裁者、つまりアウグスト・ピノチェト将軍を権力の座につけたことに対して責任があります。60年代後半と70年代初期に、ギリシャでギリシャ人大佐を権力の座につけたこと。相次いだクーデター、無数のラテン・アメリカ諸国、全てフィデル・カストロが遂行しているソ連帝国主義策を妨げるという名目ですが、実は本当の目的はユナイテッド・フルーツ社の利益を守り、中央アメリカのひどく貧しく、本質的に無防備な人々を搾取し続けることなのです。

      このリストは無限です。インドネシアのスカルノ打倒、スハルト将軍を権力者に据えつけたこと、スハルト将軍がアメリカの気に障るようになってからは、彼の除去。これは、紛れもなくローマ帝国的な性格を帯びています。問題は、しかも、有効な監視方法がないのです。概しておかしな下院議員、監視役を任されているランディ・「デューク」・カニンガムのような連中も多少いますが。下院議員、テキサス第二地区選出のベテラン下院議員チャーリー・ウィルソンが、アフガン時代に下院諜報活動監視委員会の議長に任命された時、彼はすぐさまCIAにいる仲間にこう書いたのです。「きつねは鶏小屋にいる。諸君、何でも好きなことをやりたまえ」

エイミー・グッドマン: チャルマーズ・ジョンソンさんは、三部作を完成されたばかりです。一冊目は『アメリカ帝国への報復』(原題:Blowback)、二冊目が『アメリカ帝国の悲劇』(原題:Sorrows of Empire)、そして三冊目『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日々』(原題:Nemesis: The Last Days of the American Republic)です。ひとやすみしてからインタビューを続けましょう。

[休憩]

エイミー・グッドマン: チャルマーズ・ジョンソンさんインタビューの結論部分をつづけましょう。ジョンソン教授は著名なアジア政治専門家でおられます。中国革命や、日本の経済発展に関して多くの本をお書きになっています。カリフォルニア大学には三十年勤められ、ジョンソンさんはカリフォルニア大学、バークリー校の中国研究センター所長もされました。成長しつつある大国としての中国の役割についてお話いただくようお願いしました。

      チャルマーズ・ジョンソン: 中国については私は楽観的です。中国は節度もった方向せの素晴らしい動きを見せていると思います。国民がして欲しいと思っていることを彼らが行ったので、国民は政府を支持していると思います。国民は、つまり、エリツィンのロシアで起きたような生活条件の低下なしで、レーニン主義経済からの脱却ができるか懸念していました。中国は素晴らしい成長の可能性を解き放ち、素晴らしい能力と洞察を持って前進しています。

      事態の進展のしかたにはアメリカには気に入らない側面も多々あります。特に、アメリカのネオコンが持っている中国への恐怖など。連中も、現状に適応する以外の選択肢はありません。二十世紀にドイツ、ロシア、日本という新興勢力が登場した際になされるべきだったのと同じような適応です。満ち足りた英語圏の大国、何よりもイギリスとアメリカ合州国が、これに適応しそこねたことで、野蛮で、本質的には何の価値もない戦争に至ったのです。しかしアメリカは、またもや中国の成長にたいして同じことを繰り返しています。しかし、実際、中国が、必ずしも中国のことを好きではない諸国、たとえば、インドネシア、ベトナムの利益にいかにも易々と適応したのに大いに感心させられました。

      連中は日本に、中国に敵対するようにと絶えず煽動しています。中国は、日本が第二次世界大戦に最大の戦争犯罪を犯した現場で、日本は決して十分な賠償も補償もしていません。なんと言う愚かさかと思います。中国との戦争も同じに、ベトナム戦争と同じ形になるでしょう。アメリカはきっと破れるでしょう。

      接着剤、現代中国の政治的な接着剤、その正当性の淵源は、ますます中国人の愛国心になっています。中国人はそれを情熱的に抱いています。香港のジョークが言うように、中国は何世紀かがひどくまずかっただけで、本調子に戻ったのです。

      ブッシュ政権初期、極めて攻撃的なやり方で中国の沿岸地域に侵入していたアメリカ偵察機一機を、中国が強制着陸させたというスパイ事件の後、我々は必ずしも十分注意深く見守ってきたわけではありません。アメリカ沿岸に中国の飛行機が侵入したのであれば、アメリカはそれを撃墜していたでしょう。中国は強制着陸させましたが、中国飛行機一機とパイロット一名を失いました。覚えておいででしょう。ジョージ・ブッシュはテレビで、万一中国が台湾島を脅かしたら、中国に対してアメリカ軍の総力を使うつもりだと言いました。これは狂気の沙汰、れっきとした狂気の沙汰です。他に方法はないのです。つまり、仮に中国人一人がそれぞれ一人のアメリカ人と相討ちしても、中国にはまだ8億人残るのですから、我々は単純に、彼らを敵にまわすのではなく、適応すべきなのです。中国とうまくやれるという証拠はいくらでもあると思います。

      エイミー・グッドマン: チャルマーズ・ジョンソンさん、一月に、中国は中国初の対衛星撃墜実験をしましたが、宇宙の軍事化に話を続けたいと思います。

      チャルマーズ・ジョンソン: ええ、まさに、「ネメシス」中に「究極の帝国主義プロジェクト: 大気圏外空間」という章を設けたことを誇りに思います。それは議会におけるミサイル・ロビーの話で、使い物にならないことがわかっていることに対する途方もない資金の無駄のことです。そんなものが機能するわけはありません。これはアメリカ経済を軍事支出によって維持するという軍事ケインズ主義の一部なのです。これによって、軍産複合体が押し込める限りのできるだけ多くの得意先企業に職を作り出すわけです。

      アメリカは、傲慢にも、大気圏外空間からの地球支配における全面的優位を、低周回と高周回軌道の支配がどうしても必要だと言うのです。全地球位置把握装置、通信、地図、天気予報、等々と多様なもので、今日、我々はみなすっかり大気圏外空間の衛星に依存するようになっています。実際、中国、ロシア、ヨーロッパはアメリカに対して、宇宙を兵器化するのを防ぐための、衛星にとって極めて致命的な、周回する破片による大惨事を防ぐための、何度も適切な国際的手段、国際条約を要求しています。アメリカのスペース・シャトルの機長の一人サリー・ライドが、ペンキの一片が、軌道で、低周回軌道で時速17,000マイルで、チャレンジャーの風防に衝突して、ひどいへこみを作った出来事を経験しています。

      ペンキの一片でそれだけのことになるなら、レンズの蓋やら古いレンチだったらどうなるかはご説明に及ばないでしょう。宇宙には、こうした類が非常にたくさんあるのです。ジョンソン宇宙センターでは、こうした古い破片、場合によっては、兵器、ある場合には、衛星打ち上げ機、といった類の増えつつあるものの一覧表を定期的に管理しています。二十年前のアメリカの宇宙カプセルの断片が、中国が打ち上げた宇宙船に追突し、更に破片を生み出したかを書いた、ごくちょっとしたニュースレター刊行しています。これは大惨事です。

      しかし、そうではなく、アメリカでは、他に表現しようがないのですが、傲慢で、ほとんどローマ風の、制御不能の空軍が、軍産複合体、宇宙関連圧力団体の利益のために働き続け、彼ら自身機能しないとわかっているものを作り上げたのです。

      エイミー・グッドマン: 宇宙版真珠湾というのは何でしょうか?

      チャルマーズ・ジョンソン: 宇宙版真珠湾というのは、連中が考えていることで、中国が一月にやったものですが、中国の古い余った衛星の一つに対して、対衛星兵器の実験をしたのです。衛星は燃え尽きます。衛星を修理する方法はありませんから、彼らはロケットで打ち落としたのです。この爆破は地球の周囲を低軌道でヒューッと飛んで行く膨大な量の破片をうみ出しました。もしも、これをもう少し高い軌道に乗せれば、本物の衛星を破壊し始めることになります。まあ、ひょっとするとこのテレビ放送がそれに頼っている衛星も。しかも高周回軌道を周回しているものを一掃する方法は無いのです。低周回軌道では、そのうちのあるものは大気中に落下して燃え尽きます。

      しかし空軍は、このいわゆる我々が目が見えなくされてしまうという脅威を使い続けてきました。アメリカは非常に全地球測位システムに依存するようになっていますから。アメリカのいわゆる「スマート爆弾」は、それに依存しており、爆弾がとても賢い訳ではなく、ヨーロッパが作っているガリレオという名前の平和的な全地球測位システムほどには優れてはいません。連中はこれを、いわば宇宙を武装せねばならない、宇宙に対衛星兵器を持つ必要があるといい、アメリカはこれを抑えようとするあらゆる努力をはねつけてきて、中国に化けの皮を剥がされたわけです。

      エイミー・グッドマン: アラスカのグリーリー基地、ミサイル・サイロはこれとはどういう関係になるのですか?

      チャルマーズ・ジョンソン: はい、つまり、飛来するミサイルとされるものを打ち落とすには方法が三つあります。対ミサイル防衛法があるかどうかというのは、もう茶番でしかないのですが。至って高速で軌道に乗るロシア製ミサイル・トポリ-Mのように、 極めて迅速に軌道に乗るものに対しての防衛など決してあり得ません。こうしこミサイルは操縦が可能であり、つまり探知不能なのです。

      基本的にアメリカは、北朝鮮のような国から来るレベル低い兵器を考えており、迎撃には三つの方法があるのです。クリントン政権のもとでは、アメリカはその一つだけをやろうとしていたのです。今のネオコンが熱中している方法は三つあります。ひとつは、ミサイル発射時です。これは実行が極めて困難ですが、ボーイング747に搭載するレーザー兵器で、敵ミサイルに命中するものをアメリカは作ろうとしました。そうするためには、事実上、ミサイル発射場の真上にいなければなりません。全く機能しませんでした。これはまず機能せず、ただ高価なばかりです。

      それよりもずっと一般的なのは、敵ミサイルが打ち上げ装置を切り離して、アメリカ合州国に高速で向かって、大気圏外にいる間に打ち落とそう、というものです。アラスカのグリーリー基地地下と、カリフォルニア・バンデンベルグ空軍基地にも何基かおかれた迎撃ミサイルが、そうするはずだということになっています。それでうまく要撃できたことはかつてありません。敵ミサイルだとされるものを実際に追跡するレーダーは、そこにはありません。ペンタゴンのある上級科学者が先日言っていたように、こうしたものは実は本質的に、北朝鮮を脅して追い払いたい、という単なるこけおどしです。

      これは、弱小な出来損ねの共産主義国家北朝鮮に対する破局的な資源の誤用です。敵ミサイルの発射を探知することより困難なことはないのです。それを防止する適切な方法は、抑止です。もう何十年もにわたって、私たちはそれについて思考し、取り組み、実行し、研究したきたのです。北朝鮮は、合理的行動に素晴らしい定評があります。彼らはもしもそのような兵器を日本なりアメリカ合州国に向けて発射すれば、翌日には報復攻撃で自分たちが地上から消滅することを知っており、そんなことはしないでしょう。

      それが、イランの場合、唯一論理的な行動は、核武装したイランとともに暮らすことを学ぶことだという理由です。ペルシャ湾のアメリカ合州国、ソ連、イスラエル、パキスタンやインドといった核を持った国家に取り囲まれている国にとって不可避です。イラン人は合理主義者で、核戦力を使うのを押しとどめさせる唯一の方法は報復の脅威でアメリカを威嚇することだと考えているのです。ですからアメリカとしては、最小限の抑止力を開発して、彼らとうまくやってゆくことを学ばねばなりません。

      エイミー・グッドマン: 最後に、チャルマーズ・ジョンソンさんは、三部作を完成されたばかりですね。一冊目の『アメリカ帝国への報復』(原題:Blowback)、二冊目が『アメリカ帝国の悲劇』(原題:Sorrows of Empire)、そして最後の巻が、『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日々』(原題:Nemesis: The Last Days of the American Republic)です。今後どうなるとお考えですか?

      チャルマーズ・ジョンソン: そうですね、解決策は何も思いつきません。もう手遅れだと思います。国内事情的に、アメリカは軍産複合体に依存しすぎていますから。いつでも、つまりどの国防長官でも、余計で、無用な、ぼろぼろになった、南北戦争時代に作られたような軍事基地を閉鎖しようとするのは全く合理的なことだと思います。国防長官がそうしようとするなり、周囲のコミュニティ、新聞、テレビ、聖職者、地方政治家たちから、わめき声がわき上がります。「基地を救え」

      上院軍事委員会の防衛施設小委員会でしっかり面倒を見ている二人、 アメリカの基地を守ることに打ち込んでいる人物は、疑いなく、一番軍事基地の数が多い二つの州、テキサス州のケイ・ベイリー・ハッチンソンとカリフォルニア州のダイアン・ファインスタインです。この二人の上院議員は基地を残すためなら出来る限りどんなことでもするでしょう。こうした狡猾なやりかたで軍産複合体はアメリカのデモクラシーに入り込み、それを大幅に弱めています。国防省向けの単一予算だけに含まれるものでなく、他の全てをまとめると、今や0.75兆ドルもの国防予算の利用・操作という、私が軍事ケインズ主義と名付けた既得権益を作り出してしまったのです。

      これはもはや制御不能です。私たちは軍事ケインズ主義に依存しており、私たちははそれを好み、私たちはそれで生計をたてているのです。ゴルバチョフが、ソ連を改革するという狙いから1980年代末期にそれを実行出来たように、どんな政党のどんな大統領でも、こうした既得権益団体に対して手をつけ始められるほど、様々な勢力をまとめられるとは考えられません。

      エイミー・グッドマン: チャルマーズさん、何か希望はあるのでしょうか?

      チャルマーズ・ジョンソン: ええ、それでまさに私たちはこうして今朝動いているのです。つまり唯一の方法は、アメリカの憲法制度を建て直さなければならないのです。でなければ、おしまいです。つまり、帝国は、一度帝国への進化を始めてしまうと、究極的には、過度の軍事力拡張、破産、その帝国主義に敵意を持つ諸国の連合に至ります。アメリカは今その途上にあります。

      それをくい止める方法は、怠慢な国民を動員することです。そうなるかどうか私にはわかりません。コングロマリット支配、たとえば、広告収入が目的であるアメリカのテレビ放送ネットワークの本質を考えれば、私は非常に懐疑的です。ルパート・マードックが、ロサンゼルス・タイムズの三分の一を手に入れると話しているのを目にします。しかし、それでも、インターネットがあり、エミー・グッドマンさんがいて、昔よりも今はずっと多くの情報がありますから。

      私がこの三冊の本で経験したことの一つは、不安を感じているアメリカ人たちが、以前の二冊の本よりも「ネメシス」をずっと良く受け入れてくれることです。本書は相当懐疑的なのですが。ですから、もしもアメリカで公民権のルネッサンスが起これば、私たちは政府を取り戻せると思います。アメリカがこれまでの政治を続けて行けば、ネメシスがわが国にあらわれ、彼女がアメリカの中にいて、神としての任務を遂行しようと待ち構える、という以外の道は無いと思います。

エイミー・グッドマン: チャルマーズ・ジョンソンさんの新刊は、『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日々』(原題:Nemesis: The Last Days of the American Republic)です。これは、ベストセラーになった『アメリカ帝国への報復』(原題:Blowback)と『アメリカ帝国の悲劇』(原題:Sorrows of Empire)に続く、Blowback三部作の最終巻です。

Democracy Now 2007年2月27日放送分の翻訳

チャルマーズ・ジョンソン: 『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日』(原題:Nemesis: The Last Days of the American Republic)

記事原文URL:http://www.democracynow.org/article.pl?sid=07/02/27/1454229

「デモクラシー・ナウ」の日本サイト(下記)で、日本語字幕のビデオが見られます。

Democracy.now

http://democracynow.jp/stream/070227-1/

また、日刊ベリタに下記記事あり

軍事優先の果てに「米破産」も 復讐の女神が降り立つ帝国 C・ ジョンソン氏インタビュー (2006年04月28日記事)

沖縄は世界でも例外的な「軍事植民地」(2006年04月21日記事)

2007年4月 2日 (月)

「体制転覆:ハワイからイラクに至るまで、一世紀にわたるアメリカによる体制変革」その2

democracynow.org

2006年5月8日分放送の翻訳

「体制転覆:ハワイからイラクに至るまで、一世紀にわたるアメリカによる体制変革」第二部

エイミー・グッドマン:元ニューヨーク・タイムズの海外特派員、スティーブン・キンザーさんとのインタビューの第2部に入りましょう。キンザーさんの新刊は、『体制転覆:ハワイからイラクに至るまで、一世紀にわたるアメリカによる体制変革』(原題:Overthrow:America's Century of Regime Change from Hawaii to Iraq)です。私はシカゴで数週間前にキンザーさんにインタビューしました。私たちは、ハワイからイランに至るまで、米国が関与した多数のクーデターについて話しました。第2部は、アメリカが支援したイランでのクーデターから1年後のグアテマラについてです。

      スティーブン・キンザー:アメリカ合衆国が1954年に実行したグアテマラのクーデターは、世界中を不安定にするばかりでなく、グアテマラのみならず、ラテン・アメリカ全体、さらにはその外部においてさえ、反米感情を激化させた多数のクーデターの一つです。グアテマラは他の中米諸国と一緒に1820年代にスペインから独立しました。他の大半の中米諸国同様、1944年まで一連の独裁者の支配下にありました。そして革命が起きました。十年間グアテマラでは民主主義が機能していたのです。

      グアテマラは、経済的には完全に一つのアメリカ企業つまりユナイテッド・フルーツに支配されていました。同社はワシントンと特別に強いコネを持った強力な企業でした。アイゼンハワー政権幹部の多くは、ユナイテッド・フルーツの株主か、元重役か、同社と強いコネがあるかのいずれかでした。さて、グアテマラでは、ユナイテッド・フルーツはこの国のバナナ輸出の大半を占めているだけではありませんで、50万エーカー以上の土地、しかもこの国の最も豊じょうな土地のかなりを、使わないまま保有していました。同社はこうした土地を将来何かに使うという可能性のためだけに保有していたのです。

      1950年代初期にグアテマラで権力を握ったアルベンス大統領は、その土地を収用して、食うや食わずのグアテマラ農民の間で分け与えたいと思ったのです。民主的な投票で選出されたグアテマラ議会が、ユナイテッド・フルーツに、ユナイテッド・フルーツが前年の所得申告で土地価格として書いた価格で、使っていない土地をグアテマラ政府に売却するよう要求する土地制度改革法を通過させたのです。そこで当然、フルーツ社はこの要求を受けると怒り狂って言いました。「もちろん、土地の本当の価格を所得申告に書く者などいるものか、本当の価格はその十倍以上するのだ。」しかし、グアテマラ政府は言ったのです。「申し訳ありませんな。あなた方ご自身で、土地をそのように評価された以上、我々としては、あなた方にその価格で売却されるよう主張しているのです。」

    そこでユナイテッド・フルーツはワシントンでの工作を始めたわけです。アルベンス政権がこのようなやり方をしなかったならば、土地制度改革計画に着手しなかったならば、ユナイテッド・フルーツの土地を取り上げようとしなかったならば、もしも基本的に反米でなかったならば、同社はアイゼンハワー政権を説き伏せはしなかったでしょう。さらに冷戦情況も重なっていました。そこでユナイテッド・フルーツは、この政府はグアテマラにおけるアメリカ企業の利益に敵対的であるだけでなく、疑うべくもなくクレムリンの手先であり、当時のアメリカ人はそう考えていたのですが、世界中でアメリカの利益を損ねようとしているのだと米国政府を説得することができました。

    グアテマラ・クーデターの準備段階で、ブラジル人大使が実際国務長官ジョン・フォスター・ダレスに面会して、本当にソ連がグアテマラを操っている証拠があるのかどうか訊ねると、ダレスは極めて率直に答えたのです。「そういう証拠はありませんが、我々はあたかもそうであるに違いないかのように進めています。」こうしてアメリカ合衆国は比較的容易にグアテマラ政府を転覆しました。

    エイミー・グッドマン:ジョン・フォスター・ダレス国務長官は、ユナイテッド・フルーツの企業弁護士でしたね。

    スティーブン・キンザー:ダレスは、ユナイテッド・フルーツがワシントンに対して持っていた大変な影響力の完璧な見本でした。国務長官はユナイテッド・フルーツの元弁護士でした。ですから、ユナイテッド・フルーツが悩まされれば、彼も悩まされるように感じたのです。また戦闘的な反共主義者としても、彼はこれは共産主義者の陰謀の一部だと考えたのです。今ではモスクワで公開された文書によって、ソ連はアルベンスやグアテマラの存在など知らず、この情況に対する関心は微塵もなかったことが明らかになっています。

    さてグアテマラ・クーデターの余波はどうだったでしょう? アメリカは独裁を押しつけました。数年のうちに、この独裁が革命を引き起こしました。これは30年もの内戦となりましたが、事実上それは何十万人ものグアテマラ人が殺された長い一連の虐殺なのです。実に恐ろしい時期でしたし、私自身その一部を特派員として記事にしましたが、どこか他の国が、世界の他の場所で同じことをしたのであれば、アメリカはきっとあれを大量虐殺だとして糾弾していたでしょう。

    さてそこで、こうしたクーデターで何度も眼にするもう一つのパターンに至ります。政府を打倒した直後に決定的な瞬間がやって来るのです。そこで、アメリカは誰を新指導者にするかを決めねばならないのです。誰をこの国の指導者にしたらよいだろう? アメリカは、二つの条件を満たしてくれる人物を望むのです。まず第一に、人気がある人物ということです。権力者の地位に居続けることができて、しかも国民から支持される人物です。そして、第二に、アメリカが望むことをしてくれる人物であるということです。アメリカは、わざわざある政府を転覆して、自分の気にくわない人物を権力に据えたりなどしません。そこで、アメリカは、両方の条件を満たすのは無理なことに間もなく気がつきます。人気があって、しかもアメリカ合衆国の命令に従うなどという人物がいるわけはありません。人気のある指導者は、アメリカ合衆国の利益よりも、まず自国の利益を大事にするものです。それが我々が介入する理由ではないのです。

    そこで、アメリカは別の方法を選びました。アメリカは、その国民には人気は無くとも、アメリカが望むことをしてくれる人物を選んだのです。一体どういうことでしょう? 国民が彼を嫌うので、その人物は、ますます抑圧を強めた統治をしなければならなくなるのです。アメリカ合衆国は、そこでその人物を軍事的に支援しなければならなくなります。これはつまり、独裁者に対する反対勢力は、アメリカ合衆国に対しても反対勢力となるということです。怨念はつのってゆきます。究極的に爆発が起き、もともと最初に介入して打倒した政権よりもはるかに独裁的な政権が現れるという結末に終わるのです。

    エイミー・グッドマン:それで、1954年のグアテマラ・クーデターで、イランでモサデクを米国が打倒した一年後に、民主的に選出されたアルベンス大統領を米国が打倒しましたね。

    スティーブン・キンザー:モサデクがイランで打倒された後、クーデターを実行したCIA秘密工作員カーミット・ルーズベルトが、彼は実は初期の介入主義者であるセオドア・ルーズベルトの孫なのですが、ホワイト・ハウスに帰還して、アイゼンハワー大統領とダレス国務長官と他の外交政策チームのメンバーに要旨説明をしたのです。そしてカーミット・ルーズベルトは、後にその場面についてこう書いています。「要旨説明をしながら、ジョン・フォスター・ダレスの様子を見ましたが、彼はにんまり笑っていたのです。巨大な猫のように、彼は喜んでゴロゴロのどを鳴らしているように思えました。」 ルーズベルトはダレスが何を考えているかは知りませんでしたが、私はダレスが何を考えていたかわかる気がするのです。「これは素晴らしい! イラン政府転覆がいかに容易だったかというニュースを今聞いているのだ。つまり我々は外国政府を打倒する新手の方法を、全く新手の手段を手に入れたことを意味しているのだ。」と思っていたに違いありません。

    エイミー・グッドマン:でイランの場合はブリティッシュ・ペトローリアムでしたか?

    スティーブン・キンザー:イランの場合、モハメッド・モサデク首相が犯した罪は、究極的に、この介入を引き起こしたものは、石油会社の国有化でした。ですから、実際、この二つの状況は非常によく似ています。イランのモサデクもグアテマラのアルベンスも民族主義的な指導者で、いかなるソ連の影響に応えていたわけではなく、自国民の正当な要求に応えて、自分たちの天然資源から得られる富は、アメリカや、イギリスや他の外部勢力ではなく、自国民をこそ潤すべきだと決断したのです。

     エイミー・グッドマン:1954年からもう一つの9・11に至る1973年までの、ラテン・アメリカを見てみましょう。ヘンリー・キッシンジャーが民主的に選出された指導者を打倒した人物ピノチェトと握手をしている貴重な写真をお持ちですね。チリで何が起きたか、お話いただけますか?

      スティーブン・キンザー:チリは、色々な点でアメリカの基本的な原理を喜んで受け入れ、具現していた指導者を、アメリカが打倒して、アメリカ合衆国が主張するあらゆるものを軽蔑していた独裁者に置き換えたというもう一つの例です。アジエンデは民主的に選出された指導者でしたし、自称マルクス主義者でしたが、彼は終生チリの民主主義制度の枠内にありました。彼は国会の議長であり、上院議員でもありました。彼は完璧にチリの民主主義の一部になっていて、任期が終われば、おそらくはより保守的な誰かと交替して政権を去ったはずです。しかしアメリカ合衆国はそれが待てないのです。アメリカは、欲しいものは、後でなく、今すぐ欲しいのだという、性急さ、主張の反映です。

      チリでは、グアテマラ、イランと同様に、膨大な天然資源が外国企業によって支配されていました。チリの資源は銅でした。そして、そこで稼働していた二つの巨大アメリカ企業はケネコットとアナコンダでした。アジエンデは、二社のチリ人持ち分を国有化しようとしたのです。そこでこの二社はITTのようにチリで活動していた他企業同様、パニックに陥りました。連中はすぐさまホワイト・ハウスに出向きました。有力なチリ人ビジネスマンの一人でチリ最大の新聞社のオーナーはヘンリー・キッシンジャーに個別に話を聞いて貰う機会を得ました。ニクソンは即座に行動を起こしました。アジエンデが権力を握るという予想から、彼は非常に動揺したのです。

      そして、これは動機がどのように変身するのかというもう一つの例です。もしもアジエンデがケネコット、アナコンダや他のアメリカ企業を悩ますことがなかったなら、悩ませると脅かすことがなかったなら、そうした企業はホワイト・ハウスに異議申し立てをすることは無かったでしょう。けれども、一度連中が異議申し立てをすると、ホワイト・ハウスは連中の主張を喜んで受け入れ、ちょっとばかりそれを変形させたのです。米国はアメリカ企業保護の為という理由でチリに直接介入はしませんでしたが、ある政府がアメリカ企業を悩ませているという事実から、アメリカは、その政府は戦略的、政治的にアメリカ合衆国に反対しているに違いないと信じるに至ります。そこでそれが、個人的には本当のアメリカ企業擁護者ではなかったニクソンとキッシンジャーを、経済的と政治的の両方の理由の組み合わせだとこの二人が感じる行動に押し出した動機となりました。けれども介入は秘密裏に遂行され、ようやく数年後になって、どれほどこれが完璧なワシントン仕立ての作戦であるかを示す非常に大量の文書が出現したのです。

      エイミー・グッドマン:その写真は何でしょう?

      スティーブン・キンザー:ピノチェトとキッシンジャーが写っている写真は素晴らしいでしょう。クーデター後間もなく、一年か二年後に、キッシンジャー国務長官が米州機構の会合で演説するためチリにやって来ました。その演説で、人権と、人権の推進に関するアメリカの関心について、形ばかりの言及を多少しなければならなかったのです。けれどもその演説をする前日、キッシンジャーはピノチェトを内密に訪問したのです。その会合の記録がここに有ります。彼がピノチェトに言ったことの要点は「明日、人権について演説をする予定ですが、それは貴殿にはあてはまりません。どうぞ深刻に受け止められぬよう。我々はあなたを支持しますし、あなたが政権におられることを喜んでいるのです。」ですから、対チリ米国政策の公的な上面は、当時においてすら、アメリカが直接ピノチェトに内密に語ったこととは大きく違っていたのです。

      エイミー・グッドマン:ところで、スペイン語圏諸国のことにふれたので、プエルトリコに話を戻しませんか?

      スティーブン・キンザー:プエルトリコはもう一つの非常に興味深い例です。それはプエルトリコがスペイン領だったからです。しかし1898年、スペインの新しいリベラルな政権がプエルトリコに相当な程度の自治を与え、プエルトリコ人は大いにそれを信奉したのです。彼らはキューバ人がしたようにスペインの植民地統治に反乱していたわけではありません。しかも彼らは、イギリスがカナダに与えたよりもずっと大きな自治を与えられたのです。実際、選挙もありました。彼らはプエルトリコ自治政府を作り、スペイン統治という枠組みの中で、プエルトリコの政策の方向をかなり支配することができる予定でした。極めて先見の明のある指導者がいました。ルイス・ムニョス・リベラで、彼はプエルトリコの新首相になるはずでした。

      いわばキューバへの途上として、米国が侵略し、彼の政府はわずか一週間しか持ちませんでした。米西戦争はプエルトリコを目標にしたものではありませんでした。プエルトリコをアメリカに取りこむ意図はもともとありませんでしたが、プエルトリコは、たまたまそこにあり、また、取りこむことが可能であって、魅力的な国で、米国が支配したかった海路上にありました。そこで米国が乗り出して、本質的にプエルトリコ自治政府を押しつぶしました。アメリカはプエルトリコを軍政下に置きました。

      そして間もなく、それから数年間にプエルトリコで最初に起きたのは、コーヒーの小農園が乗っ取られ、巨大な砂糖プランテーションへの転換です。ラテン・アメリカでは、時にコーヒーのことを、貧乏人の作物と呼びますが、これはコーヒーならごく狭い土地でも栽培できるためで、一方砂糖はそうは行きません。そこで、四つの巨大なアメリカの製糖会社に明け渡すため、本質的に多数のプエルトリコ人が土地を奪われ、プエルトリコは1898年に自己統治を始めた極めて自信を持った新興国家から植民地状態、しかもそれから数十年、非常に貧困なものになってしまいました。

      エイミー・グッドマン:で、その後の年月に一体何がおきたのでしょう?

      スティーブン・キンザー:プエルトリコでは、長期的には事態はもっと悪化する可能性があったと主張することも可能だと思います。アメリカが長い時間の後、この国で起きたことに対して責任を取ろうと決めた介入の一つです。しかも、それには特別な理由がありました。キューバでのフィデル・カストロの登場と大いに関係があります。米国がカリブ海に悲しいほど貧しい植民地を所有しているという考えは、突然格好の良い物ではなくなったのです。キューバに対する、まずい比較対照でしたから。そこで1950年代と1960年代になってようやく、米国はプエルトリコを開発し、低開発国からアメリカが考えるこの国の20世紀前半の姿に引き上げようと試み始めました。

      エイミー・グッドマン:スティーブン・キンザーさんとお話しています。彼は『体制転覆:ハワイからイラクに至るまで、一世紀にわたるアメリカによる体制変革』(原題:Overthrow:America's Century of Regime Change from Hawaii to Iraq)の著者です。グレナダとパナマの話をしましょう。グレナダ、パナマで何が起きたかを見てから、そうですね、今日のイラクについて触れましょう。

      スティーブン・キンザー:アメリカによる外国政権打倒の歴史を、私は三つの時代群にわけました。一番目のアメリカによる外国政府打倒は、19世紀後半と、20世紀初期のことです。これはアメリカがあからさまに外国を侵略できた時期です。冷戦時代には、もはやそれができませんでした。そうすればソ連が反撃するかも知れないと恐れたためです。それが、密かに政府を転覆するため、アメリカがCIAを使った理由でした。しかしソ連が消滅すると、アメリカはもはやそうする必要が無くなったのです。そこでアメリカは、言うなれば元の政策、つまり外国政府を侵略することに戻ったのです。

      グレナダの状況は、グレナダ国内の極端に好戦的な過激派が蜂起して、自分たちの政治指導者を暗殺した時に始まったのです。数百人のアメリカの医学生が小さなグループでグレナダにいました。米国はごく容易に、医学生たちを避難させられた筈です。事実、新政権はアメリカにつけいる口実を与えないため、連中を外に出したがっていたのです。

      けれどもグレナダ作戦が行われたのは、より大きな世界政治の文脈中のことでした。アメリカ合衆国は依然としてベトナム敗北の屈辱からの回復過程にありました。そして実際、グレナダ侵攻が行われる直前の週末には、レバノンの米国海兵隊兵舎が爆破され、200人以上の海兵隊員の命が奪われました。米国は世界の中でとても無力だと感じていて、そしてアメリカは再び断固とした姿勢をとるようにするという公約でレーガン大統領が権力の地位についたのです。地域の指導者たちの何人かは平和的に解決したがっており、天然資源を何も持たず、水やガソリン等さえないグレナダの周囲を封鎖したいと思っていて、グレナダ危機を平和に解決する可能性はあったのです。グレナダはある種の地域的圧力には非常に弱かったでしょう。これはアメリカ合衆国には受けませんでした。米国がもう実に長いこと味わえていなかった、大きな軍事的勝利を得る好機であることを、レーガンと側近は即座に理解したのです。

      グレナダの全国民は、ローズ・ボール・スタジアムに収容できるのです。実に小さな国なのです。そこで、侵略の後、ごくごく僅かな費用でグレナダをカリブ海の沃野に変身させ、アメリカが介入した後で、何か良いことも起きることを示す希有の機会がアメリカにはあったのです。その費用は驚くほど些細なものだったはずです。人口わずか10万か12万人ですから。けれども、そうはせず、アメリカはグレナダに背を向け、次のプロジェクトに移ってしまいました。それでもレーガン政権の狙いはそれなりに実現しました。狙いはアメリカに勝利させるというものでした。あわれなほど小さな島に対する戦勝ではありましたが、海兵隊員が何か前向きなことをしている様子を見せることはできたのです。それが、アメリカがこの作戦を実行した本当の理由だったろうと思います。

      エイミー・グッドマン:さてパナマです。あなたは父ブッシュ元大統領が今やアメリカ合衆国の監獄にいるノリエガと一緒に写っている写真をお持ちですが?

      スティーブン・キンザー:アメリカがパナマに介入し、侵略したのはノリエガ将軍を打倒する為でしたが、パナマの章を書きながら私が発見したのは、ノリエガは30年間CIAから給料を貰っていたということでした。彼はいくつも罪を犯しています。その一部は麻薬輸出に関与したことですが、米国政府とCIAは長年このことをすっかり知っていたのです。彼はパナマを米国の軌道から抜け出させようとしていたのです。コントラ戦争を中米で実行しようというアメリカの計画の邪魔をしていました。中米和平交渉の一部だったコンタドーラ提案を覚えておられるでしょう。コンタドーラというのは、実際はパナマの島の一つで、この平和交渉の一部がコントラ計画の実行を駄目にする可能性があったのです。

      さらに、ノリエガは、パナマ人がアメリカ侵攻のわずか数日前に遂行しようとしていたクーデターで打倒できていたはずなのです。しかも、このクーデターを遂行しようとしていたパナマ人将軍は米国に通報していたのです。米国に、ノリエガに忠誠な連中がパナマに入るのを防ぐため、道路を幾つか封鎖して欲しいと頼んだだけですが。このクーデターは成功したでしょうけれど、アメリカは支援しなかったのですが、アメリカ人指揮官は後にその理由を説明しました。クーデターは、単にノリエガの打倒で終わっていただろうというのです。それでは極めて民族主義的なパナマ国防軍が無傷なままで残ってしまうはずでした。アメリカは単にノリエガだけ打倒したかったわけではないのです。アメリカは、アメリカの影響が及ばなくなり、民族主義的なパナマ国民の熱望をある程度反映するものとなっていた軍組織を丸ごと打倒したかったのです。しかもそれはパナマ人による介入によって見事に実現される結果ではありませんでした。

      エイミー・グッドマン:あと一分しかありません。でも当然今のイラクについてお話いただけますね。

      スティーブン・キンザー:ブッシュ大統領がおよそ二年前、イラク侵略を発表したあの日、ホワイト・ハウスの「条約の部屋」(トリーティ・ルーム)という部屋で、演説の練習をしていたのです。キューバとプエルトリコに対する支配権をアメリカに委譲するスペイン降伏の文書が百年以上昔に署名された、まさにその部屋でした。部屋の壁には、条約署名場面の絵が掛かっています。絵の中でウイリアム・マッキンリー大統領の巨大な姿が目立ちます。つまりブッシュがイラク侵略を宣言する演説を読んでいた時、マッキンリーは象徴的に、ブッシュ大統領の肩越しに見ていたのです。ブッシュが米国を外国政権打倒の時代に引きずり込んだのではないことを、マッキンリー大統領以上に良く理解できる人物などいないでしょう。米国は一世紀以上もそうし続けているのですから。

http://www.democracynow.org/article.pl?sid=06/05/08/1353206&mode=thread&tid=25

2007年4月 1日 (日)

「体制転覆:ハワイからイラクに至るまで、一世紀にわたるアメリカによる体制変革」その1

Democracynow.org

2006年4月21日分放送の翻訳

「体制転覆:ハワイからイラクに至るまで、一世紀にわたるアメリカによる体制変革」

作家スティーブン・キンザーが新著「体制転覆:ハワイからイラクに至るまで、一世紀にわたるアメリカによる体制変革」について論じる。著書の中で、 彼は、イラク侵略は、イデオロギー上、政治的、或いは経済的理由から、気に入らない14の政権をアメリカが転覆してきた110年の経験の頂点だ」と書いている。「2003年のイラク侵略は、孤立した出来事ではない。それは、イデオロギー上、政治的、或いは経済的理由から、気に入らない14の政権をアメリカが転覆してきた110年の経験の頂点だった。」

著者スティーブン・キンザーは新刊「体制転覆:ハワイからイラクに至るまで、一世紀にわたるアメリカによる体制変革」の中でそう書いている。

キンザーは書いている。イラクにおける「体制変革」は一時は --ごく短期的には -- 機能したかのようだ。しかしながら、今やこの作戦は意図しなかったひどい結果をもたらしていることは明白だ。アメリカ合衆国が恐れていたり、信頼できないと考える政府に対して行った他のクーデター、革命、侵略もそうだった。」

    * スティーブン・キンザーは、『体制転覆:ハワイからイラクに至るまで、一世紀にわたるアメリカによる体制変革』(原題:Overthrow:America's Century of Regime Change from Hawaii to Iraq)の著者。元ニューヨーク・タイムズの海外特派員であり、"All the Shah's Men"や"Bitter Fruit"など数冊の本も書いている。

筆記録

本筆記録は無料である。ただし、寄付をいただければ、TV放映用に、聾者、難聴者の方の為の字幕作成の助けとなる。寛大なご寄付に謝礼申し上げる。

寄付金額 - $25, $50, $100, それ以上...

エイミー・グッドマン:スティーブン・キンザーさんに今日ここシカゴで出演していただきます。彼は元元ニューヨーク・タイムスのベテラン海外特派員で、「オール・ザ・シャーズ・メン」や「ビター・フルーツ」など本も何冊かお書きになっています。最近ニューヨーク・タイムスを退社されたばかりです。デモクラシー・ナウにようこそ!

スティーブン・キンザー:お招き有り難うございます。エミーさん。

エイミー・グッドマン:あなたの町に来られて嬉しく思います。スティーブンさん。

スティーブン・キンザー:いいところでしょう。

エイミー・グッドマン:アメリカが関与した14のクーデターを検討しておられますね。アメリカ政府が多国の政府転覆に関与した主な理由は何だったのでしょう?

スティーブン・キンザー:こうしたクーデターの多くは個別に研究されてはきましたが、私が本書で試みたのは、それを一連の個別の出来事としてでなく、ひとまとまりの長い連続体として見ることです。そうやって見てみることで、何度も何度も繰り返して現れるある種のパターンを引き出すことができます。全てが同じパターンに当てはまるというわけではありませんが、それでも非常に多くがあてはまるというのは驚くべきことです。

動機についておたずねですが、こうした物事をひとまとめにして見ると、浮かび上がってくるパターンがあるのです。こうして多くのクーデターの展開を注視すると、三段階の動機が見いだせます。最初に起きるのは、問題となる政権がどこかのアメリカ企業を困らせ始めるのです。彼らは、企業に税金を払うようにとか、労働法や環境法を守るように、とかいう要求をし始めます。時には企業が国有化されたり、所有する土地や資産の一部の売却を要求されたりします。それで最初に起きることは、アメリカか外国の企業が他国で活動していると、その国の政府が何らかの制限を始めたり、問題を起こして、自由に活動する能力を制限したりするのです。

すると、その企業の首脳がアメリカ合衆国の政治的指導者のところに出向き、その国の政権に対して苦情を言います。この政治過程の中で、ホワイトハウスで動機は少々変わります。アメリカ政府は、ある企業の権利を守る為に直接介入することはしませんが、動機を、経済的なものから政治的な、というよりは地政学的、戦略的なものに変えるのです。彼らは、アメリカ企業を困らせたり、悩ませたりするようなあらゆる政権は、反米的で、抑圧的で、専制的で、おそらくはアメリカ合衆国を傷つけようとしているどこかの国の勢力か、その国の利益の為の道具であるに違いないという想定に立っています。そこで実際の基盤は決して変わらないのですが、動機は経済的なものから政治的なものへと変身します。

アメリカの指導者がその作戦の動機を、アメリカ国民に説明せねばならない段になって、もう一度変身するのです。そこで彼らは、普通、経済的な動機も、政治的な動機も使わず、こうした介入を解放作戦、独裁政権と見なしている政権の暴虐から、貧しく抑圧された国民を解放する機会として描くのです。他にどんな種類の政権がアメリカ企業を困らせるでしょう?

エイミー・グッドマン:スティーブン・キンザーさん、あなたがご本を始められているところから始めたいと思うのですが、それはハワイです。

スティーブン・キンザー:アメリカ合衆国に併合されるまで、ハワイが独立国家であったことを、多くのアメリカ人は知らないだろうと思います。要約すればこういうことなのです。19世紀初頭、数百人のアメリカ人宣教師が、その大半はニューイングランド出身ですが、当時サンドイッチ諸島と呼ばれていた場所へと人生を捧げるべく出帆しました。彼らの言うのに、異教徒の野蛮人を育てあげ、キリスト教文明の恩恵を教えてやるために。

間もなく、宣教師達やその子ども達の多くが、ハワイで莫大な金儲けができることを悟りました。現地人たちは長いこと砂糖を栽培していたのですが、決して精製せず、輸出もしなかったのです。現地人から大半の土地を奪い取った、宣教師農園主エリートと呼ばれた階層出身者の集団は、いわば神の道を外れ、拝金教に宗旨替えし、ハワイに一連の巨大砂糖プランテーションをうち立て、アメリカ合衆国に砂糖を輸出することで裕福になりました。

1890年代始めに、アメリカは課税法を通過させ、ハワイの砂糖栽培者が砂糖をアメリカに売ることを不可能にしました。そこで、ハワイの業者はパニックになりました。財産をすんでのところで失うところでしたから。何とかして砂糖をアメリカに売り続ける為には、どんなことが出来るだろうかと自問したのです。

彼らは完璧な解を思いつきました。アメリカになってしまえばいいと。どうやってそれを実現しよう? そこで、もしそうお呼びになりたければですが、ほとんどアメリカ系である「ハワイ人革命家指導者」が、実際ワシントンまで出かけました。海軍大臣と面会しました。アメリカ合衆国大統領ベンジャミン・ハリソンに直接問題を話しました。アメリカはハワイの君主制に対する反乱を支持するという確約を得たのです。

そこで彼はハワイに戻り、事実上のハワイ革命を実行した三執政の一人となりました。彼は三執政の一人でした。二人目はアメリカ大使で、彼自身併合主義者で、国務省からこの革命を助けることなら出来ることを何でもするよう支持されていました。そして三人目はアメリカ海軍戦艦の司令官で、その戦艦は好都合にもホノルル海岸沖に停泊していたのです。

この革命は驚くほど簡単に遂行されました。ハワイ革命の指導者、この宣教師農園主エリートが、ある日の会議で、「我々はハワイ政府を打倒した、今や我々が新政府だ。」と宣言しただけなのです。そして女王が対応する前に、アメリカの大使が、好都合にもホノルル沖に停泊していた軍艦から250名の海兵隊を岸に召集し、ある種の政治不安があったが、政府が交替したように見えるので、新政権を保護し、あらゆるハワイ人の財産を保護するため海兵隊が上陸すると宣言したのです。つまり、女王ができることは何もなかったというわけです。新政権は即座にアメリカ合衆国によって承認され、こうした単純なやり方で、ハワイの君主制は終焉し、究極的にハワイはアメリカに合併しました。

エイミー・グッドマン:女王は、助けてもらう為に他国の大使達は呼んだのでしょうか?

スティーブン・キンザー:女王も閣僚達も少々ショックを受けました。実際彼らはアメリカ合衆国に懇願し、尋ねたのです。「どんな政情不安があるのですか?誰が危険に直面しているのですか?言って下されば、その人々を保護しましょう。」女王にはおよそ600人の兵士がいました。それが全ハワイの軍隊でした。女王の閣僚達は実際に、ホノルル駐在の諸国大使達を、当時およそ一ダースほどでしょうか、呼び出して尋ねました。「我々は何をすべきでしょうか? 海兵隊と戦うべきとお考えでしょうか?」そして大使達は極めて慎重に、それは馬鹿げたことですと女王に言ったのです。「これを受け入れて、何か他の方法で再び王位につかれるよう試みられてはいかがかと。」それは決して実現不能なものでした。それでも当時でさえ、この小さな、弱い国家の支配者にとって、アメリカの軍事介入に抵抗しても何の希望もないことは明白でした。

エイミー・グッドマン:ハワイが実際究極的に併合されるまでにはさらに数年かかりましたね。

スティーブン・キンザー:それが実に興味深い話なのです。革命の直後、革命家達はワシントンに戻り、確かに大統領ハリソンは、約束通り、アメリカ議会に対してハワイをアメリカに併合するという法案を提出しました。けれども、クーデターがどのように組織され、それが誰の為に組織されたのかが知られるとこれには強い抵抗がありました。それで国会は即座にはハワイ併合を承認しませんでした。

まさにその時に、大統領が交代したのです。共和党のベンジャミン・ハリソンが退任し、新たな大統領、民主党のグローバー・クリーブランドが就任したのです。彼は併合には反対でした。彼は反帝国主義者でした。彼は条約を撤回しました。それは共和党の次期大統領マッキンリーが就任するまで、ハワイは数年間は独立国家でいなければならないことを意味しました。そして米西戦争たけなわのころ、アメリカがフィリピンを占領すると、ハワイはアメリカに対してカリフォルニアとフィリピン間の必要不可欠の中継基地となったのです。そしてその時、革命の五年後にハワイはアメリカ合衆国に実際に併合されたのです。

エイミー・グッドマン:スティーブン・キンザーさんとお話をしています。つまり、最初に宣教師達がやってきて、次に海兵隊がやってきたということですね。

スティーブン・キンザー:ええ、その通りです。「国旗の後から、企業が進出する」という言葉があります。しかし私の研究では実は逆なのです。最初に企業が進出し、それに国旗が続くのです。国旗が企業進出の後について行くのです。

エイミー・グッドマン:ここで一休みしましょう。それからまたこのお話に戻りましょう。ご本の書名は『体制転覆:ハワイからイラクに至るまで、一世紀にわたるアメリカによる体制変革』(原題:Overthrow:America's Century of Regime Change from Hawaii to Iraq)です。

[休憩]

エイミー・グッドマン:ニューヨーク・タイムスで長らく海外特派員を勤め、「オール・ザ・シャーズ・メン」というイランについての本、「ビター・フルーツ」というグアテマラについての本を含む多くの著書もあるスティーブン・キンザーさんの地元であるシカゴからお送りしています。彼の最新作は、「体制転覆:ハワイからイラクに至るまで、一世紀にわたるアメリカによる体制変革」です。彼はつい最近、ニューヨーク・タイムスを退社しました。あなたはアメリカが介入した14ヶ国についてお書きになっています。ハワイ、キューバ、フィリピン、プエルトリコ、チリ、ホンジュラス、イラン、グアテマラ、南ベトナム、アフガニスタン、イラク、パナマ。キューバについてお話しましょう。何が起きたのですか?

スティーブン・キンザー:キューバの話は実に心を惹きつけて離しません。特に私の本の主要テーマの一つを例証するのですが、それは、こうした介入が長期的にはいつも反応を引き起こし、究極的に最初に打倒した政権よりもずっと反米的な政権が登場するというものです。キューバについてはこんな具合です。トーマス・ジェファーソンが大統領だった頃からずっと、アメリカ人はキューバに長いこと目を付けていたのです。けれども1898年、クバ・リブレ(自由キューバ)という大義への傾倒が実際多くのアメリカ人の心を捕らえたのです。

1898年、キューバ経済は完全にアメリカ人に支配されていたことを銘記しておいてください。キューバは非常に大きな砂糖産出国で、キューバ内の全砂糖プランテーションはアメリカ人が所有していたのです。それにキューバはアメリカで製造した商品にとって巨大な市場でした。キューバで購入できる全てのおよそ85%はアメリカ合衆国製で、アメリカ企業はそこに極めて多大な利権を持っていたのです。

さてキューバの愛国者達は19世紀後半の長期間を、スペインの植民地支配に対する反乱に費やしたのです。1898年彼らはほとんど成功しそうに見えました。アメリカのキューバにおけるある種の利益にとって、これはいささか問題でした。革命家達は社会改革者でもあったためです。彼らは土地制度改革を支持しましたが、それはアメリカ人が所有する巨大砂糖プランテーションの解体を意味しました。彼らは、キューバが自国製造業の成長を可能にするための関税障壁を設けることも支持していましたが、それはアメリカ企業が商品をキューバに輸出するのをより困難にしたでしょう。

エイミー・グッドマン:それは何年のことですか?

スティーブン・キンザー:1890年代後半です。そこで1898年、アメリカの報道は、いわばキューバで活動していたアメリカのビジネスマンの耳打ちをきっかけに、キューバにおけるスペインの植民地支配を、言語に絶する、想像できる限り最も残忍な暴虐として描き出すキャンペーンを開始したのですが、アメリカ国民はこの熱情をあおり立てられました。アメリカの戦艦メイン号がハバナ湾で爆破されるとこの熱情は激化しました。「我が戦艦、敵の極悪非道なる装置により爆破さる。」これが拙書中にも収録したニューヨーク・ジャーナルの見出しでした。実際は、75年後に海軍が審問会議を召喚して、実際には海兵隊は内部的な爆破で吹き飛ばされた、という事実がようやく明らかになったのです。スペイン人は全く無関係だったのですが、アメリカ国民は当時それを知らず、報道機関はこの好機を捕らえてアメリカ国内の怒りに油を注いだのです。

さて、アメリカ人は、愛国者達がスペイン植民地主義を打倒するのを助けるため、キューバに軍隊を送ろうと決心しました。けれどもキューバ人革命家達は本当にその考えが良いのかどうか確信がありませんでした。何千人ものアメリカ兵士を自分たちの土地に呼び込んだら、勝利した後何が起きるのか彼等は考えられなかったのです。この懸念に答えてアメリカ政府、国会は法律を通過させました。テラー修正案で、非常に明確に「独立を勝ちとれた瞬間に、全てのアメリカ軍はキューバから撤退し、キューバが完全に独立することを認めると我々は約束する。」と規定していました。

この法律が通った後、キューバ人の反逆者達はアメリカの援助を受け入れることに合意しました。自分の軍服をニューヨークでブルックス・ブラザーズに自分用に特注した有名なテディー・ルーズベルトを含めたアメリカ兵士がキューバに入りました。事実上わずか一日の戦闘で、スペイン植民地統治は最後の致命的打撃を受け、スペインはキューバに降伏し、キューバは巨大な独立の祝賀を準備したのです。

その祝賀会が始まる直前に、アメリカ人は考えを変えたと宣言したのです。テラー修正案は無分別な熱狂の瞬間に成立したもので、実際キューバの独立はあまり好ましい考えではないと。そこでアメリカ軍は撤退はしませんでした。アメリカは米軍将校の直接指揮のもと数十年キューバに駐留したままで、それから後の期間は土地の独裁者の指揮の元で。

さて1959年に早巻き戻しをしましょう。フィデル・カストロの革命が成功した時のことです。カストロは丘から降りてきて、サンチャゴで革命の指導者として最初の演説をしました。その演説の中で、本の中にも引用しましたが、どんな政権を作りたいかは語っておらず、一つの約束だけをしているのです。彼は言っています。「今回は、アメリカ人がやって来て我が国のご主人様になった1898年のようにはしないとお約束しましょう。」

この演説の報告を読んだアメリカ人なら誰もが、当惑するに違いないと思います。そもそも、1898年に一体何がおきたのか何も記憶がありません。そして次に「60年前の出来事など、現代のキューバの革命とどんな関係を持ち得よう?」と訝るのです。こうした介入に対する憤りが外国の人々の魂や精神に焼き付き、後に激しく暴発するということを、アメリカ人は理解しそこねているのです。

アメリカがキューバに介入せず、キューバが独立するのを邪魔していなければ、1898年のキューバ人に対する明確な約束を実行していれば、過去40年間、あらゆるカストロ共産主義現象に直面することなど決してあり得なかっただろうと、今になって言うのは実にもっともなことです。今はもちろん、キューバで1898年に政権につこうとしていたような穏健なデモクラシー政権に戻って欲しいわけですが、しかしそれにはもはや遅すぎ、これが外国の国民の正当な民族主義的な熱望を、アメリカ人がどのようにして挫き、後になってそうした諸国を不安定状態に追いやるだけでなく、我が国の安全保障をも深く傷つけてしまうかという好例なのです。

エイミー・グッドマン:今例えばイラクでは、恐らくはアメリカ企業を保護しようとするアメリカ政府だけでなく、こうした全てにおけるメディアの役割はかなり重要に思えます。キューバに話を戻すと、メディアの役割はどうだったのでしょう?

スティーブン・キンザー:米西戦争に向ける準備段階で、報道機関は実に恥ずべき役を演じました。アメリカ人は、決してとりたててスペインのキューバ統治を好んでいたわけではありませんが、報道機関が、部数拡大競争のために、彼ら流に言うところの、スペイン植民地支配の蛮行を上手く利用することに決めた1898年の夏、アメリカ人は本当におかしくなりました。

そして、キューバの報道キャンペーンには非常に興味深い点が、アメリカの歴史の中で何度も繰り返し定期的に目にするものがあると思います。つまりアメリカは決してある政権だけを攻撃しようとはしないということです。アメリカ人は誰か個人を仕立て上げたがるのです。アメリカ人は、悪魔を、アメリカが攻撃しようとしている政権のあらゆる悪と専制の象徴となる人物を、欲しがるのです。ホメイニが、カストロが、カダフィがそれであり、歴史上他にも様々な人々がいました。

そこで米西戦争の場合、まずはスペイン王を悪魔のように描きたいと考えたのですが、スペイン王は存在しませんでした。女王がいまして、実際にはオーストリアの王女ですが、彼女では使えません。摂政は、彼女の息子でしたが僅か12歳の子供で、彼も使えませんでした。そこでアメリカはスペイン人将軍、在キューバスペイン軍指揮官、ワイラー将軍に焦点を当てることに決め、その当時、ワイラーはスペイン植民地主義に帰せられたあらゆる肉体的暴虐の縮図だと見なされました。

アメリカ人が常に誰か非難すべき個人を持ち出す時、現代に至るまでこのパターンを目にするのです。この考え方の背後にあるのは、全世界の人々の自然な状態は、アメリカ式デモクラシー制度のもとにあることで、アメリカ合衆国に対しては友好的であるべきだ、というものです。そうでなければ、たった一人の人物か、ちっぽけな徒党が、自然な姿にあるべきその国の人々の邪魔をしているのであり、アメリカがこのたった一人の人物やちっぽけな徒党を取り除きさえすれば、その国の国民はあらゆる人々にとっての正常な状態に戻り、つまりアメリカ式政府、政治、経済に憧れ、アメリカ合衆国を喜んで受け入れる、というのです。

エイミー・グッドマン:ウイリアム・ランドルフ・ハーストは、当時重要な役割を演じたのですか?

スティーブン・キンザー:ハーストは、極めて賢明にも、外国は常にアメリカ合衆国を傷つけようとしているのだと指摘して、好戦的愛国主義をあおりさえすれば自社の新聞の販売部数を劇的に伸ばせるだろうと悟った重要な人物でした。世界をこうしたホッブズ風に、至る所に恐ろしい危機があると見る風潮、そうした危険が上陸する前に、外に出ていって、あちこちを攻撃することがアメリカにとって極めて重要だというのは、現代でも依然として続いているわけです。本書の為に調査をしている間、クラウゼヴィッツをかなり読みましたが、彼はこうした事を名言で表現しています。彼はこれを「死ぬのが恐くて自殺する」と表現しています。自分に対して、世界で起きていること、或いは起こりそうなことが心配でたまらない余りに、出かけていって作戦を展開し、そんなことをしなければ起きなかったのに、実際にその行為が、起きるのではないかと恐れていた結果をもたらすことになるのです。

エイミー・グッドマン:ジョン・フォスター・ダレスについて、彼がどういう人物だったか、グアテマラや、その直前のイランへの介入における彼の役割をお話頂けますか?

スティーブン・キンザー:これまでの著作ではしておらず、本書でしたことの一つは、ダレスにかなりの焦点を当てたことです。私は本当に、ダレスが、20世紀の後半を形作った主要人物の一人だと信じていて、彼の分析と、なぜ彼がこういう役割を演じたのかの解明にかなりの時間をさきました。そもそも、ダレスは成人してからの生活の殆どを、アメリカで最も成功し最も高給を取る企業弁護士として過ごしました。彼はアメリカのあらゆる超巨大多国籍企業、ユナイテッド・フルーツのみならず、インターナショナル・ニッケルやあらゆる類の世界中の天然資源コングロマリットの代理人でした。そこで彼の世界の見方はひたすら経済的なものでした。世界におけるアメリカ政策はアメリカ企業の保護を指向すべきだと考えていたのです。

ダレスは聖職者一家の出身でもありました。彼は宗教的に深い信仰者でした。彼の父親は説教師でした。祖父はインドで宣教師をしており、このことで彼にはある気質が伝わり、アメリカの他国政権転覆時代に、この宗教的な感覚、つまりアメリカ合衆国は繁栄とデモクラシーを授けられているので、他国に、とりわけどれほど我が国の政治制度を必要としているかも自覚できない程度でしかない国に出かけていって、我々が浴している恩恵を彼らにも分け与えるのは、単にアメリカの権利であるのみならず、恐らくは神が与えたもうた義務なのだ、という信仰が極めて重要となるわけです。そこでダレスは、世界を厳密に白か黒かで見ていたのです。

彼は当時、共産主義の陰謀が、アメリカ合衆国を傷つけるべく世界中で執拗に活動していると見ていました。例えば、彼はいかなる共産主義国とのあらゆる文化交流に反対でした。長年の間アメリカの記者達が中国を訪問するのを妨害しようとしていました。彼はあらゆる類のサミット会議に反対でした。いかなる話題においても、共産主義諸国とのいかなる合意もアメリカにガードを下げさせるためのトリックに過ぎないはずだと考えていたので、望んでいませんでした。

それで、イランが石油産業を国有化した時、グアテマラがユナイテッド・フルーツ社の事業を制限しようとした時、ダレスはそれを、自らの資源を管理したいという外国国民の要求の反映として見ませんでした。彼はそれをむしろ反米的な動きとして見なし、疑いなしにクレムリンによって操作されていて、単にアメリカ企業を困らせるだけでなく、ずっと遠大な目標をもっていると考えていました。それは単なる反米攻撃の手始めに過ぎないのでした。

そこで、私が本の中で挙げている話の一つになるのです。イランやグアテマラ、そして後にはチリのような発展途上国における民族主義的活動に、なぜアメリカ人は、これほど悲劇的な判断の誤りをおかすのでしょうか? そうではなかった事が後に文書で明らかになりましたが、何故我々は、国際的な陰謀の一部として理解したのでしょう?

それはこういう理由だと思います。外交史を研究しているアメリカの政治家や外交官は、実際はヨーロッパ外交史を研究しているのです。アメリカ人は、きわめてヨーロッパ中心主義なのです。わが国の外交官達も政治家達もヨーロッパの政治的伝統にはよく通じています。彼らは同盟による政治や、征服やら大国が自国の手段として小国を密かに利用する戦争には詳しいのですが、貧しい国々の貧しい人々の自分たちの天然資源を管理したいという要求は、決してヨーロッパ史の一部ではありませんでした。ヨーロッパを研究し、事情に通じたアメリカ人の行動様式というわけではなく、アメリカ企業を守ろうとする本能的な欲求とあいまって、彼らは民族主義的な活動にたいする判断を誤り、アメリカ合衆国を傷つけようとする世界的な陰謀の一部だと誤解するのだと思います。

エイミー・グッドマン:といいますか、それはどうでもよくって、ユナイテッド・フルーツが好き放題に支配できるグアテマラのように、アメリカ企業は大事だと。

スティーブン・キンザー:そうした国々において何がアメリカ合衆国にとって最善か企業は知っておくべきことだったと思いますが、それに加えて、アメリカ企業を悩ませている政府は、自国民をも悩ませ抑圧しているに違いないと、我々が自分自身を説得してしまうのです。この主張は、アメリカ精神に非常に良く合っていると思うのです。ご存じのように、アメリカ人は実に同情心の厚い人々で、アメリカ人はどこか遠くの国で苦しんでいる人々がいるという考えに耐えられないのです。実に下劣な理由からそうした国々に干渉したがるアメリカの指導者達は、これを分かっていて、その動機を利用し、アメリカ人の同情心につけこんで、連中の介入に対する支持を獲得するのです。

エイミー・グッドマン:何が今のイランに油を注いでいるのかお話しましょう。アメリカが関与した1953年のクーデターに起因して、イラン人がアメリカに対して抱いている感情について。

スティーブン・キンザー:現在では、「イラン」と「デモクラシー」を一つの文章中で使えたろうなどとうてい思いつくことはできませんが、実際1940年代後半から1950年代初期、イランではデモクラシーが機能し、繁栄していたのです。イランが、石油産業を、外国人によって搾取されるがままにしておくのではなく、国有化したために、イランは外国による介入の標的となり、アメリカはイランのデモクラシーを1953年夏に打倒したのです。

アメリカはシャーを王位に据えました。彼は弾圧を強化しながら25年間支配しました。彼の弾圧が、1970年代末の爆発、イスラーム革命を引き起こしたのです。あの革命で、アメリカ外交官を捕虜にとって政権を始めたイスラーム法学者たちによる、狂信的に反米的な党派が権力を握り、以来25年間、自国民を弾圧し、世界におけるアメリカの利益を損なうために、時には非常に暴力的に、できることを手当たり次第やっています。そしてそれが、今我々が核問題で極めて深刻な世界的危機に立ち至っている相手の政権です。

ですから、アメリカが1953年に介入せず、イラン流デモクラシーを粉砕しなかったなら、イスラーム教中東の中心部に、過去50年間、繁栄するデモクラシーが有りえたかも知れないのです。中東が今頃どんなに違う状態になっていただろうかは、ちょっと見当もつきません。今イランで権力を握っている体制など、決して権力を持つようにはならなかったでしょうし、今の核危機も決して起きはしなかったでしょう。アメリカの介入が、究極的には最初に打倒した政権よりもずっとひどい政権をもたらすという好例です。

アメリカ人が彼らを非難して、「あなた方の国は専制政治だ。あなたのお国は残虐な独裁国家だ。デモクラシー体制になるべきだ。自由な体制を持つべきだ」と言ったら、イランの人々はどのように反応すると思われますか。彼らはこう答えるでしょう。「あなたがたがやってきて打倒するまで、我が国にはデモクラシーがあったのです。」今、アメリカ合衆国は、イラン政府に対して、いくつか極めて正当な不満を訴えていますが、それでも我々は、イラン人にも我々に対していくつか極めて正当な不満があることを理解すべきで、それが現時点で、我々が彼らと交渉に入ることを可能にする認識でしょう。

エイミー・グッドマン:スティーブン・キンザーさん、今日はここで終えなければなりません。来週はこの本「体制転覆:ハワイからイラクに至るまで、一世紀にわたるアメリカによる体制変革」アメリカが関与した14のクーデターにかかわる第二部です。

http://www.democracynow.org/article.pl?sid=06/04/21/132247&mode=thread&tid=25

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「体制転覆:ハワイからイラクに至るまで、一世紀にわたるアメリカによる体制変革」その2

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